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【松元保昭氏の翻訳文】
以下は、パレスチナ連帯・札幌の松元保昭氏が、ご自分の通信網を使って公開された、シェーマス・クック著、『ねつ造されたシリアの宗派間戦争』(Intifada Palestine : 08 Jun 2013)の和訳である。翻訳の前に、松元氏からの説明があり、引き続いて英文の和訳が載せられている。(なお、原文にあったと思われるリンクは訳文の上では付けられていない。)

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クック氏の声を、拙訳ですが紹介させていただきます。カルタルッチ紹介後の続報です。

※【訳者注】rebelは、日本では通常、「反政府勢力」「反政府軍」あるいは「反体制派」などと訳されていますが、実態に即して 「反乱軍」としています。


Syria’s Fake Sectarian War

ねつ造されたシリアの宗派間戦争

 シェーマス・クック(松元保昭訳)
 出典:Intifada Palestine : 08 Jun 2013 12:29 AM PDT
http://feedproxy.google.com/~r/intifadapalestine/yTiY/~3/Wmmcbf5pG9Y/?utm_source=feedburner&utm_medium=email

 シリアとさらに広範な中東の運命は、両刃の剣の上に立っている。西側メディアは、中東を血の海にしかねないスンニー派とシーア派のイスラム 教徒同士の宗派間戦争が差し迫っているというたちの悪い警告を発している。このような戦争は、地政学的な理由からねつ造されている完全に人工的な見せかけのものである。もっとも影響力のあるスンニー派であるサウジアラビアおよびカタール―双方とも米国の同盟国―が近ごろシリア政府とヒズボラに対するジハードを要求したとき、彼らのあからさまな意図は、地域におけるイランの重要な同盟国の破壊によってサウジアラビアおよび最も親密な同盟国である米国の外交 政策を後押しすることにあった。多数派であるシリアのスンニー派ムスリムが同国人シーア派とシリア政府を突然攻撃し始めるだろうか?まさか。NATOによって収集されたシリア内外の人道的活動家のデータ資料は次のことを示唆している:
「シリア人の70パーセントはアサド体制を支持している。他の20パーセントは中立と考えられ、残り10パーセントが反乱軍を支持すると表明した。」
 アサド支持の70パーセントは、大部分がスンニー派である。このデータは、シリアで起こっていることについて休みなく集中砲火を放っている西側メディアの偏向報道に明らかに反している。カタールによって昨年収集された前の世論調査はほぼ同じ結果であったし、また西側メディアによっても同様に無視されてきた。

 上の記事は、精通しているデータ・ソースを引用した:
「スンニー派はアサドを好きではない。しかしコミュニティの大多数は反乱から撤退している。残っているのは、カタールとサウジアラビアがスポンサーになっている外国人戦闘員だけである。彼らはスンニー派に、アサドよりはるかに悪いと見られている。」
 シリアのスンニー派は、41人の礼拝者および84名の他の負傷者に加えてシリア・スンニー派の最長老聖職者を殺害したスンニー派モスクのテロ爆撃のように、民族浄化という戦争犯罪の詳細な一覧を含む外国人過激派の行動に、おそらく反感を抱いている。

 最近のサウジおよびカタールのスンニー派指導者によるジハードの要求は、おそらく反乱軍に対して大きな勝利を収めているシリア政府への反応であろう。反乱軍は現在、主にはコミュニティの援助という彼らの基盤を完全に失ったためにひどい負け戦を喫している。

 現在、衰えている反乱軍の奮闘を梃入れするために緊急の行動をとっている別の重要な反乱軍援助者がいる。例えば、米国が反乱軍側とさらに関わりを深くするため、米国の政治家ジョン・マケインが反乱軍―後にテロリストと確認されている―に会うためにシリアを旅しているあいだ、アルカイダ指導者はシリア政府に対する反乱軍援助のためにスンニー派にごく最近の嘆願をした。

 その間、欧州連合が、さらにもっと多くの武器が反乱軍に集中されるようシリアへの武器禁輸措置の引き下げで一致する一方、ニューヨークタイムズは、CIAがシリア内部へのすでに大規模な武器取引計画を強化したことを確認した。

 さらにその上、イスラエルが占領したゴラン高原国境付近でシリア政府を攻撃させることによって、反乱軍がシリア・イスラエル間の絶望的な戦争を起こさせようとしている一方で、フランスは、― 国連代表はまさに事実は正反対であると提案したのだが ― シリア政府が反乱軍に対して化学兵器を使用した証拠を現在もっていると語っている。

 また、カタールおよびサウジアラビアのジハードを支持する宗教指導者たちは、彼らの最近の反ヒズボラの公式宣言で巨大な賭けをしているという関係もある。また、その支えを宗教指導者に大いに依存し、すでにそれ自身ぐらついている体制のうえに政治的な不安定をさらに誘発するリスクもある。

 ヒズボラはまだ、2006年のイスラエルの軍事的敗北をもたらしたがゆえにイスラム世界のいたるところで崇敬されている。また大部分のイスラム教徒は、イスラム教徒多数派のシリアにジハードを揺り動かすことにはおそらく無関心であろう。また、シリア政府とヒズボラを攻撃することは、大部分のジハード戦士にとって理想的な立場とはいえないイスラエルおよび米国との同盟を意味するだろう。

 シリアの火薬庫が大規模な地域戦争の引力の中に容易にロシアおよびアメリカ合衆国と共に周囲の中東諸国を引きずり込むことは、非常にありうることだ。

 もしオバマ大統領が、反乱軍に対する米国の援助を拒否し、地域の米国同盟諸国にも同様に要求するなら、シリア紛争は非常に早く終結するにちがいない。オバマは、シリアの状況を現実として認めるべきであり、自分の国を破壊されたくないシリアの人々の願望を尊重すべきである。

 そうではなく、米国は反乱軍をさらに武装させることさえ検討している。米国上院議員ジョン・マケインは、もしイランを弱体化させるなら過激派のシリア乗っ取りを大目に見るだろうと語ったとき、シリアにかんする非公式の米国政府の政策が明らかにされた。この点で過激派のシリア乗っ取りは、多数国家の乱痴気騒ぎ(オルギー)と暴力の只中にその地域を巻き込み爆発炎上させるあいだ、さらに数百万人の難民と何万人もの命の犠牲を伴うだろう。

 メディアは、見え透いた政治的な意図を知らないふりしてこのようなジェノサイド(大量殺戮)をイスラム教の宗派間暴力のせいにするだろう。 望むらくは、トルコの社会運動が西側にコントロールされた反シリア同盟からトルコ政府を引き離すことであり、同時に他の中東諸国にも同じ様にする権限を与えることだろう。

(以上、松元保昭訳)
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