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 この拙稿は2009年11月に私(童子丸開)の旧HPに掲載していたものである。旧HPにあった記事へのリンクが不可能になったため、必要に応じて修正を施しまた注釈等を加えている場合がある。またこの文章は長いため、小見出しごとにリンクを作って、読みたい箇所に飛ぶことができるようにしている。 (外部リンク先にはすでに通じなくなったものが含まれているかもしれない。その点はご容赦願いたい。)

復刻版:
崩壊する《唯-筋書き主義》:
911委員会報告書の虚構

※ 小見出し一覧(前書きを除く:クリックすればその項目に進むことができます)
  改めて言われるまでもない米国政府の大嘘つき
  「911委員会報告書の正しさ」の正体
  《唯‐筋書き》主義
  自ら墓穴をほりつつある911委員会メンバー
  崩壊に向かいつつある虚構の《筋書き》

 2009年9月に、911委員会で上級スタッフを務めたジョン・ファーマー氏はその著作The Ground Truth: The Story Behind America’s Defense on 9/11を発表し、米国政府とその国家機関が議会の911委員会を前にどれほど事実を隠し嘘をついていたのかを明らかにした。そこで彼は、911委員会が政府とCIAやNORAD等の国家機関による嘘を一つ一つ洗い出し、訂正させることに成功し、「911委員会報告書」をまとめた経緯について述べている。ただ、911事件に関して米国政府がついてきた嘘は、以前から委員長トーマス・ケイン氏と副委員長リー・ハミルトン氏、その他の委員たちによってある程度語られてきたことであり、このファーマー氏の証言にしても「なんだ、まだあったのか」という程度のものに過ぎない。

 彼らは一様に、その嘘を明らかにしたうえで作成された報告書の内容こそが真実である、という立場を取り続ける。ところが実際には、ファーマー氏やケイン氏らがその「真実性」を強調すればするほど、この911委員会報告書自体が初めから持っている重大な虚構性がますます浮き彫りにされていくのだ。彼らはそのことに気がつかないし、たとえ気がついたとしてもすでにどうにもならないだろう。


改めて言われるまでもない米国政府の大嘘つき(小見出し一覧に戻る)

 アメリカ政府とアメリカ国家機関の大嘘つきぶりはファーマー氏に教えてもらうまでも無い。この数年間にわたって、彼らの大嘘と隠蔽に散々付き合ってきた私にとって、「へー、こんな嘘もついてたんだ。まあ、嘘つきさんも忙しいこった」という以上の感想を持つことが出来ない。それでも、その「嘘つきリスト」に多くのデータを加えることができ、それはそれで貴重なデータとなるだろう。その意味でファーマー氏には感謝したい。

 アメリカ政府関係者と国家機関によって語られたことは確かに911委員会の委員たちにとっては仰天するような嘘の数々かもしれないが、ペンシルバニア州シャンクスビルやWTCツインタワーと第7ビルについて語られ続ける大嘘に比べると、そよ風のようなものである。米国国家機関が、世界貿易センター地区の残骸や乗っ取られた飛行機の残骸に対して行った隠蔽と証拠破壊に比べれば、911委員会の公聴会での隠蔽など、幼児の遊びのようなものだ。

 ひょっとすると、嘘は大きすぎると逆に疑われないのかもしれない。かつてアドルフ・ヒトラーは自著で次のように述べたそうである。
 素朴なために、人々は、小さな嘘よりも、デマ宣伝の犠牲になりやすいのだ。彼等自身些細なことで、小さな嘘をつくことは多いが、大規模な嘘をつくのは気が引けるのだ。彼等は壮大な嘘をでっちあげることなど決して思いもよらず、他の人々がそれほど厚かましいとは信じられないのだ。たとえそうであることを証明する事実が、自分にとって明らかになっても、彼等は依然、疑い、何か他の説明があるだろうと考え続けるのだ。

 911委員会の主役たちはよっぽど素朴なのだろうか。あるいは人々の素朴さを知って意図的に壮大な嘘を見過ごしているのだろうか。


「911委員会報告書の正しさ」の正体(小見出し一覧に戻る)

