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三つのスプートニク記事和訳:

アメリカ「民主主義」による政権すげ替えの時代は終わった!



 この2,3日間にインターネットで配信された三つの注目すべきスプートニク記事を和訳(仮訳)した。スプートニク紙はRTと同様にロシア国家が実質的に運営に当たっている情報誌である。この翻訳を行ったのは、別に私が「ロシア好き」だからではなく、私が欧州に住みながら近年の欧州〜中東〜北アフリカ情勢、特に昨年来の「難民危機」を通して理解し得たものを、これらの記事がおよそ代弁してくれているからだ。

●一つ目は、いま我々が現代史の転換点に立っていることを明らかにする情報である。
The Middle East in the Wake of Paris: The Era of Regime Change is Over(パリ後の中東:政権すげ替えの時代は終わった) 11:00 22.11.2015

http://sputniknews.com/middleeast/20151122/1030529487/middle-east-regime-change-over.html
 第2次世界大戦以後、アメリカによって世界的規模で展開されてきた政権転覆・すげ替えによる覇権の強化と拡大の戦略が、いま崩れ去ろうとしていることを述べている。

 アメリカがCIAの工作で中南米各国のクーデターを引き起こさせ、さらに(または)IMFや世界銀行を使って巧妙で効率の良い帝国主義支配を行ってきたことはよく知られている(参照:当サイト『ラテンアメリカに敵対するアメリカ帝国とCIA』)。冷戦終了後はその政権すげ替えの手口がより巧妙化し、ユーゴスラビア再分割のように内戦を煽り民族自治を装って行われることになった。

 2001年の9・11以後、直接の軍事侵略や介入による政権転覆・すげ替えはアフガニスタン、イラク、ハイチ、セルビア(旧ユーゴスラビア)などで行われた。しかしその一方でそれは、ベネズエラの失敗クーデター、旧ソ連邦内の「カラー革命」や「アラブの春」、「マイダン革命」などのように、あたかもその国の国民の意思であるかのように偽装して行われた。そして特に後者が「自由」や「民主主義」の名のもとに進められたことによって、直接の侵略戦争政策には反対する左翼勢力の多くがマスメディア(戦争プロパガンダ)に誘導される形で政権の転覆・すげ替え作業を積極的に補佐するという、西側世界の大政翼賛体制が作られてしまったのである。

 その果てが多くの国と地域での政治的・社会的・経済的な混乱と破壊である。アフリカ〜中東〜中央アジアで猛威をふるうイスラム聖戦主義集団やウクライナのネオナチ集団はその「民主主義」の果実に他ならない。イラクとシリアを荒らしまくる所謂イスラム国(IS、ISIS、ISIL:アラビア語でDaesh)に武器、カネ、他の必需物資を湯水のように与えて肥え太らせてきたのが、他ならぬアメリカとイギリス、サウジアラビア・湾岸諸国およびトルコであるという事実、ウクライナのネオナチに資金をつぎ込んだのがアメリカのネオコン勢力である事実は、もはや覆い隠すことが不可能になっている。

 ヨーロッパを目指す戦争難民の「民族大移動」は北アフリカ〜中東〜中央アジアへの「民主主義の輸出」の必然的な結果に他ならない。しかしいま、その長年にわたって成功裏に続けられたアメリカ帝国の戦略は、シリアで破綻の時を迎えようとしているようである。

 この記事でもう一つ注目したいのは、イラクで米軍とサウジアラビア、湾岸諸国による爆撃を受けて破壊された村の民家とそこに住む人々の写真だ。このような絶望に駆られた人々の多くがイスラム国に吸収されていかざるを得ないのだろう。アメリカは「イスラム国を攻撃している」と言うが実質的には「イスラム国を人材面で肥え太らせている」という方が正解である。

 そうしてISに組み込まれ殺人道具として育成された果てにロシアやフランスの爆撃で殺される少年少女たちは、まさに哀れとしか言いようがない。もちろんだがカダフィ亡き後のリビアも「IS人材供給基地」と化している。エジプトはその一歩手前で何とか踏みとどまったのだが。そしてこれらの全てに、アメリカとイギリス、サウジアラビア・湾岸諸国、そしてトルコが、全面的にその責めを負わねばなるまい。

●第二の記事は、ロシアの空爆がどれほどの効果を上げているのかに関する情報である。
'The End is Near': ISIL Left With Only 34 Bases Following Russian Strikes.(「終わりは近い」:ロシアの攻撃によりISは34の拠点を残すのみ) 08:52 22.11.2015

