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復刻版:シオン権力と戦争(ジェイムズ・ペトラス著)


 この拙訳は2008年12月に私(童子丸開)の旧HPに掲載されていたものである。
 この長大な記事は米国ブッシュ政権が終わりを告げオバマ政権に引き継がれる時期に翻訳(仮訳)された。その時点から現在に至るまでの見かけ上の変化にかかわらず、米国・欧州・中東、さらには日本を含む幅広い世界の経済的・政治的・思想的な支配の基本的構造は微動だにしていない。むしろ、この間に起こった経済的なクラッシュと混乱を通して、ますます研ぎ澄まされ強化されつつあるように思える。
 このペトラスの論文はその支配構造の一端を大胆に暴き出したものだ。ここに描かれる目を見張るような米国社会の本質的な姿は、オバマ米国とイランの「雪解け」が演出され一見すると中東情勢が落ち着きつつあるようにみえる今日だからこそ、正確に認識される必要がある。イスラエルとシオニスト勢力は決してイランとの戦争、そして拡大中東戦争を諦めておらず、あらゆる機会を利用してテロを用いて動乱を煽り、マスコミと「人権」等諸団体を駆使して世論の誤誘導を試みるだろう。
 シオニズムをテーマにした論文は無数にあるが、人類世界を無遠慮に破滅に追いやりかねないシオニストとシオニズムの危険な本性を、ここまで赤裸々にそして具体的に暴いたものは少ない。単にイスラエルとパレスチナでの残虐行為を非難するだけでは、それは決して終わることがあるまい。その残虐な人間破壊を根底から支える米国ユダヤ人社会とそれを受け入れ疑問を拒絶する米国(およびその眷属諸国家)の在り方そのものが問題なのだ。
 それは我々非ユダヤ人にとってはタブーの壁に囲まれている世界なのだが、このペトラスや、ミシェル・チョスドフスキー、イズラエル・シャミール、ステファン・レンドマンなど、その内実を知り尽くす自由なユダヤ人士からの告発は、今後の世界にとって決定的な意味を持つものと思われる。ひょっとすると(人によっては)「知りたくもないようなこと」を多く含んでいるかもしれないが、お時間の許す限りじっくりと確かめながらお読みいただくことを願っている。

2013年11月 バルセロナにて 童子丸開 拝

※ この和訳文は非常に長いので、以下に小見出しの一覧を掲げ、クリックすればその項目に進むことができるようにしている。
   
   イラク開戦理由の隠蔽から対イラン戦争プロパガンダへ
   イスラエル、シオニスト権力構造、そしてイラク侵略準備
   イランとの戦争:シオニスト権力構造(およびイスラエル)にとっての最優先事項
   イスラエル・ロビーか?あるいはシオニスト権力構造か?
   石油のための戦争か、イスラエルのための戦争か:公にされた記録
     シオニストの戦争挑発:恐怖と毒
  
かすり傷から壊疽へ:シオニズムからシオン・ファシズムへ
  
シオニスト権力構造とホロコースト否定:イスラエルの業務として
  
行軍中のシオニスト独裁主義
  
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
【以下、復刻の文章:2008年12月】

(訳者より)
 ジェイムズ・ペトラスは、前ニューヨーク州立大学ビンガムトン校社会学教授であり、現在、カナダのハリファックスにあるセイント・メアリー大学で教鞭を執る社会学者、作家である。米国では代表的な「左翼の論客」だが、彼の徹底した事実重視の姿勢とシオニストに対する容赦の無い姿勢で、同じユダヤ系でありながら、ノーム・チョムスキーやノーマン・フィンケルシュタイン(ペトラス自身の元愛弟子)とは明確に一線を画す。翻訳に用いた論文は2007年11月に彼自身のHPで公表されたもので、次のpdfファイルに収められている。また同時にイズラエル・シャミールのHPでも読むことができる。またこれには「死の抱擁」という副題がついている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
http://www.lahaine.org/petras/b2-img/petras_zion.pdf
http://www.israelshamir.net/Contributors/Contributor62.htm
Zion-power and War: From Iraq to Iran  The Deadly Embrace
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 ここで彼は「the Zionist Power Configuration= ZPC」という言葉を多用している。これはおそらくペトラス自身による造語だろうが、ここでは字義通りに「シオニスト権力構造」と訳しておく。また彼はこの論文で他に「Zion-power(シオン権力)」「Zion-con(シオニスト・ネオコン、シオン・コンあるいはジオコン)」「Zion-lib(シオニスト・リベラル、シオン・リブあるいはジオリブ)」 という用語も使用する。
 また原文にある“authoritarianism”という単語は「独裁主義」と訳した。この単語は辞書的には「権威主義」と訳される場合が多いが、この日本語ではどうしても国家や社会全体に広がる独裁的な権力志向のニュアンスが薄れてしまう。したがってこの単語は必要に応じて「独裁主義」と訳されることがある。実際に英語でファシズムの教科書的説明の中では必ずこの単語が使われる。
 ブッシュ政権がオバマ政権に移行する今日、米国の中東戦略では、以前のネオコン的過激主義は影を潜め、イラン攻撃に警告を与えてこれを中止させてきたブレジンスキーらの外交・隠密路線に取って代わろうとしている。これが米国内権力構造のいかなる変化によるのか詳しくはわからないが、とりあえず米国とイスラエルによるイラン攻撃の危機は去ったと言えるだろう。しかしシオニストによる世界支配の目論見が終わったわけではない。むしろフランスのサルコジ・ネオコン政権誕生に見るように、彼らの影響力はじわじわと世界に広がっている。米国の戦争政策では戦術的後退を余儀なくさせられた彼らだが、シオニストによるマスコミと言論界、知識人層に対する独裁的な支配は延々と続き弱まる気配が見えない。
 したがってこのような時期にこそ、目先の変化に目を奪われること無く、ブッシュ政権8年間の牽引車であり一時的な戦術転換に賭けているこの「シオニスト権力構造」の怪物的な実体について、その正体を見極めておかねばならないのだ。

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シオン権力と戦争:イラクからイランへ
       死の抱擁

ジェイムズ・ペトラス  2007年11月


【序】   小見出し一覧に戻る

 米国によるイラク攻撃に対する説明は、軍事・政治的な弁明から地政学的・経済的利益に焦点を当てる主張に至るまで、幅広く存在する。

 元々の公式な説明は、サダム・フセインが米国やイスラエルと中東地域に脅威を与える化学・生物兵器その他の大量破壊兵器(WMD)を所有していたというものであり、それは現在では信用を失っている。WMDが全く発見されなかった際に、侵略に続く米国軍の占領に対してワシントンは、独裁者の除去とアラブ世界での意義ある民主主義の確立を叫んでその侵略と占領を正当化したのである。植民地傀儡政権の設置は20万人の正規軍と非正規の殺し屋部隊という帝国占領軍によって支えられたものだったが、イラク戦争の根拠に関する議論に嘘を付け加えている。その占領軍は100万人に近いイラク国民を殺害しており、400万人が亡命を余儀なくされ、人口の95%を貧困化させているのだ。最近の弁明では米国の占領が「内戦を防止する」ために必要であるとする言いざまが繰り返される。ほとんどのイラク人と軍の専門家は米国の植民地占領軍の存在が激しい紛争の原因であると考えているのだ。特に、米国軍の一般市民に対する破壊的な攻撃、対立部族のリーダーやクルド人商人に対する資金援助、そして一般市民を抑圧する地方の警察軍との契約である。大部分の米国人(世界の他の国民は言うまでもない)がこのような上っ面だけの主張では納得させられないために、ワシントン政権はその戦争の継続と占領を次のように言って理由付ける。世界と地域での超大国としての地位を維持するために、そして、中東地域における親米的な各政権に対してワシントンがその支配者集団を防衛しその重要な同盟者であるイスラエルの防衛を確保するために、支配地での軍事的勝利が必要であると。ブッシュのホワイトハウスおよび親イスラエルの議会指導者達は、イラクでの勝利が世界的な「反テロ」(反抵抗)政権として成功するワシントンのイメージの基盤となるだろうと主張する。こういった後付けの正当化は戦争が長引くにつれて信用を失い、イラク、アフガニスタン、レバノン、ソマリア、タイ、フィリピン、パキスタンなど各国での国民の抵抗は増大する。戦争が長引けば長引くほど、経済的な負担と軍人たちへの抑圧はますます大きくなり、帝国の防衛にあてがう能力を維持する作業はますます困難となる。

 もし、イラクとアフガニスタンでの米国の侵略戦争に対する政治的・軍事的な公式の正当化が空虚に響きほとんどの人を納得させないものならば、この戦争の経済要因を説明してブッシュ政権を批判する主張の中で、いったい何が、唯一ではないが主要なものとして、前面に押し出されているのだろうか?

 この戦争の経済的な決定要因での主な焦点は石油に関する事柄に当てられている。「石油のための戦争(*)」としてである。この説明もまた様々な種類に分かれるのだ。第1の、そして最も人口に膾炙するものは、米国の巨大石油企業(Big Oil:ビッグ・オイル)がこの戦争の背後にいた、というものである。つまり、ブッシュとチェイニーがその巨大石油企業に押され、国営であったイラクの油田と石油精製基地を米国石油企業のものにするためにこの戦争を立ち上げたという説明だ。第2のバージョンはそれをやや修正したものだが、ホワイトハウスが巨大石油企業に押されたのではなく、必然的な行動としてそれらの利益のために行動した、というものである。(これは、この戦争を追求する際になぜ国際的な巨大石油企業のスポークスマンがメディアや議会のホールに驚くほど顔を出さなかったのかを説明するために持ち上げられた。)
 (*最近、9月と10月に連邦準備委員会の元議長アラン・グリーンスパンや米軍のジョン・アブザイド将軍などなどが行った発言を見よ。)

 第3のバージョンでは、サダム・フセインによって脅威にさらされていた米国の安全保障上の国益という理由から、石油を確保するために米国が戦争に走ったとされる。この説明では、サダム・フセインがホルムズ海峡を閉ざして湾岸諸国を侵略し、サウジアラビアでの反乱をそそのかし、そして/または、米国とその同盟国への石油輸送を減らすという危険性があったと指摘される。言い換えると、中東の「地政学」によって、親米的ではない政権が米国や欧州や日本への石油輸送に対する脅威であったとされる。これは明らかに、以前はWMDプロパガンダの推進者であったアラン・グリーンスパンによって打ち出された最新の主張なのである。

 この「石油のための戦争(‘war for oil’= WFO)」論の推奨者たちは事実に基づく各種の検証をしていない。まず石油企業は、議会へのロビー活動でもあるいはその他のあらゆる政治的な手段を通してでも、戦争へ向かうプロパガンダを決して熱心に支持してはいなかったのだ。次に、「石油のための戦争」論推奨者たちは、石油企業があの侵略の前に行っていたイラクとの経済関係発展の努力を説明できない。実際にイラクの石油を取引するためにこっそりと第3国を通して働きかけていたのだ。第3に、中東地域における主要な石油企業の全てが、政治的な安定とこの地域での経済政策の自由化、そして外国人投資家のための石油取引開始に主要な関心を向けていたのである。ビッグ・オイルの戦略は、中東地域で進行中の自由化プロセスとその巨大な市場支配力―投資と技術―によって新たな市場と石油資源を勝ち取ることを通して、世界的な利潤の伸張をはかることだった。米国のイラク侵略開始は非常な心配と懸念をもって見られたのだ。軍事行動がこの地域を不安定化させ、湾岸地域全体を通しての彼らの利権に対する敵対感を高めさせ、自由化プロセスを遅らせるだろうからである。あらゆる石油企業の経営陣の誰一人として、米国の侵略戦争を「国益」追求の手段として肯定的に見なすことはしなかった。なぜなら彼らは、サダム・フセインが湾岸地域の石油企業や国家に対して何らの攻撃的な行動を行うような立場にいないことを理解していたからだ。サダムは10年間に渡る経済的・軍事的制裁を受け続け、クリントン政権の間中、繰り返し軍事施設やインフラに爆撃を受けてきたのである。さらに加えて、石油企業は戦争が近づく際にサダム・フセイン政権と有利な石油の提供と通商の協定を発展させる現実的な見通しを持っていたのだ。巨大石油企業に対してそういったイラクとの経済的な合意成就のための法案成立を(制裁を通して)阻んだのは、シオニスト権力構造(Zionist Power Configuration =ZPC)に後押しされた米国政府だったのである。

 巨大石油企業が自らの利益のために戦争を推進したという主張は事実に基づく検証が行われない。逆に、巨大石油企業は米国による占領のために利益を失ってきているのである。紛争が激化し、破壊活動が続き、私営化に対するイラク人石油労働者の抵抗が予想され、全般的に治安が悪化し、不安定化とイラク国民の憎悪がつのるからである。

