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復刻版:ラテンアメリカに敵対するアメリカ帝国とCIA


                               「尊厳・主権・反戦平和の法廷」(エクアドル)


 この拙訳は2005年9月に私(童子丸開)がスペイン語と英語から和訳して、季刊『真相の深層』誌(木村書店、廃刊)2005年夏、秋、冬号に3回に分けて寄稿された後、私の旧HPに掲載していたものである。気付いた限りの誤訳、誤字や脱字などは修正を施し、また必要に応じて注釈等を加えている場合がある。またこの文章は非常に長いため、小見出しごとにリンクを作って、読みたい箇所に飛ぶことができるようにしている。 (外部リンク先にはすでに通じなくなったものが含まれているかもしれない。その点はご容赦願いたい。)
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(訳者より)

この論文は、2005年2月に、エクアドルの「尊厳・主権・反戦平和の法廷」という団体からインターネット情報誌「表現の自由のためのレッ・ボルテール(スペイン語版)」に3回に分けて寄稿されたものである。原文はスペイン語だが、レッ・ボルテールには英訳文も同時に掲載された。

http://www.voltairenet.org/article123921.html

http://www.voltairenet.org/article123981.html

http://www.voltairenet.org/article123984.html

 また数多くのスペイン語圏の情報誌がこの論文の配信を受け、中南米とスペインのみならず、ヒスパニック人口の多いアメリカ合衆国内にも知れ渡るものとなった。

 論文製作にあたった「尊厳・主権・反戦平和の法廷(原文Tribunal Dignidad, Soberanía y Paz Contra la Guerra)」という団体については、第1回目の寄稿で次のような簡単な自己紹介がなされている。

『これはエクアドルの知識人、社会団体の代表者の集まりであり、米英軍によるイラク侵略開始時にキト大学で模擬法廷を形作った。』

 おそらく用心のためだろうが、これ以上の紹介はなされていない。

 今までにも、中南米諸国に対するアメリカ合衆国とそのエージェントCIAによる略奪と破壊工作に対する研究、告発は数多くあったが、この文章ほど詳細に具体的にまとめられ、かつ読む者の心を強く打つものは少ない。それは、現在まで米帝国にその主権と誇りを踏みにじられ自ら発展する可能性を最も激しく奪い去られてきた国の一つであるエクアドルからの、「血の叫び」とでも言うべきものだからであろう。

 アメリカ合衆国は、CIAや統一教会を手先として、またカトリック集団オプス・デイと手を組んで、今日のアフガニスタンやイラクのはるか以前から、ラテンアメリカの主権国家を破壊し資源と富を略奪し、テロによって人間の尊厳を蹂躙し続けてきたのである。中南米の現代史を見るならばアメリカが世界最大のテロ国家であることが納得できるはずだ。そのような吸血鬼国家米国にあくまで属国として付き従い、またその魔性と横暴さに愚直に振り回され続ける日本政府の姿勢はもはや一刻も早く終わらせなければならない。「地獄へ道連れ」ならともかく、途中で捨てられ地獄に放り込まれるのみだろう。

 第2次世界大戦の「自由主義と全体主義の対決」、冷戦時の「民主主義と共産主義の対決」に続き、「安全な民主主義とテロリズムの対決」という新たな虚構の対立構造が捏造され、さらに失敗に終わった「対テロ戦争」の幕を、テロリストとしての自らの悪事を覆い隠しながら、降ろそうと企みつつある現在、このアメリカ帝国とCIAの実態の再認識は決定的に重要な意味を持つものと思われる。なお、キッシンジャーとCIAの謀略によって1973年にサルバドール・アジェンデ政権を倒したクーデターが起こったのが、偶然にも9月11日である。この日はよくよく悪魔の着きやすい日であるらしい。

 さらに留意しなければならないことがある。1973年に米国とオプス・デイの手先となって誕生したピノチェット軍事独裁政権が推し進めた経済政策が、いわゆるネオリベラル経済の最も早期の例である。そして1980年代レーガン政権時代を通して、米国は中南米各国の反米政権を残虐に打ち倒しながらにこのネオリベラル経済を押し付けていった。その時代に米国の権力構造の中で急激に成長し次第に米国の中枢を乗っ取っていったのがいわゆるネオコンの勢力である。彼らの多くがイラン・コントラ事件に関与している。そのルートはイスラエルと亡命イラン人の人脈である。また同時に、そのネオリベラル経済を中心的に推し進めていった勢力が後にクリントン政権を支配することとなる。ユダヤ・ロビー」として帝国を意のままに操る勢力はラテンアメリカ民衆の生き血をすすって肥え太っていったのだ。彼らは昔からテロリストであり吸血鬼だったのである。この論文が書かれたときと現在とでは中南米を取り囲む状況が大きく変化している。しかしこの帝国とCIAの本性は当面変わらないだろう。いつ何時、新たなより巧みな詐欺とペテン、そして暴力の形態を持ち込むかもしれない。ラテンアメリカは常に注目をしておかねばならない場所である。
【2014年現在、チャベス亡きあとのラテンアメリカに、伝統的な寡頭支配構造を利用して再び悪魔の手が伸びそうな気配である。以前のような独裁的な抑圧は姿を潜めているが、欧米資本による支配と諸国民の貧富の差は相変わらずで、いつまた元の木阿弥になるやもしれない。】

 この日本語訳は、スペイン語原文を元に英訳文と付き合わせた上で、慎重になされた。なお[1][2]等の注釈は訳者によるものであり、各章ごとに注解をつけておく。

(小見出し一覧: 下線部をクリックすればその項目に飛びます。)
【第1部】

我々のラテンアメリカに対する米国の侵略
【第2部】

ベネズエラにおける尊厳、主権と革命
【第3部】

ブラジルに敵対する米国とCIA
アルゼンチンに敵対する米国とCIA 

帝国のテロリズム

結論

****************************************

ラテンアメリカに敵対する米帝国とCIA
 

            「尊厳・主権・反戦平和の法廷」(エクアドル)
  

《この団体(中央情報局−CIA)は(米国の)国際的な政治工作における第一の駆動力である》
Harry Ramson著:The Central and National Security

【第1部】



 我々の偉大な国であるラテンアメリカは、常に世界のどこよりもあらゆる社会的、経済的、政治的そして文化的な難題を与えられてきた。しかしラテンアメリカが耐えなければならない最大のそして最も深刻な問題は、アメリカ合衆国とその帝国的な態度と行為である。

 アメリカ合衆国は、20世紀の90年代以来、世界の超大国となっており、その帝国としての働きで世界の主人になろうとしている。そしてラテンアメリカにおいて、果てることの無い侵害と押し付け、CIA、DEAやその他の諜報機関による耐えがたい干渉と攻撃の中に、その目標に向かって米国が打ち出す一連の戦略が満ち満ちているのだ。それらの諜報機関は、自由と民主主義、人権擁護といった装われたに過ぎぬ価値のため、と称し、常に異常なほどの冷笑と侮蔑をもって、米国の政治・経済的な利益を守るために、我々の国々に対してあらゆるタイプの暴力と犯罪を行うのである。米国はこの目的のためにCIAを通してラテンアメリカの選挙と民主的なプロセスに直接に介入する。だからこそ彼らはマスコミの中で心理戦争計画を発達させてきたし、何百万ドルという投資をしてきた。こうやって米国は、例えば、チリのサルバドール・アジェンデ、ニカラグアのダニエル・オルテガの勝利に敵対した。ブラジルやホンジェラス、エルサルバドル、グアテマラでも同様だった。このような断言を証明しようと思うなら、ラテンアメリカの新聞や、米国とラテンアメリカ、ヨーロッパとアジアの人々の書いた本のページをめくってみるだけで十分だろう。

 これらは、数多くの研究、論文、分析、雑誌、社会的メディア、様々な文書センターと米国やヨーロッパやラテンアメリカの大学によって成された作業の根本的に重要な結果である。知識人、教師と教授、政治家、社会科学者、種々の思想を持った市民団体、さらにはCIAの元局員や米国政府関係者でさえもが、この帝国主義的な行動、特にホワイトハウスと経済・政治的権力の命令を受けた諜報機関員によって展開された謀略的な作戦を容赦なく批判する。