 まあ、そこまでの意地の悪い見方は止めておこう。元ニュージャージー州検事総長でディーン・ラッツガー大学法学部長のファーマー氏はもちろん法律の専門家である。法の条文とさまざまな種類の文書・証言の資料を分析し整理することはお手のものだろう。そしてデータ整理の筋道を見出し解釈を統一させていく手腕は一流のものと思われる。したがって、彼のような人の手にかかると、さまざまな種類のデータが一つの筋書きに見事にまとめられ、彼の本を読んだだけなら、誰でもその正当性に疑いを挟むことが出来なくなる。その筋書きにはいかなる破綻も無い。よほどのひねくれ者を除いては、彼の正しさを認めないわけにはいかないだろう。次の点さえ考慮に入れなければ…。

 法律の専門家だけではなく一般的に、データを整理して報告書にまとめる際に不要なデータを捨て去るのが普通である。「不要」とされるのは、まず当の案件に無関係なデータである。次に、その案件に関係があっても、明らかに重要性や信憑性を持ち得ないデータであろう。さて、ファーマー氏以下、911委員会の委員たちは、何をもって何を、「無関係である」「重要性・信憑性を持ち得ない」と判断したのだろうか。それはこの911委員会報告書自体の内容から明らかに判定することができる。ファーマー氏やケイン氏の言う「911委員会報告書」の《正しさ》の正体がいかなるものか、見てみよう。

 確かに彼らは、事件当日の警備体制やテロへの対応について、国家当局による当初の証言や資料を「信憑性を持ち得ない」として拒否し、隠ぺい工作を非難し、再提出を要求した。この点はその後の彼らの著作や発言で十分に分かることである。しかしその多くは報告書から直接に読みとることはできず、報告書出版の後になって出されたケイン氏やハミルトン氏を含める911委員会のメンバーの発言や著述から、初めて明らかにされたことである。世界と米国のほとんどの人々には全く知らされていないことだった。

 しかし彼らが「重要性・信憑性を持ち得ない」と判断したデータは当初の国家当局の証言だけではない。ファーマー氏を含め報告書作成に当たった委員たちが一言も語ったことが無いし決して認めようとしないことだが、「不要」として打ち捨てられた膨大な量のデータがある。簡単にだが、その一部を眺めてみよう。

 911委員会報告書には、最大の犯罪現場であるニューヨークWTC(世界貿易センター)地区にあった大量の物的証拠を再現不可能な形で破壊し、ビル崩壊の原因追及を極めて困難にしたFEMAとニューヨーク市当局の違法行為が、ただの1行たりとも指摘されていない。委員会の公聴会で残骸の撤去の不当性についての証言があったにもかかわらず、そのことについて彼らはそれらの公的機関に問いただそうともせず、報告書では一言たりともこの点に触れなかった。
 
 また報告書には、WTC地区やペンタゴンで多くの写真やビデオに記録される機体の一部、エンジンやランディング・ギヤと思われる物体など、凶器と化した飛行機の残骸を回収しながら、そのほとんどを一般に公開せずその分析記録すら残さなかったFBIの怠慢について、全く触れられていない。委員会はそれらの「残骸」の分析記録の提出を求めることさえもしなかった。
   
 報告書は、ペンシルバニア州シャンクスビルの草原にある奇妙な穴を一片の疑いも無くの「UA93便墜落地点」としているが、飛行機の墜落現場かどうかについて様々な疑問が出されているにもかかわらず、現場検証の記録の提出を求めず航空写真や地上写真を検討する(させる)作業すら行わなかった。さらに機体の残骸や犯人の遺物とされる疑問の多い物体が多数報告されているにもかかわらず、その検証作業を行おうとしなかった。

墜落直後にもかかわらず、地面に空いた穴は乾いており、草まで生えている!

