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大メディア、ソーシャル・メディアによる

ベネズエラ「反政府抵抗者たち」という映像詐欺


 シリアのリビア化ウクライナのシリア化、そしてそれに続くのはおそらくベネズエラのウクライナ化 だろう。以下に掲げる訳文(仮訳)は、今年2月17日に公表された次のGlobal Research誌の記事である。
    Constructing the Deception of the Anti-Government “Protests” in Venezuela: A Photo Gallery
     http://www.globalresearch.ca/constructing-the-anti-government-protests-in-venezuela-through-deceiption-a-photo-gallery/5369165
 写真が中心の記事で文字部分は少ない。しかしこの記事が我々に伝える内容は百万語を費やす論文よりも重いだろう。それが、我々がいま生きている現代という時代の本質を最も鋭くえぐり出しているからである。情報という名の虚構、「表現の自由」と「民主主義」に名を借りた虚構が、国を分裂させ人々の生活を破壊し世界を資本主義寡頭支配の自由なえさ場に変える。『嘘の大名行列』とそれにひれ伏す人々…、そしてそれに続く地獄の軍勢…。 これが「いま」という時代の最も本質的なイメージなのだ。

 いまチャベス亡きベネズエラでは、米欧巨大資本に後押しされるファシスト勢力による内乱化のたくらみが徐々に進行しつつある。2002年のクーデター失敗後にベネズエラからの一時的な後退を余儀なくされた米欧支配層は、北アフリカとウクライナを破壊した後のベネズエラ政権転覆の準備を着々と推し進めているようである。中南米とベネズエラの現代史に詳しくない方は、次の記事を参照してもらいたい。
復刻版:ラテンアメリカに敵対するアメリカ帝国とCIA ―  「尊厳・主権・反戦平和の法廷」(エクアドル)
http://bcndoujimaru.web.fc2.com/fact-fiction/re-CIA_contra_Americalatina.html#benezuera
    (上記中にある項目「ベネズエラにおける尊厳、主権と革命」)
    http://bcndoujimaru.web.fc2.com/fact-fiction/re-CIA_contra_Americalatina.html#benezuera
復刻版: ベネズエラにおけるブッシュ・ファミリーのいかがわしい商売 ― レベリオン誌;エドガー・ゴンサレス・ルイス著
http://bcndoujimaru.web.fc2.com/fact-fiction/re-bushes_in_venezuela.html

 以下の訳文(仮訳)はフェイスブックの画面をコピーした写真画像が中心だが、大昔の(といっても20〜30年前だが)世界のイメージしか持たずいわゆるソーシャルネット・メディアの社会的影響力の大きさを理解できない人にとっては、単にばかばかしいだけだろう。しかしそれを利用する者たちは、それがいかなる兵器にもまして一つの社会を変え破壊していくことを、実戦を通してよく知っている。ベネズエラに関しては以下に紹介するようないかにもラテン諸国らしいあけっぴろげなトンデモ偽情報が飛び交っているのだが、しかしそのようなデマが米欧社会に拡散され、その後に大マスコミによる徹底的な情報攻撃、そして米欧支配勢力による政治的攻撃が開始されるものと思われる。

 基本的には100年以上も前の米西戦争によるキューバとフィリピンの略奪と破壊と同様なのだが、現代では直接の外国軍の派遣ではなく、転覆と破壊を行いたい地域の人間を内側から動かす仕組みが戦争策謀の中心となっている。そしてその人間を動かす力は明確な目的を持った虚実の入り乱れる情報である。その主力部隊は大手マスコミであるにしても、最前線でより幅広く自在に展開する遊撃部隊が、匿名の(あるいは正体不明の)情報発信者によるソーシャルネット・メディアである。その怪しげな情報は無数の一般の人々を通して巨大な疫病のように一つの社会を致命的に弱体化させることだろう。これはもはや「表現の自由」でも「民主主義」でもない。純然たる戦闘行為なのだ。