 米国の左翼は、イラク戦争が石油に関係するものだったというアラン・グリーンスパンの表明を飛び越えて、それを何の根拠も無いままである種の信念にまでしてしまった。だがしかし、5年前の開戦以来の日々を通して明らかにされてきたのは、「ビッグ・オイル」が侵略を推進しなかったばかりか、16万の米軍に加えてペンタゴンと国務省が支払う3万人の傭兵の存在と買収された傀儡政権があるにもかかわらず、油田の保安をただの一つとして確保していない、という事実である。 2007年9月19日付のロンドンのファイナンシャル・タイムズは、イラクにおける「石油メジャー」の顕著な不在に関する記事を大きく取り上げた。「巨大石油企業はイラクの埋蔵石油に対して待機戦を行う “Big Oil Plays a Waiting Game over Iraq’s Reserves” (September 19, 2007)」という記事である。いくつかの小規模な企業(oil minnows)が北部イラク(クルディスタン)で契約を結んでいるが、それはイラクの石油埋蔵量の3%である。「ビッグ・オイル」はイラク戦争を始めたのでもなく戦争から利益を得ているのでもない。どうして「ビッグ・オイル」が戦争を支持しなかったのかという理由は、彼らが占領後に投資をしていない理由と同じものである。「暴力のレベルはいまだに受け入れがたいほど高い。・・・。むしろ党派同士の間の緊張が増すために合意が結ばれる見通しは減り続けている。(同誌)」巨大石油企業にとってこのシオニスト主導の戦争に向かう最大の悪夢はすでにことごとく確定的なこととなっている。巨大石油企業の交渉と第3者の取引が戦前のイラクに安定と石油や収入の絶えることの無い流れを造っていたのだが、あの戦争がそれらの収入をゼロにしたばかりか、次の10年に対するどのような新しいオプションをもとことん奪ってしまったのだ。

 戦争があっても、この地域ではいたるところで自由化が進んでおり、米国石油企業と財政的な利益は前進してきた。米国がイスラム教徒を殺すことから発する障害や憎悪が増えたにも関わらずである。

 ビッグ・オイル、つまりテキサスの億万長者達はブッシュ家の政治キャンペーンの貢献者なのだが、ことが中東政策に及ぶとシオニスト権力構造には太刀打ちできなかった。彼らは内的・外的な権力に欠けていた。議会に対してシオニスト戦争推進者の力を振るわせるためのユダヤ共同体組織のような鍛えられた草の根組織に欠けていた。戦略決定を行う上級部局での地位にも、米国メディアで軍国主義的なプロパガンダを流すハーヴァードやイェールやホプキンス出身のアカデミックな著述家の軍勢にも欠けていた。再版されたデイリー・アラート紙での声明と論評で衝撃的なことは、それが公式なイスラエルの好戦的な姿勢と全く何の違いも存在しないという点である。 イスラエルがジェニンで子供達を殺していようが、レバノンで人口密集地を爆撃していようが、ガザの海岸でくつろぐアラブ人の家族に砲弾を浴びせていようが、デイリー・アラート紙は、イスラエルの公式発表と、人間の楯や事故や学校の児童に混じる狙撃主や自己誘発的な凶暴性に関する見え透いた嘘を、単純にこだまさせるばかりである。全期間を通して調べてみるとイスラエルによる何十万人ものパレスチナ人集団追放を問う批評記事がただのひとつとして存在しない。これほどに巨大な人類に対する犯罪は無いために、米国主要ユダヤ組織の総裁たちが防御することはできないのだ。これこそまさにイスラエルの公式な政策に対する奴隷的な従順さである。 それは、シオニスト権力構造が、「左」の弁護者たちやウォルトとミアシャイマーですら主張するような、単なるもう一つのロビーなどといったものをはるかに超える何ものかであることを、明確にさせるものだ。シオニスト権力構造は、中東地域での支配をがむしゃらに得ようとする植民支配権力の政策と利権に向かう伝動ベルトとして、そして、我々の民主主義的な自由に対する最も深刻な独裁主義的脅威として、圧倒的に邪悪なものである。あえて批判する者は誰一人として親イスラエル独裁主義者どもの長い手を逃れることができない。 出版社はピケで封鎖され、編集者は恐ろしい目に遭い、大学新聞とその配布者は恐喝され、大学の学長は脅迫状を送りつけられ、地方や国の議員候補は落選させられて中傷され、会議はキャンセルさせられその会場は圧力をかけられ、教授連は首にされあるいは昇進を拒否され、企業はブラックリストに上げられ、団体の年金基金は危機に陥れられ、劇場での公演やコンサートは中止させられる。そのようにして、国家と地方のレベルでこれらの独裁主義的シオニスト諸組織による弾圧的な一連の行動がとられるのだ。一部の者の間に恐怖を、ずっと多くの者の間に怒りを持ち上げ、じわじわと敵意を燃え立たせ、そして沈黙する多数派の間に自覚を植えつけながらである。

 「石油のための戦争」説の第2である地政学バージョンは国家の安全保障に焦点を当てよう。1991年の湾岸戦争の後、11年にわたる経済制裁と武装解除の間にイラクは、米国を後ろ盾にした北部のクルド人地区と恒常的な米国による爆撃や監視飛行によって、部分的に解体した貧しい弱小国となった。クリントン政権の間にイラクは何度も激しく爆撃され、50万人と推定される子供を含む100万人を超える国民が、米国が科した食料と基本的な医薬品と上水道施設の剥奪に関連する状況によって、早すぎる死を迎えたのだ。

 2003年の侵略の以前に、イラクはその海岸線も領空も、国土の3分の1をさえも、コントロールすらしていなかったのである。米国の侵略が明らかにしたように、サダムの軍隊は通常の戦闘でいかなる防衛線をも張るだけの基本的な能力をほとんど欠いていたのである。外国の親米勢力に対してあるいはホルムズ海峡に対して脅威を感じさせるような戦闘機は1機すらも無かった。米国に対する頑強な抵抗は後にゲリラ戦の中で非正規軍が携わる形で行われるようになったのであり、バース党政権によって作られた正規軍によってではない。 言い換えると、米軍基地や石油施設や親米国支配者たちや中東の輸送と搬出航路に向かって「国家の安全保障」の概念をどれほど拡張しようとも、サダム・フセインは明らかに脅威ではなかったのである。それでももし、「国家の安全保障」の概念を再定義しこの地域における米国とイスラエルの支配に敵対する可能性を持つ者を物理的に消し去るという意味にするとしたら、サダム・フセインは国家の安全に対する脅威であったとレッテルを貼ることが可能かもしれない。しかしそれは、米国の対イラク戦争への説明に関する議論を新たな領域に持ち込むことになり、中東での米国とイスラエルのヘゲモニーを求める戦争を正当化する偽のWMDと「石油のための戦争」プロパガンダをでっち上げた政治勢力についての議論へと変わるだろう。 米国によるイラクへの侵略と占領の責任が誰にあるのかに関する、はるかに重要な隠ぺいのキャンペーンが、我々をイランとの戦争に引きずっていく現在のプロパガンダ攻勢と極めて緊密に関係しているのである。


【イラク開戦理由の隠蔽から対イラン戦争プロパガンダへ】  小見出し一覧に戻る

 親イスラエルの権力構造はイランに対する攻撃のために、より激しいしつこさで戦いの太鼓を打つ。そして「軍事的な選択肢をテーブルの上に置く」ために、共和党のホワイトハウスと同様に民主党の議会と大統領候補たちを上手に誘導する。公然たる戦争プロパガンダと並行して、リベラル派のイラク戦争批判者たちが、イスラエルが「本当はイラク戦争に反対した」などと主張する記事を発表している。ガレス・ポーター(Gareth Porter)、元CIA分析官レイ・マクガヴァン(Ray McGovern)、ウィルカーソン大佐(Colonel Wilkerson)(コリン・パウエルの補佐官)、ウルトラ・シオニスト・ネオコンであるマイケル・レディーン(Michael Ledeen)などなどの実に様々な著者が、イスラエルは米国にイランを攻撃してもらいたかったのでイラク戦争には反対したと叫ぶ。他の者達は、イスラエルが米国にイラクへの侵略は中東にとって悲惨な結果を招くだろうと忠告していたと主張し、イランに向けてその秤を傾けながら対イラン攻撃は予想してきたことだと叫ぶ。こういったイスラエル免責者達は別の責任者達を指名するのだが、それはブッシュ-チェイニー-ラムズフェルドのライン、あるいは米国ネオコン(むしろシオン・コンとして知られる)であり、件の連中が主張することには、彼らはイスラエルと別に、あるいはこの地域におけるイスラエルの主導性を無視して、行動したというのである。

 またそれとは別の見方もある。こちらによると、イスラエルは米国のイラク攻撃を推し進め、戦争を立案しプロパガンダを進めそして戦術を練るために、米国の親イスラエル信奉者達を通してその力で全てを行った、ということになる。この見方は、シオン・コンたちがイスラエル国家の利益に反する行為は一切行わなかったと認識する。実際にイスラエルの高官たちは、米国政府、特にペンタゴンの特別計画室(the Office of Special Plans)の内部で、米国内の手先達と共に、軍事攻撃を正当化する偽情報を流すために日々の作業に携わっていたのだ。もしも、我々がこれから示すように、イスラエルが米国を後押ししてイラクを攻撃させることに深く関わったとしたら、そして米国をイランに対する戦争に駆り立てる現行の偽情報キャンペーンの背後にいるとすれば、反戦勢力と米国世論は「イスラエル要因」に公然と立ち向かわなければならない。

 我々は、あのようなイスラエルの免責論が、主要にこの消耗させる血まみれの限り無き戦争に我々を操ったあのイスラエル第一主義者達から米国世論の怒りをそらさせようとする試みである、という主張を打ち上げたい。米国のイラク侵略に対するイスラエルの責任を免除することは、このユダヤ国家と米国内にいるその手先どもにイラクでの米軍の破滅状態に関するあらゆる非難からの逃亡を許し、イランに対する米国の新たな血まみれの攻撃を立ち上げることについて彼らに「道徳的に潔白な経歴」与えてしまうことになる。イスラエルが我々に植民地主義の不治の病に効く二重の薬を与えるかのように見るのはとんでもないことであり、その免責はイスラエルとその手先どもがイラク侵略と同じパターンの情報操作と二枚舌で我々をイランとの戦争に導くことを許してしまうのだ。ホワイトハウスと民主党の議会はイスラエルの声をこだまさせて、核攻撃の脅威を膨らませ、イランの指導者を悪魔化し、イラン亡命者を基盤にした暴力的な親米主義者達を訓練し資金を与え経済制裁を加え外交政策を「失敗」させることを通して散発的な戦闘行為を支援し、・・・、そして我々を新たな戦争に向かわせるのである。そのリベラル(シオン・リブ;Zion-lib=リベラル派シオニスト)が主導するイラク侵略で果たした役割に対する責任免除を利用し、ジョセフ・リーバーマン上院議員のような忠実な伝令役の口を通して、シオニスト権力構造はイラクでの米国兵士の死に関してイラン人を非難するのだ。米国の若い兵士をイラクに送り込んで死なせたのは政府内外にいる好戦的なシオニストの高官たちではないが、それはイスラエル国家の命令で行ったことであり、米国民はそこにその怒りを直接に向けるべきだ。しかし実際にはイラン人たちがイラクの抵抗者たちに武器を与え訓練しているとして非難されている。イラクでの総崩れ状態の責任追及からイスラエルを外してイランを持ってくることは、戦争の裏面を隠そうとするイスラエルの目的に給仕するばかりか、より強大でより良く武装されたイラン人に対する新たな軍事的冒険に米国人を駆り立てることになるのだ。

 イスラエルの免責者たちはその政治的背景や目的では決して一様ではない。一部のリベラルたちは強力なシオニストの反発を買うことに恐れをなし、米国でのイスラエル・ロビーの活動を覆い隠そうとするが、それは親イスラエル民主党議員の間での親近感を勝ち取り、イラク戦争に批判的なユダヤ人リベラルの富豪たちから経済的な支援を得るための方便である。民主党の議長であるハワード・ディーンは、2006年のテルアビブ訪問中に、新たなイスラエルの台本に従って「米国は攻めるべき国を誤ったのだ!」と述べた。

 「イスラエル免責」作戦の代償は、イスラエルの戦略によって推進される連続的侵略の一部として我々をイランとの新たな戦争に連れて行くために、イスラエル第一主義のロビーが果す強力な役割を見過ごしてしまうことである。こういった狡賢い策略はバックファイアーを起こしつつある。民主党内のリベラルな親イスラエル集団の予断と偏見に働きかけたことで、イランに対するシオニスト主導のプロパガンダと好戦主義的な攻撃に反対する明確な反戦運動がちかごろ全く消えてしまっているのだ。

 一部の反戦シオン・リブたちが、イラク侵略を推し進めたシオン・コン/イスラエルの政策立案者達から一定程度の距離を置こうとしていることに疑問の余地は無い。しかしこのことは決して、新たなそしてより危険な軍事行動に対するいかなる反対姿勢から来るものでもないのだ。その逆にシオン・リブたちは、イランに対する新たなより攻撃的な戦争政策に有利になるように、信頼を失ったブッシュ-チェイニーのイラク政策を批判するのである。イスラエルと、地方レベルや国家レベルでのユダヤ組織およびキリスト教原理主義組織というイスラエルの伝動ベルトを免責することによって、リベラルたちは平和を求める同盟者を失ってきた。彼らは、米国国民と米軍内の一部によって次第に拒絶されつつあったイスラエルとその米国内の機関の強大な影響力をよみがえらせているのである。イラクにおける敗北状態に対して、ブッシュ/チェイニーおよび「ビッグ・オイル」内のその同盟者だけに責任を負わせ、イスラエルの役割を除外することによって、シオニスト権力構造と民主党にいるそのおべっか使いたち、リベラルな免責者たちは、中東での新たな戦争のサイクルに向かう道を開くのだ。シオニストとイスラエルに同調する米国による差し迫った対イラン攻撃を防ぐために、我々は、米国をイラクへの攻撃に追い込んだ者達について、完璧に分かっていなければならないのである。 


