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 この拙稿は2011年9月に私(童子丸開)の旧HPに掲載していたものである。旧HPにあった記事へのリンクが不可能になったため、必要に応じて修正を施しまた注釈等を加えている場合がある。またこの文章は長いため、小見出しごとにリンクを作って、読みたい箇所に飛ぶことができるようにしている。 (外部リンク先にはすでに通じなくなったものが含まれているかもしれない。その点はご容赦願いたい。)

復刻版:
911事件「10周年?」 違う! 証拠が10年間放置され続けるのみ!
いま我々が生きる 虚構と神話の現代


小見出しの一覧を掲げておきます。各小見出しをクリックすればその項目に飛びます。
(小見出し一覧)
(1)専門家や学者に幻滅させられ続けた10年間
(2)唯一の例外:NISTが第7ビルのビデオを分析したら…
(3)なぜ専門家は映像資料を調べようとしないのか
(4)フクシマで分かった専門家の2種類
(5)物証破壊
(6)10年間、放置され続ける証拠映像
(7)911は政治よりもむしろ文明の問題


(1)専門家や学者に幻滅させられ続けた10年間 (小見出し一覧に戻る)

 「3・11原発震災」を経験した多くの日本人にはお分かりになることと思います。ちょっとご想像ください。これはあくまでも仮定の話です。
 もしも3月11日の震災当日に、福島第一原発の建屋内のいたるところに監視カメラが設置されていて常に原子炉の様子を知らせる映像が(電源喪失も何のその!)日本中に流され続けていたとしたら…。地震で配管が本当に大丈夫だったのかどうか、どこかで蒸気漏れが起こっていたのかどうか、使用済み燃料プールの様子はどうだったのか、などの様子がすべて記録されていたとすれば…。爆発がどこでどのように起こったのか、建屋内の施設や使用済み燃料プールにどのような影響があったのかなどが映像に残されていたとすれば…。同時に原発内の作業員たちの様子や言葉がはっきりとビデオに映されていたとしたら…。そしてその映像が世界中に流されてビデオ資料として記録され、見ようと思えば誰でも確認できる形で存在しているのならば…。
 何とも都合の良すぎる仮定かもしれませんが、要するに事故当時の原子炉周辺を細部に至るまでビジュアルに記録する資料が、もしあったと仮定したならば、どうでしょうか。
 おそらく、いの一番に大勢の専門家や学者がそのような映像を分析して、比較的短時間のうちに事故のほぼ正確な理由とかなり詳しい経過を割り出していたことでしょう。もし一部の専門家や学者がそれらの映像資料の分析をどれほど嫌がっても、世界中の誰もが見ているうえに、すでに世界中で多くの専門家たちが分析作業に取り掛かっている場合には、いやでもやらざるを得ないし誤魔化しが効かないわけです。そのような第一級の資料があるのにほったらかしにするような専門家や学者は、世界中から厳しく糾弾されたことでしょう。さらにそのことがテレビや新聞で非専門家である国民のほとんどに知らされて、多くの人々が正確な知識を得ていたことでしょう。
 そしてその資料の分析が、最善の対応策を練るための決定的な材料となり、今までに日本で見られたフクシマを巡る大混乱の、少なくとも半分は最初から無くて済んだのではないでしょうか。政治家も官僚も、そんな映像資料があふれて国民の多くが知っている以上はそれを無視した決定を下すことができなくなるからです。
 ただし今まで言ったことは、すべて架空の話ですが。

 まあ、今のはちょっと極端な仮定だったかもしれません。しかしどんな事件にしても事故にしても、もし現場の様子を詳しく記録する映像資料があるとすれば、それは起こった事実を正確に知るために決定的な証拠になるはずです。単純な交通事故でも時として道路に設置された監視カメラにばっちりとその様子が写されていることがあります。そうなると事故を起こした人はもはや何の言い逃れもできません。また政治事件にしても、たとえば、以前にペルーの大統領だったフジモリ氏の側近モラティノスがいかがわしい金の受け渡しを行っていたシーンがビデオに撮影されていて(本当はそれが撮影されたこと自体が奇妙なのですが)、フジモリ氏が世界で糾弾されて二度と這い上がれなくなる大きなきっかけを作りました。事件や事故の現場を正しく記録する映像の有無がその解明と解決にとってほぼ決定的な意味を持つことには、誰しも異論の無いところでしょう。

 ということで…、2001年9月11日に米国の東部で起こったいわゆる「9・11同時多発テロ事件」の話に移ることにします。

 この事件では、気が遠くなるほど膨大な量の物的証拠のほとんどが米国国家の手によって破壊され失われました。これについては
(5)で少し詳しくお話しましょう。しかしその反面、事件現場を様々な角度から鮮明に記録した映像資料が極めて豊富に残されているという、人類史上たぶん唯一の、何とも珍しい事件です。
 特にニューヨーク世界貿易センター(以下、WTC)では、飛行機激突からツインタワー(第1、第2ビル)の崩壊と、その7時間後に起きた第7ビルの崩壊、ビル群崩壊後の街の様子などなど、様々なタイミングと方角や角度から、事件発生の事件現場の様子や目撃者の証言などが、1万点をはるかに超える莫大な数のビデオ映像や写真で記録されているのです。今まで世界中で起こった様々な事件の中で、事件現場で起こった事実についてのこれほど多くの資料を残しているものは存在しないし、これからも起こりえないでしょう。

