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マンガでわかる!スペイン経済危機(2)


 これは「エスパニスタン:住宅バブル」の事実上の「第2部」として、アレシュ・サロー・ブラウッ(Aleix Saló Braut:スペイン語版Wikipedia)が2011年に作成した社会風刺マンガです。第1部の「エスパニスタン」と並んで、この「幻想のパティオ」サイトでご紹介している現代スペインの経済危機の成り立ちを、誰にでも分かりやすく描いた作品です。この作品では所々にどぎつい下品な表現も多く使われていますが、現在スペイン人たちが抱いているこの国のあり方に対する感情は、もっと強烈なものです。


シミオクラシア(猿主主義)


 ご覧になる前に、題名のシミオクラシア(Simiocracia)について説明しておく必要があります。これはデモクラシア(Democracia:英語のdemocracyに当たる)のパロディーです。Democracyの「demo-」は元々ギリシャ語で民衆、人民を表すものとされています。ではこのマンガで使われる「simio-」という接頭語は何か?
 スペイン語のsimioは霊長類、要するに猿の仲間の一部門、英語のSimiiformes(真猿亜目)を指すものとされます。お猿さんにほかなりません。つまり、Simiocraciaは、「民」ならぬ「猿」が支配者となる主義、言ってみれば「猿主主義」ということになるでしょう。しかしそんなものが実際にあるのでしょうか。それは以下のマンガを見てからご判断ください。

 この76コマのマンガは以下のビデオを元に作製しました。
https://www.youtube.com/watch?v=wBDmfRR-4Ew
Simiocracia ("Simiocracy") by Aleix Saló - English subtitles - Subtítulos en inglés
 赤文字は絵の説明、黒文字はビデオ音声(スペイン語)の和訳、そして青文字は注釈です。また和訳は、スペイン語文字起こしを元に私が作りました。解説を後ろの方につけておきますので、これもご参照ください。

※ もし画像が出ない場合には、ページの再読み込みをしてしばらく待っていただくか、画像があるはず位置で右クリックして「画像の再読み込み」を選択してください。

【1】
【2】
 
【最初の画面:Aleix Saló, SIMIOCRACIA】 0:17【字幕と猿の絵】
シミオクラシーとは何だ?
その答を知るために、2008年に戻ってみよう。
※ 【2】で、2008年より前の出来事については「エスパニスタン」を参照のこと。

【3】
【4】
 
0:24【銀行員風の男の頭が膨らんで・・・】
ぼろもうけの年月の後で、
0:28【ついに爆発する。】
住宅と金融のバブルが破裂した。

【5】
【6】
 
0:30【2008年。IBEX(スペインの株式市場)が空から地上に落ちてくる。】
株価は暴落し、
0:33【レンガの形をしたMartinsa-Fadesa(スペインの大手土地開発企業)も地面に落ちる。】
Martinsa-Fadesaがスペイン史上最大の倒産劇の主人公となった。

【7】
【8】
 
0:35【Martinsa-Fadesaが地面にめり込んで70億€の数字が煙の中に現れる。右側に損失を被った金融機関の名前。】
それは投資家たちに70億ユーロ(約8千億円)の損失を残したが、債権者の多くが銀行と貯蓄銀行だった。
0:40【震える「B(銀行)」と「C(貯蓄銀行)」の前に、無価値となった建築物が差し出される。】
それらはカネをかっさらわれて、不当に高価な土地と住宅の蓄えが残された。
※ 【7、8】CAJA(カハ)は「箱」の意味だが、スペインの地域経済に密着した「貯蓄銀行」の意味を持つ。名目上は「非営利団体」であり、
  地方自治体が経営陣を指名して公共事業や地域経済振興のための業務に当たるものだが、実質的に銀行との区別はつけ難い。
  不動産開発への投資は、銀行以上に、この貯蓄銀行(Caja)が行っていた。


【9】
【10】
 
0:45【腹痛を起こし下痢状態となるE(経済)。】
経済はガタガタになってしまった。
0:49【INEM(国立職業事務所)。Parados(失業者)の数は2,129,547人(労働省データ)。それが3,128,963人に。】
そしてその年中に、100万人の新たな失業者が、職業事務所に列を作った。