飛行機が激突してできたと言われる穴の周囲に、機体の残骸や破片は全く見当たらない。

人間の遺骸はおろか機体すら形をとどめず粉砕された中で無傷で発見された犯人の遺物?
  報告書では、WTCツインタワーの崩壊で起こった具体的な事実がことごとく無視されている。崩壊以前の飛行機激突や避難誘導の状態には一応触れているのだが、崩壊の開始から崩壊後の粉塵の発生にいたる過程を、委員たちは、専門家に問いただすことはおろか調べてみようとすらしなかった。さらに粉塵と汚染された空気による撤去作業員や消防署員、警察官などが受けた被害について、何の関心を抱くことも無かった。
   
 タワー崩壊5時間後に突然、各部分に散発的な小規模火災が続いた末に、左右の均衡を保ったまま自由落下するように崩壊したWTC第7ビルについては、ついに1つの単語すら書かれることはなかった。
   
 私は驚きを禁じえない。無数に残されていた犯罪現場の物的証拠や、膨大な数のビデオ・写真による客観的証拠を、これほどまでにないがしろにして、いかなる事実の真偽判定を行うというのだろうか? この「報告書」はいったい何の報告をしているのか?

 どうやらこういった客観的・具体的で実証的な数々の証拠は、一様に「事件の解明にとって重要性・信憑性を持っていない」として闇に放り込まれたようである。では、文書や証言、テープなどのよる資料はどうだろうか。報告書は、基本的には米国国家機関の証言と資料を元に報告書が作成された。そのある部分は、ファーマー氏の言うように、《嘘と闘った成果》としての米国国家機関による「後出し」の資料である。しかしその一方で、報告書をまとめた人達は、複数あったWTCビル崩壊前の爆発の目撃証言を一顧だにせず、(前述したが)WTC地区の違法な証拠破壊の証言を無視し、ペンタゴン襲撃直前のチェイニー副大統領の奇妙な言動に関するミネタ運輸長官の証言は削除した。そしてそれらの理由は全く明らかにされなかった。また委員会は2009年にようやくその全貌が明らかにされた「容疑者」カリッド・シェイク・ムハメッドに対するCIAの凄惨な拷問を明らかにできなかったばかりか、ファーマー氏はその点について新しい自分の本でも補足としてすら触れようとしていない。  

  事件現場の物的証拠に対しての極端なまでの冷淡さ、映像による客観的・具体的・実証的な事実の記録に対する、蔑視と言っても差し支えないほどの軽視と無視が、この「911委員会報告書」の隅から隅まで貫かれている。そのうえで証言に対しては「選り好み」を徹底させている。もはや明らかだろう。

 ファーマー氏の著書が「動かぬ真実」となることが出来るのは、ただただ、物的証拠と確実な事実の記録を投げ捨て、文書化や音声化された資料と証言の中から一つの筋書きに沿ったものだけを選択して採用し、その他を投げ捨てた結果としてである。なるほど。これなら、この理論化の達人の手にかかれば、すべてが一貫し完璧に一つの筋が通り、「911委員会報告書は絶対に正しい」ものとなる。実際には彼らは、自分たちが「正しいものにしたい」と望んだ《筋書き》を「正しくする」ためにふさわしい資料のみを、資料と証言の中から選択して採用しただけの話なのだ。


《唯-筋書き》主義(小見出し一覧に戻る)

 国家機関と政府関係者の嘘がばれた後で提出された資料を「正確なもの」としたのは、単にそれらが、報告書の《筋書き》を完成させるために有効なものであったという理由に他ならない。闇に投げ捨てられた膨大な量の事実と証言は彼らにとって存在してはならないものだった。それらがその《筋書き》にとって邪魔であるばかりかそれを破壊しかねないものだからである。

 その《筋書き》はすでに事件直後に政治的に決定されていた。いまだ何一つ調査も為されないうちに、何の具体的な根拠も示されることなく…。そのキーワードは「ビンラディン、アルカイダ、19人のテロリスト」。そして「アメリカはオサマ・ビンラディンの率いるアルカイダのテロリストによって攻撃を受けた。我々はテロリストに報復しなければならない」。911委員会の報告書、その著者たちであるケイン氏やファーマー氏の論理に一貫するのは、対テロ戦争を正当化するために必要な《911事件の筋書き》 にほかならない。