 我々のラテンアメリカには、主権、独立と尊厳を守るために激しい戦いを繰り広げる政府が現れている。それはブラジル、ベネズエラ、アルゼンチンであり、その他、ウルグアイ、パラグアイ、そして時にはチリとパナマも次第にその中に加わりつつある。一方ではコロンビア、エクアドル、ペルー、およびほとんどの中央アメリカやカリブ海諸国が、IMFやBIDの政策による支配に繋ぎとめられるような決定をしているため、従属、屈辱と絶望の状態が続いている。そしてCIAが我々の国々で悲惨さと荒廃と死の種を蒔いているのだ。

 1963年に米国中央情報局はカルロス・フリオ・アロセメナ・モンロイ大統領を追放し、人権無視を特徴とする薄汚い軍政を設置した。彼らは進歩的で民主的なエクアドル人たちを投獄し追放しそして殺した。

 1981年には、アブダラー・ブカラム元大統領と他の人々によると、CIAがハイメ・ロルドス大統領とその随員が移動のために乗っていた飛行機を破壊したのだ。そして全員が死亡した。

 現在では、米国はエクアドル政府に対して、国際刑事裁判所で米国の軍人と民間人による戦争犯罪、人間性侵害の犯罪と虐殺の罪を問わない新たな合意を求める「脅迫状」を使って、圧力をかけている。忌まわしい攻撃に移る前に免責されること、帝国的テロを行う前に免責されることこそが米国の狙いなのだ。


我々のラテンアメリカに対する米国の侵略

 これは恐怖と死についての終わりの無い物語のようである。この帝国の利益にとって『危険である』と見なされた男や女たちが、犯罪者という野蛮な非難、嘲り、そして屈辱の中で、命を落としてきた。それらはホワイトハウスとペンタゴンの横暴で拡張主義的な精神の中から、あるいは世界を支配する野心に満ちた贅沢な米国企業の経営者室の中から、生み出されてきたものだ。ドルを使い、我々の国々の天然資源を略奪する様々な形態を用いて、である。

 拷問道具の政策、ドルと汚職の政策、詐欺と嘘の政策、銃眼と軍事侵攻の政策、米国国家安全保障の政策、多国籍企業の神聖なる利益防衛の政策、我々の国々への卑劣な内政干渉の政策、政府に対する脅迫と賄賂あるいは不正な支払いの政策が、帝国的な支配戦略の一部を成している。それは、第2次世界大戦後の1947年に諜報と国家安全保障、軍事・地政学的な侵略の専門家たちが中央情報局つまりCIAの設立を決めた時以来、打ち固められてきたものである。CIAは米国国家安全保障法の申し子だったのだ。

CIAは世界中で、特に我々のラテンアメリカでは、犯罪国際局(the Crime International Agency:CIA)となっている。CIAは米国憲法に違反した異常なまでの権力を身につけている。それは殺す、陰謀を練る、政府を転覆する、クーデターを起こす、国々の経済を破壊する、洗練された拷問法を教える、投獄する、追跡する、そして人々を消し去るライセンスを持っている。CIAは心理戦、大量破壊兵器、妨害とテロ、武器、そして麻薬密輸の専門家をそろえている。

 彼らは年間何百万ドルという予算を持っている。それは、政府を転覆させ、ストライキを起こさせ、強力な爆発力を持つ爆弾を仕掛け、良心を金で買い、その国と外国のエージェントたちを政府の要職につけ、情報と事実を捻じ曲げるための広報手段としてマスコミの一部を買い取り、不正確な情報や嘘をつたえる、という諸目的のためである。彼らは『敵』を抹殺するときには道徳も良心の呵責も持たない。CIAはその惨めなまでに有名な騙し作戦を使って世界中で『仕事をする』米帝国の犯罪の手段である。CIAは死と破壊を作り出す陰惨な組織、要するにそれはスパイ組織であり、人権と自由を侵すエキスパートなのだ。

 ラテンアメリカ諸国で、百回以上にわたってアメリカ合衆国によるある種の侵略攻撃の犠牲者にならなかった国は存在しない。

 中央情報局CIAは、1954年にグアテマラの大統領ハコボ・アルベンスを詐欺的な手口で追放した。アルベンスが、特にユナイテッド・フルーツの利益を損なわせる農業改革法を宣言し、国民的な大統領となったから、ただそれだけの理由である。

 1965年の4月28日、ドミニカ共和国は米国による侵略を受けた。それは合法的に選ばれたフアン・ボッシュ政権のCIAによる追放に続いて起こったことだ。

 チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、ボリビア、ペルー、そしてエクアドルは、米国と国際資本の神聖なる利益の犠牲にされてきた国々である。ラテンアメリカは『国際共産主義』に対抗する米国の戦いの舞台となった。そしてそれを口実にして、米国はクーデターを画策してファシストの独裁を作り上げ維持したのだ。それらの独裁国家は抑圧的な警察と軍隊によって形作られ、集団的な殺害には飽き足らずむごたらしい拷問と無実の人々の暗殺、数万人もの男女と子供と若者を行方不明にさせた。CIAとFBIは、『コンドル作戦』[1]に組織的に加担した。そしてそれはファシスト独裁の期間に、独裁者の犯罪国際局(Crime International Agency:CIA)に転身した。それはラテンアメリカで数万もの男女を殺害し拷問にかけたのである。

 1973年9月11日、米国とCIAは、チリの大統領サルバドール・アジェンデを打ち倒し死に追いやる軍事クーデターを起こさせた。

 80年代には中央アメリカが革命に敵対する米国の戦争の実験場と変わった。CIAと米帝国の数万の軍隊とその手先たちがグアテマラ、ホンジェラス、エルサルバドル、そしてニカラグアに配置させられた。それぞれの国の、または国際的な人権擁護団体の控えめな数字でも、彼ら自身と傭兵たちの手で25万人もの中央アメリカの人々が殺され行方不明にさせられた。

 ニカラグアではいくら殺されたのか知るすべも無いほど大勢の人々が殺害された。血に飢えた『タッチョ・ソモサ』[2]を打倒したサンディニスタたちと戦うという口実を設けて、彼らは『コントラ』として知られる傭兵部隊を作り上げ、それを使ってニカラグアの民衆に対して莫大な犯罪を行ったのだ。コントラの傭兵に給与を支払うために、CIAはあの不名誉なイラン・コントラと呼ばれる作戦を重ねていた。そこでは、米国政府と議会によって禁止事項とされていたにもかかわらず、イランに武器を売った。次に、彼らは米国の消費者に対して販売するために麻薬を買った。そしてその稼ぎで武器と爆薬の代金、およびニカラグアの人々を殺し傷つける傭兵たちの給料に充てたのだった。

 このような事実によって、この帝国と『民主主義を守るために』戦うエージェントたちの二枚舌的なモラルが明らかに示される。実際には彼らはすべての国々の人権と自由を踏みにじるのだ。

 1983年に小さなグレナダ島はこの帝国の残虐な攻撃による犠牲者と化した。大統領のモーリス・ビショップが殺害された後だった。当然ながらこれにはCIAが加担している。

 エルサルバドルの場合は、CIAはまずベネズエラのエレラ・カンピンス政権[3]を支配し、そのカンピンスがナポレオン・ドゥアルテ大統領[4]に兵器と備蓄食料を贈ったのだ。ドゥアルテは米国とCIAに支配された男だった。

 この45年間、キューバはこの帝国政府と薄汚いCIAの犠牲者・殉教者であり続けている。この国は、皆殺しのための封鎖、ヒロン海岸での海軍による攻撃、破壊工作とあらゆる形態のテロリスト攻撃に、英雄的な精神で耐え忍んでいる。彼らの攻撃は、出血性デング熱やタバコのベト病や豚の熱病を引き起こす化学・細菌戦争にまで及んでいるのだ。

 コロンビア作戦はパストラナ政権[5]の間にひねり出された。当然だが、米国国務省、CIAおよびペンタゴンのアドバイスと作戦と命令を受けたものである。この計画は米国政府に、帝国に対する完全な服従のサンプルとして『提出』された。クリントン政権は即座に軍と30億ドルにのぼる経済『援助』を送り込み、それはコロンビアの人々に敵対する情け容赦のない力を解き放つ役割をした。この計画の名目は麻薬密輸との戦いである。この言い訳は米帝国の陰謀を覆い隠すものだった。その真の目的はFARC-EPとELN[6]の解体である。

 ディワインとグラスリィの両上院議員はこの『平和のためのコロンビア計画』に賛成し、カヴァーデルはそれをS1758法案[7]に作り変えた。それが『アリアンサ(同盟)』法案という名前で書き換えられたのは米国議会での議論と承認を得ることができるように、である。

