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マレーシア航空MH17機墜落:

ロシアがウクライナに返答を望む10の質問


 1898年の米西戦争以来、アメリカの帝国主義戦争の起こり方は常にワンパターンである。すなわち:
★突然、多くの人々の理性的な判断を狂わせる衝撃的な事件が起こる ……>
★即刻、何の客観的な調査も無しに、アメリカand/orその同盟者がワンパターンに事件の責任者を断定する ……>
  (それはワンパターンに「悪」であり、アメリカand/orその同盟者はワンパターンに「悪を退治する善」である)
★即刻、マスコミがそのワンパターンをワンパターンに報道し、「識者・専門家」がワンパターンに同調する ……>
★即刻、西側世界の主要な論調がワンパターンに押し流される ……>
★即刻、何らの見直しも再検討も無しに「悪」の国家and/or集団に向けてあらゆる手段を用いる攻撃体制が整えられる……
 それは疑うことを許されない「聖なるワンパターン」であり、2014年7月17日にウクライナ東部で発生したマレーシア航空MH17機墜落事件で、またしてもこのワンパターンが進行中である。

 従来のワンパターンに加えて、2001年9月11日の「同時多発テロ」より後に起こった様々な「イスラムテロ」には、事件直後に得体のしれない「犯行声明」が出されるというワンパターンが追加された。典型的な例が2004年3月11日のマドリッド列車爆破事件だが、今回のMH17機墜落事件でも「犯行声明」ビデオが、あらかじめ準備されていたかのように実に素早くウクライナ当局者の手によって公開された。(下記の翻訳の中で紹介されている。)

 しかしどうやら、この「聖なるワンパターン」はここ数年間で徐々にほころびを見せ始めているようだ。下に掲げる翻訳記事は、このマレーシア航空MH17機墜落事件に関して、2014年7月18日付でロシアRTが報道した、ロシア国防副大臣によるウクライナ当局者に対する10の質問である。 原文は、
http://rt.com/news/173976-mh17-crash-questions-ukraine/
Malaysia MH17 crash: 10 questions Russia wants Ukraine to answer Published time: July 18, 2014 20:59)

 訳文中には原文に施されている外部リンクをそのまま貼っておいたが、全て英語でのRT記事である。訳文には必要に応じて訳者からの注釈を施しており、クリックすることでその注釈に飛び、また元の場所に戻ることができる。また最後に【翻訳後記】を掲げておくので、これもぜひお読みいただきたい。

(2014年7月20日 バルセロナにて 童子丸開)

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マレーシア航空MH17墜落:ロシアがウクライナに返答を望む10の質問
2014年7月18日

 一部の西側諸国とキエフは裏付けに必要な根拠も無しに大慌てでMH17機墜落にロシアの関与を見つけようとしたと、ロシアの国防副大臣はRTに語った。彼は、公平な徹底調査に向けて彼らの重大責任を明らかにする10の質問に答えるように、ウクライナに要求した。

 RTの取材に対して、ロシア国防副大臣アナトリ・アントノフは、わずか「墜落後24時間」で何の証拠も無いというのに結論に飛びついたと西側諸国を批判している。

 「彼らは、我々が墜落に責任を負うと世界中に示そうとした。西側メディア報道で私と同じ立場の者たちが何一つ証拠を示すことなく墜落に責任のある誰かを見つけ出したがるようなことは非常に奇妙だ」とアントノフは言った。「それがロシア連邦とその軍に対して開始された情報戦争の一部であるように私には思える」

 参照:「キエフによって公開された、実証抜きで東ウクライナ軍事組織がWH17を撃墜したことの『証明』として紹介されるビデオUnverified tape released by Kiev presented as ‘proof’ E. Ukraine militia downed MH17
)」 【訳注1】

 このウクライナ上空で起きた惨事は、片方の側を根拠も無く非難する口実として利用されるのではなく、「未来においてこのような悲劇を防止する」ための協力関係を再出発させる可能性として使われるべきものだ。

 「私としては、誰かを非難する機会としてこれを利用したいとは思わない。私はウクライナの軍にいる私と同じ立場の人々に対して少しだけ質問をしてみたいと思う。」アントノフは言った。「私はこれらの質問に彼らが答えようとすることを願う。それは、我々がどこにおり、我々が協力関係を再出発させこの悲劇への真の責任を負う者を見つけ出す可能性があるのかどうか、我々が気づくために良い機会となるだろう。」

 「これらの質問に対する回答は、未来においてこのような悲劇を防止するための機会を我々が見つける助けとなるかもしれない。」このように国防副大臣は語った。


ウクライナ当局者への10の質問

1.この悲劇が起こった直後に、ウクライナ当局者は当然であるかのように(東ウクライナの:訳者)自衛軍のせいにして非難した。
これらの非難は何に基づいているのか?