【11】
【12】
 
0:50【「CAMPEONES(チャンピオン)」のマフラーを持つ男。】
「オーレ、オレ、オレ、オレー」
0:55【サッカーの代表チーム、壇上に。】
そう。スペインはサッカー欧州杯を勝ち取って大喜び。

【13】
【14】
 
1:00【オーストリアに行ってカネをもらうサッカー選手。】
特にオーストリアで優勝賞金をもらった選手たちは…。スペインには一銭の税金も入らなかったが。
1:08【2009年。サパテロ首相、500億ユーロ(約6兆円)規模の経済刺激策(PlanE)。80億ユーロ(約9千億円)の公共事業。】
2009年になって、首相はキーシナリオを打ち出し、意欲的な経済刺激策発表した。それには80億ユーロの公共事業費が含まれていた。

【15】
【16】
 
1:16【Re-re-renovaci?n de aceras(歩道の再々改装)、3万8千ユーロの看板の前で、空しい仕事をする男。】
その多くが…、歩道の改装に…使われてしまった。
1:23【ケインズの墓。骨が出てきて叫ぶ。】
経済学者ケインズが墓から現れてきた。
「違うよ!それは!」
※ 【15】実際にこの年には、ほとんど痛んでもいない歩道がバルセロナ市内のいたるところで、何度も掘り返されて葺き直されていた。

【17】
【18】
 
1:28【病気の「E(経済)」。】
不幸なことに、経済は悪化し続け、
1:31【グラフの横にサパテロ。Estado(国家)、Ingreses(収入)、Gastos(支出)。】
国家財政は傾き始めた。

【19】
【20】
 
1:35【収入の上に足されるDeuda(借金、公債)】
そして実は、公債発行という古手のトリックまでが、
1:37【人影の無い国債競売所。Subasta de Bonos de Tesoro(国債の競売)。】
クソ難しくなってしまったのだ。

【21】
【22】
 
1:43【家族の写真。abuelo(おじいさん)、prima(いとこ)。】
もっと悪いことに、我々のいとこ…、
1:46【RIESGO(リスク)。Primaがピストルで自分の頭を打ち抜く。】
リスク・プライムが…、暴発した!
※ 【21】primaはprima de riesgo(リスク・プライム:利子率から算出した公債の信用度で数字が大きいほど信用が低い)との「掛け言葉」。
※ 【22】リスク・プライムの数字が一気に上昇し、国債が売れなくなったことを示す。

【23】
【24】
 
1:50【字幕「Peor chiste ever(史上最悪の冗談)。」】 1:52【2010年。部屋の片隅にうずくまるサパテロ。】
次の年、欧州の指導者たちはサパテロに対して堪忍袋の緒を切らし、・・・

【25】
【26】
 
1:58【電話を取ると犬の吠える声。】
スペインを助けなければならないなどと言いながら、ご親切にもその政策の転換を提案した。
2:02【Ingresos(収入)、Subida Impuestos(税の上昇)、Gastos(支出)。支出を削って増税でバランスをとる。】
そうして調整の政治が始まった。

【27】
【28】
 
2:06【「E(経済)」の背中に「impuestos(税金)」と「recortes(緊縮)」の2本の刃物が突き刺さる。】
経済はクソ無茶苦茶な打撃を受け、・・・
2:11【Parados(失業者)の数字が3,128,963から3,982,368に。】
7月までには失業者の数がほとんど4百万人に達した。

【29】
【30】
 
2:15【チャンピオンのマフラーを持って叫ぶ男。壇上で喜ぶサッカー選手】
「オーレ、オレ、オレ、オレー…」
ああ、そうだ。ワールドカップを勝ち取った…。
2:26【「E(経済)」、「B(銀行)」、「C(貯蓄銀行)」、「crédito(通貨)」。】
実際に経済の流れを阻んだのは、要は通貨の流れの急激な減少、特に銀行システムによるものだったのだ。

