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和訳:ヴァルダイ会議でのプーチン演説(2)

西側が誤魔化し置き去りにし続ける諸問題


 いわゆるイスラム国(ISIS、ISIL)は、13日の金曜日にパリで129名の死者と多数の負傷者を出す大惨事を引き起こし、そのテロリズムは本格的に欧州大陸に上陸してきたようである。そしていまヨーロッパでは、まるで9・11直後のアメリカを思わせるような戦争キャンペーンが繰り広げられている。「テロリストのパスポート」が現場に落ちていた? 14年前のマンハッタンでも同じことが言われた。不吉だ。TV画面には「戦争」の文字が溢れ、各国は国内の「戦時体制」を強化・完成させるとともに、否が応でも中東と北アフリカの戦場に押し流されつつあるように見える。平和で調和のとれたヨーロッパはもう二度と戻ってこないのだろう。

 不満に凝り固まる者や何らかの宗教や思想の狂信者は、いつの時代にもどの国にもいる。それがスッカンピンで包丁かこん棒以上の武器を持たず、大声で叫ぶよりましな宣伝道具を持っていないうちは、せいぜい横町で殺傷事件を起こすくらいで終わるのだ。この狂信の「源」を追及することなど風邪の病原体を探す程度に無益なことだろう。病原体がいても身体が健全なら風邪をこじらすことはない。

 最大の問題は、このいかれた連中に大量の武器と大量の物資と大量の資金を与えて肥え太らせたのは誰か?この「病原体」に思うがままに世界を支配できるかのような万能感を持たせたのは誰なのか?ということだ。スペインのTVニュースで、オバマやキャメロンに加えてあのエルドガンまでが「哀悼の意」を表しているのを見て、思わず吐き気を覚えた。シリアの現状をアサド「独裁」政権の責任に転化する西側キャンペーンの発信源にもまた、嫌悪と嘔吐感以外の何も感じることはない。この連中の手と口は、シナイ半島で空中に散ったロシア国民と、銃弾や爆弾で倒れたパリ市民の血で、真っ赤に染まっている。

 さて一方の「難民問題」だが、11月9日になってスペインにも「難民」の第1陣が送り込まれた。しかしその人数はわずかに12人で、イタリアからまわされたものだ。その11人はエリトリア人で1人がシリア人だった。最初は19人の予定だったのだが、エリトリア人7人がドイツ行に固執してスペインに回されるのを拒否したためこの人数になったらしい。ある意味情けない話だが、スペインがいまだに失業率が22%を超え国民すら自国の将来に希望を感じられないような国であることなど、世界中の誰でも知っている。

 彼らはバスク州やバレンシア州、マドリッド州などに分かれて引き取られるらしい。たぶん、これは手続きや取り扱いについての「テスト」で、今後次々と「難民」が到着するのだろう。スペイン政府は9月におよそ1万5千人の受け入れを発表したが、いずれは到底そんな数では済まなくなるだろう。
新聞によると 国と自治体に対してEUから「難民」一人当たり1年間に6千ユーロ(約79万円)が支給されるという話だが、それで衣食住に加え医療や教育などにかかる費用が賄えるわけもない。もちろんだが、彼らが手にできる職などスペインにあろうはずもない。

 彼らを「生かしておく」費用は結局その国と自治体が受け持つことになる。しかしこんな貧民層を大量に抱える国の、また緊縮財政のために削られまくった予算の、どこにその余裕があるのか
? EUのカネにしたところで各国からの出資、つまり各国民の税金なのだ。ますます肥え太る富裕層や中産階級はともかく、ぎりぎりの生活すら脅かされつつある下層の勤労者たちにとって納得できるものなのか? しわ寄せを受けなければならない下層のスペイン人が将来的に「難民」に対して抱くだろう悪感情を、一方的に「排外主義」などと呼んで罵倒する人々がいるとすれば、それは単なる「高みの見物」人なのだろう。
(参照:当サイト『
ノンストップ:下層階級の生活崩壊』)

 これらの「難民」たちの将来はどうなるのか、という点こそが最も中心的で最も重大な問題である。ヨーロッパに最下層の低賃金労働者として定住することになるのか? あるいは故国に平和と安定がもたらされる中で国と社会の再建のために戻ることができるのか? これこそが、現在の北アフリカ〜中東〜中央アジアでの戦争と危機的状況の根源を、最も鋭くえぐる疑問なのだ。

 
EUもアメリカも国連も、西側のマスコミとジャーナリズムも、学者や知識人たちも、この点には決して触れない。「右翼」も「左翼」も、「人権」を盾に取る者たちも、それについてだけは沈黙する。こうしてその者たちはいまの怪奇な戦争キャンペーンを全力で補佐している。そんな者たちの言うことなど、私はいっさい信用する気になれない。(ただし、13日のパリでの事件が「難民問題」の方向を変えるかもしれない。すでにドイツはアフガニスタンの「難民」がヨーロッパに向かうのを諦めさせるキャンペーンを打ち出したようだ。それが他の「難民」にも拡大され、また他のEU諸国がこれに倣う可能性が考えられる。)
(参照:当サイトより)
   『
イズラエル・シャミールが10年前に予告していた! 現在欧州の「難民危機」とは何か?
   『
プーチン:国連総会の演説で、難民危機の元凶「民主主義革命の輸出」を糾弾
   『
難民たちが故国に戻れる日は来るのだろうか

 一方でロシア政府とロシア・マスコミは、この「難民」の根本原因とその解決策について最も的確に指摘している数少ない機関の一部である。私は別にロシア好きでもロシアに肩を持つわけでもないが、少なくともこの点についてだけは賛同できる。前回私は『
欧州の難民問題に対して示される唯一の解答は? 』の中で、ロシア大統領ウラジミール・プーチンのヴァルダイ会議での演説を和訳(仮訳)してご紹介した。

 原文として使用したのは以下のクレムリンから公開された記事である。
Meeting of the Valdai International Discussion Club

Vladimir Putin took part in the final plenary session of the 12th annual meeting of the Valdai International Discussion Club.
October 22, 2015   20:45   Sochi
http://en.kremlin.ru/events/president/news/50548

 その後半にある質疑応答の部分を翻訳(仮訳)したので、以下にご紹介したい。複数の出席者からの質問に答えるプーチンの言葉である。内容は多岐にわたり、その多くは西側でも一度やそこら報道されたことがあるだろう。しかしそれらは、西側メディアではほとんど反芻されることなくプロパガンダ情報の山に埋もれさせられた、言ってみれば西側が誤魔化し置き去りにし続ける現代世界史の中心的な問題点だ。