 しかし実を言えば、この事件の本当の特異さは次の点にあります。

 先ほども言ったように、現場の様子を克明に記録する資料がある場合に、まず、専門家たちが真っ先にその資料を分析してそれぞれの推定を発表するでしょうね。そしてそれをテレビや新聞が取り上げて多くの人に伝え、一般の非専門家たちも「こんなことが起こったのだ」と知り理解することになるのでしょう。現実はどうでしょうか。
 WTCビル群の崩壊開始からその終了までを記録する膨大な数の映像資料を、科学的な手段で分析し、それに基づいてツインタワー崩壊についての合理的・実証的な結論(推定)を導いた専門家や学者は、世界中見回してもほとんどゼロに等しい…。これが事実です。これらの映像資料は911事件の現場で何が起こったのかを正確に記録する第一級の資料なのですが、その第一級の資料がこの10年間、世界中の大多数の専門家や学者から目を背けられたまま放置され続けているのです。これが事実です。
 そして、米国国民を含む世界中のほとんどの人がこの911事件の映像資料についてほとんど知らないままになっています。それは上に述べた専門家たちの奇妙な態度と共に、この10年間、メディアがそれを伝えようとしてこなかったからです。それが大部分の人たちの無関心を生み出し定着させているのです。

 面白い調査があります。米国のSiena College Research Instituteが
2011年5月にニューヨーク市民に対して行った調査です。911事件当日「WTC地区で3番目のビルが崩壊した」ことを知っている人が67%いるのですが、その中でビルの名前を正しく答えた人は21%、つまり全体のわずか14%でした。さらにそのビルが崩壊する様子をビデオ映像で見たことのある人は調査対象全体のわずか25%しかいませんでした。
 それはもちろんWTCの第7ビルなのですが、地元のニューヨークですらこの有様です。日本人でなら、第7ビルのビデオ映像を見たことのある人は5%かな?もっと少ないかな? ましてその崩壊原因を巡る論争を多少でも知っている人となると、さらにその100分の1くらいかもしれないですね。(このWTC第7ビルについては次の
(2)で少し詳しく説明します。)
 世間では「911事件10周年」などと派手に騒がれているようですが、実際には、空前絶後の規模で残されている証拠物件が空前の規模で放置され続けた10年間だったのです。

 世界貿易センターの3つのビルの崩壊を公的に調査した専門家たちがいました。FEMA(米国緊急事態管理庁)の委託を受けた大勢の学者・専門家たちや、NIST(米国国立標準技術院)に所属する、あるいはその委託を受けた学者・専門家たちです。特にNISTは、1万を超えるWTCビル崩壊に関する写真とビデオを調べたと豪語します。ところが、
FEMAが2002年にまとめた報告書NISTが2006年に公表した報告書には、WTCビルの崩壊が始まってから終了するまでの十数秒間を記録する映像資料の科学的な分析は、ただの1行たりとも書かれていません。彼らは写真やビデオに記録される事実の何にも基づかない単なる当て推量を「崩壊原因」として発表しただけで、その推量を実際の映像記録と付き合わせて検証する作業は、爪の垢ほどにもなされませんでした。これが事実です。
 これほどにおかしな話はないわけです。911事件の映像資料、特にツインタワーとWTC第7ビルの崩壊途中の挙動を正確に記録する映像資料が豊富に残されていながら、それが何の研究対象にもならない…。FEMAやNISTの専門家たちばかりではありません。世界中の大学や研究所にいるほとんどの専門家・学者たちも、全く同じ態度だったのです。この10年間、私は、いわゆる専門家とか学者とかいった人たちに対する幻滅ばかり感じ続けてきました。
 いってみれば、福島原発で地震発生から爆発までの原子炉と作業員の様子を克明に記録したビデオがあったとして、それを専門家の誰一人として分析しようとしないようなものです。または、交通事故の様子を映した映像が残っているのに警察がそれを見ずに当て推量で調書を作り、そのことを裁判所も弁護士も問題にしないのと同じことです。これを「奇妙だ」と思わないほうが奇妙ではないでしょうか?


(2)唯一の例外:NISTがWTC第7ビル崩壊のビデオを分析したら…  (小見出し一覧に戻る)


 いや実を言うと、たったひとつだけですが、NISTがそのビデオ映像をきちんと分析した例があるのです。それはWTC第7ビルについてです。彼らは第7ビルが崩壊するシーンを記録したビデオ映像を分析してその崩壊のプロセスを追い、その崩壊初期の2秒と少しの間にほぼ完璧な自由落下が起こったという事実を明らかにしました。2008年10月のことです。

 


 次の映像は実際に起こったWTC第7ビルの崩壊の初期の様子です。ビルの外形にはほとんど変形が起こらず、スゥーッとそのまま真っ直ぐ沈み込むように落ちていきました。(このビデオ、またこのビデオを参照のこと。)そしてこの間に、NISTの分析によれば、ビルが空気抵抗すらほとんど無いほどの完璧な自由落下で崩落した、ということなのです。


 しかしNISTが2008年8月に第7ビル崩壊に関する報告書を公表した段階では、不注意か意図的かは知りませんが、落下の加速度を実際よりもはるかに小さな値に計算していました。その時点で公表されシミュレーションは、崩壊初期の段階でビルがグニャグニャと変形していく様子を示していました。そしてそのシミュレーションはごく初期の段階までのものしか公表されていません。次のNISTが作ったコンピューター画像を、上の実際の第7ビル崩壊と比較してみてください。まるでコンニャクをひねりながら潰しているような感じですね。右の写真は公開されたシミュレーションの最後のシーンです。
 