【31】
【32】
 
2:33【「B」と「C」から企業に行くカネが止まる。】
企業はひどい目に遭っていた。カネを借りることもできず、行政機関からの未払いは膨らみ、・・・
2:38【企業への「A(行政機関)」と一般家庭からのカネが止まり、「B」「C]から家庭へのカネも止まる。】
おまけに各家庭の消費は自由落下。家庭はクソ低い給料に加えて膨らむ借金に、もう耐えられなくなっていた。
※ 【31】行政機関からの仕事を請け負う業者に対して支払いの未納が積もっていった。その最もひどい実例として、2012年の冬に
  スペイン中の公立学校で電気が止められた(こちらを参照)が、これは自治体が配電会社に料金を払わなかったためである。
  また保健医療の医薬品を売る薬局に支払いが滞っている自治体が多く、その他の請け負い業者も未払いに悲鳴を上げている。

【33】
【34】
 
2:46【住宅価格のグラフ。左から米国、アイルランド、スペイン。】
この状況の中で奇妙なことは、住宅価格が、同様のバブル崩壊が起こった他の国々に比べて、・・・
2:52【スペインのカーブだけがあまり下がらない。質問する男。】
ちょっとしか下がっていない点だ。
「でも、なんで下がらないんだ? ちくしょうめ。」
※ 【34】こちらのグラフを参照のこと。

【35】
【36】
 
2:55【MAQUILLAJE DE BALANCES(収支のお化粧)の文字。その下のDE LA SE?ORITA PEPISは女の子用の人形で着せ替えたりお化粧したりできる。】
いろんな理由があるが、その一つが「収支の誤魔化し」だ。
3:02【「I(不動産開発・建設業者)」。「C」が段ボール箱の家に住む「I」に借金の返済を迫る。】
銀行と貯蓄銀行は借金の返済の代わりに、・・・

【37】
【38】
 
3:05【「I」は「en VENTA(販売中)」の建物を見せる。】
売れ残った建物、膨大な不動産の備蓄を受け入れた。
3:08【Almacén(倉庫)には山のような売れ残りの建物。】
問題は、もしそれらの過大な価格をつけられた売れ残りの物件を処理したいと思っても・・・

【39】
【40】
 
3:11【3百万€の値段の物件)を2百万€で売ると、収支は百万€の赤字。出資者や債権者が押し寄せる。】
売るためにはバブル後の値段を付けなければならなかった。明らかにその収支はマイナスで、その悲惨な会計を債権者や出資者や競争相手の前にさらさなければならない。
3:20【販売中の物件の上に3,000,000€の値段が掲げられる。】
そこで逆に、その売れ残り物件に水ぶくれ価格を付けたままにして、その価格を支えるようにしたというわけだ。

【41】
【42】
 
3:26【「C」と「I」が向かい合って座る。PAGO(支払い)の下にある「2008」、「2009」、「2010」に次々と×が付けられる。】
そして彼らは、この土地開発業者の赤字に再現なく資金をつぎ込み続け、
3:30【「I(不動産開発・建設業)」はInmo Zombies(不動産ゾンビ)に変わる。】
それらをまさに「生ける屍」に変えてしまった。

【43】
【44】
 
3:33【投資が毒物に変わっていく。】
おまけに、ゾンビ化した企業の不良債権のために借金が膨らみ続けたのだが・・・
3:39【「I」と「C」が「Problemón(大問題)」と書かれた岩を、2009年、2010年と蹴飛ばしていく。】
問題を先送りし経済が良くなることを期待して待った。

【45】
【46】
 
3:43【2010年。B(銀行)。C(貯蓄銀行)。Resultados(収支報告)。盲目のBdE(Banco de España:スペイン中央銀行)】
一方で彼らはスペイン中央銀行に対して、世界の金融の中で最高級の収支報告を見せびらかした。
3:48【2011年。やせこけたResultados(収支報告)の姿。】
しかし2011年に全てが崩れ始め
※ 【45】現在、スペイン中央銀行がこの時期の銀行や貯蓄銀行の経営内容をほとんど把握していなかったことが明らかにされている。
  そしてサパテロ社会労働党政権は2010年まで「スペインの経済は強靭であり健全である」と言い張り続けていたのである。

【47】
【48】
 
3:52【「C」と「B」が空から落ちる。】
多くの金融機関が次々と転落し始めた。
3:56【盲目のBdU(スペイン中央銀行)とCNMV(証券監視委員会)がそれらを救い上げる。】
それらは介入を受け国有化され、・・・
※ 【48〜50】については、こちらを参照のこと。