 プーチンはおそらく世界史上最高レベルの政治家の一人である。そして、有能な政治家である以上は当然なのだが、その言葉は極めて明快であり率直であると同時に、バランスのとれた現実感覚に溢れたもの、言い換えると多くの含みや裏面を備えているものである。この点は読む側が常に冷静に意識しておくべきだろう。なお、必要と思われる訳者からの注釈を《注記: 》 の形で訳文中に記しておいた。


2015年11月15日 バルセロナにて 童子丸開

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ヴァルダイ国際討論クラブ
ウラジミール・プーチンがヴァルダイ国際討論クラブ第12回年次総会総括会議に参加
2015年10月22日 20時45分 ソチ

【後半:質疑応答部分】

<出席者からの発言> 《注記:出席者の中に、元駐ソ連アメリカ大使ジャック・マトロックJrがおり、以後しばらくのプーチンの発言は彼の発言に対する返答。》


ウラジミール・プーチン:
 まず第一に、ご発言をいただいた全ての方々に感謝いたしたいと思います。ご発言の全てが本質を突いた興味深いものだったと思います。そして、我々の討議が味気ない話ではなくスパイスの効いた内容豊かなものであるのを知って、とても喜んでおります。

 今は遠い過去を突きまわるのは止めておきましょう。ソヴィエト連邦の崩壊で誰が非難されるべきかという話になると、私は、もちろん国内的な理由が最初のものだと思いますし、その意味で大使閣下《注記:ジャック・マトロックJrを指す》が正しいと思います。以前のソヴィエト連邦の政治・経済のシステムの非効率性が国家崩壊の主要な原因でした。

 しかしそのプロセスに誰が手を貸したのかということはまた別で、私は、地政学的な敵対者がのんきに見物していたとは思いません。しかしいずれにしても内政的な理由が最大原因でした。私の理解によりますと、大使閣下は以前は遠くから私と議論をしておられました。そして今はここで対面させていただいておりますが、閣下がそれについてお話になったときに、私とは異なり、ソヴィエト連邦の崩壊が20世紀最大の悲劇の一つだったとお考えではありません。私から申しますと、私はそれが悲劇、特に人道的な悲劇だったという考えに固執し続けております。これが私の申しておりましたことです。

 ソヴィエトの崩壊は2500万人のロシア人を国外に置き去りにしました。これはまさに一夜のうちに起こったことであり、彼らには何の相談も無かったのです。私は自分の主張を繰り返します。ロシア人たちは世界最大の分裂国民となったのであり、このことは疑う余地もなく悲劇でした。それは言うまでもなく社会経済的な次元のものです。ソヴィエトの崩壊は社会システムとそれと共にあった経済を引き倒しました。もちろん古い経済はあまり効率的ではありませんでした。しかしその崩壊は何百何千万の人々を貧困に放り込み、それもまた、個々の人間と家族にとっての悲劇だったのです。

 いま、攻撃用戦略兵器制限交渉を続けることへの疑問について、その対話を続ける必要があると言うことは正しいのです。しかし同時に私は、ロシアとアメリカ合衆国がそれについて何もしてこなかったと言うことはできません。我々は実際に、戦略兵器を制限するための新たな条約を結ぶ決定を下し、この種の兵器を制限するための目標を設定していたのです。しかしながらアメリカによるABM(弾道弾迎撃ミサイル制限)条約からの一方的な撤退が、この全てのシステムを深刻で困難な状態にしてしいました。このABM条約が力のバランスと国際的な安全保障を保つための鍵を握るものだったのです。

 ここが討論クラブだから申しますが、この見地から、私は大使閣下に、アメリカのABM条約からの一方的な撤退についてどのようにお考えなのか、お尋ねしたいと思います。

ジャック・マトロック
:私はその撤退には個人的には反対でしたし、あなたのご見解を採用することにいたします。私は、そういった展開の後に続くいかなる計画もロシアのシステムに脅威であった、あるいは脅威であり得たとは、考えていないと申し上げたい。しかし一般的に申して、私はABMシステムを支持するものではありません。私は、その主要な源泉がロシアに脅威を与えるためのものではなくアメリカ合衆国の雇用を確保するためであると考えていると申し上げます。軍産複合体とそこで雇用される人々から多くのものが来るのです。

ウラジミール・プーチン
:大使閣下。私はあなたのご見解が説得力を持つと思いません。私はあなたのご経験と外交的な技量には最大限の尊敬を払っております。それによってあなたは、直接的な解答を避けつつ、我々に非の打ちどころのない論証をお示しになります。さて、あなたは私の疑問にお答えになりました。しかしいくつかの補飾すべきものが欠けております。

 誰でも、その職業活動の結果として全人類に脅威を与える場合には、それを作るべきではありません。そしてもし新しいミサイル防衛システムの発達が職を生みだすのなら、どうしてこの特定の領域の中にそれを作るというのでしょうか? どうして、兵器生産とは無関係の生物学、薬学、あるいはハイテク分野の中に職を作らないのでしょう?

 それがロシアに脅威をもたらすのかどうかという問に対して、私があなたに保証できることは、アメリカの防衛・戦略兵器のスペシャリストたちがこれをロシアの核武装能力をまさに脅かすものであると、そしてこのシステムの全目的がアメリカ合衆国自身を除くすべての国々の核武装能力をゼロにまで引き下げることであると、十分に気付いているという点です。我々はこの間ずっと、イランの核の脅威に関する議論を聞き続けてまいりました。しかし以前に私の指摘の中で申しました通り、常に我々の立場はそのような脅威は存在しないというものでしたし、いま我々だけではなく国際社会の全体がこの見地を共有いたしております。

 アメリカ合衆国はイランの核問題解決についてイランとの合意の調印作業を開始しました。我々は、共同の決定に至る筋道に関して、積極的にアメリカとイランの我が同職たちを後押しし支持しました。そしてこの合意はいまや効力を持ちイランは国外に濃縮ウランを送り出すことに同意しております。そこでイランの核問題が存在しなくなっているのに、なぜミサイル防衛システムの進展があるのでしょうか? あなたはその計画を止めることができましたが、しかし計画が止まらなかったばかりではなく、新たなテストと実験が行われつつあります。これらのシステムは本年末までにルーマニアに、そして2018年か2020年までにはポーランドに、配備されるでしょう。

