メニューにもどる  「現代世界:虚実の皮膜」目次に戻る
画面中央のタグの
「閉じる」をクリックしてください。

《お願い》 このページにあるリンク先をそのまま左クリックすると、いまの画面と同じ場所にリンク先のページが現れてくるため、両方を効率よく見比べることができなくなると思います。リンクの部分にカーソルを当て、手のマークが出たら右クリックから「リンクを新しいタブで開く」または「リンクを新しいウインドウで開く」を選択していただいたほうが便利でしょう。ご面倒ですがよろしくお願いします。


【松元保昭氏との共訳文】
以下は、パレスチナ連帯・札幌の松元保昭氏が翻訳を施し私(童子丸開)が手を加え「共訳」の形で、松元氏の通信網を使って公開された論文、ミシェル・チョスドフスキィ著、『再掲載:シリアの化学兵器物語り:人道的大惨事を後押しした米=NATOの計画とは?』(グローバル・リサーチ 2013年5月7日)の和訳である。翻訳の前に、松元氏からの説明があり、引き続いて英文の和訳が載せられている。

   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *

 「シリアの化学兵器疑惑報道」は、昨年夏から繰り返し現れています。ことし3月末に、国連事務総長が安保理5か国すべての科学者を調査団に参加させないと決定した後(これにシリアは反発)、4月には、イギリス、イスラエル、アメリカの軍事高官が立て続けに「使用した証拠」が見つかったと報じました。5月には、フランスが、そして再度イギリスが「証拠を確認」したと発表すると、G8の直前6月14日に、オバマ政権は、政府軍側のサリン使用を「断定」し「反体制」反乱軍への支援を強化すると打ち出しました。

 この同じ日、オバマ政権の主張を裏付けるかのように、出所不明の毒性化学物質の被害と思われる映像が全世界のTVに一斉配信されました。翌日、ロシアはただちに米国の主張に「根拠がない」「ねつ造」と一蹴して、米=NATOが目論んでいた「反体制反乱軍への援助強化」「飛行禁止区域設定」はG8で合意できずに終わります。6月21日には、人権侵害にかんする 国連調査委員会も「誰が使用したか明言できない」と発表、数日後には、米政権内部からも「証拠には再検討の余地がある」と声が出る始末。

 ここに紹介する昨年12月のチョスドフスキィ氏の論考は、オバマ政権が「シリアの化学兵器使用を確認」し「反体制反乱軍への援助強化」を発表した6月14日に、グローバル・リサーチ誌に(5月7日付の「注意書き」を添えて)彼自ら再掲載したものです。

 テロ組織を子飼いにして、「人道的介入」と「WMD(大量破壊兵器)使用」という口実で侵略を正当化する今日の西側植民地主義の原型は、テロ国家であり人種差別国家であるイスラエルそのものの歴史にあります。シリアを舞台にした西側植民地主義の陰謀が、以下に紹介する「化学兵器物語り」にあぶり出されています。

 しかし、チョスドフスキィ氏が先に提案した「戦争賠償」が現実のものになるためには、「戦争犯罪」が裁かれなければなりません。サダム・フセインが殺害され 100万人もの犠牲者を出していながら、ブッシュもブレア―も、小泉も、犯罪者として裁かれてはいません。リビアのカダフィも殺害されたままです。そして65年にもなるのに、イスラエルのテロ犯罪、戦争犯罪、占領犯罪も裁かれていません。核実験も枯葉剤もクラスターも劣化ウランも、製造者も使用者も「犯罪人」として処罰されたことはありません。国家の欺瞞をともなう侵略戦争や国家独裁、原子力惨事といった「国家犯罪」を裁く民衆の手段は、あまりに脆弱です。イスラエル擁護を基本戦略とした西側植民地主義の横暴は、ここを隠れ蓑にしています。ここを乗り越えると、人類は新しい「人道と倫理」のステージに立つことができるのでしょう。