【49】
【50】
 
3:58【融資の点滴を受ける「B」と「C」。】
または緊急融資で援助されなければならなかった。
4:00【「C」同士がくっついて「B」に変わっていく。】
その代わりに大規模な合併の計画を受け入れた。

【51】
【52】
 
4:06【二つの貯蓄銀行が合併して一つの銀行になり、従業員は減らされる。】
合併は結果として従業員数の減少を伴った。
4:08【上にいる幹部の数はそのまま。顔にユーロ札。】
しかし矛盾することに、指導幹部たちの数は維持され、一つのポストが二重三重に配備された。それはおそらく・・・
※ 【52】に関連して、こちらの話も参照してもらいたい。

【53】
【54】
 
4:17【Administraciones públicas(公的機関)、Cajas Ahorros(貯蓄銀行)、Inmobiliarias y Constructoras(不動産開発・建設業者)】
・・・彼らが今までの悪癖、伝統的な三角相姦関係の果実をばらさないようにするためなのだろう。こんなふうな・・・。
4:20【「A]と「C]と「I」の緊密な関係を表す図。右側にはこの3つの卑猥な関係を表す絵。】
「A」は「C」の幹部を任命し、「C」は「I」に投資し、「I」は「A」に選挙戦のための資金を提供する、とか・・・。

【55】
【56】
 
4:30【この3つがますます複雑につながりあう。】
「A」は「I」が参加する開発計画を作り、「C」は「I」の事業に投資し、そして「I」は「A」と「C」を様々に饗応する、とか・・・。
4:39【「愛の天使」が飛んで星が舞う。】
危機が訪れても、この同類内部での親密な関係がそのまま残された。

【57】
【58】
 
4:42【政治家がDeuda Pública(公的債務)を「B(銀行)」に渡し、「BdE(スペイン中央銀行)が「C(貯蓄銀行)」を抱きかかえる。】
誰もほしがらない国債をあなたが買ってくれる・・・。
貯蓄銀行の破滅は私が救う・・・。
4:47【「B」がDEUDA(国債」を受け取り、政治家はそれにAVAL(保証)を付ける。】
国家はあなたの購入した国債を保証する・・・。

【59】
【60】
 
4:50【Alfred SáenzはBanco Santander(サンタンデール銀行)の元幹部で、背任容疑で告発されるが、政治圧力で救われる。】
あなたの幹部を刑務所行きから救ってあげる代わりに、私の党の借金を帳消しにしてくれ・・・、なんちゃって。
4:54【Banco de Valencia(バレンシア銀行)、Jaume Matasは元バレアレス州の知事。】
あなたが拘置所に入らなくてもいいように、私が保証金を出してあげる・・・、なんちゃって。
※ 【59】ではサパテロの社会労働党政権の腐敗の一端が描かれているが、2011年の総選挙で政権党に返り咲いたラホイの国民党の
  腐敗ぶりはその比ではなかったことが、2013年現在で次々と明るみに出されている。
※ 【60】このジャウマ・マタスは元バレアレス州知事だが、彼の悪事については
こちらを参照のこと。

【61】
【62】
 
4:58【「Economía(経済)」の気球が上がり、その下に「Fútbol(サッカー)」、「Autopistas de peaje(有料道路)」、「Sector bancario(金融部門)、「COMS, TRUC, TORAS:すべて土地開発業者名」がぶらさがる。】
他方では、バブル期には異次元的に調子良かったいくつかの部門が・・・
5:02【経済がはじけて落ちていくのに、すがりつくものは小さくなろうとしない。】
何とかしてその理想的な規模を維持しようとして全面的な危機に陥ってしまい、・・・

【63】
【64】
 
5:06【「Liga de fútbol profesional(プロサッカーリーグ)」、7億5200万€の借金を焦げ付かす。】
財務省に支払いをしてもらい・・・
5:08【peaje(有料道路の料金)、rescate(救済)】
国家の救済を求めるはめになった。
※ 【63】スペイン・サッカーリーグ(リガ・エスパニョーラ)のほとんどのチームが大きな赤字を抱えて経営難に陥っている。