【イスラエル、シオニスト権力構造、そしてイラク侵略準備】   小見出し一覧に戻る

 分析してみれば解ることだが、極めて希な例外を除いて、イスラエル国家の政策と主要な米国シオニスト組織の政策との間にある相違を見出すことはできない。米国によるイラク攻撃の前段階はその格好の例である。1980年代末期以来、第1次湾岸戦争、クリントン政権による制裁と日常的な爆撃、イラク北部「クルディスタン」による他地域からの領土的分離、そして2003年の米国による侵略に至るまで、イスラエル政府は米国の議員達やベテランの政策決定者たちに圧力をかけてイスラエルの「敵」に対する軍事的政策の方向に進ませた。米国によるさらなるイラク破壊をせきたてるイスラエル国家の政策は、主要なシオニスト組織およびクリントンと後のブッシュ政権内部の重要なシオニストの高官たちを通して伝達された。デニス・ロス(Dennis Ross)、マーティン・インダイク(Martin Indyk)、マドレーヌ・アルブライト(Madeleine Albright)、リチャード・ホルブルック(Richard Holbrook)、サンディ・バーガー(Sandy Berger)、ウイリアム・コーヘン(William Cohen)とその他の者達はクリントン政権での最も重要な対中東地域外交政策決定者であり、彼らはイラクの制裁と爆撃と領土的分割を立案して実行した。省内にいた期間の後、クリントンの主要なシオニストたちはワシントンにある親イスラエル・シンクタンクで作業を行うこととなった。2001年9月11日の襲撃の後で、ブッシュ政権のトップ・レベル地位にいるシオン・コンたち、アリ・フレイシャー(Ari Fleischer)、ポール・ウォルフォヴィッツ(Paul Wolfowitz)、デイヴィッド・フラム(David Frum)、リチャード・パール(Richard Perle)、ダグラス・ファイス(Douglas Feith)、エリオット・エイブラムズ(Eliott Abrams)、アーヴング・(スクーター・)リビー(Irving (Scooter) Libby)、デイヴィッド・ウヮームサー(David Wurmser)等、およびジョセフ・リーバーマン(Joseph Lieberman)上院議員のような重要シオニスト議員たちが米国にイラクを攻撃するように要求したが、それは引き続く戦争連鎖の一部であった。それにはシリアとイランも含まれる。彼らはイスラエル国家、特にアリエル・シャロン首相の政策をオウム返しにしたのだ。

 イスラエル国家の高官たちが表現したことは、いかなる点においても、ブッシュ政権内で高位につく内通者たちの軍事主義的な努力と比べて、差し控えた箇所や相違点などは無い。またイスラエル盲従のロビーAIPACと比べても、あるいは主要新聞と放送メディアの親イスラエル論評著作者たちと比べても同様である。シオニスト・イデオローグ達は米国軍の高官たちを臆病者と罵りながらあらゆる場所で優勢を占めた。イスラエルは1980年代末期以来の政策を維持しながら、ラムズフェルド、パウエル、ライスそしてブッシュによる全てのトップレベル会議の中で、イラク侵略と占領に向けてブッシュ政権をせきたてた。イスラエルのメディアは、わずかの例外を除いて、サダムを悪魔化し中東とイスラエルの安全保障に対する彼の「脅威」を強調し、パレスチナの自爆攻撃とイラクによるパレスチナ人の民族精神に対する支援を同一視し、そして米国内のキリスト教原理主義者の同盟者達にイラク侵略要求の主張に従うように激を飛ばした。

 イスラエル国家とブッシュ政権内で高位に就いたシオニストの官僚達との関係について分析する際に最初にそして最も重要な点として明らかになるのは、占領地でのイスラエルによる民族浄化と占領パレスチナでの際限の無い入植地の拡大、およびイスラエルの中東に対する支配権の強化に反対する同地域の複数の政権を根絶するという戦略に基づいて、テルアビブがその政策を形作ったという点である。ブッシュ政権内のシオニスト・エリートは、戦争の口実を発明しプロパガンダを振りまき、そして極めて重要なことだが、米国によるイラク侵略を上手に計画して作戦を実行させた。この「作業部隊」には、(AIPACを含む)米国主要ユダヤ人組織代表者会(the Presidents of the Major Jewish American Organizations)に支援された、上流階層にいるシオン・コンたちや議会に対する影響を利用する地方や州や地域のユダヤ人連合が含まれる。

 元ペンタゴン分析官であり元米空軍中尉であるカレン・クイアトコウスキ(Karen Kwiatkowski)は、このイラク戦争を導く時期を通して、イスラエルの軍幹部、情報幹部その他の高官達が、国防次官ダグラス・ファイスのようなシオニスト・ペンタゴン高官たちと毎日のように接触していたと断定的な証言を行った。相談や情報交換、そしてペンタゴン内トップのシオン・コンたちと米国内にいるイスラエル軍の上級工作員たちによる合同作戦会議がひんぱんに行われていたが、これは米国をイラク侵略に向かわせるという緊密な合意があったことを示している。イラクが中東地域で連続して行う侵略の最初のものでありイランとシリアがその後に続くというシオン・コン/イスラエルの意思一致があったわけで、これは占領の当初の「成功」後にすぐに明らかになったことである。この当時、イスラエルで流行ったジョークはこうである。「バグダッドを奪うことのできる者なら必ずテヘランに向かう」。2002年11月にアリエル・シャロンは、ロンドンのタイムズ紙とのインタビューで、「米国がイラクに侵攻した次の日」にイランへの爆撃を要求したのであった。

 戦争を連続させることに関するシオン・コン/イスラエルの計画は、政策文書「アメリカ新世紀計画(Project for a New American Century=PNAC)であからさまに宣言された。これは、米国による世界支配という米国-イスラエル版「我が闘争(Mein Kampf)」であり、そこではイスラエルが米軍を用いての権力と利益の享受者となるのである。中東での米国戦争政策を立案し実行させたシオン・コンのほとんどは、この「アメリカ新世紀計画」の著者あるいはスポンサーとしてリストアップされる。その多くの者達は同時にリクード党リーダーであるベンジャミン・ネタニヤフの政策作りに貢献したのだが、それは特にイラクを解体して取り扱いやすい民族グループに分割することを求めたのである。

 この地域に対するサダム・フセインの「脅威」についてイスラエル諜報組織が行った「偽情報の捏造」は、脚色されたうえでホワイトハウスによるプロパガンダの必要性にあてがわれた。イスラエルのプロパガンダがサダム・フセインを現代のヒトラーであるようにしつこく繰り返される一方で、シオニストのプロパガンダ主任でありブッシュ用の台本作者であるデイヴィッド・フラムは、ブッシュが世界を前にして他国を予防的に攻撃する意図を語る悪名高い「悪の枢軸」演説の中で同じテーマを繰り返した。イスラエル政権の好戦的プロパガンダを考えるならば、イスラエルの世論が全面的にこの戦争を望ましく思っていたことは納得のいくことである。それは米国の主要なユダヤ組織の指導者達も同様だったのだが、しかし米国のユダヤ人の多数は異なっていた。特に若いユダヤ人、およびいかなるシオニスト(イスラエル第一)前衛組織にも属さない者達である。

 イスラエルの顧問達と米国政府のシオン・コンたちは、イラクで国民と軍の構成を全面的に解体させることに極めて大きな影響を及ぼした。いわゆる「脱バース化キャンペーン」なのだが、イスラエルの地域的な覇権に反対するイラクの近代世俗共和制を再建しようとするいかなる試みをも決定的に弱体化させる目的のものであった。このイスラエルの政策はシオン・コンたちによって追求されたものなのだが、それは、イラクの国家と社会をバラバラにして、親イスラエルのイラク人亡命者(ダグラス・ファイスと仕事上の関係が深いアーメッド・チャラビのような者)たちによって運営される前近代的な種族単位の小地域群の社会に変えることであった。それらは中東地域でイスラエルの覇権に挑戦する能力を永久に持ち得ないものである。

 イスラエル-シオン・コンの政策は米軍がイラク国家を破壊するのを確実にした点までは成功したのだが、第2場であるイラン侵攻への道を進む速やかな勝利を確実にする点には失敗した。イラク人たちによる巨大な武装抵抗のためである。アラブ人に対する盲目的な民族的偏見の中で、イスラエルの高官たちとその米国でのエージェントたちは、自分の社会への破壊に対するイラク人による人民戦争が盛り上がる可能性を計算に入れなかったのである。イラク人の抵抗が勢いを得て米国軍の経済的な損失が膨らむにつれて、米国の世論は戦争に反対するようになり、そして誰が軍事的な総崩れ状態の責任者なのかを問い始めた。この危険な徴候を示す疑問に直面して、シオニストのプロパガンダは彼らの足跡を覆い隠すためにギヤーを切り替えた。戦争を煽ったシオニスト官僚のトップは慌てて表舞台から去ったが、それは最も明白な戦争犯罪者どもから始まった。ポール・ウォルフォヴィッツ、ダグラス・ファイス、そしてペンタゴンのシュムスキー、およびホワイトハウスのデイヴィッド・フラムとアリ・フレイシャーである。国務省にいたより目立たない強硬派たち、エリオット・エイブラムズ、スクーター・リビー、デイヴィッド・ワースマーなどは、もう少しだけ長くとどまった。後にリビーは、ニジェール大使ジョセフ・ウイルソンがシオニスト軍団の戦争につながる「情報」捏造を表ざたにしたことに関連して彼の妻であるCIA職員の名前を漏らした役割のために、重罪に問われることとなった。【訳注:リビーは結局、ブッシュの力添えで実刑を免れた。】  


【イランとの戦争:シオニスト権力構造(およびイスラエル)にとっての最優先事項】   小見出し一覧に戻る

 イラン破壊のためのイスラエルによるキャンペーンはすでに二つの戦争行動に結び付いている。2006年にイスラエルはレバノンを襲った。その狙いはイランの同盟者であるシーア派政治軍事組織ヘズボラーを破壊するものであったのだが、これは失敗した。その1年と少しの後(2007年9月6日)、イスラエルはより挑発的な行動に出た。何の攻撃も受けていないのにシリアの領土を爆撃してある軍事施設を破壊したのだ。シリアとイランが相互防衛協定を結んでいるため、このイスラエルの行動はイランとシリアが奇襲攻撃に対して反応するかどうかを試すために計画されたものだった。
 イスラエル諜報部のプロパガンダ機関は、以前の大量破壊兵器の嘘と比較できる偽情報のひとかけらを準備した。彼らは、北朝鮮が建設して核物質を提供している核施設を爆撃した、と言い張ったのである。イスラエルの偽情報は即刻、ロサンジェルス・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナル、そしてニューヨーク・タイムズといった米国の主要新聞や、あらゆる大テレビネットでその通りに繰り返された。親イスラエル・プロパガンダの専門家達はこの攻撃を正当化し、ワシントン・ポスト記事(2007年9月20日)の中で次々と引用された。ワシントン・ポストは、親イスラエルの中東政策サバン・センター(今や信用を失墜したブルッキングズ研究所の中にある)で諜報「専門家」をしていたブルース・リーデル(Bruce Riedel)の発言を引用して次のように書いた。「それが重大な攻撃であったことに疑問の余地は無い。それは極めて重要な攻撃目標だった。それは、イスラエル人たちがシリアとの戦争を非常に気にかけており予想される戦争の可能性を小さくしようと望んだときに起こったものだ(ママ)。この決定は、シリアが戦争を起こす可能性があるという彼らの懸念にも関わらずなされたものである(ママ)。この決定はイスラエルの軍事計画者にとってこの攻撃目標がいかに重要であったのかということを表している」。言い換えるならば、イスラエルが「戦争を懸念して」いるために、プロパガンダ要員たちがこの攻撃目標の性格を知ることすらないような、挑発を受けていない戦闘行為に携わる、というのである!

