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崩れつつある《アメリカ例外主義》?

「オバマ・ビン‐ラディン」


9月5日、ウクライナの首都キエフの米国大使館前で、2008年のオバマ・キャンペーンの写真をもじった
"Obama bin Laden"の写真を掲げて、シリア・アサド政権支持のデモを行うウクライナ人と在住シリア人
(写真Url:http://cdn.20minutos.es/img2/recortes/2013/09/05/136588-406-304.jpg

 アメリカは常に「平和と民主主義と自由と人権」の守護神である。地球の平和と民主主義と自由と人権を脅かすけしからぬ輩がいるならば、世界中のどこであろうともいとわずに出かけて行って懲らしめる。それは《例外的な国》である。アメリカが、その敵である悪を殴りつけ殺すのは、常に正しいことである。ハリウッド映画を見るがよい。アメリカは本来から正義の拳骨と正義の拳銃を持っており、その正義は最後には必ず勝つのだ。かつては共産主義ソ連の悪魔と戦い偉大な勝利を遂げた。今はアル‐カイダを筆頭とするテロリズムの悪魔と戦い続けている。アメリカは地の果てまでこの悪魔を追い詰めて、いつか再び偉大な勝利の旗を掲げるだろう。平和と民主主義と自由と人権を愛する世界の人々は、平和と民主主義と自由と人権を脅かす悪を懲らしめるため、この《例外的な国》の力に頼らねばならない。God Save America! 

 いや、冗談抜きにだが、《アメリカ例外主義》は一つの「宗教」と言ってもよいほどに、強烈に米国とその眷属国家群の国民を縛り付けてきた。特にマス・メディアと多くの《オールタナティヴ》メディアはその神官であり巫女であり続けてきた。「正義」は「悪」と対決することによって「正義」たりうる。したがってこれらの神官と巫女たちは限りなく「悪」を作り続け、それと米国を戦わせ続ける。かつての「悪」はスペインであり、ドイツであり、日本であり、ソ連だった。そして2001年9月11日以降は、晩年のオサマ・ビン‐ラディン率いるアル‐カイダが米国の「正義」を輝かし米国を戦争へと導く「悪」となった…はず…だった。少なくともこれらの神官と巫女たちにとってはそうだったし、今でも、そしてこれからも永遠にそうあり続ける…はず…、というか、そうでなければならない…はず…だった。

 今回お知らせするのは、オタワ大学教授ミシェル・チョスドフスキーの『「反テロ世界戦争」はどうなったのか?シリアで「アルカイダのために戦う」米国』(パレスチナ連帯札幌の松元保昭氏の和訳)である。これは今年の9月5日にGlobal Research誌に掲載されたものでネタとしては少々古い。しかしこの記事は、数年あるいは数十年を単位としてみた場合に、一つの歴史の大きな転換点を示唆しているように思える。いままで通用してきた「はず」が、「はず」でなくなりつつあるのかもしれない。ゆっくりと、だが、やっぱり地球は動いているのだろう。
 だが、これ以上のことは、以下の松元氏からの前文と訳文をお読みになってから、お考えいただきたい。

2013年9月22日 バルセロナにて 童子丸開

   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *

 シリア問題は、米国民と世界世論の圧倒的多数の反対に直面し、「証拠」の脆弱さと下院決議の見通 しを失った米政権の窮地に「救いの手」を差し伸べたロシア提案「化学兵器の国際管理」の合意に落ち着き、当面の軍事攻撃は回避されま した。
 ここに紹介するミシェル・チョスドフスキィ氏の論考は、9月5日に投稿されたもので、G20の最中、米国が軍事攻撃のための「有志連合」をさかんに追求していた時期です。(ロシアの「誘い水」は9日で、 その後急転しますが。)したがって、下院議会を前にして、米国民に戦争反対を呼びかける論調ですが、論考の主旨は「反テロ世界戦争」 という戦争ドクトリンの崩壊を論証している画期的な内容になっています。「反テロ戦争終焉論」の大事な論考として残ると思われます。
 しかし、パレスチナ問題は蓋をされたままで、イスラエルをめぐる周辺イスラム諸国に対する分断・ 懐柔、絶えざる不安定化という米国・西側の基本戦略は生きており、なによりも戦争を引き起したい米欧の軍産複合体が暗躍し続けています から依然予断を許さない状況ですが、「反テロ世界戦争」の終わりの始まりと言えそうです。拙訳ですが、紹介させていただきます。

http://www.globalresearch.ca/what-happened-to-the-global-war-on-terrorism-the-u-s-is-fighting-for-al-qaeda-in-syria/5348210
What Happened to the “Global War on Terrorism”? The U.S. is “Fighting for Al Qaeda” in Syria.