 日本に即して言えば、西側軍事同盟を隠れ蓑に、絶えず「敵をつくる物語り」をつくりだしては内外への植民地主義と人種主義(軍事同盟と経済侵略と原発=核政策、そしてアイヌ、琉球、在日、東アジアへの排外人種差別)を実践している日本と、イスラエル・西側の相同性、共犯性に想いを致します。(松元記)

出典:Global Research, June 14, 2013
http://www.globalresearch.ca/the-syria-chemical-weapons-saga-the-staging-of-a-us-nato-sponsored-humanitarian-disaster/5315273

再掲載の著者の注意書き

 以下の記事は、ペンタゴンがテロ組織アルカイダに属するアル・ヌスラに化学兵器を補給しただけでなく、これらの兵器の使用法の訓練までも反乱軍に提供したことを、2012年12月に初めて公開した文書である。

(中略 = 本文の要点を列挙したものなので、割愛した。ぜひ、この重要な論考本文を読んでいただきたい。紹介者)

 この順序で、「保護責任(R2P=国連用語、訳注)」にたいする人道的介入に正当化を与え、さらにはシリア人民を救援に来たというであろう。

 信じがたいかもしれないが、これがシリアにおける「人道的戦争」遂行の正当化である。

2013年5月7日、ミシェル・チョスドフスキィ


(以下、昨年12月の論考全文の翻訳)

シリアの化学兵器物語り:人道的大惨事を後押しした米=NATOの計画とは?
The Syria Chemical Weapons Saga: The Staging of a US-NATO Sponsored Humanitarian Disaster?

ミシェル・チョスドフスキィ(翻訳:松元保昭、童子丸開)
2012年12月12日


 サダム・フセインの WMD(大量破壊兵器)の話をモデルとしたこのプロパガンダは、シリアの化学兵器が数か月にわたって作られていたというまゆつばの脅しに類する策略である。

 「失望し」「自暴自棄になっている」バッシャール・アル・アサド大統領が、彼の人民に対して致命的な化学兵器を使う準備をしている、と西側メディアは―証拠もなく声をそろえて―ほのめかしている。米国政府高官は、先週、「シリア正規軍は、化学物質神経ガスを爆弾に搭載し、アル・アサドの最終命令を待っている。」とNBCニュースにもらした。

 現在、西側政府は、シリア国家元首の命令で非常に残忍な計画を準備しているとシリアを非難している。一方で、メディアの動員は、最高潮の段階に入った。シリアのWMD(大量破壊兵器)についてのねつ造リポートは、2003年3月のイラク侵略に通じる期間を暗示させるニュースの波であふれている。

 導き出されたメディアのコンセンサスは、「指導者バッシャール・アル・アサドのシリア体制は、黄昏(たそがれ)を迎えているようにみえる」ことであり、また「国際社会」は人道的大惨事の発生を防ぐためにシリア人民を救出する義務がある、というものである。
「…シリアは土壇場での自暴自棄の行動で化学兵器の禁を解くだろうという懸念が西側で強まっている。」
陣容を整えたシリア政府が[シリア人民に対して]化学兵器を使用する準備をし始めたという最近のリポート。シリアの 出来事は、40000人以上の死者を出し2年の内戦の後、血まみれの絶頂(クレッシェンド)に向かっているかもしれない。(2012年12月11日、WBUR=ボストン・ニュース局)


イラクとシリアを較べると

 戦争反対の批評家の大部分は、イラクのWMD策略との類似点を強調してきたのだが、それはサダム・フセイン政府の大量破壊兵器(WMD)所有を非難することで成り立っていたものだ。いわゆるWMDの脅威は、2003年3月、イラク侵略の正当化として利用された。