 2007年9月21日に、米国主要ユダヤ人組織代表者会(the Presidents of the Major American Jewish Organizations=PMAJO)の代表的なプロパガンダ紙(デイリー・アラート)が続いてこのワシントン・ポストで繰り返された好戦的プロパガンダを再生産し、それをワシントンと全国のあらゆるトップクラスの官僚と議員に送りつけ、AIPACのロビイストたちを動員してイスラエルの派手な戦闘行為に対する米国の支持を確保させたのであった。この詐欺的なプロパガンダの機能について明らかなことは、デイリー・アラートがファイナンシャル・タイムズ(2007年9月21日号4ページ)からの抜粋を極度に誤誘導させる形で公表した点である。それは、元記事に含まれていたイスラエル・シオニスト・プロパガンダを暴露する数多くの段落を抜きにして、「可能性ある」シリア-北朝鮮の核の結びつきというイスラエルのプロパガンダの線をつないだだけのものだ。このファイナンシャル・タイムズの記事は、米国進歩センター(the Center for American Progress)で核政策責任者を務めるジョセフ・サークシオン(Joseph Circcione)の次の言葉を引用している。「イスラエルの攻撃がシリア-北朝鮮間の明確な核開発協力に関連するものであるとは非常に考えづらい。基本的で周知の事実なのだが、シリアの40年間に渡る核研究計画はあまりにも初歩的でありいかなる兵器能力をも高めることができるものではない。米国の各大学はシリアよりも大きな核施設を持っているのだ。」(ファイナンシャル・タイムズ、2007年9月21日)ブッシュ大統領の元アジア担当顧問で北朝鮮研究の専門家であり今は戦略国際研究センター(the Center for Strategic and International Studies)にいる人物も同様にイスラエル-シオニストの核兵器策謀の正体を暴く。「もし北朝鮮がシリアに核兵器用の物質を運ぶほどに愚かだとしたら、あるいはシリアのような北朝鮮の外にある場所で作業をしようとしていたのなら、私にとっては驚愕の極地だろう(ママ)」。イスラエル-シオニストの戦争プロパガンダにとって同様にまずかったことに、ブッシュ政権は2007年中に行ったあらゆる会議の期間に北朝鮮のシリア関与の可能性を一言も取り上げなかった。それがシリアに対する敵意を非常に掻き立てることであり、攻撃を仕掛けるためのあらゆる口実を探しているにも関わらず、である。ブッシュ政権がイスラエルの言い訳に大慌てでなびいていった前述のイスラエルの挑発行為とは逆に、ブッシュはイスラエルによるシリアに対する攻撃についてのコメントを拒否した。どうやら、それが米国を引きずり込もうと願うイスラエルの挑発行為であったと彼の諜報係官からアドバイスを受けたものとみえる。

 シリアとその国防に対するイスラエルの戦闘行為、および米国シオニスト権力構造によるその支持は、イランとシリアに対する合同の戦争に米国を引きずり込む最新のステップである。2007年6月から9月までの180に及ぶデイリー・アラート(米国主要ユダヤ人組織代表者会の私的機関)の記事を全体的に調査すると、イランとの戦闘行為に取り掛かり、イランに厳しい経済制裁と海上封鎖を押し付け、そしてイランとの全面対決を準備するように求めるという、3種類の要求を米国に対して行っている。イスラエルの好戦的な姿勢に対して疑問を発するような記事や声は唯の一つも見当たらない。デイリー・アラートの全ての記事はイスラエルの主張をオウムのように繰り返す。イスラエルがガザ地区で100万人の閉じ込められた市民に対して行う残虐な電気、ガス、飲料水の供給停止を支持するときでもそうである。それは国際法のもとでの戦争犯罪行為なのだ。デイリー・アラートの文章の中では、イスラエルが丸腰のパレスチナ人の少年や少女を「戦闘員」「狙撃主」というレッテルを貼って殺害する。そしてデイリー・アラートはイスラエルの「和平交渉」を「誠意をもって」実行されているものであるかのように描く。実際には土地の収奪と子供達を含む大勢のパレスチナ人の殺害が継続中なのだ。「米国大統領ジョージ・W.ブッシュが(アナポリス)和平会議を2007年7月16日と10月15日に開催する間に、イスラエル軍は12名の子供を含む104名のパレスチナ人を殺害した。」 ファイナンシャル・タイムズ(2007年10月18日号、4ページ)

 2006年11月にイラク戦争に反対する選挙民の怒りが増えたおかげで民主党が議会選挙で勝利した後、イスラエルの外相ツィッピ・レヴィはワシントンでAIPACの会議に出席し、数千人のシオニスト活動家と米国民主党・共和党議員の巨大な分隊に対して、ブッシュ政権によるイラク占領を支持し続けるようにかり立て、イランに対する新たな戦争に向けて彼らを扇動した。極めて扇情的な長談義の中で、彼女はありもしないイランの核開発能力の「実際的な脅威」を絶叫した。このユダヤ・ロビー全員がその意思を汲み行動に向かったのである。

 シオニスト権力構造の広がりと深さと中央集権的な仕組みはあらゆるものにも勝る。それは「ロビー」という言葉で適当に誤魔化されうるものだ。この点で、ミアシャイマーとウォルトはイスラエル・ロビーの研究の中で親イスラエル勢力の権力と政治的影響力を過小評価している。続いて、シオニスト権力構造の力を量るには数多くの要素を計算に入れなければならない。それらの中にはその直接的な力と共に間接的な力も含まれる。シオニスト権力構造が持つ力は、直接的には政治的、学術的、そして文化的な意思決定を行う者達に及び、彼らのポリシーが親イスラエル的、親シオニスト的な利益を支えることを確実にさせる。もっと直接的なその力の表現は、シオニストたちがトップの意思決定部門を占領しイスラエルの軍事的・経済的な利益のための政策を作る場合である。国家安全保障委員会(the National Security Council)でブッシュ大統領の重要な中東顧問を務めるエリオット・エイブラムズがその多くの例の一人だが、祖国安全保障省長官であるマイケル・チャートフ(Michael Chertoff)も同様である。彼は与えられた資金の4分の3を私的なユダヤ組織の「安全保障」に割り当てているのだ。

 同様に恐ろしいことに、シオニスト権力構造は数多くのメカニズムを通して間接的な影響力を行使するのである。その一つとして、議員たちの小グループを通して大多数と交渉する力がある。たとえば、AIPACが法案を作り上げそれをリーバーマン上院議員に提出させ、そしてキル(Jon Kyl)上院議員が共同署名し、イラン革命防衛軍を「テロリスト」としてレッテル貼りを行ったのだが、それはブッシュに攻撃を仕掛けさせる道をならすものである。この法案は議会の80%の賛成を得て通過した。

 累積的な権力はある一つの案件に対してシオニスト権力構造の様々な要素が集中することによって作られる。例えば、親イスラエル的な作家とあらゆる主要組織と左翼から極右までの範囲にいるユダヤ人たちが、ミアシャイマーとウォルトの論文とそれに続く本を、共同で非難する。そのほとんどが人身攻撃(「反ユダヤ主義者」)か、あるいは事実に基づくデータを無視する非論理的で複雑怪奇な主張の、どちらかに訴えるのだ。

 プロパガンダを張ることはシオニスト権力構造好みの強力な武器である。これは、現在と未来の政策立案者を恐れさせるためにイスラエルとシオニスト権力構造による懲罰的な批判を上手にばら撒くことである。その例として、ハーヴァード法科大学院のシオニスト・ファシストの教授であるアラン・ダーショヴィッツ(Alan Dershowitz)はシオニスト権力構造に支えられてキャンペーンを成功させ、ノーマン・フィンケルシュタイン教授を大学のポストから追い出した。これが将来イスラエルを批判する可能性のある全ての者に対する「見せしめ的な懲罰」として機能するのである。ダーショヴィッツのキャンペーンは、ナチの死の収用所を生き延びたフィンケルシュタイン教授の病気の母親をユダヤ人「カポ」つまりナチ協力者と中傷するまでに至ったのである。

 シオニスト権力構造は、私的・公的な両面で相互に強制力を働かせあう複合的な手段を持っている。大きなスケールで長期間の政党と選挙に投資することは議会への影響力を手に入れることである。これは次に、党全体の大統領指名や議会で委員会の作業に対する支配権を手に入れることで、偉大な少数派であるシオニスト議員団の権力を増大させることになる。これが相互にフィードバックし、米国の中東外交政策を形作ることや主要新聞や週刊誌などの各メディア産業分野で意見欄に親イスラエル作家が登場することで、シオニスト権力構造のより大きな影響力を育てるのである。

 シオニストの力はまた、長期間にわたる曲解に満ちた全く一方的なプロパガンダ・キャンペーンの結果でもある。そのプロパガンダはイスラエルのアラブ人、特にパレスチナ人の批判者を悪魔化し、(世界で第4、中東唯一の核戦力を誇る)イスラエルを、悪意に満ちた独裁政権に取り囲まれる民主主義の砦であるかのように描くのだ。この手法と主要メディアのほとんどの部分へのコントロールを通して、このシオニスト権力構造は、イスラエルによるレバノンの人口密集地やガザなどのあらゆる場所に対する恐怖の爆撃などの出来事に対して極めて偏った報道を提供する。米国でのシオニスト権力構造によって計画される世評作りの力は中東における現実を悪化させる作用として働き、それが、イスラエルによる軍事支配と土地収奪そして恒常的な暴力的攻撃という40年間の苦しみを受けるあらゆる年齢と男女のパレスチナ人犠牲者を暴力集団であるかのように仕立て上げ、イスラエルの惨殺者たちを善良で平和的な犠牲者であるかのように描くまでに至っているのである。 


【イスラエル・ロビーか?あるいはシオニスト権力構造か?】   小見出し一覧に戻る

 ミアシャイマーとウォルトは親イスラエル勢力の機構を「ロビー、米国にある他のロビーと同様なもの」、政府外にある「個人やグループのゆるやかな集合体」として描いた。それがイスラエルの利益のために動いている、というわけだが、これほど真実に遠いものはない。米国におけるこのイスラエルの権力は、極めて組織化され十分に資金を与えられ、そして米国中で中央の指令どおりに動く複合体を通して発揮されるのだ。このシオニスト権力構造には無害そうな名前で様々な種類の政治的提案を行う団体がある。少なくとも12のプロパガンダ製造工場(「シンクタンク」)が主としてワシントンと東海岸の高度に連携した数多くの元政策立案者を雇っており、また52の大きな米国ユダヤ人組織が「米国主要ユダヤ人組織代表者会(CPMAJO)」の傘下に結集する。AIPACなどの全国組織(ADLやAJCなど)は連邦議会幹部へのロビー活動レベルで重大な影響力を持つ。しかし、批判者を探り排斥し、地方のメディアをコントロールし市や町や村全体の世論を形成することにおいて、同様に、あるいはより重要ものは地域のユダヤ共同体連合と組織であり、それらは地域の文化計画担当者、編集者、書店、大学、教会そして市民グループを威嚇して、イスラエルとそのシオニストの子分たちを批判する演説者や作家や芸術家や宗教活動家などの公的な言論活動を拒否するようにさせるのである。

 シオニスト権力構造の土台は地域の活動家である医者、歯医者、弁護士、不動産ブローカー、地主達であり、彼らは地域の連合会を主催しその何万人という共謀者達を治める。選出された議員達に嫌がらせをし悩ませ威嚇しカネを巻き上げプロパガンダの馬鹿騒ぎを組織するのは、そしてイスラエルの戦争を支持し米国からイスラエルへの何十億ドルもの援助一式を増やしているのは、実にこの連中なのだ。この各地域でのシオニスト権力の構造は、年金用の基金を抑えて見込みの無いイスラエルの国債に何十億ドルも使わせ、イスラエルが名指しする「敵の国家テロリストども」と金融取引をする企業への投資を止めさせるキャンペーンを上手にやり遂げる。米国の大学教授をスパイするのはユダヤ人をベースにした親イスラエル学生組織である。誰がイスラエルに批判的であるのかを調べ、地方版と全国版の報道機関でこき下ろし、大学当局に彼らを首にするように圧力をかける。ユダヤ人人口が1%に満たない場所であっても、シオニストのゼロテ党員【訳注:古代ユダヤでローマ帝国支配に抵抗した過激な民族主義者】 たちは、デスモンド・ツツ司教のようなノーベル平和賞を受賞した神学者をキャンパスでの講演会から排斥するように、小さなキリスト教系の私立大学に圧力をかける力があるのだ。シオニストの蛸は大都市や国家の権力中枢をはるかに超えてその触手を伸ばし、遠い地方の町や文化圏にまで届かすのである。米国の小さな町の死亡記事でさえも例外ではない。コネチカットの新聞が、著名なパレスチナの老婦人でヘブロン出身のコミュニティー指導者である61歳のシャディーン・アブ・ヒジレフ(Shadeen abu Hijleh)の死亡広告を掲載した(2003年5月)。彼女は故国でイスラエル兵に撃ち殺されたのだが、イスラエル軍の犯罪を表ざたにしたことにその地域のユダヤ人連合のメンバーが激昂し、結局、死亡欄に彼女の米国人の友人や親族が書いた感動的な寄稿ページを検閲し削除させたのだった。

 中央集権的な仕組み、つまり同調された製作、攻撃目標、役割分担、資金の吸い上げ、大規模な特別のキャンペーン、ブラックリスト(「反ユダヤ主義者=anti-Semites」および「自虐ユダヤ人=self-hating Jews」)、そしてネットワークの全てが集合して、シオニズム権力構造を作り上げているのである。ミアシャイマーとウォルトは、この主要な親イスラエル・ユダヤ組織の首脳部と地方スタッフおよび地域組織の関係の分析をし忘れている。さらに、発言者や活動や資金提供者をイスラエルの利益に都合の良いように中傷し検閲しあるいは支援するために彼らがいかに迅速に動きを起こすことができるのかを分析し忘れている。

 国内中で地域のユダヤ共同体関係委員会(Jewish Community Relations Councils)の発表する記事が、ミアシャイマーとウォルトの本「イスラエル・ロビー」を非難する声をオウム返しにするか中傷的なデッチ上げを繰り返して流している。MとW(ミアシャイマーとウォルト)の議論についての実にデタラメな情報に基づく戯画からみると、彼らがその本の表紙すらほとんど見ていないことが明らかである。

