このマイケル・パレンティは、日本では知る人が少ないかもしれないが、イェール大学出身の政治学者・歴史学者である。米国で数々の大学教授・講師を歴任し、その著作は日本語を含む数多くの言語に翻訳されている。この「少数者のための民主主義(Democracy
For the
Few)」は彼の代表作の一つである。この作品は米国の国内問題に焦点を絞っているが、国内におけるこの虚構の「民主主義」と国外におけるそれとはぴったりと対応している。パレンティはもちろんその点を十分に理解したうえで国内問題に集中しているのだ。
たとえばパレンティを際立たせる活動は、彼がNATOによるユーゴスラビア攻撃を徹底非難し「スロボダン・ミロセヴィッチ弁護国際委員会(the International
Committee to Defend Slobodan Milosevic)米国支部」の責任者を務めていたことだろう。ここで彼のインターネット・サイトから「スロボダン・ミロセヴィッチの悪魔化(The
Demonization of Slobodan Milosevic)」という論文の一部を覗いてみることにしたい。
『【前略】セルビア人がスレブレンシアで7千人のイスラム教徒を殺したなどと言われるメディアによって膨らまされた話はセル【Louis
Sell:元米国外交官】によって無条件に受け入れられる。最も徹底した調査が国籍不明の2千人未満の死体しか発見していないにもかかわらずである。イスラム教徒によって初期に行われた虐殺はスレブレンシア近辺のおよそ15のセルビア人集落で起こったものだが、二つの英国の通信社などによって報道されたにもかかわらず無視されている。俗に言うコソボでのセルビア人によるアルバニア人殺害では、その数が25万人から10万人、5万人、1万人へと変化し続けたという西側法医学チームの大失態があるのだが、これもまた知らされていないのだ。【後略】
』
(なお、この元ユーゴスラビア大統領ミロセビッチの獄中暗殺に関してはこの記事をお読みいただきたい。)
またこの長大な書評を書いたステファン・レンドマンはシカゴ在住のユダヤ系米国人である。パレスチナやハイチなどに対するイスラエルと米国政府の抑圧政策に反対する活動家、また作家として著名な人物である。彼の書評の特徴は今回の書評を見てもお解りのように、もうそれだけ読んでも本のおおよその内容が解るほどに詳しく長い点だ。この作品にしても「書評」という以上に、レンドマンが「書評」の形を借りパレンティの言葉を借りて、自らの「米国民主主義批判」を展開しているように思える。またこの書評にも出てくるのだが、米国連邦準備委員会の仕組みと働きを暴きだすレンドマンの次の著作にもご注目いただきたい。DIRTY
SECRETS OF THE TEMPLE (by Stephen Lendman)
これはこの国の恥さらしであり、「米国の収容所システム(The
US Gulag Prison
System)」という2006年にこの作者の意味深い著作の副題であったものだ。この題名は祖国での事柄について述べたものなのだ。納税者や放っておかれる母親と子供を含む誰でもが、自分たち自身のためにやりくりするお金を差し置いてこのようなことのためにお金を支払っている。しかし大企業の悪人どもの家族はそうではない。彼らが犯罪を行いもし逮捕されたとしてもほとんど懲役にはならず、もしなっても豪華設備の刑務所であり、刑期も短く支払うことのできる程度の保釈金で早い出獄が簡単にできるのである。
次に、第2次世界大戦と朝鮮戦争への反対者たちがその信条のために逮捕され、そして法に忠実な12万人の日系アメリカ人が米国内にある強制収用所に送られたのだ。彼らの先祖が住んでいた国と戦争中であったためである。彼らの大部分は日本生まれではなかったのだ。弾圧的な法的処置は1798年のジョン・アダムスの外国人・治安諸法(Alien
and Sedition
Acts)にさかのぼる。これはその時代の少数反対派を犯罪者とするものであった。ウッドロー・ウイルソンの諜報・治安諸法はまさに懲罰的なものだった。1940年のスミス法は資本主義に対する反対者を罪人と定めた。また市民権を求めるアフリカ系アメリカ人指導者に対する投獄があった。そして今日、大規模な魔女狩りが登場し、信仰ゆえのイスラム教徒への不法な逮捕がある。さらにラテン系移民への続けさまの迫害があるのだ。NAFTAのような破滅的な貿易協定が彼らの生活を破壊し、祖国で手に入れることのできない職を求めてここに来ることを余儀なくされたのである。そしてここでもまた彼らは、逮捕されて犯罪者として扱われるか、事実上の奴隷として雇用者に無慈悲に搾り取られるしかないのだ。