 このイラクWMD(大量破壊兵器)策略は、のちに、ジョージ・ブッシュ大統領およびトニー・ブレア首相が「大きな誤り」であったと実際に認めることによって、侵略の後になってまもなく、あからさまなでっちあげとして認知された。ノーベル平和賞受賞者デズモンド・ツツ大司教は、最近の声明において、
ブレアーとブッシュをハーグ国際戦犯法廷に出廷させるべき「嘘つき」と呼んだ。
(画像:
ブレアーとブッシュ

 シリアのWMD物語りは、イラクのときと際立った対照を示している。その目的は、口実として化学兵器を利用しながらシリアでの全面的な人道戦争を「正当化する」、ということではない。

 反体制勢力に援助する米=NATOの性質と同様に、同盟国の軍事計画を検討してみるならば、それは、イラク(2003)やリビア(2011)に関して採用されたものとは異なった行動方針を示している。

 そのねらいはバッシャール・アル・アサドをまさに悪魔化することであるのだが、この段階での目標は本格的な空爆を含むシリアでの全面的な「衝撃と畏怖」ではない。現在の状況のもとでは、(空爆といった)こうした行動は非常に高いリスクを負うことになろう。シリアは、かなりの量の地上軍同様、ロシアのイスカンダル・ミサイル(画像を見よ)を装備して対空防衛能力を前進させた。西側の軍事作戦は、シリア南部の港湾都市タルトゥスに海軍基地をもっているロシアに反応するよう仕向けることができるのかもしれない。
(画像:
イスカンダル・ミサイル

 もっと言えば、革命防衛隊(IRGC)からなるイランの部隊がシリアの地におり、さらにロシアの軍事顧問はシリア軍の訓練に参加している。(イラン革命防衛隊は派遣されているがまだ実際の戦闘に加わっているニュースは無い。=訳注)

 最近の情勢では、シリアは、
トルコの米国製パトリオット・ミサイルの配置に対応するマッハ6−7のさらに進歩したロシアのイスカンダル・ミサイル・システムの引き渡しを受けた。シリアはすでに、やや旧式のE系列のイスカンダルを所有していたのだ。シリアはまた、ロシア製の地対空ミサイル・システム・ペコッラ=2M(ビデオを見よ)を配備している。
(画像:Iskandal Mach 6-7

(画像:The Pechora-2M
(ビデオ:ロシア製の地対空ミサイル・システム・ペコッラ=2M

非-通常戦争

 この重大時に、米=NATO軍の優位にもかかわらず、上記で言及した理由により全面的な軍事作戦が予想されていない。

 非-通常戦争が選択された路線であり続ける。NATO主導の軍事作戦は、その指揮命令系統、通信システム、補充員募集、訓練、さらなる兵器補充にかんする反乱軍勢力への輸送という、大部分が反乱軍勢力の援助であることは報道が裏付けている。反乱軍の訓練を含むこの責任分担は、秘密の外国人傭兵部隊によって遂行されている。

 シリアの化学兵器貯蔵庫を口実に利用して、反乱軍を援護する限定的で選択的な空襲もありうるが、これにしても、シリアの防空能力を考えれば危険に満ちた企てとなるだろう。

 英国軍参謀長サー・デヴィッド・ジュリアン・リチャード将軍主催のロンドンでの最近の「準秘密」会合で計画中であったことは、「空軍および海軍の援助、プラス反体制勢力への軍事訓練」に特徴付けられた共同軍事アジェンダである。
(画像:英国軍参謀長サー・デヴィッド・ジュリアン・リチャード将軍

 そのロンドンの会合には、フランス、トルコ、ヨルダン、カタール、UAE(アラブ首長国連邦)、および米国の軍責任者たちの参加も含まれていた。詳細は公表されていない。(フェリシティ・アーバスノット「国連の許可なしにシリア戦争遂行への陰謀を企てるロンドンの秘密会合」グローバル・リサーチ、2012年12月11日参照)

 秘密裏に行われた(2012年12月10日に報道された)このロンドンの会合で打ち出されたものは、政府勢力と戦う「反体制活動部隊の統一」のために計画された反体制勢力の軍事的指揮命令系統の一体化をサポートすることであった。これは、すでにシリア内の戦場にいる西側特殊部隊の指揮のもとで、外国人傭兵の再度の流入を必要とするだろう。

人道的大惨事の演出?