 (地中海上空で巡航ミサイルを発射したTU‐160爆撃機に寄り添うSu‐30SM戦闘機)》

 木曜日に、ロシアの対ISIL空爆と地中海からの遠距離巡航ミサイルによる攻撃のためにISが大量の戦死を被ったことが伝えられた。

 土曜日に伝えられたところによると、数百名のイスラム国の戦士がシリアの都市ラッカから逃げ出した。ロシアの戦闘機と長距離爆撃機は最近の数日間にIS戦士たちの要塞と指令センターに対する爆撃を行っている。

《ツイッター記事:
   For our people! For Paris! Pilots and technicians of airbase sent a message to terrorists by airmail 6:40 PM - 20 Nov 2015 (我が国民のために!パリのために! フメイミム空軍基地のパイロットと技術者たちはテロリストたちに航空便でメッセージを送った)》

 同時にまた次のように伝えられた。シリア軍の攻勢が続くラッカの北、シリアのハサカハ地方の南部地域から戦士たちが撤退した。シリア軍はロシアの空爆に支援されている。

《ツイッター記事:
Минобороны России    Strategic aircraft with cruise missiles refuelled at night  (夜間に給油される巡航ミサイル搭載戦略爆撃機) https://www.youtube.com/watch?v=xd9gPk-xT_Q … 6:32 PM - 20 Nov 2015

 アラビア語放送のアル‐マヤデエンTVによると、ISのテロリストたちはその家族と重火器をハサカハ南部の郊外にあるアル‐シャダディの町からデイル‐エッズルに移動させつつある。

《リンク記事:
Syrian Army Advances as Russia Intensifies Air Strikes in Region - Media (メディア報:シリア軍は地域でロシアが空爆を強めるにつれ前進する)》

 9月30日に、シリア大統領バシャール・アサドの要請に応じて、Su‐24MとSu‐34戦闘機を含む50機を超えるロシア空軍機が、シリアにあるイスラム国を標的にする高精度な爆撃を開始した。

 その日早くにロシア議会上院は、外国にあるロシア空軍部隊を戦闘に着かせるというウラジミール・プーチン大統領の要請を、全会一致で支持したのである。

 シリアの駐ロシア大使リアド・ハッダドは、ロシア空軍に支援されるシリア軍の攻撃が、政治的な反対派や一般市民ではなく、テロ組織を目標にして実行されることを明らかにした。


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【第三の記事】


「プーチンの洗練された外交」の結果、EUはロシアとの結びつきを深める
18:47 20.11.2015

 シリアでのテロリズムとの戦いにおけるロシアの活発な努力は、ヨーロッパ諸国がいまやユーラシア経済連合(EEU)とのより密接なつながりを求めるほどに、EUに強い印象を与えている。

《リンク記事:
EC Studies Options for Cooperation with Eurasian Economic Union (欧州委員会はユーラシア経済連合との協力関係を求めるオプションを検討する)

 欧州委員会のジャン・クロード・ユンケル委員長は、ロシアとのより密接な貿易関係を求めた。

 Deutsche Wirtschafts Nachrichtenによると、最近ユンケルはロシア大統領ウラジミール・プーチンに手紙を書き、EUとEEUの間の貿易面でのつながりの深化が、ヨーロッパ諸国にゆだねられていること、およびウクライナの和平プロセスに歩調を合わせるべきものであることを語った。

 この記事によれば、ユンケルは欧州委員会の委員達に、EUとEEUの間のより深い協力関係を確立させる可能性について検討するように命じたのである。

 ユーラシア経済連合は、ロシア主導の経済ブロックで、アルメリア、カザフスタン、キルギスタン、ベラルーシが参加している。

 その記事は「それらがプーチン大統領の洗練された外交の最初の果実である」と書いた。

 EUは初期には対ロシア経済制裁に加わらざるを得なかった、と記事は述べる。

 制裁措置はロシア同様にEUに深刻なダメージを与えてきた、と著者は書く。フランスは最近、モスクワが「イスラム国(IS)テロリスト・グループに対する戦いでの唯一の信頼おけるパートナー」であることが明らかになったため、対ロシア経済制裁の解除を呼び掛けた。

 シリアでのIS戦士たちに対するロシアの断固たる軍事作戦が、「何カ月も続く冷戦にも似た状態」に従ってきたブリュッセルがEEUとのより密接なつながりに方向を変えるほどに、EUに強い印象を与えたのだ。このように著者は強調した。 

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