2. キエフは紛争地域で
Bukミサイル発射装置をどのように使用しているのか、そして、自衛軍が全く飛行機を持っていないというのに、どうしてそれらのシステムがそこに何よりも先に配備されたのか? これをキエフは詳しく説明できるのか? 【訳注2】

3.なぜウクライナ当局者は
国際的な調査委員会を作るための何事をもしようとしていないのか? そのような委員会がいつその作業をするのだろうか?

4.ウクライナ空軍はその空対空および地対空ミサイルの目録を、SAMランチャーで使用されたものを含めて、進んで国際的な調査官たちに見せるのだろうか?

5.国際的な調査委員会には、その悲劇が起こった日のウクライナ空軍機の行動に関して信頼のおける情報源からのトラッキングデータを入手する方法があるのだろうか?

6. どうしてウクライナの航空管制官はその飛行機が
通常のコースから外れて北の方に、「反テロ戦闘地域」に向かって方向を変えるのを許したのか? 【訳注3】

7.この地域がレーダーによる航行システムによって全面的にはカバーされていなかったにもかかわらず、なぜ戦闘地帯の空域が
民間航空機に対して侵入禁止にならなかったのか?

8.ウクライナで働いているスペイン人の航空管制官によるものと言われるが、ウクライナ領土の上空でボーイング777に寄り添って飛んでいた2機のウクライナ軍用機が存在したというソーシャルメディアでの報道に対して、キエフ政府はどのようにコメントできるのだろうか? 【訳注4】

9.どうしてウクライナのセキュリティーサービスは、国際的な調査官を待つこと無しに、ウクライナの航空管制官たちとボーイングの搭乗員たちとの間での交信記録を、ウクライナのレーダーのデータ保存システムと共に用いて作業を開始したのか?

10. ウクライナは2001年に起きた
同様の事件から何を学んだのか? このときにはロシアのTu154が黒海に墜落したのだが、当時を振り返ると、ウクライナの当局者たちは、反論の余地のない証拠がキエフ政府の責任を証明するときまで、ウクライナ空軍の一部が関与していたことを全て否定していたのだ。 【訳注5】

【訳注】 【戻る】をクリックすると訳注が付けられた段落の先頭に戻る。)

1:この2分33秒のYouTubeビデオは、ウクライナのシークレットサービスによって、8カ国語の字幕バージョンを整えて7月18日に公開されたものである。それは盗聴されたドネツク自衛軍の電話通信を元にマレーシア航空機が自衛軍の手で撃墜されたことを「証明する」ものとして紹介されている。当然だが自衛軍側はそれを全面否定している。【戻る】

2:Bukミサイルは強力な地対空ミサイルで1万メートル上空の飛行機を撃墜することなど造作もない。ロシアの軍事情報によると、ウクライナは少なくとも27のBukミサイルシステムを持っている。一方で東ウクライナの自衛軍は自分たちが1万メートル上空の対象を撃墜できるほどの高性能の地対空ミサイルを持っていないと主張している。【戻る】

3:2014年3月8日にも同じマレーシア航空機が理由の不明確なまま航路を外れて行方不明になる事件が発生している。もちろん今回の墜落事件との関連は何とも言いようがないが、3月の事件では一部に地上からの遠隔操作を主張する人もいる。また、飛行機がアメリカの戦争政策にとって非常に都合のよいように航路を変えた点で、2001年の911事件をほうふつとさせる面もある。(911事件では、大型飛行機を操縦した経験のない4人の「にわかパイロット」が操縦してピンポイントの激突を実行したことになっているのだが、その信憑性には大いに疑問を持たれる。)【戻る】

4:しかしながらこちらのGroval Research誌記事によれば、この「スペイン人航空管制官」のtwitter記事はフェイクであり発信元はロンドンであると突き止められたようだ。この種の事件ではこういった雑多な情報が飛び交うため、情報に触れただけで決めつけるのではなく、時間をかけた物理的で客観的な検証が必要である。この質問はアントノフ副大臣の勇み足だったのではないか。【戻る】

5:この2001年10月に発生したシベリア航空機墜落事件についてはこちらのWikipedia記事(日本語)を参照していただきたい。この事件では、ロシア政府が事件2日後に、ウクライナのミサイルが同機に命中した疑いがあることを発表したが、ウクライナ政府は頑強に否定した。しかし、その後にウクライナ政府はその責任を認めて謝罪した。ただこの事件についてのウクライナ側の態度や主張には多くの矛盾や不明な部分が残されており、事件の全貌が明らかにされたとはとうてい言い難い。【戻る】