 この本に対する圧倒的なユダヤ人の知的攻撃からでてくる巨大な感情の噴出から一つのことが明らかである。現代ユダヤ知識人の知的レベルが、共同体的なねたみや悪意と党派心からのこき下ろしがデータと論理の理性的な検討よりも重要視される程度にまで深刻に劣悪化しているということである。MとH【訳注:著者は‘H’としているがこれはウォルトの‘W’の間違いではないか?】 に対して返答するADLのエイブラハム・フォックスマンの文学的な努力は、1930年代のモスクワ公開裁判の間に呼び物となったスターリニストの悪罵の仕方を思い起こさせるものだ(アンドレイ・ヴィシンスキーの我がユダヤ版として)。これらの知的下劣さの影響を説明するものは彼らの毒に満ちた文章から立ち昇る邪悪な気でも理性への訴えかけでもない。進歩派シオニスト(もしそのようなものがあるとすればだが)たちによる理性的な議論にみせかけたものはある。しかし実際には、彼らのメッセージの繰り返しが競争相手のいないマス・メディアの情報吐き出し口全部を通して循環するのみである。

 シオニスト権力構造はデータの捏造を通して戦争行動を組織化したのだが、それは2名のペンタゴン官僚(ウォルフォヴィッツとダグラス・ファイス)、副大統領室(ワースマーとアーヴィング・スクーター・リビー)そして国家安全保障省(エリオット・エイブラムズ)の経路を通し、大統領室(アリ・フレイシャー)が組織し、そしてブッシュの予防戦争の演説を書いた(デイヴィッド・フラム)ものである。彼らは今や、何千人もの兵士の死亡に悩む米国国民の怒りに直面することを恐れており、それはこのイスラエルのための戦争の筋書きを作った者や手先となった者達が経験したことのないレベルにまで達している。この悲惨な戦争の正体を突き止められないように、シオニスト権力構造の戦争計画者たちとプロパガンディストたちは再び嘘を持ち出し(米国を戦争に連れ込む際のイスラエルの決定的な役割の否定)、アラン・グリーンスパンのようなもう少し賢い情報操作屋が思考力の無い米国左翼と一緒になって「石油のための戦争」という古臭いデマを引きずり出すのである。 


【石油のための戦争か、イスラエルのための戦争か:公にされた記録】   小見出し一覧に戻る

 シオニスト権力構造のイラク戦争支持は、52の主要なユダヤ組織とともに、有名な作家、時事評論家そして団体指導者たちによる、開けっぴろげで執拗なプロパガンダ・キャンペーンであった。そこには何一つ「陰謀」も「謀略」も無かったのだ。シオニストのキャンペーンは厚かましいほどに公表され攻撃的で繰り返されたものであった。米国主要ユダヤ人組織代表者会の広報誌の重要なプロパガンダ機関であるデイリー・アラート紙、2002年から2007年9月までの1760部をきちんと読み直してみるならば、我々はシオニスト権力構造の見解の科学的なサンプルを手に入れることができる。それぞれの紙面には平均して5種類の、イラクおよび/またはイランとの戦争、あるいはそれに向けての動きに都合の良い記事が書かれていた。デイリー・アラートは、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・サン、ザ・ニューヨーク、ロサンジェルス・タイムズ、そしてロンドンのデイリー・テレグラフやタイムズ、Yネットその他の新聞で常連の主だったリベラルや保守、そしてシオン・ファシストの作家や学者たちによる評論記事を大きく取り上げた。言い換えると、戦争開始前と侵略後の時期に、親イスラエル・ユダヤ諸組織はおよそ8800ものイラク戦争賛成のプロパガンダを作成し、それを傘下の組織と連邦議員全員、上級機関の指導的な地位にある者達全員に配布し、各地域の活動家とワシントン・ロビイストたち(AIPACだけでも150名)の軍勢、さらには各地域と地方の支部から来る何百名ものフルタイムの活動家達にフォロー・アップさせていたのである。
 主要なアングロ・アメリカ系の産業経済新聞、ファイナンシャル・タイムズの2002年から2007年9月までを調査して比較するならば、イラクとの戦争および現在のイランに対する巨大石油産業の政策についてはもはや明白である。私はファイナンシャル・タイムズその社説、論説および意見記事の1872件を調査してみたが、大手(あるいは中小)石油企業のスポークスマンや代表者によるイラク侵略と占領、およびイランへの爆撃を求めているような記事や寄稿は唯の一つとして存在しない。石油ロビーも無いし、議会とブッシュ政権に米国の石油利権を防衛するために戦争に向かうように要求する草の根的な組織なども無かった。しかしシオニスト権力構造は活動的であり、武装解除され制裁を受けるイラクが核武装のイスラエルに対する「現存の脅威」であるかのような虚構を全面的に打ち出した。

 米国によるイランとの軍事的対決を求めるプロパガンダに関しても、シオニストと巨大石油産業の同様な比較によって、米国がイスラエルのための中東戦争に加わるようにせきたてる主要なユダヤ人組織の集中ぶりについての同様な見解が裏付けられる。2004年から2007年9月までの間(3年と9ヶ月間)、例のシオニスト・プロパガンダ紙であるデイリー・アラートの960部で、1部に平均して6つの記事が米国かイスラエルによる即座のあるいは近い将来のイランに対する予防的な軍事攻撃と、国連安保理が支持できるものよりも強力な経済制裁、組織的な資本引き揚げとイラン・ボイコットを強く求めている。同じ期間にあるファイナンシャル・タイムズの1053部を調査してみると(ファイナンシャル・タイムズは週に6回、デイリー・アラートは週に5回発刊されるのだが)、巨大石油企業の代表者や広報官による対イラン戦争を支持する寄稿や論評記事はただのひとつとして見つからない。逆に、イラクの場合と同様にだが、主要な石油企業のリーダー達は、イスラエルにそそのかされた戦争がこの地域全体を不安定化させ現存の石油施設の破壊を導き、輸送ルートと航路をだめにし、そして有利な取引契約を中止させる懸念と恐れを表明する。昨今のシオニスト・プロパガンダとは対照的に、ビッグ・オイルは米国がイランでの投資活動に反対する制裁措置を解除するように求めている。ビッグ・オイルがその競争相手よりも有利な取引を失っているからである。

 「左翼」のトロツキスト・シオニスト連が主要な戦争推進者として巨大石油企業を指名するのとは全くもって逆に、テキサスの巨大石油企業はサダム・フセインのイラクとうまい商売をしていたのであり、このすでに処刑された指導者との違法な契約で何億ドルも稼いでいたのである。最近テキサスの石油長者であるオスカー・ワイアット(Oscar Wyatt)がサダム・フセインに賄賂を渡していたことで起訴されたのだが、彼は戦争前のイラクとの有利な石油取引に携わっていた多くのビッグ・オイル・ディーラーたちの一人である。(ファイナンシャル・タイムズ、2007年10月2日、2ページ) 


【シオニストの戦争挑発:恐怖と毒】   小見出し一覧に戻る

 イランに対する米国中心の軍事攻撃を求めるイスラエルからの圧力が高まり、シオニストの強圧と政策立案者たちによる全面的なでっち上げに対する米軍高官たちと一般大衆の憎しみが増すに連れて、その反対者達を外国勢力に仕える売国的な者と決め付けて黙らせる努力をしながら、シオニスト権力構造がその独裁性を激しくむき出しにしつつある。過去において外国勢力のエージェントは、いったん発覚したが最後、厳しい制裁を受けるかもっと悪いことになっていた。今日、イランとの新たな戦争による大きな犠牲がはっきり見えてくるにつれて、膨大な数のシオニスト・インサイダーたちは自分達がますます危険なゲームを行っていると、そしてイスラエルにいる「操り手たち」が自分達にそのアジェンダの第一としてイランへの攻撃を推進させるように圧力をかけていると、気が付いている。

 究極的にいうと、シオニスト権力構造は、その財力と今の米国中東政策に対する支配力にもかかわらず、自分達が全人口の1%未満を代表するに過ぎないことを知っている。彼らは大きな基盤を持たないエリートたちなのだ。彼らは他の99%の人々が動き出さずにイスラエルの利益に尽すように誘導されあるいは怯えさせられている限りにおいて、力を持つのである。しかし、イスラエル人に指導されるシオニスト権力構造とその破滅的な戦争挑発活動に注意を呼びかける本や記事や演説が増えてくるにつれて、自分たちのメンバーを、聡明な大学教授や、ビジネスや投資の世界で成功するリーダーや、米国の最大の国益に仕える憐れみ深い政治家として、手前味噌的に押し付けてきたイメージが崩れ始めている。そのイスラエルへの奴隷的な忠誠心の醜い面、傲慢さ、イスラエル自身を地域の挑戦者無き権力として確立させるために米国を戦争への道に駆り立てる人種主義的な植民権力が、米国人のおおっぴらな議論のテーマに入っているのである。

 シオニスト権力構造はその政治的な力のピークに、あるいはその近くに達している。議会において、政府指導部において、祖国安全保障省において、そして予想される司法長官で、「文化」とマス・メディアのプロパガンダにおいてである。しかし皮肉なことに、シオニスト権力構造がピークに立つときに、同時にそれ以上の姿をさらけ出しているのだ。米国国民によってこのように見られたいと彼らが望んでいる姿をはるかに超えたものとしてである。

 有名大学や「シンクタンクのプロパガンダ製造工場」に身を潜める横着で図々しいシオニストの論客どもは、その公的な立場への懸念と、おそらく個人的な心配をも感じ始めている。それを感じるからこそ、彼らは自分の身をひるがえして、今や大変な不人気にさらされるイラク侵略を導くあらゆる戦争計画とプロパガンダに残る自分の指紋を覆い隠そうとしているのだ。彼らは否定や共謀や「戦争挑発」のあり方について露骨な嘘に逃げ込む。言語道断の嘘が蔓延しているのだ! シオニスト権力構造の売国的な役割と彼らの共謀を暴露される場合、より攻撃的で頑迷なシオン・コンたちは即座の獰猛な応答をし、そのご自慢の学術界での地位にふさわしからぬ人身攻撃的な悪たれつきの下品な言葉を用いて、学術的長談義をすることになる。シオニスト権力構造とその代書人ども、そのスパイどもと権力ブローカーどもはひ弱な存在なのだ。彼らは米国民の利益に対して莫大な犯罪をしでかしてきた。彼らの行動は何万人という米国兵士を死と不具においやってきたが、その99.9%は、偉大なイスラエルや米国内にいるそのエージェントどもに対する「忠誠心」など持ち合わせていないのだ。そのエージェントどもは自分の子弟には豪勢な社会的経歴を追及させているわけである。最近の推計では、イラクの地で米国兵士として勤める者の中で0.2%未満が米国のユダヤ人だった。その一部は元ソ連からのユダヤ人移民であった。イラクとイランを侵略し破壊するシオニストの強い圧力にも関わらずそうなのだ。ブッシュ政権を押してイラクを侵略させ占領させる際のシオニスト権力構造による不正なでっち上げは、米国軍を前例の無い不和と士気の喪失に追い込んでいる。何千人もの士官が早く退職したがり、何千人もの兵士が無許可で離隊して軍法会議にかけられ、怒りを表明する退職した上級士官たちの数が増え続ける。国防長官のロバート・ゲイツがイランへの即時侵攻に反対して中東にいる軍高官達の支持を固めたのは驚くに値しない。

 批判者に対するシオニストの罵詈雑言は、彼らの二枚舌、およびイスラエルの植民政策と米国人の民主主義的価値観を混同させる嘘を暴露され表ざたにされることへの恐怖感を表現している。他の何によってもその金切り声の人格攻撃を説明できない。不愉快な現実を直視し悲惨な状況を修正する作業にかかるよりも、むしろメッセンジャーを殺しにかかるのである。イラク占領が面倒なことになり米国人がイラン攻撃の金切り声の呼びかけに抵抗するにつれて、イスラエル国家は米国内のプロモーターたちを不愉快な立場に追いやっているのだが、それにもかかわらずイスラエルは実際の勝者の姿を現している。つまり、イラクの統一性と世俗的共和制の破壊を成し遂げたのだ。 


【かすり傷から壊疽へ:シオニズムからシオン・ファシズムへ】   小見出し一覧に戻る

 シオニスト保守派の「主流」たちは早くから、何十万ものパレスチナ人を家と土地から追い出すイスラエルの残虐な戦いに対する心からの無条件な支持を通して、その独裁主義的な政策を誇示した。それに続いてシオン・コンたちは、イスラエルの軍事占領に抵抗する何千何万人ものパレスチナ市民を殺し投獄し、西岸地区占領地とガザを500以上の軍駐屯地と道路封鎖箇所を持つ「天井の無い」強制収用所に作りかえることを、完璧に疑問の余地無しに推奨してきた。近年には、シオン・コンとシオン・リブの両方から成り立つ主要なユダヤ組織の指導部の全てがイスラエルによる30メートルの巨大な壁【訳注:「30メートル(原文a massive 30 meter wall)」は意味不明。"30 feet"の誤りか? パレスチナ人地区を囲む「壁」は通常は8メートル】 の建設を擁護したが、それはナチスによってワルシャワの大きなユダヤ人居住地区を囲んで作られた壁とそっくりに、パレスチナ人全体をゲットーの中に効果的に囲い込むものである。その壁と軍駐屯地は占領地から市場や学校や病院に向かう交易や人々と食糧の輸送を妨げる。農民達がその土地を耕すことをすら妨害するのである。