「反テロ世界戦争」はどうなったのか?シリアで「アルカイダのために戦う」米国
ミシェル・チョスドフスキィ教授(松元保昭訳)
2013年9月5日
グローバル・リサーチ誌

 晩年のオサマ・ビン・ラディンの指揮下にあるアルカイダは9・11攻撃に責任があったと、アメリカ人は繰り返し語ってきた。

 2001年9月11日の悲劇的な事件のあとに公式化したのだが、米国とその同盟国は、中東、アフリカ、中央アジア、および東南アジアで、テロ諸組織と提携する多数の「ジハード戦士」アルカイダに直接対決する「反テロ世界戦争」(GWOT)を開始した。「反テロ世界戦争」の第一ステージは、アフガニスタンへの爆撃と侵略であった。

 9・11の結果として、「反テロ世界戦争」は、中東および中央アジアにおける米国主導の戦争の背後にある現実の経済的・戦略的目的を分かりにくくする役割を果たした。

 愛国法が施行された。国家安全保障ドクトリンは、「イスラム・テロリスト」に守られるべきはアメリカ本国であると明確に述べた。
 その後13年間、対テロ戦争のレトリックは、政府のあらゆるレベルの政治言説に行きわたった。政治家、企業メディア、ハリウッド、そしてワシントン・シンクタンクによって、(「アメリカの外敵」)アルカイダは、いつも繰り返しひとつの一括した「悪役」という見出しで世界中の数多くのテロ事件の「原因」と特定され、脅威や事件に関係したのはアルカイダだと説明されている。

 だがどういうわけかここ数ヵ月で、この「アルカイダ・パラダイム」は変った。アメリカ国民は「反テロ世界戦争」の妥当性にますます懐疑的になった。

 シリアに展開中の出来事で、この1,2ヵ月、オバマの「反テロ世界戦争」にかんする国民の理解と認識に重大な影響をもつ、むしろ異常ともいえる何かが起こった。

 大部分が外国人傭兵から成り立っているアルカイダに属す主要な戦闘部隊シリアのアル・ヌスラに、米国政府は積極的にかつ公然と支援している。

 税金は、絶え間なく「反乱軍」に注がれている。そして次には、国務長官ジョン・ケリーがアルカイダに属する部隊を監督する反乱軍司令官に会っている。

 これは、ひとつの外交政策の焦点の中に「テロリズム」と「反テロリズム」が併合されて反政府派を統一するという、「新しい基準」の一部であるのか?

 「反テロ世界戦争」と口先だけ良いことを言っている同じ時に、テロ組織の指導者と歓談するのが米国上院議員にとって、「政治的に正しい」ことなのか?

 これは米国務長官にとって「通常のビジネス」かもしれないが、一方では現在、アメリカの男女兵士は、「反テロ世界戦争」というモットーのもとでテロリズムに味方する戦争には「戦いを拒否」している。

 シリアのアルカイダに資金と兵器を注いでいることは、CIAの秘密作戦関連というよりむしろ米国務省およびペンタゴン経由で「公然と」実行されている。

 ジョン・マケインは、シリアに不法に入国しアルカイダ指導者と一緒にマスコミ向けのポーズをとっている。


 写真:タカ派上院議員ジョン・マケインが、シリアの名うての誘拐犯(カメラを肩にかけ胸に手を当てている)モハメッド・ノウルと一緒にポーズをとっている。(写真Url:http://previous.presstv.ir/photo/20130530/z.hashemi20130530101044610.jpg

●米国軍隊内部の動き

 言うまでもなく、政治家とテロリストのこの同行は、まさに「反テロ世界戦争」の土台に一撃を与えた。

 メディアのニセ情報にもかかわらず、米国の軍事援助がテロ集団に注がれており、これら米国が保証人となった反乱軍は「革命的な連中」などではないということに、国民はいよいよ気付いてきている。

 ソーシャル・メディア・ネットワーク上の自発的な動きは、軍隊の活動的なメンバーの参加に現れた。

 「私はアルカイダのために戦わない。」
 「オバマ、シリアで私はあなたの アルカイダ反乱軍のために戦わない。」


 写真:手書きのポスターをかかげる兵士。「オバマ、私はあなたのアルカイダ反乱軍のためにはシリアで戦闘配置につかない。国民よ目を覚ませ。」(写真Url:http://static.prisonplanet.com/p/images/september2013/020913join5.jpg