【65】
【66】
 
5:10【「A(行政機関)」は「proveedores(請け負い業者)」への未支払いによる「Déficit(赤字)」の金額を、「C(貯蓄銀行)」は「Pérdidas(損失)」の金額を、次々と書き換える。】
(公的機関も金融機関も)そのデタラメな収支の数字を次々とでっちあげていき、・・・
5:13【スペイン中銀、貯蓄銀行、行政機関、銀行、不動産開発・建築業者の間でカネが回り続ける。それを見て驚くMalvados mercados(市場の悪人たち)】
こうして、スペインの公的部門と金融部門は、次から次へとカネを貸し合う返済不能の連続なんてもんじゃないところにまで陥ってしまい、・・・

【67】
【68】
 
5:20【生けるゾンビと化したスペイン各部門の状態を見て、外国人投資家が自分の目玉を抜き取る。】
この生けるゾンビの乱痴気騒ぎを前にして、多くの外国の投資家たちは1セントでも貸すよりは自分の目玉をくりぬいた方がましだと思うようになってしまう。
5:25【国営の職業事務所の前に470万人の失業者の列ができる。】
その間に、失業者数は5百万に近づいた。
※ 【68】2012年最終四半期の失業者数はほぼ600万人に上っている。

【69】
【70】
 
5:28【「Estado(国家)」、「Ingresos(収入)」、「Subida Impuestos(税率引き上げ)」、「Gasto(支出)」。】
そして我々を苦しめるコントロール不能な赤字のために、ますます緊縮財政が厳しくなる。
5:28【BCE(欧州中央銀行)が大量の通貨を注入する。】
そして、我が国の銀行に向けた欧州中央銀行からの膨大な融資にもかかわらず、そのカネの流れがいまだに国の他の部分に向かうことはない。
※ 【69、70】国民も企業(そのほとんどが小規模零細企業)も、度重なる増税と緊縮財政のために塗炭の苦しみを味わっている。
  こちらこちらを参照のこと。

【71】
【72】
 
5:39【2008年から「Problemón(問題)」を蹴飛ばして歩いてきたが、2012年に問題は大きく膨らむ。】
4年間も「問題を蹴飛ばして先送り」し、臭いものに蓋をし続けたものだから、問題は巨大化している。
5:47【ベッドに横たわる「E(経済)」。片手が膨らんですでに壊死状態になっている。】
問題は、適切なときに壊疽を切り取らなかったという点であり、・・・

【73】
【74】
 
5:50【経済の壊死状態が全身に広がる。】
結局、回復を遅らせることになってしまった。
5:52【経済を陰から操る人物】
我々を支配するけしからぬ輩がいて我々の運命を上手に操っていると信じる人もいるだろう。

【75】
【76】
 
6:00【Principio de Hanlon(ハンロンの剃刀)と書かれた石碑。
しかし私はハンロンの剃刀の方につくものだ。すなわち:
《無能で十分説明されることに悪意を見出すな》
6:06【頭を抱える人物がしだいに小さくなって・・・】
気付こう。我々を支配しているのは無能な者たち・・・

【77】
【78】
 
6:12【No!と叫ぶ人物が遠ざかり、猿の「自由の女神」が斜めになって地面に埋まる姿。】
「いやだ〜!」
ほんの猿に過ぎない者たちなのだ。
6:30【終わりの字幕:Aleix Saló, SIMIOCRACIA】


【解説】
 この「シミオクラシア」という作品には、バブル経済の崩壊以後に次々と正体を現していく、猿にも等しい愚か者たちの姿が描かれています。第1部の「エスパニスタン」と続けてみていけば明らかになるのですが、愚かなバブルの夢に浮かれて猿丸出しの姿になっていたのは、実は大部分の国民であり、その国民が支えながらすがっている地方と中央の政界・官界・財界の者たちであり、またそれを様々に煽り立てた情報界(マスコミ中心)の者たちでした。その全員が、愚かさと貪欲さのために、天国に上るつもりで地獄への道を突き進んでいたのです。
 これについてはこの私の記述を参照してほしいのですが、ここで私はこのように書きました。
 『・・・バブル経済の中で夢から夢を紡いでいたスペインは、そのままの姿で紛れもない地獄だったのだ。ただ浮かれている者たちにはそれが見えない。その虚構から醒めたとき、そこにあるのはありのままの地獄でしかない。それでもあくまで虚勢をはり大嘘で自らを飾り、国民を虚構に閉じ込めたままで地獄に突き落とそうと試みるこの国の指導者たちのありのままの姿が、この十年間でむき出しにされた。・・・』