 2007年10月10日付のエルサレム・ポスト紙はイスラエル国防軍(IDF)国防大学で調査員と講師の長を務めるアロン・ソッファ(Aron Soffer)の文章を引用した。4人の子供の父親で8人の孫の祖父であるこの71歳の老人は2004年5月21日に次のように言った。「閉じ込められたガザに250万の人が住むなら、それは人間性を破滅させるだろう。これらの者達は気の狂ったイスラム原理主義者の手によって今よりももっと獰猛な動物となるだろう。境界線に対する圧力は恐ろしいものになる。だからもし我々が生き延びたいのなら、殺して殺して殺し尽くさなければならない。1日中、毎日だ。」

 これが、卓越したシオン・ファシストの講師によって最も進歩した軍の学校でイスラエル士官たちに教えられる文字通り殺しのメッセージなのだ。このことによって我々は占領地でのイスラエル兵士のむき出しの暴力性と残虐な振る舞いを理解できるのである。

 2名の心理学者による最近のイスラエルでの研究によると、イスラエルの軍事学校が教え込み首相室を含むイスラエルのトップの政治家たちが推奨するサディズムと人種差別主義の激しい重圧ぶりが、具体的に示されている。2007年9月21日のハアレツ紙の記事によると、2名のイスラエル人心理学者が21名のイスラエル兵士に聞き取り調査をした。彼らは「彼らが加わったぞっとするような犯罪行為についての心底からの熱情」と表現した。それは「殺害、パレスチナ人の子供の骨をへし折ること、屈辱を与える行為、資産の破壊、窃盗と強盗」である。そのイスラエル人心理学者の一人は「兵士達が『権力中毒』を楽しみ暴力を振るうことに喜びを感じていると知ってショックを受けた」のである。彼女は言う。「私が聞き取り調査をした者のほとんどは占領中にその自己誘発的な暴力を楽しみました。」(ハアレツ、2007年9月21日)絶対的な植民地支配が占領軍に精神異常の傾向をもたらす。兵士Cが証言した。「もし自分がラファー(ガザにあるパレスチナの都市)に暴動鎮圧のために行かないとしたら、少なくとも週に1回は切れて暴れるだろうな」。かつての植民地支配のように、イスラエル兵士達は全体主義的「優越民族感覚」の様相を呈するのである。兵士Dは語った。「何がすごいかって、何の法律にもルールにも従わないで済むんだ。自分が法律なんだって感じだよ。占領地に行きさえすれば誰でも神になれるんだ!」 調査をした者達の目には、この兵士の内面に植え付けられた強力なシオン・ファシズムのイデオロギーが、男性の睾丸を切り落とし、女性の抵抗者の顔を殴りつけ、無害な旅人を撃ち殺し、4歳の子供の腕をへし折り、そしてその他の「無料の」気まぐれな暴力行為に対する自己弁護をさせていると映ったのである。

 米国主要ユダヤ人組織代表者会はいまだかつて、このイスラエル軍による日常的な気の触れた行動を、批判はおろか、語ったことすらない。有力なユダヤ人億万長者の博愛主義者達は、あのイスラエルでの研究テーマとなったイスラエル兵による残虐な喜びで描かれるイスラエル軍の暴力的な占領とパレスチナ市民に対する抑圧を支援するために、何億ドルもの献金を行うのである。実際に、民主党最大のシオニスト援助者(2002年には1230万ドル)であるハイム・サバン(Haim Saban)は「戦うイスラエル兵士を溺愛」している。ハアレツ紙(2006年9月12日)によると、サバンは「私は戦うイスラエル兵士について論じることができない。私が彼らと何かの交流を行うときにはいつでも・・・、私は泣いてしまう」。ここに、イスラエルのシオン・ファシズムと米国内でのその片割れとをつなぐ強烈な情緒的連帯があるのだ。サバンは厚かましくもそのイスラエルに対する忠誠心を最優先のものとするのである。「私は米国の中で孔雀のように胸を張って歩く。そして私はイスラエル・アメリカ人だと言う。いいかね?イスラエル・アメリカ人なんだ」(ハアレツ、2007年10月14日)。以前は栄誉あるブルッキングズ研究所だったのだが、いまやハイム・サバンが資金をつぎ込む「サバン・センター」の校舎となり、ブルッキングズは他の12のプロパガンダ製造工場に加わり、イスラエル国防軍とその指導的な調査主任およびイスラエル首相による全体主義の振る舞いに対する弁明を垂れ流している。イスラエル国防軍にいる精神病者たちに向けるこのイスラエル・アメリカ人億万長者の致死的な「情緒」は、イラクで米国兵士としてイスラエルの利益に尽くしイスラエルの地域覇権を拡大させる戦争の責務に苦しめられる若い米国人に広がっては行かない。サバンは、他の実力ある大部分のシオニスト組織のリーダー達と同様に、もう一つの戦争を推進している。今回はイランである。サバンによれば「私はまず他の事をやってみるだろうが、しかしそれがうまくいかない場合には、攻撃だ・・・。イランであなた方は進攻し彼らの諸施設を完全に拭い去る。彼らを闇の中に放り込む。彼らの水を止めてしまう」 (ハアレツ、2007年10月14日)。これは決してパレスチナの羊飼いの少年をぶん殴っている狂信的ユダヤ人入植者による殺人者のわめき声ではない。サバンはAIPACでの主要なリーダーでありクリントン家と現イスラエル指導部全員の家族ぐるみの友人で政治ブローカーなのだ。彼が出す28億ドルは主だった米国大統領の「ユダヤ人の支援を希求する候補たち(MSNBC、2007年10月14日)」のゴマスリ根性を買い取るわけである。

 シオニスト権力構造は、イスラエルによるパレスチナの植民占領を終了させるために考案された3つのトップレベルの政治提言を葬り去った。ブッシュ大統領とライス国務長官へ宛てた一つの声明が、ブレジンスキー、リー・ハミルトン、ブレント・スコウクラフトなどを含む元トップ政治家達から送られたのだが、それはイスラエルに国連安全保障理事会決議案242および338その他の決定を受け入れるように呼びかけていた。しかしこれは民主党の議会と共和党政権によって完璧に退けられた。それは、イスラエル国家のこの声明に対する完全な拒否に従うシオニスト権力構造が介入して、ブレジンスキーを「イスラエルに対する悪意」と決めつけた後のことである。「カルテット和平使節(Quartet Peace-Making Mission)」の責任者として行ったトニー・ブレアーの努力はことごとく失敗に終りパレスチナ人の人間的な苦境をすら解決できなかった。それはこの今や控え目になった(以前は狂乱状態だった)元英国首相との陳腐な対話以外のすべてを拒否するイスラエルのかたくなな態度に直面したためである(ガーディアン、2007年10月13日)。メリーランド州アナポリスでこの10月末に行われた中東和平会議を主催したライス国務長官の努力は、イスラエルの声明によって水の泡と消えてしまった。イスラエルは、境界線、日程、エルサレム、入植地、領土などのあらゆる具体的な合意を全て拒絶する。彼らは頑固にこの会議の焦点を何にも結び付かない無意味な一般的合意に向ける。米国国務長官ライスをさらに辱めるように計画された行動として、イスラエル政府は何百エーカーものパレスチナの土地を収奪した。これは明らかに入植地の拡大の例である(アルジャジーラ、2007年10月14日)。うすのろの頭でスタイリッシュに取り繕おうと務めながら、ライス国務長官はこのイスラエルによるパレスチナの土地の新たな徴収が「2国並立による解決に向けての各部門の行動における信頼関係を崩す」かもしれないと返答した(BBC、2007年10月14日)。

 交渉に向かう彼女の立場とシオニスト権力構造が完全に結び付いていることを考慮するならば、彼女はイスラエルから何一つ具体的なものを引き出すことはできない。ライス国務長官は「より小さな期待」と呼ぶことによってアナポリス会議が無駄な努力であることを示唆している。それは何の具体的な合意をももたらさない。イスラエルとその第5列がブッシュ自身のアナポリス提言を上手に雲散霧消させてしまった。エジプト、サウジアラビア、ヨルダンといった親米諸国やパレスチナの傀儡アッバスでさえも、国境線に関する具体的な合意が無かったために疑念を表明した。その種の合意はイスラエルとシオニスト権力構造が受け入れないものである。この会議が「延期され」ようが実際に行われようが、このことは間違いなく何にも結び付かない新たなジェスチャーであり、米国の新たな中東での敗北であり、イスラエル植民国家の新たな勝利であり、したがって中東でのアラブ人の抵抗が強まる新たな理由ともなる。

 もっと不吉なことに、イスラエルとシオニスト権力構造は、ホワイトハウスによるアナポリス和平会議をうまくぶち壊したことによって、パレスチナ占領地のさらなる暴力的な収奪を推し進めることができると知るだろう。それはさらに進んで、新たなそして致命的なレバノンとシリアへの侵攻に、そしてイランとの戦争に向けての圧力をますます高めることになるだろう。米国の中東政策に対してシオン・ファシズムは抵抗不可能な権力の意識を膨れ上がらせ、そしてそれは米国の中にある全ての主要な勢力に向かうのである。それがイスラエルの意思に従わないものであれば。独裁的な解決に向かうイスラエルの圧力に関係するシオン・コンのイデオロギーの右翼的な先鋭化とともに、指導的なシオン・コンの代弁者達と特に米国学術界にいるプロパガンディストたちから、人種主義的な反イスラム、反アラブ、反ペルシャの行動や発言が全面開示された。

 戦争プロパガンダと軍事的解決がシオン・コンのレトリックを支配する。最初に対パレスチナ、次にアフガニスタン、イラク、レバノン、シリア、ソマリア、スーダンであった。シオン・コンのレトリックの先鋭化に付き添っているものは、米国社会内部での抑圧的な行為の増大である。 


【シオニスト権力構造とホロコースト否定:イスラエルの業務として】   小見出し一覧に戻る

 イスラエル指導部につき従う指導的なシオニスト民主党員たちは、トルコによる150万のアルメニア人殺害をジェノサイドとして非難する議員決議を埋没させるのに主要な役を演じた。長年にわたってイスラエル国家およびイスラエルと米国にいるそのアカデミックな専門家たちは、世界中の学者によって認められた山のような文書資料があるにも関わらず、トルコ人が旧アルメニア人地域で1915年から1917年にかけて行ったアルメニア人に対する集団虐殺(ジェノサイド)を否定している。その理由の一つはユダヤ・ホロコースト産業が20世紀に起こったジェノサイドを独占することに固執しているからである。しかしイスラエルと米国シオニストによるホロコースト否定のもっと重要で現在的な理由は、イスラエルとトルコの間の密接な軍事協力であり、もっと最近では、クルディスタンと称される北イラクのクルド人支配区でイスラエルの軍事顧問や秘密警察(モサド)の巨大な存在である。
 イスラエルの元軍事顧問メンバーで「米国の」議員、議会外交問題委員会議長であるラーム・エマニュエル(Rahm Emanuel)はこの決議に始めから反対しており、ベテランの民主党議員を説得して民主党議員団指導部にこの決議での投票の予定を外すように要求させた。イスラエルの利害に深く関わっているため、エマニュエルはイスラエルが決定する中東の現実の地勢に両足を突っ込んでいるのである。皮肉にもエマニュエル議員は複雑に入り組んだ声明の中で彼のイスラエル国家の業務を理屈付けた。「この(アルメニア人集団虐殺に対する)投票は世界のこの地域における地勢の現実と直面することになった(ニューヨーク・タイムズ、2007年10月16日)」。米国議会にいるイスラエルの第5列は、現在の中東と地域覇権を目指すイスラエルというだけの狭い視野を越えて、イスラエルの戦術的な利害に間接的に影響する非アラブ・非イスラム教徒たちが絡む歴史的な事柄を含ませるように、そのコントロールの視野を拡大しているのだ。イスラエルの戦略家達は、アルメニア人ジェノサイドに対する議員決議がトルコ人の米国に対する憎しみをかきたて、また米国とイスラエルが後ろ盾となる北部イラク「クルディスタン」に対する進攻をも挑発するものと受け止めている。イスラエルの軍事顧問達は、イランでのテロ活動に携わるクルド人コマンドを訓練し武装させてきたし、それはトルコやイランやシリアとの国境地帯のどこででもなのだ。トルコの地上侵攻と空襲は、少なく見てもこういったテロリスト基地を破壊しあるいは機能を奪い、そしてそれ以上に、全クルドがその非正規武装勢力の防衛に立ち上がる事態を招くことになる。クルド人達は(イスラエルに)忠実な味方であり、その民兵組織(Pershmerga militias)は北部イラクでの非クルド人に対する民族浄化で、そしてイラク中央で米国が指導する傭兵部隊としてイラクのアラブ人レジスタンスに対する激しい弾圧で、必須の働きを演じているのだ。トルコがそこに侵攻するならばクルド人武装勢力はトルコ国境に移動する結果となるだろう。それはイラクでの米国支配を突き崩し、またイランへの攻撃を弱めさせることになる。イスラエル人たちはいずれ、「クルディッシュ」北部イラクからその軍事顧問達と武器販売を引き上げて中東での重要な同盟者であるトルコとの同盟を守るのか、あるいはクルド人分離主義者を支援するのかの、いずれかを選ばなければならないだろう。

