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明らかに示される「難民問題」の真の解決法

シリア難民がアレッポに帰還中(RT記事和訳)


 ヨーロッパでは相変わらず地中海を渡ってくるアフリカと中東などからの「難民」の大波が押し寄せている。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のデータによると、今年に入ってから8月11までの間に118523人の「難民」がイタリア(96853人)、ギリシャ(12440人)、スペイン本土(8700人)に到着した。ただし、アフリカにあるスペイン領のメリジャとセウタに入り込んでまだヨーロッパ大陸に入っていない者を加えるなら、スペインへの違法入国者は12160人に上る。この数字は昨年同時期を113%も上回っているのだ。

 スペインに入り込む「難民(不法移民)」の大部分はサハラ砂漠以南の黒人国からのものだ。堅実で自立した国民国家を作る気も能力も持たない西側帝国主義の傀儡支配者たちに苦しみ、欧米企業によって産業基盤の芽を奪われ社会を破壊され、干ばつなどの自然災害に悩まされ、西側帝国主義の傭兵であるイスラム聖戦主義者のテロに脅かされたあげく、自国での生活に一切の希望を失った人々である。北アフリカ、東アフリカからの密航者たちも同様だろう。

 スペインへは多くがモロッコ経由でやってくるのだが、イタリアへはリビア、チュニジア経由、ギリシャへはトルコ経由で来るのが普通だ。彼らは多額の密航費用を各国のマフィア組織に払って命がけで海を渡る(今年前半の死亡推定数は2420人)が、ヨーロッパ側で「人道主義」を掲げ「難民受け入れ」を主張するNGOがその密航を手助けしている(参照:田中ニュース『欧州の難民危機を煽るNGO』)。もちろん各国政府とマスコミによる黙認や奨励的態度がこの21世紀の「民族大移動」をますます激しいものにしている。この難民の原因を作り(または手を貸し)大移動を推し進めている者たちは、伝統的なヨーロッパの社会と文明が滅亡するまでそれを続ける気なのだろう。(参照:当サイト記事『現在進行中 2005年に予想されていた現在の欧州難民危機』)

 先日私が当サイトにアップした記事『カネ!カネ!カネ!:市民生活を押し潰すネオリベラリズム』でも書いたことだが、ヨーロッパの伝統的な社会と人々の生活が、貨幣神崇拝者とその手先どもの手によってなし崩し的に破壊されつつある。そしてそこに、言語も宗教も習慣も様々に異なる生活のあてもない膨大な数の人々が押し寄せる。おそらくそう遠くない未来に再び金融市場の崩壊と大混乱が起こるだろうが、今までの「バブル崩壊」とは少々異なる様相を示すことになるだろう。自国民を含む多国籍・多民族・多言語の大量の失業者の群れ、あらゆる人間的な境遇から根こぎされた人間の群れが、ヨーロッパの街頭に溢れるのだ。

 この「難民危機」すなわち強制的民族大移動の解決方法は一つしかない。アフリカや中東の人々が自分の故郷を離れなくても生きていける状況を作り出すこと、それだけである。他に解決の道は無い。この点に関連して、今回は以下のRT誌記事を和訳(仮訳)した。 
https://www.rt.com/news/399414-syria-refugees-return-home/
Yes, Syrian refugees can return to Aleppo… and do so in their 100,000s (Published time: 12 Aug, 2017 14:43)
 この記事には、戦乱で破壊され荒れ果てたアレッポに戻っていく人々について書かれている。アレッポについては 当サイト記事「アレッポの解放:一つのターニングポイント」を参照のこと。RTらしくロシアを持ちあげてはいるが、平然と「毒ガス」などの(チョンバレ)偽ニュースを流す西側の報道よりはまだしも信頼がおけそうだ。

  国連オブザーバー資格を持つ機関the International Organization for Migration (IOM:国際移住機関) が2017年8月11日に発表したところによると(「Over 600,000 Displaced Syrians Returned Home in First 7 Months of 2017」)、シリアで難民となった人々のうち2017年の1月から7月までの間に60万人が自分たちの故郷に戻っている。もちろんこの記事にもある通り新たに(+再び)難民となる人の数の方が多いうえに、戻っても破壊された住宅とインフラ設備、不備な水や医療などの都市機能などに苦しまなくてはならない。

 難民となった人々を救うためには故国の平和と安定、街と産業の再建が何よりも急務だが、アメリカやヨーロッパでこの点に声を上げる人や団体が無い(あってもメディアがかき消す)のはどういうことか? 中東やアフリカを荒れ果てたままにしておいて「こっちに来いや」はないだろうと思うのだが…。それを「難民救済」だと思っている人々の脳みそは、もうゾンビ状態だとしか言いようがあるまい。手の打ちようがない。


2017年8月15日 バルセロナにて 童子丸開

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《引用・翻訳開始:斜体部分は原文に従ったもの》

そう、シリアの難民たちはアレッポに戻ることができる
 … 実際に何十万人もそうしている

公開日時: 2017年8月12日14時43分

写真(https://cdn.rt.com/files/2017.08/original/598f06d4dda4c8692f8b4567.jpg
【キャプション:アレッポのSheikh Maqsoud地区の戦災に見舞われた場所で見受けられた一人の少女、Syria. © Omar Sanadiki / Reuters】