 私があなたに申し上げることができ、またスペシャリストたちが知っているように、そのミサイル防衛配備地区は、誘導ミサイル攻撃システムを配置させるのに有効な形で利用できます。これが我々に対しての脅威を産み出さないのでしょうか? もちろん産み出しますし、それは国際的な安全保障の哲学自体を変化させます。もし一つの国が、いかなる攻撃や反撃からも自国を守るようなミサイル防衛シールドを作り出したと考えるなら、その国は望み通りのいかなるタイプの兵器をも自由に使用できる力を持つでしょうし、それこそが戦略的なバランスを揺り動かすことになります。あなたは過去に兵器についての交渉に従事しておいででした。そしていくつかの目覚ましい成果を成し遂げられております。それに関しては、私はむしろあなたに脱帽し称賛することができます。あなたと、ロシアにいるあなたの同職たちは、いくつかの偉大な成功を収めてきました。しかし、ただいま起こっておりますことは間違いなく我々を不安にさせます。私は、あなたからその点について心からの同意をいただけることと確信します。根本的な点としてですが、あなたがアメリカ合衆国の一方的なABM条約からの撤退を支持しなかったとおっしゃったときに、その点を同様にお認めになったわけです。

 さて、ウクライナのテーマについて、そしてそれが我々にとっても危険を産み出しているというお考えについてですが、そう、もちろん危険を産み出しておりますが、この状況を作ったのは我々でしょうか? ヤヌコヴィッチ氏が選挙で敗れユシチェンコ氏が権力の座に着いた年《注記:2004年に行われたウクライナ大統領選挙》のことを覚えておいででしょうか? 彼がどのようにして権力の座についたのかをお調べください。それは3回の投票を通してであり、このことはウクライナ憲法の規定にすらないものです。西側の国々は積極的にそれを支持しました。これは憲法に対する完全な違反でした。これはどんな種類の民主主義なのでしょうか? それは単なるカオスです。彼らがいったんそうするや、少し前にウクライナで起こった政権の変化とクーデターに伴って、はなはだしい形で何度も繰り返しました。

 ロシアの立場は、我々がウクライナ国民の選択に反対するというものではありません。我々はいかなる選択をも認める用意があります。ウクライナは我々の目にはすばらしい兄弟的な国であり、兄弟的な国民です。私はロシアとウクライナの間にいかなる差異をも作りません。しかし、我々はこの政府取り換えのやり方には反対します。それは世界中のどこででも良いやり方ではなく、ソヴィエト後の地域の中で全く受け入れがたいものです。そこでは、正直に言いまして、旧ソヴィエト共和国はいまだ国家としての在り方の伝統を作っておらず、いまだ安定した政治システムを発展させておりません。その状況の中で、我々は発展を手助けするために為すべきことに非常な注意を払う必要があります。我々はそのときこの、憲法に反する3回の投票の結果として権力の座に着いた人々とすら共に作業する用意がありました。我々はユシチェンコ氏やティモシェンコ氏と共に仕事をしました。彼らが完全に親‐西側の政治家であると認識されていたにもかかわらず、です。わたしはこの親‐西側というのは一般的には必ずしも正確な分類法ではないと思いますが、しかし彼らはそのように見られていました。我々は彼らと会い、キエフに行き、またロシアに彼らを迎えました。確かに、我々は時には経済的なことで厳しい議論を戦わせましたが、それでも一緒に仕事をしたのです。

 しかしクーデターに直面するとき我々は何をするように期待されるでしょうか? あなた方はここでイラクやリビアを作りたいのでしょうか? アメリカの有力者たちはウクライナに何十億ドルも資金をつぎ込んでいる事実を隠そうともしません。彼らは直接に公に反対勢力を支援するのに50億ドルを費やしたと語っています。それは正しい選択でしょうか?

 我々の同僚の一人は、アメリカがロシアで政治システムと政府を変えようとしているかのように物事を解釈するのは間違っていると言いました。その主張に賛同することは私には困難です。アメリカ合衆国はウクライナに関する法律を持っていますが、それは直接的にロシアについて語っています。そしてこの法律は、その目的がロシア連邦の民主化であると述べているのです。もし我々がロシアの法律に、我々の目的はアメリカ合衆国を民主化することであると書くようなことがあったとするならば、どうか? 原則として我々はそうしてもよいわけですが、それがなぜなのか説明させてください。

 これには根拠があります。誰でもご存じのことですが、アメリカの歴史の中で一人の大統領が、選挙人団のメンバーの多数派の投票で権力の座に着いたにもかかわらず直接選挙での投票者の中では少数派であった、という場合が2度ありました。これが民主主義でしょうか? いいえ。民主主義は人々の権力、多数派の意思です。投票者の少数派だけによって誰かを国家の最高機関に据えることがどうしてできるのでしょうか? これがあなた方の憲法の問題点です。しかし我々があなた方にご自分の憲法を変えるように要求することはありません。

 我々はこのあらゆる点について永遠に議論することができるでしょうが、もし、そんな類のことを国内法に書き、他国内の反対派に資金を与えるような国家があるとすればどうでしょう? 反対派がいるのは当たり前のことですが、それは自分自身の財源で存続しなければなりません。そしてもし、あからさまに何十億ドルを費やして外国の反対派を支えるような国があるのなら、それはまともな政治的な慣習なのでしょうか? これが国家間レベルでの信頼の精神を作り上げるのに役立つのでしょうか? 私はそうは思いません。

 さて、我々の国境線に近づきつつある民主主義のテーマについてです(笑)。あなたは経験豊富な方とお見受けします。あなたは、我々が自分の国境線上に民主主義があることに反対できるとご想像でしょうか? あなたがここで民主主義とお呼びになるものは何でしょうか? あなたは我々の国境線に近づきつつあるNATOの動きのことをそうおっしゃるのでしょうか? それがあなたのおっしゃる民主主義でしょうか? NATOは軍事同盟です。我々は我が国境線にある民主主義を心配しているのではなく、我が国境線にどんどんと近づく軍事的な装備について心配しているのです。あなたは、我々がこのようなケースにどのように反応することをご期待なのでしょうか? 我々は何を考えるべきでしょうか? この点が、我々を気がかりにさせることなのです。

 あなたは何が現在の問題の中心にあるのかご存じでしょうか? あなたとこの点を共有するでしょうし、また現在について述べたい公式の記録を間違いなく作るつもりです。それはドイツの再統一の直前にドイツの政治家とソヴィエトの最高幹部との間で交わされた議論の記録です。それは非常に興味深い文書で、まるで推理小説を読むようです。