 落下の加速度が重力加速度よりも十分に小さければ、その加速度の差に相当する分の力が何かの変形や破壊に使われるわけですから、このシミュレーションのようにビルの外形が変形してもなんら不思議ではありません。ところが実際にはその2秒間に落下の加速度と重力加速度はほぼ一致していました。ビデオに記録されている通り、ビルの外形にほとんど変化が起こらなかったのは当たり前だったのです。
 2008年8月にNISTは報告書と同時に上のシミュレーションを公表したのですが、その後で一般の市民や在野の専門家からの質問に答える形で報告書の不完全な部分に修正を施しました。その際に落下の加速度の不正確さを指摘されたNISTは分析をやり直し、10月になって自由落下を明らかにした、という経緯があります。(この経緯についてはこちらのサイトにある日本語字幕付きの3つのビデオ をご覧ください。)その後に、先ほどのシミュレーションはNISTのホームページから姿を消しました。シミュレートするための大前提が異なるものになってしまったのですから、その時点でもう当初のシミュレーション自体が無価値になってしまったわけです。NISTにはそのことが分かったのですね。ただし彼らはこの「自由落下加速度=無抵抗の落下」の原因追究をやろうとしていません。

 それもそのはずです。階にして8階分ほどの距離を、ビルの上部全体がぴったりそろって空気抵抗すらほとんど無いような落下の仕方をしたのです。そんなことが起こるためには、それらの階の重量を支えていた何十本もの大きな支柱が、すべて、同時に、ぴったりとタイミングを合わせて、無力になっていなければならないのです。これは困りました。実はNISTはその報告書の中で、たった1本の支柱が火災の熱で破壊されそれが崩落の原因となったという結論を発表していたのです。しかし彼らがビデオ資料を厳密に分析した結果、この自由落下を発見せざるを得なくなったわけで、そうなると、その報告書の内容自体が根底から崩れてしまうことになります。
 そればかりじゃないですね。支柱群が同時に全てその力を失った原因を探らなければならなくなります。いったいそれは何だったのでしょうか。ビルの火災でそんなことが起こるでしょうか? さあ、困りましたね。きっと何か、「想定不適当」な原因でもあったのでしょう。
 実際に映像資料を詳しく科学的に分析してみると、こんな想定外のことが起きてしまうのですね。
(WTC第7ビルの「自由落下問題」については、こちらのサイトにある図解と説明をご覧ください。また次のビデオ‐日本語字幕付き‐を参照のこと:『WTC第7ビルの謎を解く(Solving the Mystery of WTC 7):14分58秒』)

 余談ですが、このシミュレーションと実際の崩壊との食い違いについて、今年になって日本のある高名な物理学者が「これくらい合っておれば立派なものだ」という説明をしました。すでに3年前に無価値になってしまったシミュレーションを見て「これくらい合っておれば立派」も何もあったものじゃないだろうとあきれ果ててしまったのですが、しかし私はその学者さんばかりを責める気にはなりません。何せ、世界中の専門家の大多数が似たり寄ったりなのですから。


(3)なぜ専門家は映像資料を調べようとしないのか  (小見出し一覧に戻る)

 2年前の春のことですが、バルセロナでイタリア映画「ZERO」の上映会がありました。911事件に疑問を持つカタルーニャ工科大学とバルセロナ大学の建築と構造力学の先生たちが主催して、大学の構内で行ったのですが、そこには「ツインタワーは飛行機激突の衝撃と火災の熱が原因で崩壊した」と信じる先生方も大勢来ておられました。もしこんなことが日本で行われたら、たちまち会場が険悪な雰囲気に包まれ怒号とレッテル貼りが飛び交うのかもしれませんが、さすがに欧州は違いますね。学問の自由の伝統が最小限度には生き続けています。全員が映画を見た後で、非常にまじめで冷静な雰囲気で討論が進められました。それは、特に何かの結論を出すようなものではなく疑問は疑問として提示する、という性格のものだったのですが、その途中で私も、立場を省みず、ちょっとだけ話に割って入りました。

 私が「飛行機激突の衝撃と火災の熱が原因で崩壊した」と信じている構造力学の先生たちに、右にある崩壊途中のWTC第2ビル(南タワー)の写真を見せながら、「先生、この現象をどのようにご覧になりますか」と尋ねました。彼らはしばらく首をひねって、「これは崩壊の終わりごろの写真でしょう?」と言うわけです。「いやこれはむしろ初めごろですよ」と私が言うときょとんとした顔をしていました。
 実際にはこの画像は、WTC第2ビルの崩壊が開始して8〜9秒ほどたったときなのですが、真ん中で爆発的に瓦礫と粉塵が広がっているのは250mほどの高さの場所で、ビルの上層階が姿を消して今からビル中層部〜下層部に崩壊が進んでいこうとする時点でのものです。(このビルの崩壊についてはこちらの説明とビデオをご参照ください。またこちらにある多くの証拠ビデオをご覧ください。)

 時間がなかったのでそれ以上言うのはやめましたが、ここで私が感じたのは、多くの専門家たちがこういった映像資料をあまり見ていないのではないか、こういった資料について十分な調査をしたうえで判断しているわけではないのではないか、ということです。
 まあ別に大学で「911学」を研究しているのではなく、自分の専門の研究に忙しい人たちばかりなので、彼らを責めるわけにはいかないのですが、それにしても数多く残されている明らかな証拠のビデオや写真が、専門家たちにも一般的にもほとんど知られていないことは確かでしょう。

 そもそも、(1)でも言いましたように、911事件でWTCビルの崩壊を調べたFEMAやNISTの研究者たちが、こういった崩壊途中に起こった事実を調べようともせずに、単に「結論的な推定」だけを発表した経過があり、世界中の大部分の専門家たちは、その「結論的な推定」だけを聞いてそれ以上のことは何も考えようとしてこなかったのです。ひょっとすると一部の人たちはビデオや写真を調べたのかもしれません。しかしその場合でも、それを科学的に分析してみたときに何か「想定不適当」な事に気付く危険をとっさに感じて、追究をやめてしまった人もけっこう多いのではないでしょうか。