 この計画は、今や『愛国法』へと発展したのだが、暴力、人権の制限あるいは否定、軍事的拡張、そして集中的な軍事衝突を拡大させてコロンビアを本物の血と死と破壊的な馬鹿騒ぎがのさばる場へと変えることを意味している。

 しかしこの状況に関して最も深刻なものは、米国がコロンビアを何百人ものヤンキー部隊、CIAとDEAが集まる巨大な軍事基地へと変えてしまったことである。戦争は徐々に他国を巻き込み始め、彼らはラテンアメリカの軍隊がコロンビアの紛争に直接に加わり地域紛争化させるように仕向けているのだ。このようにしてラテンアメリカの人々は南米における米国の地政学的利益を守るのであろう。

 ラテンアメリカで最も貧しいハイチは、この帝国の干渉主義に繰り返し繰り返し犠牲になっている他の例である。最近のアリスチド大統領追放は人々に対する軍人や準軍人による暴力の再燃を引き起こしたが、フランスのジャーナリストであり作家であるヴォルテール・ネット[8]のティエリ・メイサンはハイチのクーデターに関して、それは2003年の夏に米国とフランスによって合意されたプランの産物である、と断定する。この言葉はキューバのジャーナリストであるエドゥアルド・ゴンサレスによっても引用される。

 米国はハイチにFOLと呼ばれる新しい軍事基地を建設するだろう。そこはカリブ海地域にある他の基地を補完することになるだろう。そしてペンタゴンとCIAによってアルバとクラカオ[9]にあらゆる種類の軍事用輸送手段が置かれることになる。これらに、米国がエルサルバドルのコマラパやエクアドルのマンタ・バセに持つ軍事基地、ペルーやボリビア、アルゼンチン、チリ、そしてアマゾン盆地の空軍遠征部隊の新しい基地の施設が加わる。それらは米国コロラドスプリングスのシーヴァー空軍基地の中に置かれる軍事宇宙センターと接続されるべきものである。

 帝国の最終目的は、我々の国々に大きな政治的軍事的な圧力をかけることに加えて、この地域を完璧な形で厳しくコントロールし、ラテンアメリカを新植民地へと変え、支配戦略を打ち固め、そして当然のことながら、天然資源を、特にアマゾンの膨大な水と酸素の支配権を手に入れることである。

 アルゼンチンのジャーナリストであるカルロス・ファシオはリベラシオン[10]の記事を引用して次のように言う。米国の採用する手段、プロセス、軍事的そして政治的な行動は、『超保守的なヘリティジ基金』の陰にその姿を隠している。この基金は共和党に大きな影響力を持ち、キューバとベネズエラの『テロリスト』に対する南部司令部の役割を強化するように勧めた。しかし、コロンビア計画や南米アンデス地域構想で起こっていることと同様に、ハイチのFOLは、キューバとベネズエラに対する偶発的な軍事攻勢を作り上げるだけでなく、石油と天然ガスの豊富なメキシコ湾でのワシントンの『安全』を確保することに貢献することだろう。

 世界は戦争の恐ろしさを知っており、同時に米国の戦争が、国際法で保障される人権、自由、尊厳、独立を完全に否定するものであることも知っている。いつまで世界はこの帝国の全面的な存在の仕方と全地球的な抑圧行動に耐えることができるのだろうか。

【注解】

[1]1975年に生まれた南米6カ国間の情報調整・安全保障システム。実質的には国際白色テロ・ネットワークである。

[2]ソモサ政権は1937〜79。当初より米国の支援と支持を受けた長期独裁政権。79年のサンディニスタによる革命で終了した。

[3]ルイス・エレラ・カンピンス政権は1979〜83年。

[4]エルサルバドルのナポレオン・ドゥアルテ政権は1980〜89年。

[5]コロンビアのアンドレス・パストラナ政権は1998年〜2002年。

[6]FARCコロンビア革命武装勢力(その軍事組織がFARC-EP人民軍)、ELN民族解放軍、ともに1964年結成。

[7] Alliance with Colombia and the Andean Region (ALIANZA) Act of 1999 (S.1758)

[8]フランス語版Résau Vortaire、スペイン語版Red Vortaire。アラブ語版、英語版、イタリア語版、ロシア語版がある。ここでは英語風にヴォルテール・ネットと表記する。フランス語版 http://www.voltairenet.org/fr  
スペイン語版 http://www.voltairenet.org/es  英語版 http://www.voltairenet.org/en

[9]ArubaとCuracaoはベネズエラ沖にある島で、観光地としても有名。

[10]フランスの新聞Libération。



 【第2部】

ベネズエラにおける尊厳、主権と革命

 ニカラグアの詩人で革命家であるエルネスト・カルディナル神父は、ナマグアの『エル・ヌエボ・ディアリオ』2004年4月23日付の記事で、チャベス大統領に率いられたベネズエラがラテンアメリカ革命の開始であると明言する。彼は「チャベスはあらゆる民間および外国の情報媒体の敵対に遭っている。さらに反対者はテロに訴えている。彼らの政治デモは野蛮だ。」と主張する。しかし、ブッシュがチャベスを帝国の敵と決め付けたために、これらのテロリストたちはテロリストとは見なされない。彼らは民主主義と自由のために戦っているとされる。皇帝であり戦争と死の主人、人類と米国国民の真の敵であるブッシュは、その二枚舌のしゃべり方と態度で、コロンビアのFARCとELNのゲリラをテロリストと呼ぶ。そしてロシアのカフカスの北ベスランで極端な残虐さで子供たちを殺害したチェチェンの原理主義者たちをテロリストとは形容しない。憎しみを紡ぐ者が憎しみを刈り取る。これは真実である。疑いも無くブッシュこそが常に最大のテロリストなのだ。【そのチャベスは2013年5月にすでに他界している。跡を継いだニコラス・マドゥーロには常に国内外からの攻撃が迫っている。】

 ブッシュにとって、ベネズエラ革命を指導するチャベスはこの帝国スタイルの『民主主義と自由』に対する危険である。さらにフィデル・カストロの友人であるため、彼は米国と国際資本とベネズエラの支配階層の神聖なる利益にとって深刻な脅威である。したがって彼らはチャベスとベネズエラ革命を葬り去らねばならない。それがどれほど高くつこうと構わないのだ。国際法でうたわれる人間の合法的権利について考える必要も、主権や自主独立を尊重する必要も一切無い。

 チャベスの革命の夢を打ち砕くために、この帝国はCIAを持っている。この世界的なテロとスパイの機関はベネズエラの主要な反対派の親玉である。だから2002年のクーデターの再に積極的に関与したのだ。石油産業への妨害で、種々の度重なるテロ攻撃で、それ以前からの軍事的陰謀の中で、チャベス罷免国民党票への署名活動の最中とその後で、ストライキの組織化の中で、暴力的なデモと人望厚いリーダーたちの殺害で、である。そして同様に最近にも、CIAに支援された反対派のクーデターと犯罪的騒乱行為を捜査していた判事を殺害した。[11]

 2003年の11月にヴォルテール・ネットはベネズエラの知識人でジャーナリストであるパチョ・ビラマールの調査報告を掲載した。彼は次のように主張する。今やCIAはチャベス政権に対する反対派の主役である。そして米国に基地を置くその並外れた実力によって、経済的、社会的そして国際的な政治的利害によって仕分けされる様々な反対派の中に入り込んでいる。CIAはその根本的な目的を達成するために実に巧みに彼らを操作する。それはベネズエラの民主主義を破壊し米帝国の植民地支配の国に置き換えることである。

 ビラマールは明言する。CIAによるチャベス大統領の悪魔化は次のように実行された。左翼たちは、チャベスをポピュリストでありゴリラ(野蛮人)であり民主主義に敵対するとして、彼に対する不信を広める。彼らは、カルロス・アンドレス・ペレス政権がIMFの過酷な手法を押し付けるために『カラチャソ』として知られる反乱市民たち7千名の殺害を命じたことを、さらに、反チャベス派がウオール・ストリート好みの残虐な『民主主義』に対抗するチャベスの反乱にこの犯罪行為の責任をなすりつけたことを、ひた隠しにしたのだ。