 その当時のある著名なドイツの政治家が、社会民主党の党首《注記:ハンス=ヨッヒェン・フォーゲル》だったのですが、ロシアの上級幹部との会談中に発言しました。一言一言まではそれを引用できないのですが、私は十分に正確に元の言葉を覚えています。彼はこう言ったのです。『もし我々がいまドイツの再統一とヨーロッパの未来について合意に達しないのなら、危機は引き続き、むしろドイツ再統一後にはより増大するだろう。そして我々はそれを終わらせることができないばかりか新たな形での危機に直面するだけになるだろう』と。後に、ソヴィエトの高官たちが彼と討論した際に、彼は驚きそして言いました。『あなた方は私がソヴィエトの利益を、近視眼的に思える視点のためにそれをとがめながらも、守っているのだとお思いかもしれないが、しかし私はヨーロッパの未来について考えているのだ』と。そして彼は全く正しかったのです。

 大使閣下、あなたのご同僚たちはそのときドイツ再統一に続くであろう基本的な諸原則について合意に達しませんでした。それは、ドイツのNATO加盟の将来に関する疑問、軍事的インフラの形態と進展の将来、そしてヨーロッパでの安全保障問題での協力体制です。そのときには口約束が交わされましたが、何一つ紙の上に書かれることはありませんでしたし、何も確約は為されませんでした。そして再統一はそこから出発しました。しかし、あなたがミュンヘンでの私の演説を全て思い起こすなら、そのときに私は次のことをお話ししたわけですが、NATO事務総長は、NATOが決して―そのときの言葉をそのまま引用しますが―今日のGDR(ドイツ民主共和国)の東部国境を越えて広がらないことを、ソヴィエト連邦は確信してよいと、口頭で断定しました。しかし現実には全く逆でした。東部へ向けたNATO展開には二回の波がありました。そしていま、我々はまさに我々の国境線にもミサイル防衛システムが置かれているのです。

 私の目には、この全てのことに当然の懸念を抱きます。そして明らかにこれは検討作業を続ける必要のあるものです。あらゆる困難さにもかかわらず、我々は共に作業を続けたいと願っております。ミサイル防衛の深刻な問題について、以前に我々はすでに複数の提案を致しました。そして私は再度、アメリカ、ロシア、ヨーロッパの三者が共同で作業できるだろうと申します。この種の協力に何の苦労があるでしょうか? それは、その三者の全員がお互いにミサイルの脅威がやってくる方向について合意し、システムの指揮と他の二次的な事柄において平等な役割を持つ、ということを意味します。しかし我々の提案は拒否されました。共同作業を求めなかったのは我々ではなく、我々を拒否した他の者たちでした。

 いま我々はシリアで起こっている一連の深刻な事態に直面しております。そして私はこれが、この先の討議の主題となることを確信します。我々は、我々が誤った標的を爆撃しているのではないかという批判を耳にします。私は最近、モスクワでのスピーチで言いました。「もしあなたが何が正しい標的なのかを知っているのなら我々に教えてください」と。いや、彼らはそれを我々に教えません。そこで我々は彼らに、どの標的が避けるべきものかを言ってくれと訪ねたのですが、彼らはそれでも我々に答えようとしません。

 我々にはすばらしい映画があります。イヴァン・ヴァシリエヴィッチの転職。ロシアの視聴者はこれをよく知っています。その映画のキャラクターの一人が他の者に言います。「もし君が何も言ってくれないのなら、どうすれば僕が君の言っていることを理解すると思うんだい?」幸いなことに、少なくとも軍事のレベルでは、以前も申しましたように、我々はお互いに何かを言い始めており、何らかの合意に達しています。状況が我々にそうすることを義務付けるのです。

 軍の人たちは最も責任を負うものと見なされますし、もし彼らが合意に達するのなら我々は政治のレベルでも同様に合意に達することができると思います。

 ありがとうございました。


<他の出席者からの発言について> 《注記:プーチンの返答の内容から、シリアでのロシアの軍事作戦が持つ効果について、シリアの分割について、バシャール・アル・アサドの去就について、シリアで実現するかもしれない政治的なプロセスについての質問と思われる。》

 ウラジミール・プーチン:シリアにおける我々の作戦がどれほどに効果的か、ですか?

 そのようなご質問に、私がどれほど確実な解答を与えることができるでしょうか? 確実と言えるもの保険証券だけです。我々は、自分たちの信念と国際法上の義務に従って行動しています。我々の爆撃機と、シリア軍の攻撃に調和して使用されているその他の軍事システムとの間で調整される行動が、ポジティヴな結果をもたらすことを期待します。結果が既に達成されていると私は信じますし、我が軍もそう考えております。

 これは、我々がシリアでテロリズムを打ち破っていると言えるのに十分なことでしょうか。いいえ。我々がそう主張できる以前に、まだ大きな努力を必要としています。まだたくさんの作業が必要ですが、それは共同作業でなければならない点を強調したいと思います。

 我々はいまは名指しで誰かを非難し始めたいとは思いません。しかしそれでもなお次の点を言わせてください。アメリカ主導の同盟は空爆を実施し続けており、11カ国以上の参加で様々な標的に対して500回を上回る爆撃を行っていますが、いまだ何の成果をもあげていません。これは明白な事実です。テロリストたちがシリアとイラクでの存在をより強化させ、すでに手に入れた領地で支配をますます強め、そしてその存在を拡大させている場合に、我々はどのような成果について語ることができるのでしょうか? この意味から、今までのところ我々の同職たちはいかなる効果的な結果をも挙げていないように私には思えます。

 我々の軍とシリア軍との間の協力は成果を上げておりますが、いまだ十分ではありません。もし我々が武力を統合できるなら、誰でもが純粋にテロリズムと戦いたいと願うような合同軍にですが、この地域の全ての国々、アメリカ合衆国を含む外部の勢力がそのために集まってくれるのなら、すばらしいことでしょうに。我々が提案したのはまさにこれなのです。

 我々はまず軍事派遣団にモスクワに来てもらうように提案しました。そしてその際に私は、政治的な問題を討議するためにロシア首相に率いられる上級政治派遣団を送る準備があることを告げました。しかし我々の提案は拒否されました。確かにその後、アメリカの我が同職たちは閣僚レベルでの説明を行い、何らかの誤解があったこと、道は開かれていること、我々がその道を通り共同作業の行い方について考えるべきことを告げました。