 こういった新たなタイプのメディアによる「デマ・クラッシー」の効力は、2004年のマドリッド311事件直後に、Eメールと携帯電話のメッセージ機能を活用して最初に確認されている。それはツイッターやフェイスブックといった「新兵器」の登場によって、その後のユーラシアと北アフリカ各地の政権転覆・国家破壊工作を容易にし、いまラテンアメリカで新たな形で展開されようとしている。ベネズエラの国民、特に下層市民たちがこの新たな形の侵略戦争を断固として跳ね返し、嘘の跳梁跋扈を突き崩す覚醒を見せてほしいと願うばかりだ。

(2014年2月24日 バルセロナにて 童子丸開)

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ベネズエラにおける反政府「抵抗者たち」という詐欺の作り方:フォト・ギャラリー
Global Research, February 17, 2014
Dawg's Blog 16 February 2014


 2極分化したベネズエラの政情が、反政府(下にある最初の写真を見よ)【注1】と親政府の勢力が現われてくるにつれて、再びニュースに取り上げられている。現時点では、政府支持者、反政府デモ隊員、警察官、そして正体不明の一人という、4名の死者を出している【注2】
    【注1】http://www.businessinsider.com/r-chavistas-march-in-venezuela-opposition-protests-continue-2014-15
    【注2】http://www.aljazeera.com/news/americas/2014/02/venezuela-anti-government-rally-turns-deadly-2014212195829466475.html
 
 しかし外国の新聞はこれらを政府の残虐な弾圧の証拠として描いているのだ。
 
 以前の、といってもさほど昔ではない出来事を振り返るためではないのだが、このねつ造された危機は再演である。2002年の反ウゴ・チャベス・クーデターにつながったミラフローレス宮殿での巨大な親政府/反政府デモのこと【注3】 は、誰でも覚えているのではないだろうか。
    【注3】http://venezuelanalysis.com/analysis/2336#_ftnref15
『その日には19人の死者を出した。死者のうち7人は親チャベスデモの参加者、7人が反チャベス側であり、5人は無党派の見物人である。同時にこの日、69人の負傷者が出た。38人は親チャベス派、17人が反チャベス派で、14人は報道関係者あるいは無関係の通行人であった。』

 この当時、反対派と世界中の多くの新聞によって、これらの全てはチャベスの罪にされた。彼が軍と正体の知れぬ親チャベス派の暴徒に反対派のデモへ向けて発砲せよと命じたかのように想定されたのだ。最近の騒動でと同じように、政府側は極めて控えめな意図しか持っていなかったように見える。

 ベネズエラのこととなると、国際的なメディアの側には「客観性」のかけらすらなくなってしまう。この国は覇権的秩序に対してあからさまな脅威を与えている。その秩序は近年はラテンアメリカの国々に彩られているが、それは米国を後ろ盾とする軍事独裁政権から現われたものであり、今やお行儀のよいおぼっちゃま・おじょうちゃまのように堂々とネオリベラルの経済政策を受け入れているのだ。全員に対して「ノー!」と言えるだけの豊富な石油の富を持っているので、ベネズエラは自分自身の対覇権協力体制であるALBA−TCP【注4】を作り上げた。 そして国内的には、我々が聞いているのはトイレットペーパーの不足【注5】とインフレ【注6】の事なのだが、数々の方面での何年にもわたる物質的な進歩【注7】が起こってきた。いまや大きく減少している赤貧、教育の向上、幼児死亡数の減少、そして男女平等や衛生や環境保全に向けての急速な歩みが見られる。
    【注4】http://en.wikipedia.org/wiki/Bolivarian_Alliance_for_the_Peoples_of_Our_America_-_Peoples%E2%80%99_Trade_Treaty
    【注5】http://www.bloomberg.com/news/2013-09-27/venezuela-is-running-out-of-toilet-paper-.html
    【注6】 http://www.thedailybeast.com/articles/2014/02/16/is-this-the-end-of-hugo-chavez-s-venezuela.html
    【注7】 http://venezuelanalysis.com/analysis/6646