右翼たちはチャベス大佐をフィデル・カストロの延長であると宣伝する。しかし彼らは真実を打ち破ることはできない。チャベスは、この国とこの大陸で人々の最も積極的な信頼を得ている。これは米国国民をも含んでいる。彼の国際的な人気の原因の一つは、疑いも無く、CIAが彼に敵対しているという事実が証明されていることである。

 それに加えて、彼らは2002年4月11日のクーデターで彼を倒すことができなかった。それは1973年の9月11日の『ピノチェット化』のアップデイト・ヴァージョンとして企まれたものだった。その過程では、1日で2千件の家宅捜索を行うことも彼を権力の座に戻した民衆の蜂起を止めることもできなかった。同時にCIAは歴史に残る激しい石油の妨害工作を通してでも彼を打倒することができなかった。

 雑誌テマス[12](2004年3月19〜25日号)は、米国議会メンバーのホセ・セラノ(民主党:ニューヨーク州選出)が、米国政府がベネズエラの民主主義の弱体化を目的に反対派に資金を提供した、と非難したことに言及した。

 彼は米国政府が民主的に選出された大統領を尊重しないことを嘆いた。「(チャベスは)2回も国民に選ばれた人物なのだ。我々はこのようなことをする民主主義が良いものであると言い続けることはできないしこれを支持しないだろう。」この議員は、フィデル・カストロと友誼を結んでいることを理由にオットー・レイヒ[13]がチャベスを葬りたがっている、と非難した。セラノは次のように強調した。「もし誰かがどのような形であれカストロと友好関係を持つなら、レイヒはその者を追い出すだろう。」

 ラテンアメリカでどこでもそうであるのだが、CIAはベネズエラの経済と政治の権力を握る民間人所有の新聞やラジオ放送、テレビ局情報媒体を利用する。その多くの場合は金で同意させるものである。こうしながらCIAは、まずチャベス政権の活動の威信を傷つける意図を持って、あたかもそれが最近のチャベス政権の結果であって国際資本によるベネズエラの豊かな石油の強奪の結果ではないかのように、この国の悲惨な様子を晒しものにする。

 CIAは同様のセンスで犯罪による暴力を、それがあたかも国際資本自身と当地の支配階級によって産み出されたものではないかのように、非難する。そしてまた、貧困の種を蒔く政治腐敗の中で米国の援助をあてにする資本家政府が作った悲惨さに対してベネズエラ国民が非難されてきたことについては、恥知らずにも沈黙を守る。

 例えば1999年に人口の85%が貧困階層であったことなど全く触れない。そしてこのボリバル主義の政府が現在やっていることを無視する。農民に土地を与え、旧政権がほったらかしにし続けていた人々に対する大規模な文盲対策、彼らへの保健対策、石油産業による自国の利益を回復させること、そして人々の考え方、および統計が明らかにする犯罪の減少、このようなものをCIAは無視する。

 こうして今や彼らはベネズエラの民主主義に敵対して新たな襲撃を準備する。それはラテンアメリカの自治と主権に対する新たな攻撃である。ビラマールはこのように語る。

ボリバル主義革命のベネズエラで、CIAと米帝国は、何百人というスパイを送り込むために、また、反対派に同調する国家と地方の警察を最新鋭の武器を与えて訓練するために、格別のエネルギーを使って行動してきている。それはちょうど内戦を準備するためのようである。

 さらに言えば、CIAは飛行機を導入して『国民の不服従』、つまりこのボリバル主義の司令官に反抗するデモとマスコミによる最大の反抗をそそのかす。チャベスは今までに一人としてジャーナリストを逮捕しておらず新聞記事の制限を行ったことはないのだ。今までテレビ、ラジオ、新聞によって、一人の大統領に対してこれほどの侮辱が浴びせられたことはない。にもかかわらず、閉鎖されたメディアも逮捕されジャーナリストも政治犯も、皆無なのである。

米国の人権専門の弁護士であるエヴァ・ゴリンジャーは、米国政府が「ベネズエラでのほとんど『侵略』と言って良い謀略的活動に資金を提供するために113万6千ドルを費やした」と告発した。カラカスの新聞VEA記者ウェンディ・ラ・ロサによる2004年4月14日の特別リポートによれば、ゴリンジャーはその分析の中で「ボリバル革命の進行に対抗する討論と活動のために、13万6千ドルがCediceCD[14]につぎ込まれた」と指摘する。

 アントニオ・ホセ・エラダ・アビラは2004年12月18日の雑誌テマス・デ・ベネスエラで、帝国はベネズエラに敵対してコインを投げた、と表現し、「ベネズエラ政府が殺人を犯していると言わせるために、ベネズエラの国連大使を買収した」と実例を示した。

 そして「あらかじめ反対派によってグアリンバ・プラン[15]にそって計画された殺人は望まれる結果を得られなかった。」と続ける。彼は、マスコミがボリバル革命に敵対するブッシュの地政学的なプランに奉仕している、と非難した。「その証拠に、ベネビシオン、テレベン、RCTV、グロボビシオンといったテレビ局が、血まみれになったベネズエラの旗を置いてチャベス大統領を殺人鬼と非難する暴力的な映像の15分メッセージを放映している。」と。

 CDに関してエラダは「CIAによって書かれた映画のシナリオの通りに、ある国の兄弟同士の間に武力衝突を作る意図で、死者をもっと増やそうとしている。」と言う。

 ラテンアメリカとベネズエラの新聞社、雑誌社、ラジオ局とテレビ局のオーナーは、憲法にそって承認された新しい通信法に反対して一斉に抗議の大合唱を発している。しかしこの法律がベネズエラの民衆を、特に子供たちを、報道の自由という美名の下に撒き散らされる恥ずべきこと、特に社会的暴力、犯罪、テロ、家庭内暴力、性的な暴力から守るためのものであることを、彼らは決して言わない。

 2004年2月11日付の新聞VEA[16]は、反対派がチャベスを倒すための資金として数百万ドルを受け取っていると非難した。そしてCIAと米国国務省の支配下にある複数の基金(NGO)が反チャベスの情報戦争とその計画の資金として数百万ドルを与えた、と明言した。この暴露は、米国のジャーナリスト、ジェレミー・ビッグウッドによって得られた文書のおかげで可能になったものである。その文書のオリジナルは当のCIAのファイルの中にある資料なのだ。

 ビッグウッドは英国の新聞インディペンデントに、後にVEAが引用したある記事の中で、次のように語った。米国によるチャベス反対派への資金援助は「1990年のニカラグア総選挙で膨れ上がった形態を繰り返した。そのときには米国はダニエル・オルテガ大統領を敗北させるためこの中米の国の選挙民に一人につき20ドルを投資したのだ。民主主義のためにこのようなことを行うのは非常に偽善的である。」

 米国とCIAは秘密の作戦を展開するためにNGOタイプの様々な組織を利用する。その中の一つが、チャベスに敵対する主要な役を担った米国民主主義基金1[17]である。これを通して何百万ドルもの資金が反対者たちに配られた。

 この非政府組織は、年間におよそ4千万ドルを非政府系のグループと支部に配った。これがラテンアメリカや世界の他の地域で「米国によってかさ上げされた値打ち」を持つシステムを押し付ける、ということである。ビッグウッドの表現によると、NEDはCIAの隠れ蓑である最大の組織の一つなのだ。その狙いはチャベスの信用を貶め打ち倒すことである。

 ワシントンのジャーナリストであるロサンナ・ロドリゲスの主張によると、明白な証拠を前にして国務省の報道官リチャード・ボウチャーは、米国政府が米国民主主義者協会(NDI)を通して、ベネズエラで民主主義を強化すると思われる団体を経済的に援助していることを認めた。このCIAの文書によると、米国はベネズエラの反対派リーダーたちに数百万ドルを送金していたのである。それはチャベス大佐の合法的な政府に対する不安定化作戦の資金とするためである。「この文書は、NEDが百万ドル以上をこのような反チャベス団体に払ったことを示している。その目的は、それらを米国型民主主義をベネズエラに押し付けるために貢献させることだった。」

 さらに、2004年3月25日付のベネズエラの雑誌テマスで、アリエル・フロリルは、ビッグウッドの言葉に言及しながら、NEDが、例えば国際共和主義協会、国際的任務のために国民民主協会、労働組合AFL−CIO[18]の外国関連部門、そして国際労働連帯のためのアメリカ・センターといった「計画的に細分化された諸団体」を、ベネズエラの反対派に資金を送るために利用したのである。AFL−CIOは何十年も前からCIAによってラテンアメリカの社会運動の中での活動に利用されている。