 作者のアレシュ・サローはこのマンガの最後付近【75】コマで「ハンロンの剃刀(無能で十分説明されることに悪意を見出すな)」を語って、いわゆる「陰謀論」を否定しているのですが、私も基本的には彼と同意見です。ただし、私は(たぶんアレシュも)「悪意」が存在していることは認めます。しかしどれほどの悪意があっても、それは、我々の愚かさと無能さがあってこそ、現実化できるのです。人間の貪欲は誰にとっても癒しがたいものであり、条件さえあればいくらでも好き放題に増長しあらゆるものを都合よく動かそうとする悪意として働くものです。そしてその条件を作っているのが、大多数派の人民の愚かさと無能さに他ならないでしょう。そしてその人民が選挙で自分たちの代表を選ぶとすれば、それはもうSimiocracia(猿主主義)に他ならなず、人々はこのマンガの【77】コマに描かれるように「自由の猿女神」を仰ぎ見るわけです。
 このマンガで描かれるように、問題を先送りしながら事態の好転を待っていた必然的な結果として、【72】【73】コマで見るように、もはやどうあがいても手遅れの状態にまで突き進んだわけです。この点についても私はこちら記事で次のように述べました。
 『・・・もちろん「血が足りない」ことを知った時点ですでに手遅れであり、緊急輸血、つまりEUと欧州中銀による資金注入は、単なる時間稼ぎに過ぎない。しょせんどうあがいても助かりようが無いのだが、少なくとも、経済の「病根」についての意識と見識を持っていたのなら、こんな「病」に冒されることなど最初から無かったはずだ。日本人である筆者としては、1980年代後半以後の日本の愚かな経験から学んでほしかったのだが…。こうして、手遅れになってもなおその原因に気づかないような在り方そのものが、手遅れの事態を招いたのである。それがこの国の「原罪」なのだろう。・・・』

 スペインでは、このマンガの【53】〜【55】コマに描かれているように、地方自治体の行政機関や地方経済と密接に結びついた貯蓄銀行(カハ)が、一般の商業銀行以上に、その愚かさと貪欲さの中心にありました。そして【45】【48】コマで「盲目」と揶揄されているスペイン中央銀行や証券監視委員会の無能、土地開発・建設業者の暴走(これについてはこちら)、さらに【14】〜【28】コマの随所に説明される為政者の見通しの無さと無能が、愚かさを10倍にも100倍にも膨れ上がらせました。そしてその様子に、【68】【69】コマにあるように外国の投資家や銀行は一斉にスペインから逃げ出しました。そしてスペインには、上から下まで、救いようの無い悲惨さだけが残されました。こちらこちらで述べられている通りです。

 ところで日本はどうなのでしょうね? 日本経済がいったん破綻をきたしたら、その悲惨さと影響の深さはそれこそスペインの比ではないのですが(そのうえに放射能による緩慢な死が大規模に重ならないことを祈るだけですが)、日本がスペインと同じように、単なるSimiocracia(猿主主義)社会に過ぎないことに、いつ気付くのでしょうか?

 なお、この「Simiocracia」のスペイン語版(字幕なし)は次ですが、
https://www.youtube.com/watch?v=fSu3TeL99LY
Simiocracia con subtítulos en español
 これ以外にも多数のコピーがYouTubeにあふれています。
 また英国BBCがスペイン経済危機の特集を作ったのですが、そのビデオを次のサイトの中で見ることができます。英語が分かる人はぜひご覧ください。たぶん、アレシュ・サローがマンガ動画で説明していることとほとんど同じ内容が報道されていることに、驚かされると思います。
http://www.larioja.com/videos/riojanizate/informe-rioja/2053533582001-this-world-2012-great-spanish-crash.html
This World BBC 2012 The Great Spanish Crash
http://videosdeprimera.es/This-World-BBC-2012-The-Great-Spanish-Crash-subtitulado_v3848
This World BBC 2012 The Great Spanish Crash subtitulado
http://www.bbc.co.uk/programmes/b01pgqpn
The Great Spanish Crash
 次は同じBBC製作によるユーロ危機の特集です。
http://www.youtube.com/watch?v=dyNekAJ6rA8
The Great Euro Crash - 2012


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