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復刻版: 経済ジェノサイド:帝国による「沈黙の死者たち」

IAR-Noticias

 この拙訳は2005年9月に私(童子丸開)がスペイン語から和訳して阿修羅サイトに投稿し、その後、私の旧HPに掲載していたものである。気付いた限りの誤訳、誤字や脱字などは修正を施し、また必要に応じて注釈等を加えている場合がある。(外部リンク先にはすでに通じなくなったものが含まれているかもしれない。その点はご容赦願いたい。)
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【訳者より】

 この記事は2005年9月7日付のスペイン語情報誌IAR-Noticias(ラテンアメリカ発信)からのものである。
IAR-Noticiasホームページ  http://www.iarnoticias.com/

 この年にはハリケーン・カトリーナが米国南部を襲いニューオルリンズを中心に膨大な被害を与え多くの死傷者を出した。西側世界のすべてのメディアはその被害と犠牲者の大きさを報道したのだが、実際には、これに対する米国政府の対応は被災者救助ではなく「戒厳令の施行」であった。米国支配者による被害者に対する「意図的放置」の実態は大手マスコミで語られることが無い。

 そして西側諸国内で起こるこのような悲劇の影で、無数のアフリカ人たちが今日も黙って死んでいく。特に子供達である。彼らは西側諸国支配者が仕掛ける経済戦争の犠牲者なのだ。この真の意味のジェノサイドが、西側での災害と同等に語られることは無い。侵略的大資本が狙いを定めるある特定の地域での殺戮と同等に語られることは無い。

 大手マスコミはもちろんのこと、世界的な「人権」諸団体が誰のために存在し、誰のために何を語って何を語らないのか、明白であろう。

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カトリーナの「裏」で
経済ジェノサイド:帝国による「沈黙の死者たち」

 

 この写真にある黒人の子供はニジェールの15万人の子供たちの一面である。国連と人道組織によると、彼らはこの数日の間に、飢えによってあるいは貧困による病気で死にかけている。アジア、アフリカ、ラテンアメリカで飢えによる失調で、統計的には、毎日のように死んでいく他の何百万人もの子供たちと同様に、彼らは、この地球を支配する欧米の銀行と国際企業による経済ジェノサイドの沈黙の犠牲者なのだ。

 これらの子供たちの写真は、CNNの画面でも、あるいは飢えによる殺人の犯罪者を見つけるための膨大な連帯運動の中でも、決して現れることが無いだろう。

 彼らに対しては、どのテレビ局もラジオ局も新聞や雑誌も、どの政府も、どんな「世論」も、アメリカ帝国内でカトリーナの犠牲者に対するように涙を流すことも「世界的な悲しみ」を表現することもない。

 彼らの写真は、反ブッシュのキャンペーンを張るニューヨークタイムズやワシントンポストには決して現れないし、情報操作の後で今日この帝国の「困窮者たち」を見つけ出す精神的な連帯の「感受性」を動かすことも無かろう。


人道組織によって国連に提出される情報によると、7秒間に一人の10歳未満の子供が飢えで死亡する。そして4分間に一人がビタミンA不足で視力を失う。

 2003年10月の世界食料デイに国連が提示した他の資料によると、世界の8億4千万の人々が基本的な食料を欠いている。そして飢餓による衰弱で月に6百万人の5才未満の子供が死んでいる(2003年10月)。

 45億人の世界人口に関しては、たった17億人が「消費者階層」の分野を形作っており、一方で貧困階層である28億人が1日に2ドル未満で生きる。

 米国と西欧には人口のわずかに12%ほどが住んでいるのだが、国連の資料によると、彼らが食料生産物の60%を消費している。その一方で東南アジアやサハラ南部のアフリカに住む者たちは3.2%を消費するに過ぎない。

 これは、それらの政府や中流・上流階級の者たちが、巨大な放送局網と体制派ジャーナリストとの明らかな共謀によって、この帝国がやっていることを見せないようにするために日々の情報を消し去っている、沈黙のジェノサイドなのだ。

 その「巨大情報空間」の中でこのジェノサイドが消し去られることによって、この侵略的な資本主義者である人類の12%が、何の「罪悪感」も無しに、残りの人間達の苦しみと死の犠牲の上に立って生きることができるのである。

 米国製「民主主義」の、支持者たち、精神分裂症患者たち、消費主義者たち、「家族主義者たち」、白痴たち、「人権」の暗誦者たち、熱烈な投票者たちや、「若い男と一緒の休日」を愛する浮気者たち、ネオリベラルたち、進歩主義者たち、偽「革命」の崇拝者たちは、無関心による彼らの恥を覆い隠す。それは「裏面」を、つまり、そういったものごとを「文明」に受け入れられる面として作り出して利用する資本主義社会の決定的な犯罪を見ないようにするためである。

 今日彼らは、帝国内の死者に対して涙する。あたかも彼らが自分の家族ででもあるかのように。こういうことなのだ。
【『米国製「民主主義」』については、こちらの『エリート支配の道具としての「民主主義」』をご覧いただきたい。】

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