 その《筋書き》を打ち固める目的だけのためにデータが集められ整理され理論的にも完結される必要性があった。 米国政府の事件に対する当初の説明があまりにもあやふやで筋の通らないことが、誰の目にも明らかになり、これ以上この筋書きに対する疑問を封じ込めることができなくなったからである。それが、「国民の声を反映させる」という形式を踏みながら、好戦主義者たちによって911委員会が組織された目的である。

 その目的追求のために「無価値なもの」として投げ捨てられたデータのリストを見るとき、我々はその筋書きの正体にいやでも気付かされることになる。物証の破壊や隠匿に関する資料、映像・写真による正確なツインタワー崩壊や「93便墜落現場」の事実の記録、WTC地区の粉塵とそれによる災害、第7ビルの崩壊、爆発の証言、事件当時のブッシュ氏やチェイニー氏の行動、ブッシュ氏の特別の措置によるラディン家の逃亡・・・。こういった事件現場と米国首脳の言動に関する正確な事実の記録など、彼らの筋書きにとって「存在してはならない=存在しない」ものに他ならなかった。そのようなデータは、最初にリストからはずしておくか、たまたま出てきたところで無視してしまえばよかったのである。

 彼らの《筋書き》にとって危険な要素は、むしろ、どうしても報告書編集の中心にせざるを得ないNORADやCIAなどのアメリカ国家機関の証言や資料の方だった。この点はファーマー氏が最新の本で見事に書き表しているようだ。彼らの「苦闘」が、政府関係者や国家機関が9.11の前と当日の防衛体制について主張し続けてきたことや、提出される資料を相手にしたものであったことは言うまでもあるまい。ツインタワー崩壊中におきた事実や第7ビル崩壊の事実は無視し闇に葬ればよいが、政府関係者と国家機関の資料は、筋書きを完結させるために何としてもそのでたらめさを修正し再構成しなければならない。そして彼らはそれをやり遂げた。ファーマー氏はそのことを自著で誇らしげに語る。そして言う。「911委員会報告書は正しい」!

 アメリカ政府と国家機関は国民と世界に嘘をついてきた。そしてその当初の嘘は911委員会によって《筋書き》にふさわしく訂正され、より壮大な虚構として我々の前に登場した 。報告書を貫く発想は「《唯‐筋書き》主義」とでも言うことができる。始めに筋書きありき。筋書きにふさわしいデータのみを有効なものとして採用し、そうでないものは「無かったこと」にして闇に葬ったうえで、理論構築の専門家の手によって作り上げられた壮大な虚構の塔である。そしてケイン氏やファーマー氏は、その製作後に自著とさまざまな発言を通して、911委員会を国家の嘘と闘いそれを正した勇士として自らを紹介することとなった。すばらしい文学作品だ!

 しかしいま、彼らが闇に放り出したさまざまな事実が次第に光に照らされ始めている。あの「911委員会報告書」が世に出されて以来、彼らの期待にもかかわらず、その筋書きに対する疑念は膨らむ一方である。彼らにはその理由が分からない。分かったとしても彼らにはどうしようもあるまい。ファーマー氏があの本をこの9.11事件8周年という時点で出版した動機のひとつに、その筋書きが脅かされつつあるという危機感があったのかもしれない。


自ら墓穴をほりつつある911委員会メンバー(小見出し一覧に戻る)

 アメリカの政府と国家機関が事件以来語り続けたさまざまな嘘と隠蔽の一部は、たしかに911委員会によって洗い出され、それに代わる新たな資料が提出された。それらは「事件を未然に防ぐことができず事件後の対応に誤った」と彼らが判断する点に集中していた。その点について新たに国家機関によって提出された資料が「さまざまな他の資料と照らし合わせて」正確なものとされた。しかしながら、ファーマー氏がこのような911委員会の裏話を表に出したことは、逆に彼らにとって痛恨の失敗につながるだろう。それは、彼らの言う「嘘との闘い」が、この《筋書き》をより合理的に固め正当化させる、より巨大な虚構作りであった事実を、鮮やかに浮き彫りにさせたからである。