 先ほどの(2)で説明した第7ビル自由落下の例をお考えください。第7ビルが、ほとんどビルの概形をそのままに保ちながらまっすぐに自由落下したということは、少なくともその間は、ビルの支柱の全てで同時に強度がゼロになっていなければならないわけです。もちろんこれは「火災の熱で1本の支柱が崩落を起こした事がきっかけで崩壊した」というNISTの説明と食い違ばかりか、同じ階で、少なくとも8階分も連続して、全ての支柱が同時に強度を失ったと考えられるわけですが、その理由は何なのかを考える必要が出てきます。ちょっと火災が原因では難しいように思います。そこに何らかの人為が介在したと考える以外に、何か別の道があるのでしょうか? しかしそれは、仮定することすらタブーになっているものなのです。
 このように、事実を科学的に正確に調べると「予期せぬ結論」、「望まれない結論」が飛び出してくることがあるわけで、「それはちとまずい」と考える人は、そのような映像資料を見ないようにしたほうが無難だ、ということになるかもしれません。ちょうど日本の「原子力ムラ」で地震による原発の致命的な故障が「想定不適当」とされ、仮定すること自体がタブーにされているのと似たようなものですね。NISTは自らの手で明らかにしてしまったWTC第7ビルの自由落下、つまり無抵抗の落下の問題について口をつぐんだままです。

 「事実を知る」ということがどんな重大な事態を惹き起こすのかを察知するときに、専門家や学者たちのほとんどは、自分の身を守るために「事実を知らないでおく」方に走るでしょう。こういった資料を「知る機会が無い」だけではなく、「知ることを欲していない」学者や専門家が大勢いるわけです。非常に単純な事実なのですが、決して《専門家・学者だから》本当のことを言うとか信頼できるというわけではないのです。この点は、2011年3月11日以来、911事件とは別の問題を通して日本人の間でもどんどんと常識となりつつあります。どうやら我々は「科学リテラシー」などという言葉の定義を根本から見直さなければならないのかもしれません。


(4)フクシマで分かった専門家の2種類  (小見出し一覧に戻る)

 人間はイザとなったとき、とっさに何かの決断をしなければならなくなったときに、その本性を明らかにします。言葉以上に、その行動で明らかにするのです。

 2011年3月11日以降、国家や大企業が国民に平然と嘘をつき危険にさらすのだということが多くの日本人に明らかにされたのですが、それと同時に日本国民は、専門家とか学者と呼ばれてきた人たちの本当の姿をつぶさにながめる重要な機会を与えられました。
 フクシマについてそれぞれの人たちが「何を言ったのか」、「どんな行動をしたのか」、そして「何をしなかったのか」といった事実が、インターネットでの独立系メディアを中心にした多くのメディアを通して世界中に明らかにされたからです。
 専門家・学者たちの中から、
・事態の正確な把握と放射能の測定のためにすぐさま行動を開始、
・実際に福島原発の近くに行ってサンプルを採取した人、
・それを研究室で分析した人、
・原子炉の危機的状態を警告した人、
・現地に駆けつけて地元の人と一緒に様々な除染を工夫する人
などが次々と現れました。
 この人たちの行動は、自らが情報発信源となった大勢の人々によって、UstreamやYouTubeというネット上の手段で世界中に拡散され、世界中にその証人を作りました。
 また同時に、特に原子力の専門家ではなくても、国内の他の原発を止めさせるために即座に行動を起こした人、外国からの情報を集め翻訳して紹介した人、外国の専門家を呼んだ人、日本の国や自治体がやろうとしない調査を外国の団体に頼んで調査してもらった人、そして何よりもUstreamなどの媒体を使って東京電力や原子力安全・保安院や政府などの記者会見を毎日実況中継し続ける独立系メディア、…、などの行動が、2ヶ月、3ヶ月の間に映像資料の中でうずたかく積み上げられました。そのほとんどが、いわゆる大手商業メディアとは無縁の人たちによるものです。
 フクシマは我々に、大手メディアが報道したがらないものの中にこそ最も重大な事実が存在していることを、最も具体的な形で明らかにしました。それがこれほどまでに即時に大規模に明らかにされたのはおそらく人類史上初めてでしょう。「科学リテラシー」と同様に、「メディアリテラシー」などという言葉にも、やはり再定義の必要があるようです。

 その一方でこんな専門家や学者たちが大勢いましたね。
・自ら事実やデータを集める行動も起こさず、
・したがって何の具体的根拠も示さずに、
・テレビ番組と新聞コラムと講演会で、
・「安全、安心」をお題目のように唱え続け、
・事故を小さく見せかけようと努めた
 そのような人々によって大勢の人々が、特に子どもたちが、内部被ばくや低線量被ばくを受けるがままに放り出されました。彼らは、児玉龍彦東大教授の言葉を借りるなら「専門家が国民に本当のことを言う前に政治家になった」わけです。そしてそのような政治化した人々によって、ちょうどスターリン時代のソ連と同じように、福島県内の医療関係者は沈黙を余儀なくさせられています。またこのような政治化した専門家・学者の言動に対する批判は、即座に「風評を煽る」、「不安を煽る」、「非科学的(似非科学)」、「トンデモ」等々というレッテルをべたべたと貼られ、社会からの隔離を促されることになります。そして本当のところは、かなり多くの専門家・学者たちがいまの2種類の潮流の間で逡巡し悩んでいるのではないかと思います。