 2004年3月14日付の日刊紙VEAでオマル・ゴメスは、クーデターの前日にブラジル政府に対し、ブラジルの米国大使と元ベネズエラの米国大使ドンナ・フリナックがベネズエラの反対派を支援するように要求した、と明言した。そしてベネズエラの国会議員サウル・オルテガは、「フリナックはクーデターの1ヶ月前にはベネズエラで大使だったのだが、その前にあらゆるクーデター準備を行っていた」と告発した。

 ゴメスは次のように告げる。「2003年12月にレベリオン[19]に掲載されたスティーヴ・カンガス[20]の『CIAの残虐行為の記憶』と題された記事を思い出すと興味深い。その中で彼は、Asociation for the Responsible DissentがCIAが裏に潜む作戦の結果1987年までに6百万人が殺害されていたと推定した、ということを書いたのである。元国務省の職員ウイリアム・ブラムはこれを正確に『米国によるホロコースト』と呼んだ(1987年12月13日付ワシントンポストColeman McCarthy, The Consequences of Cover Tactics)。この『米国によるホロコースト』という言葉は、ベネズエラに期待する超人的な任務についての考察を我々にもたらすべきものである。同時に、CIA、および主要にベネズエラの商業テレビによって起こされるメディア・テロが表に出す膨大な脅威との対決を促すはずのものである。」

 作家でありベネズエラ・アンデス大学教授であるホセ・サント・ロスはその著作『ベネズエラにおけるCIA(Kariña Editores出版)』の中で、CIAに直接・間接的に関与するベネズエラの政界人、財界人、労働界と宗教関係者を取り上げた。そして彼は、自分が行っていることや語っていることに対して無自覚なままでCIAとその破壊工作に手を貸す大勢のベネズエラ人がいることを明らかにした。彼らは時には熱心に情報を発し堕落した行動や訓練で知的労働を売ってドルを支払われる。それは破壊工作を実現するため、襲撃を準備するため、殺人などのCIAの蛮行を計画するためである。

 サント・ルスは、反チャベス派に積極的に介入するベネズエラ人を『代理人または召使』と呼ぶ。彼らは常にCIAと手を携える。その中にはガブリエル・プエルト・アポンテ、アンヘル・サゴ、カルロス・アンドレス・ペレス、ポンペヨ・マルケス、オスワルド・アルバレス・パス、ラウル・サラサル・ロドリゲス将軍、ダグラス・ブラボ、アメリコ・マルティンその他の『リーダー』たちがおり、一部には、以前に当のCIAの犠牲者であった共産主義者やベネズエラ左翼の指導者、あるいはゲリラ隊員だった者すらいる。

 サント・ルス教授は同時に、米国民主主義基金NEDのチャベス大統領の政府に敵対するマスコミに対する役割を非難する。そしてそれを次のように表現する。「CIAの活動はほとんどの人に知られていない。CIAの手先は、例えば、罪の無いサッカーの試合の後で国家の基盤を打ち壊しているかもしれない。彼らの職業は、ベネズエラでは写真家や美容師、道路清掃人、大学教授、靴磨き、アイスクリーム売り、伝言人等々にのぼる。」これらの人々はCIAが自分を利用していることに気付く時がほとんど無いだろう。

 彼は、ワシントンからやってきて世界を支配しようとするある『シンジケート』の存在を暴露する。その中には、ジョージ・ブッシュ、ジェイムズ・ウォルフェンション(世界銀行)、スペイン国王フアン・カルロス、ヘンリー・キッシンジャーとその飼い犬ジミー・カーター、そして、『チャベス矯正』委員会を主催するセサル・ガビリアがいる。

 NGOの人権団体や様々の『市民社会』団体は、CIAの別の形の手先で、ボリバル革命に激しく敵対する活動をしている。そしてCIAと米帝国の利益に仕えるという目的については、カトリック教会とその僧侶たち、たとえばベネズエラ教会会議委員長のバルタサル・ポラスといった僧侶たちを忘れてはならない。

 チャベス大統領はラテンアメリカと世界の団体に向かって米国とCIAの干渉を非難した。2003年9月に産業界と政界の反対派による激しい政府転覆の活動が続くさなか、彼の治安軍が秘密裏に撮影したビデオの中でCIA局員がベネズエラ人たちを指導している、と明言したのだ。そして彼はCIAを揶揄しながら次のように語った。「テクニックはそんなに上手じゃないな。我々が撮影できたくらいだから。」

 このベネズエラのボリバル共和国大統領と副大統領、その他多くの大臣たちは、多くの国際的な会合に臨んで、CIAがベネズエラで闇の行動に関わっていることを非難してきた。それはクーデターの以前も最中もその後も、また大統領罷免の国民投票請求の過程でもその選挙の最中も、である。社会的な情報媒体を使い、反対派の活動に資金提供を行い、犯罪的な襲撃で、そして様々な人民階層の中で、である。しかしCIAは今に至るまでチャベス大統領を打倒し、あるいはこの帝国の拡張主義と支配にとって邪魔になる世界中の他の指導者たち同様に殺害する、という挑発的な試みに失敗している。

 CIAは、ベネズエラのボリバル共和国であらゆる国際的に認められた主権の原則を侵害する、米国政府の秘密の腕である。しかしベネズエラの民主主義と国家の主権に敵対しているのはCIAだけではない。他の機関、たとえば米国民主主義基金(NED)、米国国際開発局(USAID)や、企業家や資本家支配層の反対派に武器と何百万ドルもの資金を供給するその他のものである。その明らかな例は、CIAに奉仕してチャベス大統領の権威を喪失させようと誤魔化し嘘をつく民間の報道機関の利用と悪用の中に見られる。

 2004年の3月後半にOAS評議会のベネズエラ代表は、米国とCIAがベネズエラの大統領を倒すために行っている陰謀を次のように告発した。「チャベス大統領は、反対派の破壊活動に対する資金援助、2002年4月のクーデターで現われた独裁的な政権に対する自動的な承認、そして罷免国民党票運動の推進などにおける米国の帝国主義的な干渉を、明確な証拠に基づいて明らかにしたのだ。」

 当然のことながら、OASの米国代表、元ベネズエラ大使ジョン・マイストはバレロによって暴露されたこれらの明らかな実態をことごとく否定し、この帝国のいつも通りの冷笑的な態度で、この告発は「無責任であり虚偽である」と言った。しかし人々の権利と自由を踏みにじるCIAの謀略活動の存在と歴史は、否定することも反論することも不可能である。

【注解】

[11]2004年11月にカラカスで起こったダニロ・アンデルセン判事暗殺事件を指す。

[12]Temasはキューバの雑誌。インターネット版のUrlはhttp://www.temas.cult.cu/

[13]合衆国ラテンアメリカ局責任者Otto Reich。1945年、キューバ生まれ。

[14]Cediceは金融関係者が作る「民主主義」推進組織、CDは「民主的同調」Coordinadora Democraticaの略。ともに米国から資金援助を仰いでいる。

[15]Plan Gualimbaは、反チャベス派が2004年ごろにチャベス政権撹乱のために行った組織的暴力。

[16]ベネズエラの日刊紙Diario VEA

[17]the National Endowment for Democracy(NED)。1980年代の初頭にレーガンによって設立された。

[18] アメリカ労働総同盟産別会議。1955年にアメリカ労働総同盟(AFL)と産別会議(CIO)が合体して生まれた組織。一貫して米国の帝国主義政策を支持し推進している。

[19]Rebelión。左派系のスペイン語インターネット情報誌。Red Voltaireとともにスペイン語圏で広く読まれている。Urlはhttp://www.rebelion.org/portada.php

[20]Steve Kangas。「インターネットの戦士」と言われた米国の反体制派闘士。1999年2月にピッツバーグで暗殺された。


  【第3部】

ブラジルに敵対する米国とCIA

 米国はラテンアメリカで唯一の包括的な権力となることを夢見ている。ブラジルは、ルラ政権の初期から、米国が征服すべき障害物である。名のある米国の中学校の生徒たちは南米の新しい地理を勉強する。公式の教科書では米国がアマゾン盆地を統治する義務があると断定している。その地域が世界で最も豊富な生態系、水、地上の酸素を持っているからには、無知で野蛮で原始的で麻薬密売人で暴力的な民族たちに治めさせることはできない、というわけだ。この教科書の中ではブラジルおよび他のラテンアメリカ八ヶ国の土地は米国の権力の下になければならない土地であることを示すために分離されている。この帝国の干渉と拡張の計画は世界の自由で民主主義的な国々に対する総否定にも等しいものである。