 911委員会は、事件現場と映像証拠に対する米国国家の大嘘と隠蔽・破壊工作を完璧に見過ごした。そうすることで彼らは大嘘と巨大な隠ぺいを何重にも上塗りした。彼らにとって、事件直後に発せられた「ビンラディン、アルカイダ、19人のテロリスト」に象徴される《911事件の筋書き》が、無条件・無前提に「正しいもの」「疑いをさしはさんではならないもの」でなければならなかったからである。ファーマー氏はその点を自らの筆で明らかにしてしまった。

 いまや人々は、ファーマー氏やケイン氏が明らかにした範囲を超える嘘の数々、隠蔽の数々を知りつつある。911委員会報告書によって闇の中に放り投げられた事実が、徐々にだが着実に広まりつつあるのだ。もはやこの流れを止めることはできまい。アメリカの政府と国家は自国民と世界に対して数多くの嘘をついた。人々がその嘘を911委員会の委員たちによって明らかにされた範囲にとどめるだろうと考えるならば、それはとんでもない間違いだろう。この者たちは、自分の固めようとした筋書きを腐食させ崩していくことになる原因を作ってしまったのである。

 911委員会の委員たちが何の関心も払わずに意識の外に追いやったさまざまな事件現場での事実が、次第に人々の意識に上りつつある。ますます多くの建築や工学の専門家たちがその事実を問題にしつつある。しかしそれは、911委員会が作ろうとした筋書きには最初から存在していなかったものなのだ。彼らにとって事件現場での事実を少しでも取り上げることは最初から不可能だった。こうして、ファーマー氏がそれらを「非存在」としたままで「アメリカ国家の嘘と闘った武勇伝」を披露したことは、彼にとって残念なことだが、自分が「固めきった」と信じている筋書きの、真実性よりもむしろ虚構性の方をよりくっきりと浮き出させることになった。


崩壊に向かいつつある虚構の《筋書き》(小見出し一覧に戻る)

 我々はすでに、911委員会がいかに膨大な量の事実を無視し続けているのかを知っている。確かに、彼らの論理の中では何一つ矛盾は無い。しかし、彼らが闇に放り出した膨大な事実を知ったうえでその論理全体を眺めた場合に、我々に見えるものは明らかである。それは、嘘つきが米国政府と国家機関だけではなかった、という厳然たる事実なのだ。米国国家とその機関、そして米国民から委託を受けた911委員会は共に、あらゆる客観的・具体的・実証的な証拠を無視し投げ捨てた。そのことは彼らの守る《筋書き》が虚構にすぎないことの何よりの証拠だろう。もし虚構でないのならそういった証拠を無視できるわけがないからである。

 ジョン・ファーマー氏は著作で911委員会での活動内容を全面肯定した。しかしそれによって作者の狙いとは逆に、「911委員会報告書」それ自体の虚構性がますます浮き彫りにされることとなった。そしてこの報告によって固められた9.11事件の筋書きを支持する人達にとって、逆にますますその弁護を苦しいものにしてしまった。ファーマー氏の「報告書全面肯定」があくまでも報告書の論理内にとどまる範囲においてのみ成り立つという「自己肯定」の危うさを露呈させてしまったからである。その支持者たちにとって、いままで単純に無視するか、「真偽」と「正邪」の判定をゴチャ混ぜにして論理を混乱させ、あいまいな言葉でうやむやにしておけばよかった「事件現場を記録する諸事実」との全面対決を、不可避のものにさせてしまった。ファーマー氏のこの新しい本は、ますます多くの人々に「もう誰の言うことも信用できない」という思いばかりを深めさせていくことだろう。自らまいた種である。


 ファーマー氏の目にはそれが見えていない。彼の頭脳はあくまでも明晰であり、彼の言葉は徹底した論理性に貫かれている。しかし彼の目は何も見ていない。残念ながらそうとしか言いようがない。「事実を元にした再調査の要求 」に対して、彼(および911委員会メンバーたち)はますます意固地になって彼らの《筋書き》の「全面肯定」を繰り返すのみであろう。そのことによって報告書の筋書きと事件現場の事実との乖離を明白なものにしていくのだ。そしてそれは、911事件直後に米国政府によって政治的に決定された《筋書き》自体への疑念を、もはやコントロールができないほどに膨らませていくことになるだろう。

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