 「政府は、対テロ戦争で戦っているとわれわれに話している。」それは、軍隊で新入りの新兵が教えられていることだ。「われわれは、テロリズムと戦いデモクラシーを広げている。」と。

 にもかかわらず、ここ1,2ヵ月で何百万人ものアメリカ人が、オバマ政権は嘘をついているという事実に気付くようになった。

●テロリスト支援

 バラク・オバマとジョン・ケリーは、テロリズムと戦ってはいない。まったく正反対である:彼らは、民間住民に向けられた殺害と残虐行為、ほとんどの卑劣な犯罪に責任があるシリアのアルカイダ・テロリストたちを積極的に支援している。

 これらの犯罪は、十分に文書で証明済 みである。首切り、子どもの処刑。ほとんどがぞっとするような大虐殺。

 アル・ヌスラ旅団は、何千もの処刑を実行した。二人の若い少年が、死刑宣告を読み上げたあといかに処刑されたか、最近公開されたビデオが明らかにしている。「ビデオでは、テロリストが少年たちに死刑宣告を読み上げ、発砲が聞かれ、少年たちが死に倒れたところが見られる。」


 写真:目出し帽で顔を覆ったテロリストが、二人の少年を地面に座らせ後ろで死刑宣告を読み上げているビデオの一場面。
(写真Url:
http://inserbia.info/news/wp-content/uploads/2013/09/Syria-liquidation-of-boys-650x439.jpg
(ビデオUrl:
http://www.youtube.com/verify_controversy?next_url=/watch%3Fv%3D5ak5g-rYdQM

 これらが、米国政府に支援されている人々ですか?

 テロリストは、西側の軍事同盟国によって直接補充されている。彼らは、米国およびNATOと密接な連絡をして、サウジアラビアとカタールで訓練されている。

 CNNによれば、化学兵器の使用にかんして西側の特殊部隊に訓練されてきたのは、またこれらの反乱軍である。

 米国の男女兵士は、毅然としている。「私は、アルカイダのために戦う部隊には参加しなかった。」

 われわれは、「反テロ世界戦争」を遂行するために募集されたのに、いま、政府はアルカイダと進んで協力している。

 下院議員デニス・クシニッチは、「シリアをたたくことは、米国軍をアルカイダの空軍にさせるだろう」と語った。

 国中に広がっている考え方は、オバマ政権がアルカイダを支援しているということだ。

 これは、超党派的なコンセ ンサスである:米国議会の共和党指導部と上院は、シリアのアル・ヌスラ旅団に対する財政援助と支援を支持した。

 世論の目では、反テロ世界戦争は、いわば地に落ちその効力を失った。

●誰が誰を支援しているか?誰が 侵略戦争を仕掛けているのか?

 軍隊における自発的な動きは、「米国政府はアルカイダを支援している」という考えに基づく。

 企業メディアは、ソヴィエト=アフガン戦争に遡るアルカイダと米国政府のあいだに長年続いている関係という実像を明らかにしなかった。

 9・11攻撃の立案者とみなされ同時に「アメリカの外敵」であるアルカイダは、CIAの創作である。アルカイダとその提携者たちは、しばしば「諜報資材」と呼ばれている。

 1980年代初期のソヴィエト=アフガン戦争の発端から、米情報機関は「イスラム旅団」の編制を支援した。

 プロパガンダは、この「外敵」がいかに捏造され、いかに「ナンバーワンの敵」に変貌したかという「証拠を消し」、また真実をかき消して、アルカイダにかんする歴史を消し去ろうとしているわけだ。

 反テロ世界戦争は、「イスラム聖戦」を抑えることに向かって進んではいない。冷戦に引き続く顕著な「イスラム過激派」の育成は、ワシントンの隠されたアジェンダと一致していた。後者(「イスラム過激派」の育成)の本質は、国際テロリズムと戦うというよりむしろ支えることにあり、国民社会の不安定化および諸国家の中に党派的な分裂をつくり出すという目的を持つものなのである。