 いったいどのような専門家・学者が信用できる可能性を持ち、どのような専門家・学者が決して信用ならないのか、フクシマが誰の目にも明らかに示してくれました。判断ポイントは「もっともらしい理屈を言うかどうか」、「安心させてくれそうな言葉を言うかどうか」じゃありません。
 信頼できるかもしれない専門家・学者とは、
  @事実は何かを最優先に考える人
  A事実を知るための証拠を手に入れようと行動する人
  Bそれをきちんとした科学的な方法で分析してデータを作る人
  Cそのような実証的な方法に基づいて結論を出し、それを分かりやすく大勢の人々に伝えようとする人
ということになるでしょう。
 以上の4点を満たす専門家・学者なら信用できる可能性が高いように思います。もちろん人間のやることだから間違いはあります。このような人々が間違った推測をしたり間違ったことを公表するようなことがあるのかもしれません。しかし上の@〜Cを実行する人なら、たとえ間違っても、その間違いを見つけて自ら正していき、恥じることなくそれを大勢の人に伝えることでしょう。他の何か細かい欠点があったとしても、それは何の問題にもならないことです。もちろんですが、決して信用できない専門家・学者はいまの@〜Cを満たさない人たち、ということになるでしょう。
 フクシマは実に多くのことを我々に教えてくれました。その一つがいま述べたような「専門家の見分け方」です。今後、我々は専門家や学者たちの様々な姿を目撃することになるでしょう。また過去のチェルノブイリ原発事故後にベラルーシやウクライナやロシアや他の欧州諸国で起こった事柄は今からもどんどんと明らかにされていくでしょうが、それに対しても世界中で同様に専門家の違いを確認できる機会がきっと増えることでしょう。

 そして当然ですが、こういった専門家・学者たちの分類は、何もフクシマに限ったことではないのですね。ただし、911事件のような政治事件の場合、事実を求めて専門家として行動し発言するためには、フクシマとは比較にならないほどの恐怖感と戦わねばならずその重圧は想像を超えるものがあるのでしょう。やはり信頼できるかもしれない専門家・学者の数は限られたものになってしまうのかもしれません。言うまでもありませんが、911事件で事実の分析をスルーして筋書きを作ることで巨額の利益を得た専門家たちもいます。残念ながらそれが人間の世の中です。たぶんフクシマでもそうなんでしょうね。
 では次に、911事件について具体的な事実をもう少し取り上げながら、この10年間がいったい何だったのか、明らかにしていきましょう。


(5)物証破壊  (小見出し一覧に戻る)

 一つの事件や事故について、証拠、特に物的証拠が大規模に極めてぞんざいな扱いを受ける際には、そこに何か非常にいかがわしいことが行われているとみなすべきです。
 たとえば交通事故でも殺人事件でもよいのですが、その証拠を隠したり、物証を破壊したり、証拠が散逸するに任せて何も手を打とうとしなかったり、証拠となる映像や音声などの資料があるのにほったらかしにする、といったことがある場合、我々はどのように考えるべきでしょうか? 最初に判断の付くことは、証拠に対してそのようなことをする者たちは、犯人の一味か、少なくともその事件や事故に大きな責任を負う者たちだろうな、ということです。違いますか? 要するにその人たち自身が本当は何が起こったのかを誰にも知られたくないと思っている、ということですね。(関連してこちらの『崩壊する《唯-筋書き主義》:911委員会報告書の虚構』もお目をお通しください。)

 物証破壊・隠蔽は、2004年3月11日に起きたマドリッド列車爆破事件でも、2005年7月7日に起きたロンドン地下鉄・バス爆破事件でも共通して見られる現象です。しかし何よりも巨大な規模でそれが行われたのは、やはり2001年9月11日に米国東部で発生したいわゆる「同時多発テロ事件」でしょう。
 もう多くの人々が知っていることでしょうが、ここで崩壊した世界貿易センタービル群の瓦礫のほとんどが、何一つまともな調査も研究もなされないうちにこの世から消えてなくなりましたFEMA(米国緊急事態管理庁)とニューヨーク市当局は、ビルを作っていた鋼鉄材のほとんどを、「くず鉄」として中国とインドに破格の値段で売り飛ばしてしまいました。ツインタワーの鋼材は、きっとのちに中国製やインド製の自動車に化けて世界中に輸出されたのでしょう。
 アルミニウムや他の金属類もやはりスクラップとして米国内を含む再生業者に売り飛ばされました。そして膨大な量の粉末化したコンクリートなどリサイクルできない瓦礫(犠牲者の無数の人骨破片を含む)は、ニューヨーク北部にある埋立地に放り込まれて永久に再現不可能にされました。もっともWTC地区で救助活動にあたっていた消防士たちの噂によれば、ツインタワー地下にあった大量の金塊はきっちりと回収されたということですが。
 その「撤去作業」は1日に大型トラック400台分のペースで数ヶ月間続き、資料として残された200個余りの鋼材を除き、あの巨大なビル群の名残はほとんど影も形も無くこの世から消えうせたのです。もちろんこういった証拠破壊はどこの国でも犯罪に当たりますし、誰がそうしたのかははっきりしているのですが、何カ月間も白昼堂々とこの犯罪を行い続けた機関にいる者たちが逮捕され処罰されたような事実はありません。我々はこれに対してどのように考えるべきでしょうか?

 実物がこの世から消え去った(あるいは隠された)のは、ビルの瓦礫ばかりではありません。
 911事件は4機の大型旅客機がイスラムテロリストに乗っ取られて起きたものとされています。確かに世界貿易センター(WTC)の北タワー(第1ビル)や南タワー(第2ビル)には、ビデオ資料で見る限り、間違いなく大型の飛行機が激突したと思われます。それぞれのビルに飛行機が激突する様子を見せるビデオ映像ではそれぞれの飛行機の機種までは分かりません。ただ、飛行機激突後に付近の路上にそれらの飛行機の一部と見られる物体が落ちていました。次のようなものです。(こちらにあるビデオをご覧ください。)