【翻訳後記】

 翻訳を紹介する前に私は『この「聖なるワンパターン」はここ数年間で徐々にほころびを見せ始めているようだ』と書いた。そのほころびが最も明らかになったのはシリアに対する戦争挑発惨めな失敗だろう。あの「毒ガス事件」が曲がりなりにも国際的な調査団によって調べられ、シリア政府が毒ガスを用いて自国民を虐殺したというワンパターンの筋書きがいつのまにか曖昧な形で引っ込められた。加えて、シリアでの紛争がアサド政権と国内の反アサド派による「内戦」であるという筋書きも、その反アサド派の主力が国外からやって来たアルカイダ系の過激組織であることがアメリカ国内を含む世界中の人々に知れ渡ることによって、いつのまにか有耶無耶にされてしまった。(アサド大統領をヒトラーの再来であるかのごとくワンパターンに罵倒していた論者たちが今頃どんな顔をしているのかは知らないが。)

 911事件⇒アフガン・イラク戦争の大成功の夢からいまだ覚めやらぬアメリカの戦争屋とネオコンが次のワンパターンを狙ったのがウクライナだが、ここでも、あまりにも露骨なネオナチとユダヤ・マフィアの連合政権の実態が世界中に知れ渡り、加えてIMFによるあまりにも露骨な国民資産の略奪計画が明らかにされるにつれ、またしても「聖なるワンパターン」はその神通力を失いつつある。今回のマレーシア航空機墜落事件はそのさなかに起こった。

 アメリカとロシアの情報戦争は、表面的には西側マスコミによるワンパターンの情報が量的に圧倒しているために、アメリカ側が圧勝しているように見えるのだが、残念ながらそのワンパターン(調査抜きの結論断定と戦争政策のごり押し)が西側世界の住民にすら見抜かれている。今回の事件の後で、ウクライナ大統領は国連に対して東ウクライナの分離主義者たちを「テロリスト」として指定してくれるように求めているのだが、要するにこの事件を「911」になぞらえ、東ウクライナ住民への大虐殺を「対テロ戦争」として正当化しようという目論見なのだろう。しかし7月19日にはEUを牽引するドイツのメルケル首相がロシアのプーチン大統領とマレーシア航空機事件の国際調査について合意を結んだ。(このニュースは日本に伝えられているのだろうか?)ネオコンどもは、あの「聖なるワンパターン」がもはや通用しないことを悟るべきであろう。ウクライナとロシアの問題はEU抜きで「解決」することが不可能なのだ。

 その具体的な国際的調査の中で、今回の翻訳にあるアントノフ国防副大臣の質問に対する十分な解答が得られることを期待したい。ただし【訳注4】にも書いたことだが、この「10の質問」の中の8番目だけは副大臣の勇み足であり、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアに現われる情報の取り扱いにはよほどの慎重さが必要であることの教訓と為すべきものだろう。以前にベネズエラでの例を取り上げたのだが、この種の情報の中には混乱を引き起こさせるために意図的に流されるニセ情報が多く混ぜられていると知るべきである。

 また、翻訳中の「質問10」で取り上げられているシベリア航空機撃墜事件だが、ウクライナ空軍のミサイルによって「偶発的に」墜落させられた飛行機の乗客の多くが、イスラエルからロシアに帰還する途中のロシア系ユダヤ人たちだった。そのため最初は「イスラムテロ」すら疑われたものだった(911事件の直後だったせいもある)が、じきにそうでないことが分かった。ただ、いくら不注意だったとはいえ、民間航空機の航路付近で長距離ミサイルを飛ばす軍事訓練を行うバカな国があるだろうか? この事件には多くの裏がありそうだがそれは知る由もない。この国の不可解さは昨日今日に始まったことではないのだ。

 最後に、実を言えば私はこの事件が起こったときに「これはイスラエルのガザに対する蛮行から世界の注意をそらす役割も兼ねているのだろうな」と思った。ガザへの地上攻撃が開始されたタイミングと重なっていたからだ。新聞やTVニュースのトップで最大の時間を割いてウクライナとアメリカの政府発表に基づいた情報を流し、ガザで起こっている大虐殺は片隅に追いやられるのだろうと予想したのである。しかし私の予想は見事に裏切られたようだ。スペインのTVと新聞は、かつてなかったほど大規模にしつこくイスラエルの暴力性と残虐さを視聴者にアピールしており、逆にマレーシア航空事故がかすんでしまう。スペイン語メディアだけではなく英語のメディアに目を通しても、今までのガザ攻撃と比べて、イスラエルに対する反感をかきたてるような記事が目立つように感じる。

 暴力と破壊と死が満ち溢れる中で、表からでは見えない何かがゆっくりと変わりつつあるのだろうか

 

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