 米=NATOの動きの中で、訓練の構 成要素は決定的に重要な意味をもっている。それがシリアの「化学兵器」問題とどのように関連しているのか?

 この段階で、西側軍事同盟は、シリアの化学兵器所有に対する対応で全面戦争を考慮してはいない。考慮されているのは、化学兵器の扱い方を反体制反乱軍に訓練する必要性である。

 この確認された特殊訓練プログラムはすでに進行中であり、特化された傭兵部隊とペンタゴン契約警備会社のサポートを用いて遂行されている。
「アメリカ合衆国といくつかのヨーロッパ同盟諸国は、シリアの化学兵器備蓄をいかに確保するかにかんして、シリア反乱軍の訓練のために軍事請負業者を利用している、と米国上級高官および幾人かの上級外交官が、日曜日、CNNに語った。」(2012年12月9日、CNN報道。)
 はっきりしていることは、― 軍事計画の不可欠な部分となっている ― 非常に残忍なシナリオである。つまり、西側軍事請負業者に助言された反体制テロリストこそが、じつは化学兵器の所有者であるという状態なのである。

 これは、拡散防止という反乱軍の訓練任務ではない。オバマ大統領が、もし「あなた」(シリア政府を意味する)が化学兵器を使うなら「あなたが責任を負うことになる」と述べている一方で、この隠密作戦の一部として意図されていることは、米=NATOに支援されるテロリストたちによる化学兵器の所有なのだ。すなわち「我が」アルカイダ所属の工作員による所有、ということである。それにはアル・ヌスラ戦線(右の画像)がいるのだが、これは西側が資金提供し訓練した最も効果的な戦闘集団であり、主要に外国人傭兵によって成り立っている。ひどいねじれなのだが、米国が後ろ盾となる「諜報組織」ジャブハット・アル・ヌスラは、最近国務省のテロ組織リストに載せられた。
(画像:アル・ヌスラ戦線

 西側はシリア国民の救援に向かいつつあると主張する。彼らの命がバッシャール・アル・アサドに脅かされているということらしい。問題の真相は、西側軍事同盟がアル・ヌスラ戦線を含むテロリストをただ援助しているだけではなく、そのうえ、その代理人である「反体制」反乱軍事勢力に化学兵器を入手可能にさせつつあるのだ。

 この残忍なシナリオの次の局面は、この化学兵器が米=NATOに雇われた「反体制」テロリストによって民間人に対して使われうるということであり、へたをすれば人道的大惨事の中に全国民を巻き込んでしまいかねないということである。

 ずばりと言うならこうだ。誰がシリアの人々の脅威なのか?バッシャール・アル・アサドのシリア政府か、あるいは「反体制」テロリスト勢力を補充し訓練している米国=NATO=イスラエル軍事同盟なのか。

シリアの化学兵器という口実の背景

 シリアの化学兵器物語りは、去る2012年夏に開始された。8月初旬に、ペンタゴンはシリアの大量破壊兵器(WMD)を破壊する目的でシリア内に「特殊作戦部隊の小さなチーム」を送るだろうと公表した。これらのチームは、「精確な空からの攻撃」つまり空爆によって順次サポートされることになっていた。全面的な空襲は考えられていなかった。ペンタゴンによれば、その精確な攻撃は「大気に撒き散らすのでなく化学兵器を破壊する」つもりであったというのだが、それは非常に高いリスクを伴うが…。

 皮肉なことに、この残忍な計画の発端では、米特殊部隊の侵入と飛行作戦はシリア体制に向けられたものではなかった。事実はまったく正反対である。発表されたその作戦の趣旨は、政府軍というよりむしろ「反体制」反乱軍に対して民間人を保護することであった。