 まず北タワーに激突したアメリカン航空11便のランディングギヤ(離着陸用の車輪)ではないかとされる物体です。


 次に南タワーに激突したユナイテッド航空175便の機体の一部ではないかと言われている物体です。

 また同じくユナイテッド航空175便のエンジンの一部ではないかと見られている物体です。

 ところが奇妙なことに、このような物体は写真やビデオの映像にだけ残され、FBIによって回収されたはずの実物が公開されたことはなく、またこれらを実測した詳しいデータなどは一切ありません。そしてこれらの物体が、どこに保管されどうなったのか(保管されたとするならば)も、まったく公表されたことがありません。
 つまり、この10年間、こういった物体がアメリカン航空11便とユナイテッド航空175便のものであると、一度たりとも「鑑定書」付きで説明されたことがないのです。これは非常に理解しがたいことです。

 もし911事件が本当にイスラムテロリストのハイジャックによるものならば、このような物体は、そのテロの残虐さを世界にアピールするために「これらが間違いなくハイジャックされた飛行機のものである」と明確にさせることのできる最大の物証であるはずです。ですから、これらの実物の公開や詳しい分析の公表があってもよいはずだと思うのですが、この10年間、そんなことは一切なしです。ただの1度もありません。
 この点は、ペンタゴンに激突したとされるアメリカン航空77便、ペンシルバニア州に墜落したとされるユナイテッド航空93便についても全く同様です。機体の一部、エンジンの一部と思われる物体が、単に説明抜きの写真の上だけに残され、この10年間、それらの実物の公開も詳しい分析も全く存在していないのです。
 つまり、911事件でハイジャックされたとされる4つの飛行の4つとも、全て、残骸がそれぞれの事件現場に残されたという証明が一切なされていない、ということになります。4つが4つともですよ。

 本当に、そういったビルや飛行機の残骸の実物の公開と詳しい分析資料さえあれば、911事件について、やれビンラディンがどうだの、ブッシュ政権がどうだの、ミサイルがどうだの、陰謀論がどうだのといった、この10年間も続いている馬鹿馬鹿しい空虚な論争なんぞ、いっさい無くて済んだのです。こういった物的証拠の破壊(あるいはひょっとして隠匿)について、我々はどのように判断すべきでしょうか?
 またこのような物証破壊(隠匿)について、それを弁護し、あるいは無関心を装い、疑問の声すら挙げようとしない専門家・学者たちについて、我々はどのように判断すべきなのでしょうか?

 先日、中国の新幹線で大事故があり、その際に中国当局者が橋げたから落下した車両を地中に埋めてしまい、大非難を受けてあわてて掘り返したという珍妙な出来事がありました。もちろんこのような物証破壊・隠匿という行為は、事故で犠牲になった人々に対する許しがたい冒涜です。しかしながら、フクシマで日本の国家当局や大企業がやっていること、「イスラム・テロ」についてスペインや英国の司法・捜査当局のやったこと、そして何よりも、2001年に米国の国家当局がやったことと比較するならば、中国当局者の行為など幼児の戯れのレベルと言えるでしょう。

 疑う方が悪いですか? 事実を明らかにしない方に非がありますか? どっちなんでしょう? フクシマを経た日本の人々に深くお考え願いたいことです。


(6)10年間、放置され続ける証拠映像  (小見出し一覧に戻る)

 問題はそればかりではありません。
 911事件を最も特徴付けているのは、(1)でも述べたように、映像資料の圧倒的な豊富さです。特にWTC(世界貿易センター)ツインタワーや第7ビルの火災と崩壊は様々な角度から数千点にのぼる多くの写真やビデオの映像が残されました。この点はマドリッドやロンドンで起きた事件との、最も際立った相違といえます。当然ですがこれらの映像資料は、物証がすでに破壊(一部はひょっとすると隠匿)されている以上、事件についてのほとんど唯一の決定的な証拠となるものです。
 ところが、(2)で述べた第7ビルの崩落を唯一の例外として、こういった映像資料がまともに科学的な手法で分析されたことはないのです。私がこの事件について最も悩む点はここです。どうして科学的な知識を持ち手段を持ち能力を持った世界中の専門家たちがこのような証拠映像をまともに分析しデータ化しようとしないのか…どうしてこれらの膨大な数の証拠が10年間もほったらかしにされ続けているのか…。

 証拠は膨大な数あるので、ここですべてをお見せすることはできません。その中からごく一部だけをご紹介しておきましょう。これら多くは、『9・11:爆破の証拠 ‐ 専門家は語る』、また『ビデオ(日本語版)が語るWTC「崩壊」の物理的事実』にあるビデオ(日本語字幕付き)の中で説明が施されています。

●奇妙な白煙を引きずる物体。(このサイトにあるビデオ、またこのサイトにあるビデオをご覧ください。)

●南タワー崩壊開始前に起きた現象。左は東面77階付近から突然起こった激しい噴出。右は崩壊開始直前に北東側角付近で見られた灼熱に溶けた金属。(このビデオ、またこのサイトにあるビデオをご覧ください。)

●崩壊途中の出来事(南タワーについてはこのサイトにあるビデオ、北タワーについてはこのサイトにあるビデオを参照のこと)
    真っ先に消えていく上層階。(左は南タワー、右は北タワー) (特に、北タワー上層階についてはこのビデオ を。)

   両タワー崩壊途中に見られる、津波のように大きく成長しながら高速で連続する爆風の噴出。左は南タワー、右は北タワー。
     (特に、北タワーに関してこのビデオ を。)

   爆発を思わせる巨大な噴出。左は南タワー、右は北タワー (上と同様に、北タワーに関してこのビデオ を。)
 

   巨大な質量の激しい水平方向への運動。左は南タワー、右は北タワー。(これについてはこのビデオ を。)

●タワー崩壊後、極めて短時間に200mを超える高さに成長した火砕流を思わせる粉塵の雲。写真は共に南タワー崩壊直後。左は西側、右は東側。(南タワーについてはこのサイトにあるビデオ およびこのサイトにあるビデオを、北タワーについてはこのサイトにあるビデオおよびこのサイトにあるビデオを。)