 いま、アメリカ、ロシア、サウジアラビア、そしてトルコの外務閣僚が会議を行う予定になっています。私は、この地域の他の国々もまたそのプロセスに加わるべきだと思います。我々がこの問題を解決したいと思うならその参加が必須である国々です。私は何よりもイランを考えています。以前に我々は何度もこの事を言ってまいりました。しかし、外務閣僚が討論のために会合を開くことはこの段階の開始にすぎません。イランの我々の同職たちについて言えば、この件について緊密な接触を保っており、イランは解決のために明らかな貢献を行っています。

 シリア分割の疑問についてですが、それは最悪のケースのシナリオになると思います。それはこの紛争の解決に何の役にも立たず受け入れることのできないオプションであり、紛争の拡大と長期化を招くのみです。それは終わりの無い紛争となるでしょう。もしシリアがバラバラの地域に分割されるなら、それら同士での果てしない戦いが避けられず、何一つ肯定的なものは現われないでしょう。

 アル・アサドが去るかどうかということにつきましては、この問題を問うことすら誤りだと思うと、私は多くの機会にすでに申し上げてきました。あれやこれやの国の指導者が留まるか去るかを、外部から要求して決めるようなことが、どうしてできるのでしょうか? その決定はシリア国民に属することです。でも一つだけ付け加えさせてください。政府というものは透明性のある民主的な手続きを基に形作られるものです。我々は選挙の手続きを含むそれらの手続きにある種の国際的な監視をつけることについて語ることはできますが、これは客観的な監視でなければなりませんし、それはどこか一つの国や国内の一集団を利するような偏りの無いものでなければなりません。

 最後に、我々が政治的プロセスをどのように見ているのかという点に関してです。いまは一般的な概略を語らせていただきたいのですが、同時に申し上げたいことは、このプロセスを、その原則と目的を形作るのは、シリア国民自身でなければならない、シリア国民が何を望みそれをどのように達成するのか、ということでなければならない点です。シリア国民自身というのは合法的な政府と反対派勢力を意味します。もちろんですが我々は、このシリアの紛争の根本原因が単なるテロリズムとテロ攻撃に対する戦いだけではないという見方をしています。テロ攻撃が明らかでありテロリストたちが単にシリア内部の困難を利用しているだけではあるのですが。我々はテロの脅威と国内の政治的問題を区別する必要があります。もちろん、シリア政府は対話を受け入れる準備のある反対派勢力との接触の働きかけを確立しなければなりません。私は先日行われたアル・アサド大統領との会見から、彼が既にそのような対話を準備していることを理解しました。《注記:参照Free Syrian Army to Meet Russian Defense, Foreign Ministries Next Week


<他のパネラーからの発言について> 《注記:プーチンの返答の内容から、シリアのテロ組織が持っている兵器と弾薬の規模についての質問と思われる。》

 ウラジミール・プーチン:爆撃の後でビデオ報告を見まして、それらが衝撃を与えると申し上げることができます。まさに飛行機のところまで高く飛び上がるほどの大変な量の弾薬が爆発しているわけです。彼らが中東全域から兵器と弾薬を集めているという印象を抱かれると思います。途方もなく大量の兵器を寄せ集めているのです。彼らがどこから資金を得ているのか、誰でも疑問に思わざるをえません。彼らが蓄積してきた弾薬は本当に恐ろしいほどの量なのです。もちろんですが、今は以前より少なくなっています。シリア軍は実際に我々の支援によって勝利を得つつあります。今のところ緩やかなものですが成果は上がっており、私は今からもっと多くの成果があると確信します。


<他の出席者からの発言について>

ウラジミール・プーチン:(イラクでの軍事作戦にロシアが参加する可能性に関する質問への返答)我々はそのような計画は持っておりませんし、またイラク政府が我々に何もそのような要請を行っていないので、その計画を持つことはできません。我々はイラクに対して兵器の供給の形で支援を与えています。これは我々が既に行っていたもので、イラクでのテロとの戦いに対してはこの方法で、つまり兵器と弾薬を供給することで、貢献していきます。しかし、我々は兵器と軍事設備の供給を通してだけではなく情報交換を通しても共同の作業を行ってはおりますが、イラク政府はその他の援助を何も要請してはおりません。

 ご存じのように、イラン、シリア、ロシアそしてイラクが情報センターを設立したの場所はバグダッドでした。そこで我々は情報を交換し、イスラム国に対するものを含むテロとの戦いにおける主要な方向性を決定しています。しかし我々はロシア空軍が加わる軍事作戦を拡大させる計画は持っておりません。


<他の出席者からの発言について> 《注記:プーチンの返答の内容から、ロシアと、シリアでのイスラム教の諸宗派との関係についての質問と思われる。》

ウラジミール・プーチン:この地域におけるロシアの軍事作戦と外交努力の目的はテロリズムと戦うことであり、様々なイスラム教の流派の代表たちの間を取り持つためではありません。我々はシーア派の友人たち、スンニ派の友人たち、そしてアラウイ派の友人たちを等しく重視しております。我々はそれらの間に何の差別も行っておりません。

 我々はイスラムのスンニ派が支配的な多くの国々と良好な関係を保っています。同時にシーア派が多数派である国々とも良好な関係を保っており、したがってそれらの間に何の差別も行わないのです。再度申し上げますが、我々の唯一で最大の目的はテロと戦うことです。

 同時に我々は、現地での現実を認識しております。シリアの34人…だと思いますが(いずれにせよその前後の)閣僚メンバーの半分以上がスンニ派であり、スンニ派の人々は政府と同様にシリア軍にも広範に在籍しております。要するに、シリアは常に原則的に世俗的国家でした。

 でも、もう一度言わせていただきたいのですが、我々が働きかけている現実的な状況を我々は理解しており、もちろんのこと、もし我々の行動がより文化的で隣人的で友好的な性格を異なる宗派間の対話にもたらす助けとなり、様々な紛糾を収め、テロリズムに対する戦いでの努力を統一するための助けとなるのなら、我々の使命が果たされたと認識するでしょう。


<他の出席者からの発言について> 《注記:プーチンの返答の内容から、去る10月20日にモスクワで行われたシリアのバシャール・アル・アサド大統領との会談についての質問と思われる。》

ウラジミール・プーチン:私はこれをいま言おうかどうかと迷っておりました。アル・アサド大統領との会談についてカーテンを少しだけ揚げさせてください。私は彼に質問しました。『もし我々が今日シリアの中で、純粋にテロリズムと戦いイスラム国と戦おうとしている武装反対派勢力がいることが分かり、我々がシリア軍を支援しているのと全く同様に彼らのテロに対する戦いの努力を支援しなければならないとすれば、あなたはどのように反応されるのでしょうか?』と。彼は『それは建設的なことだろうと私は思います』と言いました。我々はいまこれを再考し、もしそれが十分に機能するなら、これらの合意を実行の段階に移してみるつもりです。《注記:参照Syrian Opposition Praises Russia for Effort to Bring All Sides to Talks