 米国はCIAを使ってブラジルの最も大切な国有財産とあらゆる階層の政治・経済・文化の権力を支配してきている。外交上の庇護の下でCIA局員たちは好き勝手に振る舞い、このラテンアメリカ最大の国をコントロールする目的で果てしのない謀略的な作戦を展開している。彼らは、産業、特に電気産業や銀行と株式に、軍事や政治に、右翼組合やマスコミに、何百万ドルつぎ込もうと意にも介しない。ブラジルを戦略的に支配する計画に積極的に関わるのはCIAだけではない。DEAやFBIといった他の機関の者が、麻薬密輸と戦うだの、国際テロリズムと戦うだのといった名目で、重要な役割を果たしているのである。

 ブラジルの出版物カルタ・カピタルは2004年3月31日号の長大な記事で、ブラジル政府のあらゆる分野にいかに米国のスパイが浸透しているのかを書き表している。そして、大使館員や地方委員会、麻薬対策委員会、あるいは単に在ブラジル米国大使付き武官たちの庇護の下でこの諜報機関員たちが作業を行っている、と警告している。こういった秘密機関員たちはすべてCIA、DEAやNASのスパイや警察、そして税関職員たちなのだが、外交上の法規に関する国際的な合意にも全く外れる形で、何のコントロールも受けずに外交上の特権に隠れてその仕事を行っている。彼ら米国の機関員たちは、例えばコンピューターや情報伝達技術を通してのスパイの作業に、何百万ドルでも『投資』する。

 米国諜報機関員の上役は、地域委員として行動するジャック・G.フェラロ、米国大使館第一書記で麻薬対策部に働くトーマス・ハロルド・ロイド、ブラジルでの麻薬対策のためのDEA責任者マーク・ケニォン・エドモンソン、大使館付きの外交官で税関職員ジュリオ・ベレスといった重要人物たちである。

 カルタ・カピタルは、ブラジルで呪わしい活動を展開してきたCIA局員をつきとめその膨大なリストを紹介している。1990年代の10年間にビセンテ・チェロッティは、CIAの責任者ブラムソン・ブライアンの作業に仕えクレイグ・ピーターズ・オッスに付き添われた国家警察の長だった。在ブラジル米国大使館のリストによると、オージェ[21]はテラ・ブラジリス社を率いジャック・G.フェラロは地方委員として活動していた。CIAのナンバー2は、地方委員会第一書記の肩書きの下にその活動を隠していたウイリアム・A.コンスタンサであった。

 2003年にブラジルでのCIA局員の外交的な覆いが取り外され、諜報員ダニエル・マクローリンとケネス・ジョセフ・ウイルキンソンの活動があらわにされた。そして外交官の肩書きを持って活動していた他の4名のCIA局員も告発され、当然のことながら彼らは他のスパイに取り替えられた。交代要員の中にはFBI長官のために働くカルロス・コスタがいた。正体を明らかにされた諜報員たちは大使館を去るかブラジルの他の隠れ蓑を使って活動し始めた。

 カルタ・カピタルによると、彼らは外交的なカバーの下で、およそ30名の『顧問』、アナリストや他の『外交』業務の形で、ルラ政権の政治家や企業家、外国企業の社長と政府職員たちをスパイする任務を持って、その隠密的活動を展開していたのである。

 現在のブラジルにおけるFBIの責任者ドナルド・クレッグは、米国大使館付きの顧問という隠れ蓑の下にその活動を隠している。FBIのナンバー2はリチャード・カバリエロスである。ジュリオ・ベレスは税関職員の責任者だが、彼は2003年の外交官リストの中では大使館付係官の肩書きを持っているのである。ベレスの部下であるジョン・リー・ウーリーは大使館付係官補佐として載せられている。

 カルタ・カピタルから、米国の諜報組織による謀略的な活動を明らかにするための十分な証拠を手に入れることができる。彼らはルラ・デ・シルバの政府に対して、帝国の指示書きと利益に付き従わせようと試みながら、明らかな介入を行ってきた。特に、ワシントン・ブッシュ政権の併合主義的計画の最たるものであるAFTA(Andean Free Trade Agreement)にルラが激しく反対しているからである。AFTAは『アメリカ大陸自由殖民地域』として再洗礼を受けた。「つまり、モンロー・ドクトリン(1823)およびルーズベルトの帰結[22](1904)の成就なのである。これはボリバルの偉大な祖国をウオールストリートの軍国化された下請工場へと作り変えようという意図なのだ。その目的はEUに対抗して世界の生産競争に打ち勝つことである。」このようにドイツの政治学者ハインツ・ディートリッヒ・ステファンは、ネット雑誌レベリオン2003年11月1日号の『CIAとベネズエラ』と題された記事の中で主張している。

 ルラ・ダ・シルバはこの帝国の地政学的利益にとって最も危険なラテンアメリカ人大統領となった。なぜなら彼はブラジルを、真に自由で独立し自治と主権を持ちラテンアメリカの他の国々にとって明白な実例となる共和国に作り変える、国家計画の再起動を代表しているからである。ルラ政権の存在に対する米国の心配は財務次官ポール・オニールによって要約された。彼は「ルラは自分が気が狂っていないことを証明しなければならない」と強調したのだ。同時にCIAの専門家たちはルラを、ラテンアメリカ独立計画の要になる全面的に危険な、この帝国の植民地化戦略にとって非常な脅威となる人物だ、と表現することに決めた。

 米帝国とCIAはルラへの敵対活動を活発化させている。彼が大衆の指導者であり、疑いなく知的で政治的な偉大な能力を持つ地域指導者であるからだ。彼は、米国とその帝国権力支配が成功する可能性と対決するために、ラテンアメリカの統一に着手する断固たる意思を持ち合わせている。ルラは、去る11月にキトで行われた第4回防衛担当相会議[23]の間にペンタゴンとワシントンの命令に従わないことを通して、ブラジルの独立性を守り通そうとする姿勢を明らかにした。

 ブッシュ・ジュニア政権とCIAの緊急の目的の中に、ルラ政権の権威を貶め放逐することがある。ブラジルが南米だけでなく世界の中で極めて重要だからである。ここは南米地域のGDPの40%を誇り、域外からの投資の約半分が集中している。しかしこの国は、米国に支配された特権階級によって大変な社会的経済的不平等に苦しめられている。

 歴史的にブラジルは米国による干渉の実験場であり最大の米軍機能が存在する。1964年に米国がジョアォ・グラールを追い出して[24]、援助と庇護を与えて南米で最初のファシズム政権を作る実験を行って以来のことである。ペンタゴンとCIAにコントロールされる米軍はブラジルを血と火で支配したのだ。

 ブラジルではCIAとFBIが警察にアドバイスを与え、軍隊が、怪物的な抑圧、狙い撃ちの殺人、最も残虐な拷問、あらゆる年齢の人間に対する誘拐、反体制派や共産主義者や左翼と見なされた男女に対する常軌を逸した辱めと人間性の否定を組織し実行してきた。この『革命の予防』は、本質的に米国の国防政策の理論と実践に基づいて組織された最初のクーデターとして、姿を現した。それは1962年にジョン・F.ケネディによって承認され、後にラテンアメリカの全地域をファシスト政権で満たしたものであった。

 これらの軍事政権が、自由な国を切望する「叛徒」を一掃するための米国の傀儡であったことを、この歴史が明らかに示している。それは「自由と民主主義」の名の下に行われ、今日に至るまでその罪を問われていない人間性に対する恐るべき罪業が成し遂げられてきたのである。

 ブラジルはルイス・イナシオ・ダ・シルバ大統領の下で、あの帝国とCIAがその異常な経験を生かしてこの政府を不安定にしようと試みる決定に対して、面と向かい合っている。ジャーナリストのアウグスト・サモラ・R.は新聞ラ・インシグニアで、マルクスの言葉を用いながら次のように表現する。「ルラに敵対して、あの帝王と大資本、特権階級、そして国際企業、欧州と米国の企業家、CIAと軍部が神聖同盟を結ぶだろう。ルラは彼の強大な敵対者に代わってアリアドーネの糸を紡がなければならないだろう。・・・」しかしこの帝国と内外にいるルラの敵は、ブラジルがラテンアメリカの尊厳と主権と独立の救済センターへと変わっていこうとしているからこそ、彼が国民とラテンアメリカ大衆の支持を得ていることを知らねばならない。彼はこうして我々ラテンアメリカ大衆の夢である総合と統一の理想を現実化しようとしているのだ。  
【ルラ・ダ・シルバは癌のために2010年に政界を引退した。2014年現在、ジルマ・ルセフ大統領政権の国家運営は伝統的な腐敗と寡頭支配の構造の為に必ずしもうまくいっていない。】