 アレッポは昨年12月にダマスカス政権によって反乱者の手から奪い返された都市だが、2017年には故郷に戻るシリア難民たちの主要な目的地となっている。シリアでの帰還者の数は国連によると優に60万人を超えている。

 2017年の最初の7ヶ月間にわたって60万人を超えるシリア難民たちがその故郷に戻ったと、国際移住機関(IOM)がこの金曜日に、国連の移住機関とその現地の協力機関による数字と共に自らの数字を示しながら語った。帰還者たちの大部分は国内での避難民だが、その16%は他国からシリアに戻ったもので、主要にトルコからである。その数は2016年の1年間に記録されたものにおよそ匹敵する。

 帰還者の推計67%が政府にコントロールされるアレッポ自治区に向かったが、その首都であるアレッポ市がその主要な目的地である。ICOによれば、相当数の難民たちが向かったその他の地域の中に、クルドに支配される北東部のアル‐ハサカー自治区がある。

 アレッポ市は、紛争の以前にはシリアで最大の都市だったが、昨年ロシアに援助された政府軍によって奪還され、12月半ばに戦闘は終了した。そこはそれ以前の何年にもわたって、一方は政府軍に、他方は強硬な聖戦主義者を含むバラバラの戦闘グループによって掌握された、二つの部分に引き裂かれていた。この都市での戦闘は停戦協定によって終了したが、それは残っている反乱勢力とその家族をアレッポ市から離れてイドゥリブ地域に行くことを許すというものであり、イドゥリブは現状では反乱の砦としてとどまっている。

 その以前にシリアの故郷に戻る難民の数が増え続けていることは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によって報告されていた。それによると、国内で避難民となった44万人を超える人々と外国で難民となった3万1千人が、2016年の最初の6カ月間に帰還した。アレッポおよびハマ、ホムスとダマスカスのような政府支配地域が帰還者たちの目的地として取り上げられた。

 「今年になって現在までに目撃された帰還を考慮し、そして国内での避難民の帰還や、早晩、外国での難民たちの帰還者数が漸進的に増加することに照らしてみて、UNHCRはシリア国内での作業能力の規模拡大を開始している」とその機関(IOM)は述べた。

緊張緩和(De-escalation)作戦が機能する

 IOMによれば、この状況はバラ色とはかけ離れている。2017年に自分の故郷を離れざるを得ない人々の数はいまだに帰還者の数を超えており、80万8千人と推定される人々が追い出されている。2016年と2017年に帰還した人々のおよそ10%が、再び故郷から逃げ去る結果に終わっている。
Youtubeビデオ 「アレッポを信じる」:シリア人たちが奪還された都市で除幕される感動的な記念碑として歓喜の声を上げる】

 帰還者たちのほぼ20%が食料供給を確保できず、水と医療サービスへのアクセスが約60%の人々にとって問題になっている。シリア戦争の破壊は民生用インフラに刻まれている。

 一部の人々にとって帰還することはおそらく間違いなく悪い選択肢中の最善のものだろう。難民たちは難民収容所にとどまるよりは母国の不安定さの方を好むのかもしれない。収容所では難民たちは援助の不足、失業、受け入れ国による虐待、そして改善への期待の全面的欠如に直面するのだ。このことは、より裕福で安全なヨーロッパのような場所に何とかたどり着いた者たちにとってすら真実なのかもしれない

 一部の人々には何の選択肢もない。シリアの戦闘集団によって結ばれた取引の一部として立ち去ることを強制されたからである。

 それでもなお事態を見守る者たちは、ロシア、トルコとイランの後ろ盾でシリア政府によって執られる緊張緩和の作戦に対する希望のしるしが全体的な傾向として現れていると信じる。

 「イランとトルコの間に深刻な相違があるにもかかわらず、ロシアは地域的な問題で全員を席に着かせることでこのことに重要な役割を果たしている。」シリア情勢のアナリストであるカマル・アラムはこのように信じている。

 「モスクワは、緊張緩和を調整しシリアに安定をもたらすよう、成功裏に両者を説得している。ロシアの軍警察と外交手腕の結びつきもまた、シリアのクルド人たちや様々な反政府派の集団に対して信頼感を与えポジティブな役割を果たしている。
ホムス緊張緩和地域の地図 © Ministry of Defence of the Russian Federation

 この作戦は、異なる党派の支配下にあるシリアの地域の間に明確な境界を確立させることによって、対立を和らげることに焦点を置いている。このことが最終的には6年間の紛争に政治的解決を見出すことにつながるだろう。そして多くのシリア人たちにとって明らかに、近隣での戦闘が存在しないことが、反乱者たちがダマスカスとの間に持ついかなる相違よりも重要なものなのだ。アラムはこのように信じる。

 「6年間の戦争と不安定の後で、多くのシリア人難民たちは以前に[バシャール・]アサド大統領のもとで持っていた安定を切望しており、故郷に戻りつつあるのだ。」彼はこうRTに語った。

《引用・翻訳ここまで》
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