<他の出席者からの発言について> 

ウラジミール・プーチン:(世界の未来におけるロシアの役割についての質問に答えて)答は簡単です。現代の世界で、近未来で、そしてもっと遠い未来でもそうだと思いますが、世界のあらゆる国家の役割と意義は個々の国の経済発展のレベルによります。それは経済がいかに近代化されているか、そしてそれが、最新のテクノロジーに基づく範囲で、いかに大きく未来に向かって努力するのか、そしてそれがいかに素早く新しいテクノロジーの形態を採用するのかによるでしょう。

 そしてここで私は、領土、人口、あるいは軍事的要素について語っていません。そのすべては重要なものであり、それら無しでは国は世界の主導的な位置の一角を占めると主張できません。しかしその点では、経済とその発展が、新しいテクノロジーの基盤の上での経済成長率とともに、全てのものの中心にあります。

 ロシアは、国民に行きとどくハイレベルの教育と基礎科学のハイレベルな進歩を備えているという点で、主導的な国々の一つとなるチャンスを十全に持っているように感じます。この国で我々は多くの問題を抱えています。常に問題を抱えてきたし今後も引き続きそうでしょう。他の国々と同様にです。しかし我々は、基礎科学と実用科学を活かし続けることだけでなく、同時にこれらの重要な分野の発展に新たな勢いを与えることに、ますます大きな注意を払いつつあります。もし我々がこれらの環境と全く自然にある競争力の有利さを計算に入れるならば、ロシアは間違いなく重要な役割を演じるでしょう。

 特定の序列を決めるのは非常に難しいと思います。それが陸上競技の大会ではないからです。しかし、ロシアが良い見通しと強固な未来を持っていることは私には完全に明らかです。ただもちろんそれには近隣諸国との関係の進展が関わります。まず何よりも、ユーラシア経済連合(the Eurasian Economic Union)と集団安全保障機構(the Collective Security Treaty Organisation:CSTO)のような組織にいる、最も親しい隣国、パートナーや同盟者たちです。

 これには中国のような隣国との関係の発展が含まれます。我々はこの国と最大額の、800億ドルと超える、取引を行っております。そしてもちろんですが、インドのような大国とです。またヨーロッパとの関係の発展がなければ我々の発展は全くイメージできません。

 キリスト教文化が我が国の統一の基盤に存在します。しかし我々は同時に、この国の人口のほぼ20%がムスリムであるという有利さを持っており、この点から、我々はパートナー達とイスラム世界の多くの国々との間につながりを持つことができます。そして、当然ですが、我々はアメリカ合衆国との関係の発展を期待しております。我々のパートナー達がそれを望むならば、ですが。


<他の出席者からの発言について> 

ウラジミール・プーチン:(シリア反対派勢力が対空防衛ミサイルシステムを手に入れる可能性についての質問に答えて)これは全く正当な疑問です。私はそこに何も不当な疑問の範疇にあると解釈できるようなものを見出しません。極めて現実的にお答えしましょう。

 我々が知る範囲では―もしそれが間違っているなら大問題ですが―アメリカ軍は既に対戦車・対装甲兵器システムを支給しつつあり狙撃手に訓練を施しつつあります。私はそれが大きな過ちであると思います。この兵器類は間違いなくテロリストグループの手に落ちると私は信じています。

 さらに、ご存じのとおり、アメリカの我が同職たちは単純に特定地域に武器と弾薬を投下するという選択を行っています。これらの兵器類と弾薬をだれが受け取るのでしょうか? 誰が使うのでしょうか? 誰に対して使うのでしょうか? 確実性は全くありません。誰一人この点を確実にできないことを、私は100%知っています。これには、誰がそうしているのか?も含まれます。たとえ最初は想定通りの者の手に届くようなことがあったとしても、明日になると、それはおそらく、そして非常に高い確率で、イスラム国やジャブハット・アル・ヌスラやその他の同類の組織の手に渡ることでしょう。これは大いなる過ちだと思います。

 対空兵器つまりMANPADを引き渡すことが可能なのか? 私はそうでないことを期待します。我々は多くの立場で一致できないのですが、それでもアメリカの指導者たちは敏感な人たちで、同様にシリア上空を飛ぶアメリカのパイロットたち―彼らは法に違反してでもそうしているのですが―に向かって狙いを付ける者たちの手に、それらの兵器が渡ってしまうかもしれないと知っています。少なくともこの点で、この種の兵器類を移送するのを止めるべきだと私は思います。

 特定のタイプの航空機について申しますと、私はそれで飛んだことがあり、それが何かは知っております。全般的に言いますと、パイロットたちがそうしていることに私は驚いています。Gフォース《注記:加速によって起こる重力と同種の力》が加わると頭を動かすことすらほとんどできなくなります。しかも彼らは飛行機だけではなく武器を操る必要があります。まず視覚にその衝撃が起こるのです。急降下や急上昇する飛行機で経験するGフォースは大変な大きさで、指を動かすのが精いっぱいでしょう。比ゆ的に申しますがこれは最高難度の曲芸飛行です。そしてこれらのパイロットたちは間違いなく尊敬を受けるに値します。

 もちろんシリアでの我が軍人たちはテロリズムと戦っており、そしてその点で、シリア国民の利益を保護していますが、しかしそればかりではありません。まず何よりも、彼らはロシアとロシア国民の利益を保護しています。彼らは我が国にとって脅威である戦士たちと武装勢力を攻撃しています。当然、彼らはその身体と生命を危険にさらしています。そしてその点で彼らはみな英雄ですが、彼らはこの仕事を自分の自由な意思で選びました。それは彼らの意思でした。私は彼らを誇りに思います。

 申し上げたいことがもう一つございます。50年前のこと、私はレニングラードの街路で一つの法則を学びました。もし戦いが避けられないならば最初に撃て、と。ロシアに対するテロ攻撃への対処が、シリアにおける我々の行動によって大きくも小さくもなっていないことを、はっきりと申し上げておきます。不幸なことにテロ攻撃は今までもあったし、今でもなおあります。我々は過去にはシリアで何の行動も取っていませんでした。では何がテロリストたちにヴォルゴグラードの駅での攻撃をさせたのでしょうか? 何も。単に彼らのロシア人への嫌悪感、人々の命に対する敵対、ロシア自身に対する攻撃でした。ですから、既に申し上げたように、ここで彼らを待ち受けるよりは、そこで彼らと戦うことが我々にとってより良いことです。