 シオニスト権力構造の全てが、イスラエルがトルコのために米国議会にその力を行使していることをトルコ首相エルドガン(Erdogan)に示す目的で、米国議会でのアルメニア決議を妨害あるいは打破するように最大限の注意を払った。そして、ジェノサイドを―それがどこであろうと犠牲者が誰であろうと―嫌悪する何百万もの米国人や影響力のあるアルメニア人ロビーと、何十人かの「イスラエル第一主義」議員メンバーや億万長者のシオニスト献金者たちとの双方の衝突で、後者が勝利を収めたのだ。ジェノサイドのようなはっきりした事柄についてさえも、シオニスト権力構造は、世界史的な犯罪を認知するシンボリックな議決に反対するのに恐れも恥も持っていないのである。議会でのアルメニア人決議に対するシオニストの勝利は、イスラエルの利益が我々の社会と価値観を駄目にする最も分かりやすいやり口を見せてくれる。民主党員の大多数を含む多くの議員達が最初はこの議案を通す正義感に動かされ後にはシオニストによる議会指導力の圧力を受けてそれを引き下げたというこの事実は、どれほど米国議会がシオニストに植民地支配された機関にまで堕落してしまったのかを見事に示しているものである。議会が選挙民と選出してくれた人々の価値観を無視するばかりか、自分自身の価値観と意識をも投げ捨てるのだ。セイモア・ハーシュが「ニューヨークのユダヤ人のカネ」と言い当てている通りである。

 クルドの味方たちに対するトルコの攻撃をそらせるイスラエルの努力は、イランの防衛を突き崩してクルド人非正規部隊の「テロ活動作戦」で諜報部の通路を確保する努力と密接に関係している。

 連邦レベル、州レベル、そして地方レベルでの親イスラエル・ユダヤ人組織活動の中心軸は、経済制裁と米軍による巨大な軍事攻撃によってイランを孤立させ破壊することである。「地図からイランを消し去る」米国やイスラエルの力によって、イラン国民が何百万人殺されようが負傷しようが家を失おうが、全くもって知ったことではないのだ。

 「ニューヨーク(そしてロサンジェルス、マイアミ、シカゴ)のユダヤ人のカネ」の主要な受け取り手はヒラリー・クリントンである。彼女は2008年の大統領選に出馬する民主党で最もタカ派的な戦争推進者なのだ。実際、ベトナム戦争以来の民主党候補の中で最もタカ派である。クリントンはフォーリン・アフェアーズの最近の記事で、米国がイランを攻撃する期日と使用する武器以外の全てを書いている。彼女は「イランは米国とその同盟者に対して長期戦略的な挑戦を行っており、その核兵器製造あるいは取得は許されないものだ・・・」と主張する。もしイランがこれを守らないのなら、あらゆる選択肢が予定表に上らなければならない(ガーディアン、2007年10月15日)。イスラエルは米国大統領候補たちがどれほどイスラエル国家の利益に対して卑屈でありイスラエル・ロビーの命令に従順であるかの全記録表を握っている。クリントンは民主党大統領候補の中で圧倒的にシオニストの御めがねにかかっているのだ。彼らは彼女が10年前にスーハ・アラファト【訳注:ヤセル・アラファト未亡人(Suha Arafat)】 にキスしたことを許している。彼女が今までワシントンであらゆる男女のシオニスト・ロビイストやイスラエル高官の両方の頬にキスしてパレスチナ人に対する弾圧を誉めそやしてきたからである。クリントンは、テヘランのエリート軍事組織であるイラン政府の「革命防衛隊」を「テロリスト組織」であると宣言するように米国政府に呼びかける上院決議を支持した唯一の民主党大統領候補であり、そうしてイランとその施設に対する大規模な予防戦争への口実をブッシュ政権に与えたことで、親イスラエルの米国主要ユダヤ組織代表者会の情熱と歓喜を盛り上げた。

 イランに対する戦争による解決と制裁キャンペーンへの出資という点でも、ロビーに作成された法案と議会演説、イラン攻撃を求める長期間のキャンペーン、印刷物の主張欄やメディアにいる博識者のコメントという点でも、シオニスト権力構造は、イランとの戦争を推進するにおいて、他のいかなるグループよりも何十倍も勝っているのである。シオニストは、「イラン攻撃」プロパガンダを独占するだけでなく、この軍事オプションに対する米国の批判者を黙らせる全ての独裁主義的なグループを率いているのだ。

 次のことを完璧に明らかにしておきたい。民主党議員のアジェンダを支配するシオニスト権力構造、米国主要ユダヤ組織代表者会、ラーム・エマニュエルたち(イスラエル-アメリカ人たち)は、必ずしも、いつでもどこででも米国ユダヤ人たちの多数派の代弁をしているというわけではないのだ。特にトルコ人によるアルメニア人ジェノサイドの否定についてはそうである。喧嘩好きのADL代表エイブラハム・フォックスマンは、マサチューセッツのワサム(Watham)で、地元のアルメニア系米国人コミュニティーとユダヤ系米国人の同胞達や隣人達がジェノサイドの否定を堪忍しないのに気付いた。たとえADLによるものであっても許さないのである。米国ユダヤ人の相当な部分がクリントンの戦争挑発に反対し、彼女のイスラエル高官に対する卑屈な追従ぶりを迷惑であり不吉なものであるとすら見なしている。シオニストの調査は、教養のある若い米国ユダヤ人がイスラエルとその米国内第5列に対する興味をますます失ってきていることを明らかにする。コミュニティーの自称「指導者」たちに対する憤懣すら起こっているのである。だがしかし、ユダヤ人の少数派が乗り気ではない多数派の名を借りているなどと言ってみても、中東やイスラエルが定める利益に関わる政策や金銭支出に関して、米国の政治機構や世論形成に振るう彼らの実力と支配権を弱めることはできない。

 「ジュー・ヘイター(ユダヤ人嫌悪者)」のレッテルが、公開討論に対するシオン・コンのパージを推し進め、何百もの地方の著名なユダヤ人と「コミュニティー」委員会による大規模な直接行動を呼びかけるアジテーションのスローガンとなった。長老派教会の長老達でさえも、パレスチナ人抑圧に関与する米国企業から献金を受ける生ぬるい態度のために、ユダヤ・シオニストによって威嚇された。

 いつシオン保守主義がシオン・ファシズムに移行したのかを明らかにするような突出する出来事などは無い。この移行は進化論的な過程であった。その間に人種主義、軍国主義、そして独裁主義が大量のコミュニティーの基盤を発展させ、時間をかけて定着し、そして明確なシオニスト権力構造の行動パターンとなったのである。

 ファシスト運動の初期と同様に、シオン・ファシズムは知的な面で人種主義綱領を掲げる。シオニズムの認識論では、ユダヤ人だけが(あえてそうしたいのであれば)ユダヤ人を批判することができる。ユダヤ(Jewry)についての知識が、ある限られた密着した者達の共同体によって独占されているからである。このシオン・ファシズムの知識論を支えているのは、非ユダヤ人の著作家が危険を冒して「ユダヤ人の」議論に加わることに対して、ひんぱんに退けあるいは警告する左翼シオニストの言葉の繰り返しなのだ。

 シオン・ファシズムは単に少数グループのバランスを欠いた過激主義者たちのイデオロギー的表現などではない。そのイデオロギーと行動は、全体的にも部分的にも、主流ユダヤ組織によって掌握されているものである。 


【行軍中のシオニスト独裁主義】   小見出し一覧に戻る

 草の根的シオニスト主導の独裁主義は、イスラエルとシオニスト権力構造を守る際の弾圧と抑圧、財政的な脅迫を実行しているのだが、米国のあらゆる地域で、社会のあらゆる分野で、文化と学術的な生活で、加速度をつけて現れてきつつある。以下に我々は、国家的な、そしてむしろ国際的な注意を引いている、またはるかに拡大されたパターンを描く、いくつかの小さな例を取り上げてみよう。我々はシオニストによる何百もの脅迫事件と1週間単位で起こる思想コントロールのすべてをカバーするほどのデータ・バンクを持っていない。その犠牲者が仕返しを恐れてそれらを表ざたにできないからだ。あるいはメディアの偏向を与えられる大衆の同情的な注目を受けないためである。非公式な会話の中で作家やジャーナリスト達が私に、地域のユダヤ「著名人士」やユダヤ共同体委員会のメンバーによる「犠牲者」の話を伝えてくれる。例えばイスラエルの恐ろしいレバノン侵略などを勇気をもって批判したコラムニストたちをクビにするように、地域の新聞編集者達に対して要求するといったものである。その種の「訪問」と「お話」の後では、地域のコラムニストの誰も敢えて中東のことについて批判はおろか書くことすらしなくなる。これは米国に限られたことではなかった。2004年に私がメキシコ市の新聞ラ・ホルナダに、イスラエルによるジェニンでの激しいパレスチナ人弾圧および大量殺害【訳注:2002年4月に起こった】 に対する米国シオニストの弁明を批判した一つの記事を書いたが、その後で、メキシコのイスラエル大使が編集者のところに訪れ私の記事を公表し続けることを止めるように要求したのだった。当初その編集長はその要求を拒否したのだが、そのすぐ後に彼らはその常連コラムニストたち(一人はトロツキスト、他はユダヤ人の歯医者)を使って数々の激しい個人攻撃を発表し、私の批判記事に対して「シオンの議定書」の線に沿った「ナチ」プロパガンダというレッテル貼りを行ったのだ。これは有名な独立系の進歩的な新聞で起こったことである。

 熱狂的シオニストたちによる「私的な訪問」と殺害予告を含む嫌がらせ電話は、「評判の高い」シオン・ファシストの間では一般的とは言えない行為である。ある地方の医者がそのオフィスで狂信的なシオニストの「同級生」による「訪問」を受けたのだが、それは彼女が、イスラエルの政策を批判したジョージア州の議員シンシア・マッキニー(Cynthia McKinney)を選挙で落選させるためにカネをつぎ込んだシオニストの役割を批判する投書を地元紙に送ったことに対する難癖付けであった。彼女は、パレスチナ人の市民権を支援する政治家、特に黒人の政治家を打ち倒す組織的なユダヤの活動を批判することが反ユダヤ的(anti-Semitic)であると「警告され」た。彼女は次のように言われたのだ。アフリカ系米国人たちは米国ユダヤ人にとって次第に不愉快なものになっているが、ユダヤ人は彼らの市民権獲得を指導し資金を与えた、だから歴史的な教訓を与えてやる必要がある・・・。当地のある著名人「グループ」がこのメッセージを与えるために彼女のハーヴァード時代の同級生であるシオニストを選んだのである。彼が自分自身を「一人のユダヤ人であり一人のシオニストである」と告げたときに、彼女は自分が「一人の反ファシストであり一人の反シオニストだ」と切り返し、そして出て行くようにドアを指さしたのだが、しかし、高い専門家の地位にある教養ある者がどうして同級生を検閲するような下品な作業をできるのかと彼に問うのを忘れていた。「評判の高い」シオニストによるこのようなタイプの「訪問」はより立場の低いより腹のすわっていない者達を脅しつけるものである。

 私の著作である『米国におけるイスラエルの権力(The Power of Israel in the United States)』の原稿を見せたときに、以前から私の本の出版を引き受けていた編集人たちの多くは私にこう言った。これは素晴らしい本だ・・・しかし・・・自分達はシオニスト権力構造、ユダヤ人学者、契約している作家と出版社から予想される反発や脅迫や叱責を受けたくはない・・・。最終的に私の作品の出版を引き受けてくれた出版社と編集人でさえもシオニストの怒りを心底恐れていた。そして結果として12名かそこらのユダヤ人学者がその出版社に対して授業で使う本の注文を断ったのである。

 米国社会でイスラエルとシオニスト権力構造に対する批判者を黙らせ排斥するシオニストの作業で、最も有名なものの一つが、バーナード大学で千人を超えるシオニストの学生が大学当局に、ナディア・アブ・エル・ハジ教授の教官契約を打ち切らせたキャンペーンがある。彼女が‘Facts on the Ground’を出版したためである。それは聖地での何世紀にもわたるパレスチナ人の存在を削除するイスラエルの考古学者たちによる作業に対する、大地を引き裂くような激しい批判だったのだ(Chronicle of Higher Education、2007年8月5日)。

 もっと最近では、コロンビア大学に対するイラン大統領【訳注:原文では“Iranian Prime Minister”となっているがこれはおそらく誤りであろう】マフモウド・アーメディネジャッドへの招待を破棄するように求める大衆的なキャンペーンがあった。その結果、コロンビア大学学長による前例のない侮辱に満ちた紹介の挨拶が行われたのだ。