●両タワーの外周部が崩落した後も立ち残っていたコアの構造。左は南タワー、右は北タワー。(南タワーについてはこのビデオおよびこのビデオを、北タワーについてはこのビデオおよびこのビデオ を。)

 以上にお見せしたものは、映像によって記録されている事実の中のごくごく一部分に過ぎません。
 しつこく繰り返すようですが、このような事実を記録する映像資料が、公的機関にいる専門家・科学者の手によって、科学的で公正な手法を使って公開の形で分析され、そこから合理的で実証的な結論が公開の形で導き出され、それが分かりやすい形で幅広い大衆に伝えられたことは、この10年間ただの1回も無いのです。これを「異常」と言わずに、いったい何を異常と言えばよいのでしょうか


(7)911は政治よりもむしろ文明の問題  (小見出し一覧に戻る)

 数年前のこと、日本にいる友人にちらりと911事件について話しかけたことがあります。彼は言いました。「悪いけど、俺は政治の問題には興味が無くてね」。私はそのときなぜか急に彼の言葉に突き刺さるような違和感を覚えました。いや、別に「興味が無い」ことに違和感を感じたのではありません。政治の問題に興味が無い人などどこの国にもいくらでもいます。私が違和感を感じたのは、その友人が911事件を「政治の問題」と言ったことです。
 こんなことを言うと、今度はこれをお読みの方が大きな違和感をお持ちになるのかもしれません。「え?911事件は政治事件じゃなかったのか?政治の問題で何がおかしいんだ?」と。実は私自身、どうして「911=政治の問題」にとっさに違和感を覚えたのかの理由を、長いあいだ見つけることができませんでした。
 しかし2011年になって3・11大震災とフクシマ核事故を追っていきながら、少しずつその疑問の答が見つかりつつあるような気がします。ひょっとすると私は最初から、この911事件を、政治的な面からというよりも、この事件に対する人々の認識のしかたや反応のしかた、人間の心理や精神に対する影響のあり方、事件を巡るそれぞれの人間社会の動きというように、むしろ文化的・文明論的な視点で捉えていたのではないだろうか、ということです。

 この事件では、証拠の分析の積み重ねから引き出される推論の代わりに、物証からも映像の証拠からも切り離された《筋書き》が「公式説」として、何の調査も始まっていない事件直後に突然我々の前に提示されました。オサマ・ビンラディンに指導されたアルカイダ、その19人のテロリストによって実行されたハイジャック、乗っ取られた飛行機に襲撃され破壊されたWTCビル群とペンタゴン・ビル、乗っ取り犯と乗客が格闘した末にペンシルバニアに墜落したUA93便、…。
 これについて2010年11月に、マサチューセッツ工科大学のノーム・チョムスキー教授が、イラン国営Press TVとのインタビューで次のように語りました。
 …この(アフガニスタン)戦争の明確に宣言された動機は、世界貿易センターとペンタゴンへのテロ攻撃に関与したとして罪に問われた者たちを米国に引き渡すようにさせることでした。タリバンは…証拠を要求しましたが…、ブッシュ政権はいかなる証拠をも見せることを拒否しました。
 …後になって我々は、どうして彼らが証拠を提出しなかったのかの理由の一つが分かりました。彼らはそれを何一つ持っていなかったのです。
 …これらの全ては完全に違法でした。それ以上に犯罪でした。

 アフガニスタン侵略の動機として公式に言われてきたことは、911事件を「アフガニスタンの山奥に潜むビンラディン=テロリストの陰謀」であるとする純然たる陰謀論でした。しかし、チョムスキー教授が指摘するように、アルカイダが911事件を起こした確たる証拠など実際に何一つありませんでした。あるのは、NISTやFEMAによって作成されたWTCビル崩壊の分析と研究がすっぽり抜け落ちた「WTCビル崩壊」に関する報告書、そして911委員会報告の「《唯‐筋書き》主義」で書かれた長々しい文学作品だけです。それはもはや「神話」としか言いようのないものです。そしてその、FBIが最後まで911事件の犯人としなかったビンラディンは、2011年に米軍特殊部隊がパキスタンで殺害したことになっていますが、これとて、その客観的・具体的な証拠を世界に一切示すことのできないお粗末な御伽噺に過ぎませんでした。この911事件をアフガニスタン侵略の理由としたこと自体がまぎれもない犯罪だったのです。
 そればかりではありません。

 2006年1月から2月にかけてのゾグビー社の調査によれば、イラクに派遣された米兵のうち、93%が「大量破壊兵器の捜索と破壊は軍事行動の根拠ではない」と回答している一方で、その軍事行為を「911同時多発テロでサダム・フセインが果たした役割に対する復讐」と信じる兵士が85%にのぼっていました。すでにブッシュ政権が「大量破壊兵器」はもちろん「イラクの911関与」の大嘘を公式に認めていたにもかかわらず、このような結果でした。
 これは決して兵士たちが愚かだったためではありません。米国軍も政府もマスコミや言論界も、この「911=サダムの陰謀」論という真っ赤な大嘘を積極的に打ち消す努力をするどころか意図的にほったらかしにして、この「復讐心」を兵士たちのエネルギー源として利用し続けてきました。米軍兵士たちは、そんなありもしない「復讐心」を言い訳にでもしない限りやってられないほどの残虐行為をイラクで行い続け、一説に百万人を超えるといわれる人々を殺害してきたのです。