<他の出席者からの発言について> 《注記:プーチンの返答の内容から、2015年2月にベラルーシの首都ミンスクで結ばれたウクライナとロシアの関係修復に関するミンスク合意と、そこでのドイツの役割に関する質問と思われる。このミンスクでの会議にはロシア、ウクライナ両国の他に、フランスとドイツの首脳が参加した。》

ウラジミール・プーチン:ミンスク合意につきましてです。私は(既に申し上げたことですが)、もし我々がウクライナ南東部の恒久的な平和を達成しその国の領土的な統合を再構築したいと望むなら、ミンスク合意に従う以外には方法が無いと信じます。ドイツがここで積極的な役割を果たせるか? ええ、できます。

 私はドイツ連邦の首相とフランスの大統領が今日十分に客観的な立場であると信じます。そして、彼らが政治的な理由のために現在のキエフの指導者たちを支持しているのは明らかですが、私の意見では、彼らはその状況に対して十分に公平な判断を持っています。彼らはすでに、その地で蓄積されてきた諸問題が、単に白か黒かの問題ではなくはるかに複雑なものであることに対する理解を持っております。

 私はこの事についてニューヨークで、アメリカの我が同職でありパートナーであるアメリカ合衆国大統領との会談で話しました。私は、ヨーロッパとアメリカの参加なしではこの状況を解決することは不可能に近いだろうと申しました。もしキエフの指導者たちがこの合意の重要事項を受け入れないのなら、ウクライナ南東部にある未承認の共和国《注記:ルガンスクとドネツクの両地域》 の指導部にミンスク合意実行のための何らかの行動に向かわせることに不承知だった、あるいは失敗したとしてロシアを非難することに、何の意味もありません。

 これは秘密ではなく、我々がしばしば語っていることですが、私は再度、キエフの指導部がミンスク合意を受け入れていないと言うときに私が何を申し上げたいのかをお話しましょう。

 政治的な解決を達成するために為されねばならない最初のものは、ウクライナ憲法の改正です。これはミンスク合意に直接に述べられています。この合意が述べている重要な点は、これがそれらの地域、つまり未承認の共和国との合意に基づくものだということです。キエフの指導部はこれらの未承認の共和国とのいかなる合意も無しに憲法を改正しました。彼らはそれをヴェネツィア委員会と合意したものだと言い張っています。すばらしい。しかしミンスク合意はヴェネツィア委員会のことを何も述べていません。それはドンバスとの合意を求めていますが、それはいまだに為されていないものです。

 第2です。その憲法改正は恒久的なものであるべきです。実際にはそれは過渡的な規定の形で為されており、そしてそれは我々から見れば一時的な処置であることを意味します。我々の反対者たちは逆のことを話します。この憲法は正確にはどのように改正されたでしょうか? 要するに、それらの地域の特別な地位についての法律が憲法に付け加えられました。それは既に議会を通過しています。私がこれはどのような法律なのかと尋ねると、ドイツ首相、フランス大統領とウクライナ大統領はそろって、これはウクライナ議会がすでに通した法律だと断言します。私がこれが恒久的なものかどうかを尋ねると、彼らはそうだと言いました。

 そこで私が彼らに、その法律がたった3日の間に通されたこと、そしてすでにそれから1年が過ぎていることを知っているかどうか、尋ねました。するとポロシェンコ氏はそうだと断言しました。ヨーロッパの私のパートナー達は、この法律が憲法に加えられたからにはそれは恒久的なものであるべきだが、しかしその次に憲法の中に定着させるべきものだ、という彼らの見解を語りました。

 次です。未承認の共和国での選挙について議論がありました。ミンスク合意は、ウクライナ議会は選挙に関する法律を通すべきであり選挙はウクライナの法律に沿った形で行われるべきであると述べています。しかしながら、この法律はこれらの未承認の共和国との合意に基づくべきものです。彼らは3度自分たちの提案を送りましたが、全く返事はありませんでした。

 さらに言えば、この通過した法律はそれがこれらの地域での選挙に適用されることはないと明らかに語っています。ではその地域はどうすべきだというのでしょう? これが、これらの地域が自分たち自身で選挙をすると宣言した理由なのです。我々は両地域に選挙を延期するよう何とかして説得しました。我々は、その法律はキエフといっしょに作成されるべきだとの合意をしました。しかしそれは未だに為されていません。

 最後に、ミンスク合意ははっきりと次のように言っています。調印の30日以内にウクライナ議会は特別な地位に関する法律を導入するための解決案を通過させるべきである、と。私が申しましたように、それはウクライナ議会によってその以前に通過されていたのです。キエフの我がパートナー達は何をしたのでしょうか? 彼らは議会を通過した解決法を承認し、そして形式的には、ミンスク合意に従ったのです。

 同時に、ドンバスとの合意抜きで、彼らはもう一つ別の条項を通過させました。その法律第10項は、それが当地での選挙の後でのみ効力を発すると述べています。言い換えると再び引き延ばすのです。これらは単に誤魔化しにすぎません。これはまさしく私がウクライナのパートナーに対して言ったことです。誤魔化し以上の何もありません。形式上は、彼らは従ったように見せています。マルクス‐レーニン主義の古典が言っていたように、形の上では正しいが内容は茶番なのです。

 最終的には、彼らは恩赦についての法案を通すべきです。もしみんなが我々に対して、選挙はOSCE(欧州安全保障協力機構)の基準ラインに沿って行われなければならないと言うのなら、彼らは、OSCEの基準が選挙キャンペーンの重要な条件の一つを想定していることを忘れるべきではありません。つまり、誰も犯罪者として処罰されないということです。一方ではルガンスクとドネツクの人民共和国の指導者全員が犯罪者として処罰の対象とされています。しかしながらここには誰でも、アメリカとヨーロッパの我がパートナーもまた、一致する点があります。恩赦についての法律が通されることを必要とする点です。それはまだ通過していません。

 ミンスク合意はこれを直接的に述べています。特別な地位に関する法律の中にそれが含まれているという事実へのリファレンスは機能しておりません。その法律がいまだ発効していないからです。将来的な選挙に関する法律の中にそれが含まれることへのリファレンスもまた機能しておりません。そんな法律が無いからです。別途の恩赦法案があるべきです。私はここにいる皆さんがそれは不可能だとはおっしゃらないだろうと思います。これは国際的な基準であり、能動的にも受動的にも投票の権利を有する人々が、犯罪者としての処罰の対象となるような選挙を行うことは誰でもできません。