 成功した英国の演劇である「私の名前はレイチェル・コリー(My Name is Rachel Corrie)」は殺害された米国の活動家【訳注:Rachel Corrieは2003年3月16日にパレスチナ支援活動に向かったガザでイスラエル軍のブルドーザーによって殺された】 の著述をベースにしたものだが、ニューヨーク、マイアミそしてトロントで予定されていた公演が中止させられ、大西洋両岸の劇場支配人と俳優達を狼狽させた。レイチェルの言葉が祖国の文化中心地で排撃された一方で、この若い女性を殺したイスラエル兵士はイスラエルで無罪とされたのである。

 もっと最近でも、シカゴ外交問題委員会はシオニスト・ロビーの圧力に屈して、政治学者として著名な教授たちであるジョン・ミアシャイマーとステファン・ウォルトの講演をキャンセルした。彼らの批判的研究「イスラエル・ロビー」のためである。

 そのリストの続きに、カリフォルニア州サンディエゴでのマーケル・カリフェ(Marcel Khalife)のコンサート中止が挙げられる。そしてノーベル平和賞受賞者で南アフリカの司教デズモンド・ツツの招待がキャンセルさせられた。彼が占領地でのアパルトヘイト政策でイスラエルを非難したからである。

 作家のスーザン・アブルハワ(Susan Abulhawa)が発表しようとした興味深い小説「ダビデの傷(The Scar of David)」がニューヨークのベイサイドにあるバーネスとノーベル書店から出版されるのを妨げたキャンペーンが成功した。その後で、この著者に対するインターネットを使った攻撃によって、予定していた講演ツアーを封じてしまったのだ。この親イスラエルの攻撃は14人のラビとクイーンズ地区ユダヤ・コミュニティ委員会の代表者によって率いられたものだ。

 ミシガン大学出版はジョエル・ケルヴィンの「シオニズムを克服して(Overcoming Zionism)」の出版を止めるように圧力を受け、彼の出版社であるプルート・プレスとの契約を妨害した。その後に、この大学出版はプルート・プレスによる本の配布を全てやめるように脅迫されたのである。

 最近の米国議会ブルーリボン委員会公聴会は、USSリバティ号に対するイスラエル軍の攻撃(イスラエル・ロビーの圧力で40年間も公式な調査を妨げられていたのだが)についての調査にようやく手をつけたのだが、100名を超える米国兵士を殺害し不具にしたイスラエルの罪を発見した。この画期的な発見は議会記録としては公表されたが、印刷・放送メディアには一度も登場しなかった。

 国連解決案に違反するレバノン、シリア、パレスチナに対するイスラエル軍事攻撃は、米国議会によって次の10年間に300億ドルの軍事援助の追加を贈呈された。これは米国による毎年の「イスラエルへの献金」を年に60億ドルを超えるものにさせたのである(NYタイムズ、2007年8月16日)。米国国内で貧しい子供達に対する保健の計画と教育業務での予算不足とカットが記録されるときに、イスラエルに追加の300億ドルを与えるための投票が、事実上反対無し、質疑すら行われずに通過したのだった。

 オーストラリアのジャーナリストでドキュメンタリー製作者であるジョン・ピルガー(John Pilger)は、「パレスチナは依然として問題だ(Palestine is Still the Issue)」と題する徹底的なイスラエル批判映像を製作し、これは世界中で視聴された。しかしサンフランシスコの教育チャンネルでの放映はユダヤ・コミュニティ問題委員会に率いられるキャンペーンによって妨害された。

 レバノンのキリスト教徒詩人であるカヒル・ギブラン(Kahil Gibran)の名をとったニューヨーク市にあるアラブ語・英語のバイリンガル公立中高学校がシオニスト権力構造によって攻撃され(NYタイムズ、2007年8月11日)、アラブ系米国人の校長を解雇させるはめになった。彼女の「罪」はアラブ語の「インティファーダ」を、占領地でのパレスチナ人人権運動に対する罵詈雑言の代りに「(悪などを)振り払うこと」と翻訳したことだった。シオニストが支配する全米教員協会は、彼女の思想犯罪を弁護する一人の協会メンバーに対する激しいパージを後押ししたのだ。

 州立サンフランシスコ大学で、サンフランシスコ・ユダヤ・コミュニティ問題委員会の幹部に率いられたキャンペーンが行われたのだが、これは有名なパレスチナの漫画キャラクターでイスラエル占領者達を前に反抗する小さな少年の壁画を叩くためのものだった。問題となったのは鍵を手に持った一人の子供であり、地域のユダヤ人指導者によれば、これは「パレスチナ人がイスラエルに帰還する権利という包み隠された意味」を現していたのだ(Jewish Forum、2007年8月10日)。

 最も激しくそしてうまく成し遂げたシオニストによるパージ・キャンペーンの一つとして、シカゴのデュ・ポール大学に対して、極めて尊敬を受けるノーマン・フィンケルシュタイン教授の契約延長を拒否させるために行われたものがある。ハーヴァード大学法学教授であるアラン・ダーショウィッツに率いられたこのパージは、イスラエルに関する、そしてシオニスト権力構造の目的を推し進めるためのホロコーストの利用に関する、フィンケルシュタインの数多い批判的学術研究に対する直接の返答だった。

 イェール大学の3名の学術委員による提言にもかかわらず、シオニスト億万長者の資金提供者たちは名声高い中東問題のスペシャリスト、フアン・コウル(Juan Cole)教授の指名を妨害することができた。この億万長者達は資金援助を辞めると脅し、数多くのシオニスト教授たちがコウル教授に対するヒステリックな攻撃を準備したのだった(2006年6月1日)。

 多くの州立の年金基金に圧力をかけてイランと取引をする全ての会社から投資を引き上げるようにさせ、その資金をイスラエルの国債に投資するように圧力をかけるキャンペーンが盛り上がった。これはテキサス、フロリダ、ニューヨーク、ニュージャージーで非常に成功した。数多くの州知事がシオニスト持ちのイスラエルへの物見遊山旅行によって「説得された」のである(Houston Chronicle、2007年7月18日を見よ)。これらの旅行の間に、ニュージャージー州の不名誉な州知事マッグリーヴィはあるイスラエルの工作員と会って彼とホモセクシュアルの関係を結び、後に彼をニュージャージー州の「祖国安全保障」長官として就任させた。それはFBIが捜査するまでであった。マッグリーヴィはそのイスラエル人、ゴラン・シパル(Golan Cipal)を脅迫で告発した後、知事を辞任したのである。

 反名誉毀損同盟(ADL)は親イスラエルの伝動ベルトだが、唯一のイスラム教徒議員であるキース・エリソン(Keith Ellison)に対して、ブッシュ政権のやり方を敢えてナチスと比較したことで、無理やりに自説を撤回させ恥をかかせた(Jewish Telegraph Agency、2007年7月20日)。マッキニー議員の件と同様に、シオニストのアフリカ系米国人政治家に対する「懲罰」は特に激しいのだ。

 全米ユダヤ委員会(the American Jewish Committee)に率いられる主要なシオニスト組織は主だった米国労働組合の官僚専従どもを動かして、英国の労働組合有志が行ったイスラエル・ボイコットを非難させた(Jerusalem Post、2007年7月22日)。労働組合AFL-CIOはシオニスト権力構造の掌握下にあり、そのメンバーの年金基金50億ドルを使って、常に市場価値を下回っているイスラエル国債を購入した。こうしてその1200万人のメンバーに毎年数億ドルの投資収益分を負担させているのである。

 マックギル大学の宗教学部長で親イスラエル活動家であるバリー・レヴィン(Barry Levin)は最近、15年間勤めてきたノーマン・コーネット(Norman Cornelt)教授をクビにした。パレスチナ人の人権運動を支援したからである。全ての主要な新聞はその社説と口汚く罵るブック・レビューによって元大統領ジミー・カーターの批判的な研究「パレスチナ:アパルトヘイト無き平和(Palestine: Peace Not Apartheid)」を攻撃した。これは主要なシオニスト組織とアラン・ダーショウィッツを含む有名人たちによって整えられた最優先のプロパガンダ・キャンペーンの一部であった(Washington Report on Middle East Affairs、2007年4月)。

 著名なユダヤ人作家でニューヨーク大学教授のトニー・ジャット(Tony Judt)はポーランド領事館での談話に招待を予定されていたのに断られた。彼がイスラエルの政策を批判していることにシオニストが反対したためである。カナダのバンクーバーのブナイ・ブリスは、‘Peace, Earth and Justice’と呼ばれるカナダのウエッブ・サイトを攻撃してイスラエルを批判する18の記事を無理やりに取り除かせた。

 2007年の初めごろにシオニスト権力構造は米国市民権委員会に入り込み、反シオニズムを反ユダヤ主義と等しいものとする部門を設けた。そして何十もの中東研究学術プログラムを大学での「反ユダヤ主義」の拠点であると中傷した。重要な研究グループである北米中東研究協会は2007年6月11日に筋を通した論駁を書いた。

 マサチューセッツ州ロクスベリにあるイスラム教徒コミュニティーのためのモスク建設計画は、拡大ボストン・ユダヤ人コミュニティー委員会(the Jewish Community Council of Greater Boston)と結び付いたシオニストの前衛組織‘David Project’によるキャンペーン攻撃にさらされた。

 イスラエルの諜報機関エージェントによる秘密の証言を元にしシオニスト権力構造に支援された「テロリズム」告発が米国イスラム・チャリティーの16名のメンバーに対してなされた。テキサスの裁判所は彼らをイスラエルに対する「犯罪」で刑を言い渡した。被告の多くが米国民であり、米国内で活動するイスラエルの秘密エージェントであるフードを被った告発者を攻撃する何の方法も持っていなかったにも関わらずそうなったのである。被告側の中心だったラフィル・ドーファー(Rafil Dhofer)博士は「イスラエルの」犯罪で22年の懲役判決を受けた。しかし彼は米国でのいかなる罪をも問われることは無かったのである。被告側とその弁護士達は秘密の外国人「証人」に対して全く質問を許されなかったのだ。

 大学でのシオン・ファシスト組織はその「小総統」であるデイヴィッド・ホロヴィツ(David Horowitz)に運営されるのだが、彼らはアフリカ人奴隷貿易の「利益」を賞賛しイスラエル人やその米国内の片割れによるイラクとグアンタナモでの拷問の使用と殺人を弁護することによって、恒常的に黒人やラテン系やアラブ系の米国人を挑発する。加えて、シオニズムに対して十分には好意的でない教授たちを詮索し、教え方をスパイし、授業を中断させ、米国中で教官たちや学生たち、大学運営者たちを「反シオニズム」によって告訴するのである。

 シオニストがファシズムの戦術に頼り独裁主義的で高圧的な手段を手にしているとはいっても、実際のところ、彼らはいまだに国民社会と政治権力を部分的に掌握しているに過ぎない。シオン・ファシストの力が演ずることの一部は、少なくとも一時的には、特殊な環境の下で討ち破られた。演劇「私の名はコリー」は、ニューヨークやトロントやマイアミでは排斥されたのだが、ロンドンやシアトルなどの勇気ある都市では満員の盛況で上演されたのだ。

 ノーマン・フィンケルシュタインは解雇されたが、彼は学術会全体で強力な支持を得ており、学部の一つを臆病にも裏切ったデュ・ポール大学に金銭的な賠償を交渉することができた。何よりも、フィンケルシュタイン教授は再び戦いに戻っている。

 ミシガン大学はコウベルの本を配布せざるを得なかったのだが、これは彼の出版社プルート・プレスとの契約を取りやめるように脅迫されたにも関わらずのことである。

 教訓は明らかだ。ユダヤ・ファシズム(JF)の勃興は、米国における我々の民主主義的自由に対する明白に現存する危険を表している。彼らは黒シャツや拳の最敬礼でやってくるのではない。公衆の面前では、髭をそりネクタイをしめピンクの頬をした弁護士であり、不動産寄進者であり、あるいはアイヴィー・リーグの教授である。彼らは拡大イスラエルの利益追及の中で、非シオニストである家族を中東での戦争行為に送り込むことに懸命になる。そして彼らは我々にこう告げる。黙れ、さもなければぶん殴られるか、コミュニティーから追放されるか、職を失うか、もっと悪くすれば・・・。そして、多数の小さな声に対する見せしめ刑が多くの批判の声を低くさせる。ただし最近までは・・・。米国の中で、我々の民主的価値に敵対するその傲慢で独裁主義的で人種主義的な攻撃に対して、シオニスト権力構造に対する怒りと憎しみが持ち上がりつつある。遅かれ早かれ大きな反発が起こるだろう。そしてそれは、言葉や行動を通して米国人の多数派に対する解雇や検閲や脅迫のキャンペーンを行った者達を許すまい。米国国民は彼らの「反ユダヤ主義」という叫びは思い出さないだろう。しかしイスラエルの利益のために米国兵士を何千人も失う中東に送り込んだ件で彼らが果たした役割を思い起こすことだろう。

 正義を求める人々が、ペンタゴンや議会や司法省や祖国安全保障省でシオニストによって推し進められた、愛国者法のような法律や、堕落した厳しい尋問(拷問)や、反アラブ/イスラム教徒の行動などと同様の、独裁主義的な手段を用いることのないように期待しよう。シオニズムに反対する者は高いモラルの見地で踏みとどまる必要があるのだ。

【翻訳終り】

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