【注解】

[21] 原文では・・・Craig Peters Osth. Hoge・・・となっているが、ピリオドの打つ間違いで・・・Craig Peters. Osth Hoge・・・つまり「クレイグ・ピーターズ・・・。オスト・オージェは・・・。」の誤りではないか、と思われる。

[22] Roosvelt Corollary:1904年にドミニカ経済が破綻した際に、セオドア・ルーズベルトはドイツ等の欧州諸国の介入を防ぐ名目で、「モンロー主義の帰結」としてドミニカの経済支配に着手した。その後、米国は中南米各国で経済的支配力を強めていった。

[23]2004年11月16日にエクアドルの首都キトで行われた「西半球国防担当相会議」。

[24]1964年3月に起こった軍事クーデター。米国は「ブラザー・サム作戦」と銘打って米軍によるクーデター支援を展開した。


アルゼンチンに敵対する米国とCIA 


 ベネズエラのチャベス、ブラジルのルイス・イナシオ・ダ・シルバ、アルゼンチンのネストル・キルチネルの各大統領とキューバのフィデル・カストロ首相はラテンアメリカの『悪の頭目』である。なぜなら彼らは、CIAの見方によると、帝国の安全とこの地域での新植民地の利益に対する脅威の増大となっているからである。

 CIAと米国国務省の見通しでは、彼らがラテンアメリカ民衆の共感を呼び起こし、自分たちの周りに中南米とのカリブ諸国の共産主義者とテロリストたちを集めようとしているから、この4人の国家首脳は『テロリズムと地政学上の新たな脅威』なのだ、ということになる。

 結果として、アルゼンチン大統領キルチネルは米帝国とCIAの標的でありつづけている。ブッシュ・ジュニア大統領の国家安全保障問題の顧問であり優秀なCIA局員であったコンスタンチン・メンゲスは、キルチナルに関するワシントンの考えを総合して、彼は民主的なプロセスを弱め地域の発展と個人の権利を損なうラジカルなポピュリズムのグループに属している、と言っている。それと同じ観点から、少し前まで米国南方軍の責任者であったジェイムズ・T.ヒル将軍が語った。

 ヒルは言った。「アルゼンチンの経済危機によって多くの人々がネオリベラル改革の価値を疑うようになった。ブエノスアイレスでの合意で示された通りである。」特にそこでは、何とキルチネルとルラの両大統領が貧しい国を尊重するように要求したのだ。

 アルゼンチンでは、米国とCIAが、3万人を超える殺人と行方不明者を作り出した血に飢えたファシズム独裁政治を押し付けたのだ。現在CIAとその手先は政治機構と軍部、労働組合とマスコミを独占し、キルチナル政権に侵入している。彼らは地方の手先たちを使って、この大統領によって表明された反独占資本的な考えに対して、半分無視したり憎悪を掻き立てたりしている。

 アルゼンチンではCIAは他のラテンアメリカの地域と同様に、外交要員、USAID職員、平和部隊[25]、カリタス[26]、CARE[27]、その他、無数の公的な組織と現地や米国のNGO団体の、隠れ蓑の下にその局員を抱えている。

 米帝国とCIAは、ヒルの言葉によると、ポピュリストが人民を混乱させるためにラジカルになるときに現われる最悪の脅威、ということで、キルチネルを誹謗しようと努める。

 ネストル・キルチネルはその国に経済的な自由、正当な政治的・社会的主権が戻ることを切望している。ルラと共に南米の一致を推進しIMF国際通貨基金の政策とホワイトハウスの命令には従わない、アルゼンチンの政治と経済を米国がコントロールすることを許さない、と高らかに表明した。

 米国外交政策の目的に束縛されることを拒み、もっと言えば、ホワイトハウスの対立者となることによって、キルチネル大統領は米帝国の反感を買った。それゆえCIAは現在、心理戦争やプロパガンダから犯罪組織、ストライキ、首切り、デモにまで至る行動を通して、政権を不安定にすることに全力をあげている。それらの攻撃は資本主義が開発したシステムと資本家国家政府およびファシズム独裁政権によって生み出される貧困状態の中から湧き出てくる。独裁政権は国際企業やIMF-WB、米国と独占支配階層の利益に喜んで仕え、民衆の要求に耳を傾ける以前にアルゼンチンの国を売るのである。

 キルチネル政権の評判を落とし品格を下げ最終的に不安定化させるために、CIAは、当の米国自身が作り出した国際テロと結び付けて見せようと画策する。侮辱と嫌味を込めて、キルチネルがETA、FARC、MRT、そしてベネズエラのボリバル主義者活動と関係を持つと主張する。そして「五月広場の母たち」[28]に対する彼の共感を激しくなじるのだ。

 CIAは、キルチネルがマルクス主義への異常な転向を行い70年代に戻ろうとしている、と主張する。この繰り返しの脅迫は、もしアルゼンチンが全世界の中に入ろうと望むのなら米国の主導的な役割を理解しなければならない、ということを述べているのだ。米国は南米大陸での主要な役割を回復させるためにアルゼンチンを助けるであろう、と。そしてその逆の場合には国際テロ集団の隠れ家であるからこのサン・マルティンの国[29]を『悪の頭目』と見なすであろう、と。

 キルチネルはCIAの背筋の凍るような視線の中に居る。このことはこの帝国が再び軍事独裁政権の復活を後押しするかもしれないことを意味している。ブッシュ・ジュニア政権ならやりかねないだろう。もしそんなことになれば、アルゼンチンとラテンアメリカは人権と自由を失うという恐怖に悩まされなければならなくなる。そして世界は再びファシストの独裁政治とその死と血への果てることの無い渇望の嵐に見舞われることになるだろう。
【ネストル・キルチネルは2010年に心臓発作で死亡。夫人のクリスチーナ・フェルナンデスが次の大統領となったが、伝統的な腐敗した寡頭支配と結びついているため、国の社会と経済を欧米資本に支配される構造に変化はない。】

【注解】

[25]The Peace Corps開発途上国の民生援助を目的とした米国政府後援の民間組織。

[26]Caritasは途上国に対する医療や教育への援助・民主化促進などを看板にするオプス・デイ系統のNGO団体で、世界各国に支部を持つ。

[27]CAREケアは米国に本部を持つ、やはり開発途上国の民生援助を謳い文句にしたNGO。世界中に支部がある。

[28]” Madres de Plaza de Mayo”。1970年代後半のビデラ軍事独裁政権によって殺害、行方不明にされた青年の母親たちによる無言の抗議行動は1977年に始まった。

[29] Jose de San Martin17781850)はスペインと戦ってアルゼンチン、チリ、ペルーを解放した。

  

帝国のテロリズム

 作家でジャーナリストであるカルロス・G.リボドーは、2004年3月号の雑誌クエスチョンで、米国はジョージ・W.ブッシュと彼に従う鷹どもの善悪二元論的な、一面的なそして軍国主義的神学の考えに汚染されている、と主張する。そして彼は付け加える。最も古典的な『分割せよ、そうすれば支配するだろう』という考えで、米国はすでに地政学的な不安定化の組織的な戦術に取り掛かっている。⑴コロンビアの暴力の拡大、⑵軍国主義化と三つの国境線地域[30]への介入の可能性、⑶ボリビアとチリの間の「海への道」をめぐる領地争いをかき立てる、⑷エクアドルとボリビアで反体制派勢力に対する攻撃、⑸BRP[31]の統合諸国政府に対する不安定化を永続させる。

 ブラジルとアルゼンチンの関係が深まることを阻止し恫喝をかけるために、あの北のライオンは『(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ)三つの国境線地域で活動するテロリスト』をでっち上げた。この目的のためにはパラグアイを利用している。明白で反論の余地の無い証拠がある。「アフガニスタンで米国の諜報機関は数枚のイグアスの滝のポスターが壁に貼ってあるのを発見した」。