 あなた方は外国のメディアでそれについてあまり多くを読むことはないだろう。

 逆に、我々は反対派のあらゆる種類の苦痛について耳にし、また同様に、ツイッターで拡散されたり、時にはCNNのような巨大ニュースソースに取り上げられるような写真も手に入れることだろう。ここに何人かの乱暴な警察官がいるのだが、24℃のカラカスの気候から身を守るにしてはずいぶんと素敵な毛糸の帽子と毛皮の襟をつけているように思えるのだが。
【訳注:この"dolar today"と銘打つサイトの記事には、スペイン語で「ボリバル共和国(ベネズエラのこと)の警察は平和的な学生(?ずいぶん頭が薄いが)に対して「我々は平和を望むが、紙を持っていないのだ」というスローガンを叫ぶことを禁止する。2014年2月14日」という見出しが書かれている。どう見ても真冬の東欧の様子にしか見えない。】


 ブルガリアから訪れた警察官らしい。
【訳注:左側のツイッターには「ねえ、あんた。あんたと私は同じベネズエラ人でしょ」と書かれているが、これは実際にはブルガリアで撮影された写真。】
 

 そして負傷者なのだが、
【訳注:下の写真の左側は今年の2月12日の日付があるツイッターの記事で、「SOSベネズエラでの弾圧、緊急、この写真を世界に拡散してほしい」と書かれるのだが…】

 しかしここでの負傷者は親チャベス側のデモ参加者のもので、この写真は昨年撮影された。
【訳注:上の右側の写真は、2013年4月11日の日付のベネズエラのインターネット紙Radiomundialの記事にあるもので、見出しには「反対派による暴力と破壊:6時間にわたる襲撃・略奪は9名以上の負傷者を出し、カプリレス(ベネズエラの反政府派リーダー)がメリダを通る道をつけた」と書かれている。これは昨年4月にベネズエラの反政府派に含まれる極右暴徒が政府の施設を襲撃した事件(ラテンアメリカの多くの新聞で確認できる)についてのもの。左側の写真はこれをそのまま「今年2月の反政府側の負傷者」であるかのように使っている。】

 こちらには、実際にはアルゼンチンで撮影された特に目的も無い写真がある。
【訳注:左側の写真は、2001年のアルゼンチン国家破産の際におっこった殺害に対して何百万人の国民がアルゼンチン政府を訴える、という内容の記事だが、右側のツイッターには全く同じ写真が2014年2月14日の日付で、「いまは恐れを失うときだと人々は言う」と書かれた文章とともに載せられている。】


 こちらにあるのはチリで撮られた写真。
【訳注:右にあるアルジャジーラ・ニュースの写真はチリの学生活動家が逮捕される写真だが、左側のツイッター記事では全く同じ写真の上に「SOSベネズエラでの弾圧、緊急、この写真を世界に拡散してほしい」と書かれる。】


 こちらでは、4月に射殺された不幸な男の写真があるが、これまた現在の反政府運動の間に全く一緒のやり口で使われている。
【訳注:左側のツイッター記事では何年の4月なのかはよく分からないし、この人物が誰で何の事件で死亡したのかも分からないのだが、少なくともいまベネズエラで行われている反政府運動のものではない。右側のツイッター記事には「2月11日」とはっきり書かれている。】


 この写真は実に象徴的だ! しかしCNNは【注8】この画像が実際にはシンガポールで撮影されたことを認めている。
    【注8】https://twitter.com/MexicAnarchist/status/434507504819531776/photo/1
【訳注:CNNはこのカメラマンに至近距離から銃を向けるシンガポールでの写真をベネズエラでのものと偽って報道したようである。】


 こちらはギリシャ発。
【訳注:右側にあるスペイン語版Wikipediaにある「Loukanikos」というのはギリシャ語で「反乱者の犬」を意味するようだ。下記の英語版Wikipediaにも同じ写真が載せられている。左側のツイッター記事には「国内治安軍は犬さえも容赦しない。きっとこの犬はファシスト・ナチだということなのだろう」と書かれている。】
    http://en.wikipedia.org/wiki/Riot_dog