 嘘は、戦争を導く国家の嘘は、いかなる核兵器をも超える大量破壊兵器、最悪の戦争犯罪です巨大な嘘が、戦場となった国々の国民を大量に虐殺し、戦場にならなかった国々の国民の精神と感性を大量に破壊しました。これが今世紀に入って世界で起きたことの最大のポイントです。「悪貨が良貨を駆逐する」という言葉がありますが、現代という時代はまさに「虚構が事実を駆逐する」時代です。我々が日ごろ何も意識せずに享受している現代の文明は、地球的な規模で、嘘が事実をいとも簡単に追い払い、神話が現実をやすやすと食い潰す、人類史上最悪の文明だったことになります。そしてその中に、いま、我々が生きているのです。
 はっきり言いまして、私は「911事件の真犯人が誰か」などにはほとんど興味がありません。どうせ世の中はいつの時代でも悪党や詐欺師が跳梁跋扈するものなのです。むしろ、われわれがこの史上最悪の神話の時代、虚構の時代に生きているということ自体を恐れます。
 国家や大資本は国民の生活や命なんぞ紙くずほどにも思っていない、多くの専門家や科学者は自分の利権のために平然と嘘をつき事実を無視して話を捻じ曲げる、多くの商業メディアは平気で読者を誤誘導する、…、こんなことは別に911事件が無くても、そのずっと以前から明らかでした。米国がらみで言うなら1898年に起きて米西戦争の引き金になったメイン号事件以来明白なことでした。それがハナからこの世の中の実態なのです。それがいかにももっともらしい筋書きと否定を許さぬ神話的な物語で覆い隠され、人々の精神や感情が無前提的にどうしようもなく動かされていく姿を、911事件以来、私はじっと見つめてきました。いったい何なんだ?この世界は?

 しかしひょっとすると、このような現象はもっと恐ろしいことを示しているのかもしれません。虚構を求め神話を愛しているのは、究極的な被害者となるしかない大多数の人間たち自身ではないのかということです。少数の人間が自分たちの利権を確保し多数派を支配するために浅はかな嘘に過ぎない筋書きをひねり出し、それを逆らうことの許されぬ神々しい姿で登場させるというのは、一面ではその通りです。しかしそれはあくまでも、それを受け入れむしろ熱心にそれを何年でも何十年でも支え続ける巨大な人間のカタマリがあるからこそ、たやすく成功するのです。我々はここで、「悪なる少数の加害者」に支配される「善なる多数の被害者」という構図を、虚構として投げ捨てる必要があるのでしょう。

 中世以前の戦争はあくまでも地域や国の支配者たちの意思と利害関係によるものでした。一般の人民は、自ら一揆に立ち上がる場合を除き、その戦争政策のとばっちりを受けることがあっても決して戦争の責任者ではありませんでした。しかし近代以降の世界ではそれが180度ひっくり返ります。民主主義を標榜する近代国家では、戦争への意思を作りそれを支えるのは多数派の国民自身なのです。浅はかな嘘に過ぎない筋書きに自ら飛びついて、どこかの他者を悪魔化して自らを正当化し復讐心をたぎらせ、事実を拒否して神話的な雰囲気の中で自足することを求める圧倒的多数派の人民自らの力で、近代民主主義は人類史上最悪の凶暴な文明を地球規模で形作ってしまったのではないでしょうか。911事件はその典型的だが一つの断面に過ぎないものです。
 私は別に民主主義という社会制度が悪いと言っているのではありません。民主主義であろうが共産主義であろうが、人々が無自覚にそれを形作り支え、ノーチェックのままで突き進むなら必然的に凶悪な文明を作らざるを得ないでしょう。そうなると、中世以前でなら狭い地域でばらばらに発揮された人間の邪悪さが、世界規模で組織的に現れてこざるをえないために、より悪い状態に陥る可能性があるという、極めて単純な筋を語っているのみです。そして今まさにそうなっているのではないのか、ということを言いたいだけです。

 人は、過去を学ぶことによってしか自らの無知から解放されることは無いでしょうし、現在に対処し未来を作ることはできないでしょう。その際に、自らを絡め取っている虚構、理性が働く以前に自らを動かしてしまう神話を自ら拒否しながら現代世界を覆うこの凶暴な文明を、自ら突き崩していく意思と方法論が最も大切なものだと思います。人間の意識が大規模に変わっていくとき、一つの文明もまた大きく変化せざるを得ないでしょう。何十年も100年以上もかかるかもしれませんが。
 その虚構・神話を下から支える圧倒的多数の大衆は事実よりも嘘を好みます。理性よりも神話を好みます。そして、事実と合理的な筋道を大衆から切り離して、人々が虚構の中に自足したいという要求を常に拡大再生産し続けているのが、いわゆる情報メディアです。しかしいま、フクシマが、その「自足の再生産」の構造に波紋を投げかけ亀裂を作ろうとしています。それを担っているのが一部のインターネットメディアです。それは国家と大資本の大嘘を明らかにし、事実を伝え、事実を元に合理的・実証的な推論を立てる少数の専門家や学者たちの姿を見せつけ、メディアによる虚構作りを瞬時に暴き出しています。

 911から始まりフクシマに至る21世紀の世界の流れは、確かに世界中に重大な政治的問題を生み出してきました。そして同様の大事件や大事故が今後も続くことになるかもしれません。しかし嫌でもそのような世の中に生きる羽目に陥った我々現代人の為すべきことは、巨大な情報メディアの働きにひびを入れ様々な角度から突き崩していき、多くの試行錯誤を通して新しい形のメディアを確立させていくことでしょう。それがいままでノーチェックのままで放っておかれた大衆という人間のカタマリを流動化させ、全体主義的な流れを分散させていく非常に有効な手段です。すでに日本では自然発生的にその動きが始まっていますが、その意味が分かるからこそ、大手メディアは盛んに「不安を煽るな」と警告するわけです。
 この虚構と神話の時代に危機を少しでも感じる人たちが当面為すべきことは、そういった自然発生的な試行錯誤をいろんな形で支え拡大させていくことだと思います。誰のためにでもありません。自らの解放を求めるためです。

(20011年9月7日 バルセロナにて 童子丸開)
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