 これらの証拠はCIAの複数の情報源で見つけることができる。そして雑誌フォーリン・アフェアズのような真面目だと評判の出版物までが、その中でジャーナリストのジェシカ・スターンがヘズボラとアル・カイダがこの三つの国境線地域にまで関係と組織網を広げそこで「この二つのグループの代表がパラグアイで会った」などと主張している。このようにして、米帝国が南米に直接に介入できる道が整えられている。「この地域は新たなリビア、つまり最も異なったイデオロギーを持つテロリストたち(コロンビアの反乱マルクス主義者、米国白人至上主義者、ハマス、ヘズボラ等々)が商品を交換するために出会う場所となった。」

 ブッシュ・ジュニアとその鷹どもが、三つの国境線地域を軍事的に侵略してブラジルとアルゼンチンとウルグアイの政府を終わらせパラグアイと他のラテンアメリカ諸国でその権力を強化するために、国際テロリズムとの戦いという筋書きを見つけたとしたとしても決して不思議ではない。ラムズフェルドとその手下どもが、キトでの第六回防衛担当者会議で、ラテンアメリカ各国の国内事情に介入できるようにするための多国籍軍を作り上げることを通してその実現を望んだように、である。

 CIAと米帝国の、キューバ、ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、エクアドル、ボリビア、ウルグアイに対する行動は、執拗で冷酷、残虐な真の意味のテロ行為であり、それは国際法の原則を軽蔑し平和を脅かし、そして、もし軍事制圧が起こればラテンアメリカ民衆は疑いも無くあらゆる権利と自由を失うことになるだろう。しかし同時に我々の国は、エルネスト・チェ・ゲバラが提唱したように第二第三のベトナムに変わることができよう。そして帝国のテロリズムは終りを迎えることになるだろう。

 アルゼンチンの作家で知識人であるフアン・ヘルマンは2004年8月31日にアルテルコム出版社から出された「軍国主義:この衝撃の数字」という本で、2004〜2005年度における米国軍事支出が5千億ドルに達するだろうと述べている。つまり、一日に13億6千万ドル、一時間に5660万ドル、一分間に94万ドル以上、一秒間に1万6千ドル、ということになる。ブッシュは、軍事施設や装備への出資に4170億ドルの予算項目を承認した。そしてそのうちの約200億ドルがエネルギー部門につぎ込まれ、600億ドル近くがイラクとアフガニスタンの戦争と占領に投入される。もしブッシュとその鷹どもがついに、ペンタゴンとCIAの軍事主義者と戦争屋の計画に従ってイランと北朝鮮あるいはキューバへの攻撃を決めるなら、この数字は間違いなく何十、何百億ドルも膨れ上がることだろう。

 ヘルマンは言う。この惑星は、60億の住人が身を寄せる(彼の言葉によれば、患っている)。世界銀行の数字によれば、そのうちの28億人が一日2ドル未満の収入しかない。(これは世界人口の半分が貧困と極貧の境遇に生きていることを示す。)

 帝国テロリズムの顔はどちらに向いているのだ? CEPR[32]の寸評によると、米国メリーランド大学の世界安全保障と軍縮計画のディレクターであるナタリー・J.ゴルドリングは、大学幹部会に提出されたこの問題に関してある会合の記録の中で次のような情報を与えている。「米国は現在、世界の軍事的消費のおよそ半分を作り出し、世界の残りの国々の総計とほぼ同じ金額をつぎ込んでいる。」その一方でこの世界の貧困層はますます貧窮の度を悪化させており、無視、不健康、栄養不良、絶望と不安の中に生きている。

 ヘルマンは2003年の終りには、ラテンアメリカとカリブ諸国で、貧困階層が1997年に比べて2千万人増加したと断言する。先と同様の計算を繰り返しながら彼は、一日に9100人、一時間に380人、一分で6人の貧困なラテンアメリカ人が増えていることを示している。

 恐ろしい数字はもっとある。ラテンアメリカとカリブ諸国の44.4%、2億2700万人が貧困ラインの下方で生きており、その97%[33]、1億7700万人が20才未満の子供と少年および若者である。極貧者の数は一億人に達しておりこの地域の人口の19.4%である。60才以上の者の半数は何の収入も得ていない。1990年代の終盤にはラテンアメリカとカリブ諸国の人口の11%、5500万人が様々な度合いの栄養失調に苦しんでおり、5才未満の9%が緊急を要する状態で、19.4%の子供がこの年代までに慢性化している。ラテンアメリカは非道な地域であり富の配分が最も不当になされる地域である。20%の富裕層がすべての富の60%を得ているのだ。

 国連によって選ばれた16名の軍事専門家グループによってまとめられ第59回国連総会の前に提出された『現状の国際情勢における軍縮と発展の関係』と題された30ページのレポートは次のように強調する。「貧困の根絶と全世界の発展が、必要な資金が無いために手の届かない目標である時代には、世界的な軍事費の増大が不安定な潮流を作り出す...」「冷戦の終結時には、発展という目的のために、軍事費の削減と紛争を減少させる雰囲気が財政的にも技術的にもそして人間的にも本格化するであろうと期待された。」しかしこの提言にもかかわらず、国際社会は、軍事支出あるいは軍事費のパーセンテージを制限させて国の発展の方向に振り向ける、という合意を達成させることはできなかった。それは恐らく、米国を筆頭とする軍国政府とその軍産複合体、軍隊組織、国際石油企業や他の利権集団が国際社会の重要な部分を形作っているからであろう。このようにヘルマンは語り終える。

【注解】

[30]ブラジル、アルゼンチン、パラグアイの国境線が集まる地域で3国が「共有」の地帯を作っている。イグアスの滝で有名。2001年の9・11事変直後に統一教会が経営するワシントン・タイムズが、この地帯でアル・カイダが活動している、と報道した。なお統一教会はパラグアイのこの付近に広大な土地を所有している。

[31] Bloque Regional de Poder(権力の地域ブロック)の略で、現在チャベスが推し進めているラテンアメリカ諸国の反米ブロック化のこと。

[32] the Centre for Economic Policy Researchの略。

[33] 1 億7700万人は2億2700万人のおよそ78%である。97%が20才未満というのは多すぎるため、これは数字の誤りであろう。


結論

1、 最も冷酷で非人間的で残虐な国際テロリズムは、世界が苦しむ貧困と悲惨さの状態の中にある。米国はこの現実に対して最大の責任を負う。その意味で米国は地球上で最大のテロリストである。

2、 帝国の進歩した側面とその軍事的・政治的優越によって、米国はラテンアメリカをその天然資源を利用するために独占支配しようとしている。

3、 その地政学的な目的を果たすために、米国はキューバ、ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチンの政府に戦いを挑んでいる。その目的で諜報組織に介入を命令している。そして外交官を隠れ蓑にしたCIAやDEA、アドゥアナス(Aduanas)、NASの機関員を使って、謀略的で隠密の活動を繰り広げている。

4、 欧州ブロックや世界のその他の国々に、せめてその新植民地主義的な占領計画の成就を食い止めよう、という政治決定がなされないために、米国はラテンアメリカで何一つ咎められることなく振る舞うのだ。

5、 ラテンアメリカ諸国民の人権と基本的な自由の蹂躙は、CIA、DEA,FBIや他の米国特務機関員たちの弾圧的な活動の結果である。

6、 ラテンアメリカでの米軍基地の確保はコロンビア計画と愛国法の現実化である。それは麻薬密輸との戦いをうたうが、実際にはこの帝国の本当の軍事的・政治的目的を覆い隠すものである。つまりブッシュ・ジュニア政権のあらゆる意思をこの地域に押し付けるために、民衆の反抗を押しつぶそうとするものである。

7、 米国は、欧州モデルに即した南米連合あるいは南米国家共同体の組織化と発展に反対する。それはこの性格の超国家組織が、米国資本が優勢な多国籍独占企業の地政学的な計画にとって障害となっていくだろうからである。この目的のためには米国の叫ぶ民主主義や人権や自由の価値など重要ではないのだ。それゆえに、もし自由と主権を持つ政府が現れると、血に飢えた独裁政権に交代させられるかもしれないのだ。ちょうど60年代、70年代、80年代に起こりラテンアメリカを荒廃させた政変のように。


今こそこの蛮行を止めさせる時ではないのだろうか?


2005年2月  キト

尊厳・主権・反戦平和の法廷  キト:エクアドル

 

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