そしてこちらは、エジプトから盗んだ実に恥知らずなものだ:この写真はアラブの春の間に世界中で有名になった。
【訳注:右側の英国ガーディアン紙の写真はエジプトの反ムバラク運動の中で「青ブラジャーの女性」として有名になったもので、それをそのまま使用した左側のツイッター記事には「ベネズエラ国内治安軍は平和的な抵抗運動をしている我々の女性たちをこのように取り扱う」と書かれている。日付は13年4月17日であり、今年に入ってからのものではないが、明らかにベネズエラでの出来事として紹介されている。】

 
 こちらは洗濯かごに入れられる赤ん坊の胸を締め付けるような写真だが、疑問がある。これはどんな種類の革命なのか。この写真はホンジュラスで撮られたものだ。
【訳注:右のホンジュラスの新聞インターネット版の記事は2012年9月8日の日付が読みとれる。写真の上にある見出しには「ホンジュラス人たちは箱に入れられる赤ん坊の写真に怒りを発する」と書かれている。左側のツイッター記事は全く同じ写真を使って「これがベネズエラ…マラカイの中央病院だ。どんな革命だと言うのか?」と書かれる。】


 これは私が個人的に好きな写真だ。宗教的な行進なのだが、反政府抵抗運動の写真に生まれ変わっている。
【訳注:右の写真の上にある黄色い枠の中はこの記事の作者が書いたと思われる文。「反政府は純然たる偽写真か偽造写真だ。このようにして嫌悪をばらまくかまたは自己欺瞞におちいるのだ。」と書かれている。この写真には「無数の人々の行進の後でバルキシメト大聖堂に聖母子像が到着」という説明がつけられている。しかし左側のツイッターの写真には「今日、世界中の目がベネズエラとその自由への歩みの上に注がれる」と書かれている。】


 こんな画像を作るソーシャル・メディアはウイルスとなってCNNのような主要メディアすらも魅惑するのだが、同時に、詐欺師たちがすばやく正体を隠すための手段でもある。読者たちは、この反政府抵抗運動とか「ベネズエラ」と呼ばれる架空の地での政府の暴虐さといった国際的な情報の華やかなパレードに、もっとリンクを広げさせる目的で、招待されるのである。
【訳出ここまで】
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 以下に取り上げる画像は、同じGlobal Researchに載せられた次の記事のものである。
http://www.globalresearch.ca/these-photos-being-shared-from-venezuela-are-fake/5370091
These Photos Being Shared From Venezuela Are Fake
Global Research, February 22, 2014   policymic.com

 各画像には、スペイン語のツイッター記事と、英語によるその翻訳と説明がついている。ここではその翻訳まではしないが、私からの説明をそれぞれに添えておくことにしたい。

 これは2013年にブラジルで撮影された、反政府活動の学生に対して至近距離から催涙弾を発射する武装警官隊の姿を写した写真だが、このツイッター記事ではこれをベネズエラの様子と偽って反政府宣伝に利用している。


 先ほどの翻訳記事にもあったものだが、CNNがシンガポールでカメラマンに銃を向ける兵士の写真をベネズエラでの写真と偽って報道したあとで、すぐに現われたツイッターの記事。 偽情報とそれを見破った記事の両方を見ることができる。


 この逃げる群衆に銃を向ける兵士の写真は2010年のものだが、あたかもいま起きていることのように使われている。もっとも、写真自体は同じベネズエラでの反政府活動を写したものなので、他のツイッター記事よりも悪質性は少ないだろうが。


 次の記事は逆に親政府側の人物からのものだが、2010年の写真を使っている。このユーザーはカラカス市のある区長で、逃げも隠れもできない。しかし彼は、これを現在の事態という書き方はしておらず、ここに書かれている「我々は平和の軍である。ファシストたちはこの国を不安定化を図っているが、我々は平和と命のために戦う。」というスローガンはその当時から叫ばれていたものであり、特に悪質とは言えないだろう。古い写真であることがばれて、あわてて「いやー、ペプシはトレンドなんだ」と言い訳をするところなど、むしろほほえましいと言える。


 これは悪質の極致。何と!シリアでの2012年の集団虐殺の写真をベネズエラの現状として伝え、世界への拡散を求めている。


【以上、写真引用と説明、ここまで】
 

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