 数多くのアルカイダ提携部隊は、通常CIAの秘密工作に利用されている。彼らは、CIAおよびサウジアラビア、パキスタン、カタール、およびイスラエルの情報当局者の指揮のもとで、募集され、訓練され、教化されている。アメリカ国民には知らされていないが、ネブラスカ大学で開発された「メイド・イン・アメリカ」の教本で、米国は「イスラム聖戦」の教えを広めた。

 アルカイダは、米国政権の利害に仕え る諜報資材である。

 シリアに関しては、米国政府は「アルカイダを支援」していないのではまったくない:サウジアラビア、カタールで補充し訓練したシリアのアルカイダ傭兵は、「米国政府を支援」している。彼らは、本質的に米軍情報機構に利用されているのだ。彼らは雇われた殺し屋である。

 彼らの活動は、軍事アジェンダの一部として実行されており:彼らは西側軍事同盟の歩兵である。テロリストによって犯された残虐行為は、訓練され教化された準軍事的な直接の結果である。米国政府は、このプロセスの背後にある。オバマは、シリア国民に対して「反乱軍」によって犯された犯罪に責任がある。

●論評の結び

 われわれは、重大な岐路に立っている。「反テロ世界戦争」は、戦争プロパガンダの土台をなしている。だが同時に、この「反テロ世界戦争」を支持する嘘は、もはや信用されていない。またプロパガンダ・キャンペーンの効果も趣旨も脅かされている。

 資金と武器をテロリストに注ぐことに本質がある「反テロ戦争」を合理的に信ずる者は、もはや誰もいない。

 「革命家」のように描かれた「テロリストに対する支援」は、「テロリストを追い詰める」ことを本質とする公式の外交政策アジェンダの一部として布告するわけには行かない。

 だが、オバマは必死になって「反テロ世界戦争」に固執する必要がある。それは、米軍ドクトリンの土台だからである。それは世界を覆う十字軍である。

 「反テロ世界戦争」なしでは、オバマ政権はその拠り所を失う:その軍事ドクトリンは、カードの組み立てのようにいま崩れ落ちている。

 「反テロ世界戦争」の信頼性を凋落させることは、対抗プロパガンダの強力な武器である。

 われわれは、国中の人々に呼びかける:オバマの戦争に反対して結集しよう。

 シリアに対する戦争は、不法で犯罪的だ。

 シリアにおけるアルカイダ支援のための大統領と最高司令官の決定は、米国の反テロ法、および国際法に違反する。

 米国および同盟軍は、アルカイダに属するテロリストに支援することに本質がある、シリアに対するオバマの「人道戦争」で戦うことを拒絶する倫理的法的義務がある。

 大統領であり最高司令官である人物が、国内および国際法のすべての精神に露骨に違反した。したがって、「大統領の命令に従う」と宣誓をさせることは、米国憲法を守るより、むしろ違反するに等しい。

 「とくにもしその命令が憲法およびUCMJ(統一軍事裁判法)に直接違反する場合、倫理的法的義務は不法な命令を出すものに対してではなく米国憲法に対してある。(ローレンス・モスケーダ:米国軍隊には「いかなる不法な命令にも服従しない義務」がある。
http://www.globalresearch.ca/articles/MOS303A.html

 不法な戦争で「戦いを拒否する」ことは、最高司令官の合法性の拒絶を意味する。それはアメリカ国民のために不法で犯罪的な戦争を行使する権限をオバマ政権に与えないということだ。

 アメリカ国民は、不法な戦争で戦うこ とを拒否する米国軍隊の男女兵士を支援しなければならない。

 オバマは、戦争犯罪人である。彼は、自分が雇った殺し屋のテロリストを支援している。化学兵器の扱い方を訓練されてきたシリアの反乱軍が無垢の市民に向けて化学兵器を使ったことは、文書で十分に証明されてきた。

 反テロ世界戦争は、でっちあげであり嘘である。

 戦争は、不法な企てだ。

 ニュールンベルクの判決によれば、究極の戦争犯罪は戦争を開始することに本質がある。オバマとディヴィッド・キャメロン、フランソワ・オランドなど彼のヨーロッパの仲間たちは、その最大の犯罪「平和に対する罪」に責任がある。この戦争は、主権国家の国内問題に介入する国連安保理の決定の有無にかかわらず、違法である。
『すべての加盟国は、その国際関係において、武力よる威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。…。この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。』国連憲章第1章:目的および原則
【国連憲章訳は
http://www.lares.dti.ne.jp/~m-hisa/uncharter/japanese.htmlによる】


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(以上、翻訳終り)
 

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