 他にも多くの事柄があるのですが解決を為されつつはありません。言ってみれば、ボールはキエフ指導部の側にあります。これは果たされる必要があり、それは、モスクワとではなく、ヨーロッパやアメリカのパートナーと協力して、キエフ政府とキエフの大統領によってのみ為されることが可能なものです。この話がこれほど長時間に及んだことをお詫びしますが、私の態度を明確にしなければならなかったのです。


<他の出席者からの発言について> 《注記:プーチンの返答の内容から、ロシアの経済問題と、シリアに関する質問と思われる。》

ウラジミール・プーチン:最初のご質問は経済の危機と問題点、そしてその進展についてに関するものです。

 国連、世界銀行やIMFのような政治的・経済的な機関を含む、信頼のおける国際的な機関の予測から我々皆が知っていることですが、世界の経済は我々が望んでいるような割合で発展してはおりません。この意味で、全世界の経済はいま問題に直面しつつあります。

 ロシアの経済は一度に数多くの問題を経験しつつあり、多くの試みを行いながら進んでいます。これらの問題はしばしば述べられている限界、つまり経済における政治的な制限、いわゆる制裁措置に関するものだけではありません。それはその明らかな一部ですが決定的なものではありません。成長を限界づける、経済成長率を引き下げている最も重要な要因は、もちろんですが我々の伝統的な輸出品の価格の下落です。しかしこれは全てロシアだけに当てはまるものではありません。事実上すべての発展途上の市場に関係するものです。統計を見るならば、ロシアの市場は、他の一部の発展途上の市場よりもおそらくわずかに小さいでしょうが、やはり影響を受けています。

 我々は何をすべきでしょう? 皆さんはすでにお気づきであり述べてこられたことでしょうが、ここロシアで我々は、経済を多様化する必要性について、繰り返し言い続けております。ハイテク分野に焦点を当てつつ経済をより多様化されたものにしていくことです。確かにここでは進歩は緩やかです。ここで起こっている何か肯定的なものはあるでしょうか? あります。ここに説明があるのですが、ええと、5年から7年前には石油・ガス分野はGDPの14%を占めておりましたが、今日ではロシアのGDP、国民経済におけるその割合は9%です。

 比較の問題ですが、私が申し上げたいことは石油・ガス分野の占める割合が、ええ…、サウジアラビアでは45%…、私の記憶が正しければですが、一方で湾岸のいくつかの国々では50%に達し、またベネズエラではそれは30%であり、そしてわが国では9%です。ご覧の通り、その違いは大きいものです。まず何よりも、最近の四半期に我々が直面したあらゆる困難にもかかわらず、我々の努力の効果が―それは我々にとってたぶん予想外のものでしたが―ありました。少しだけその努力についてご説明いたしましょう。工業製品の輸出に成長がみられたのですが、それはその経済的分野における全面的な生産の下落とは対照的です。逆に工業製品の輸出は成長しております。

 現存する問題は何でしょうか? 我々の経済が、国外の市場でこの状況に出くわしてきたのですが、求められる経済成長を維持する準備が構造的にできていない点があります。いくつかの特定の産業が影響を受けましたが、我々はこれに特別の注意を払う必要があります。そこで我々が行っていることをご説明しましょう。第一に、これは工業です。いくつかの分野では下落が10%かそれ以上に達しています。これが特に注意を引きます。しかし我々はここで何を為すべきかもまた分かっています。結局は我々は国内通貨に焦点を当てる必要がありますが、それは中央銀行が十分にやっていることです。

 この点について私は、危機はピークを過ぎていると言うそれらの専門家たちと政府メンバーたちが正しいと信じます。いま我々は私が述べたばかりの要因に焦点を当てる必要があります。最も影響を受けた分野への支援についてですが、それには建設、機械、自動車、そして一部のハイテク工業の分野があります。この目的のため、政府は1500億ルーブルの追加支援を割り当て、他の3000億ルーブルを農業に配分しました。ですから十分な財政支援があります。

 我々は過去何年間も続けてきた作業をやり続けなければなりません。申し上げたように、中央銀行は国内通貨を安定させる役割を果たしつつあります。通貨は我々が確かな安定性を達成したと言うことのできるもう一つの分野です。国内通貨の為替相場は原油価格の変化と共に変動します。しかし総体的にはそれは安定してきました。我々はあらゆる困難にもかかわらず貿易黒字を維持しております。

 中央銀行は相当量の―3700億ドルを超える―金と通貨の備蓄を行っております。我々は政府資金に相当量の備蓄を行っており、一つの資金備蓄は700億ドル以上、もう一つは740億ドルです。確かに、我々が経済発展の戦略を構築する行程で、我々はそれらを少し削減するでしょうが、しかしそれでもなお、2018年までには中央銀行のものに加えて十分な政府資金の備蓄ができると確信しております。

 前の時期、最近の四半期の間中、財政赤字はわずか1.5%でした。インフレーションは下がりつつあります。先月は0.5%で、私はこの年末には数字は相当なものに、およそ11.9かおそらく12%になるだろうと思います。しかし我々は、向こう何年間かは退潮傾向にあるだろうという仮定から前進します。実際にこの傾向が始まっており、我々は現状を維持する必要があります。

 一般的に言えば我々は、歳出に対しての非常に保守的な取り組みを行い、給与が実質的にやや下がっていることを念頭に置いて、マクロ経済指標の維持に努めるつもりです。給与は経済成長と共に上昇すると確信しています。しかしながら、現状に鑑みて、我々は(いま適切な法的決定を行おうとしていますが)社会的な支援に対してより目標を定めたアプローチの仕方に切り替える必要があります。これが、更なる多様性および明らかに必要とされる経済成長率を確実にするために、我々が使おうとしている諸手段の概要です。

 さて、シリアについてです。あなたは、アメリカ合衆国の目的がアル・アサドを取り除くことであり、一方ロシアの目的はアル・アサドを支援することだとおっしゃいました。アメリカがアル・アサドを取り除くという目的を持っているというのはたぶん本当でしょう。我々の目的は、テロと戦うことであり、またアル・アサド大統領がテロリズムに勝利するのを手伝うことです。そのことがひいては、政治的安定の始まりと、願わくは、成功裏の実現にとっての条件を作ることになるでしょう。私はそれが唯一の正しい解決であると信じます。

【引用・翻訳、ここまで】

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