 シリアの民間人に対してWMDを使うという陰謀を企てていたという趣旨で、バッシャール・アル・アサド大統領を直接非難するものではまったくなかった。ペンタゴンによれば、その作戦は、国中の軍事武器庫(掩蔽壕)にあって「無防備のままである」とされるシリアのWMDが、政府軍と戦っている反体制ジハード主義者反乱軍の手に落ちないことを確実にするもので あった:
ペンタゴンの政策立案者たちは、無防備のままになっておりアルカイダ、ヘズブラーその他の軍事集団に結びつく反乱戦士や戦闘集団の手におちる[という]危険にさらされるシリアのいかなる備蓄をも破壊するか保護するかに、よりはっきりと焦点を当てている。(米国はシリアの化学兵器を適所に閉じ込めておく計画がある。―latimes.com、2012年8月22日)
 ペンタゴンが8月に語っていたことは、これらのWMDが、ワシントンおよびブリュッセルのNATO本部で接触したサウジアラビア、カタール、トルコを含む米国に親密な同盟諸国の数か国によって補充され資金提供されている「親-民主主義」の自由戦士たちの手に落ちるかもしれないということであった。

 本当は、国防大臣レオン・パネッタは自らの嘘を嘘だと証明していた。8月に、彼はテロリストの脅威を認めていたが、いま、彼はバッシャール・アル・アサドを非難している。シリアの自由戦士の大部分は外国人傭兵だけではなく、国務省のテロ組織リストに載っているイスラム過激派のグループにも属している、ということは暗黙の裡にワシントンによって認められていたのだ。

 イスラエルは、ペンタゴンおよびNATOと互いに連携しあうシリア化学兵器作戦のパートナーである。

テロリストに化学兵器の扱い方を訓練

 もしオバマ政権が、これらの化学兵器が(8月にペンタゴンが示唆したように)「誤った者の手に」落ちることを心から阻止するという気があったなら、それならなぜ、現在、化学兵器の(シリア)政府備蓄を掌握させるために ― 主にアルカイダと連携している戦闘員およびサラフィストから成る ― 「反体制反乱軍」を訓練しているのか?
情報筋によれば、トルコ、およびヨルダンで行われている[化学兵器の]訓練は、備蓄を監視して確保し、また兵器サイトや軍需品を取り扱う方法を含んでいる。高官のひとりによれば、軍事請負業者の若干は、シリアの戦場で反乱軍と共にサイトの幾つかを監視する任務についている。
全てを請け負うことに対して注意を受けた高官たちがアメリカ人なのに、訓練指導者の国籍は公表されなかった。(2012年12月9日、CNN,強調点追加)
 ニュース報道では軍事請負業者の身元を確認していないのに、当局の声明は、ペンタゴンとは親密な契約関係にあることを示唆している。
化学兵器の備蓄の取扱いをシリア反乱軍に訓練するため説明できない軍事請負業者を雇うという米国の決定は、危険なほどに無責任の極みであると思える。とりわけ、愚かなワシントンがこれまでにどれほど、世俗主義の反乱軍が ― そんなものが存在する限りにおいてだが ― 湾岸のアラブ諸国にいる同盟者たちの供給してきた援助と武器を受け取ることが唯一当てにできると念押しに努めてきたのかを考えるならば。
またそれは、米国がシリア政権に化学兵器の戦争での使用を行ったあるいは準備したと濡れ衣を着せる作業を行っているという、シリア外務省が最近行った非難に根拠を与えるものである。
「メディアが広めているこのニュースについて不安を掻き立てるのは、テロリズムとテロリストたちを後援する国々の一部が武装テロ集団に化学兵器を供給して、その武器を使ったのはシリア政府だったと主張するかもしれない、という我々の深刻な懸念である。」とその書簡は述べている。(ジョン・グレイザー「シリア反乱軍の訓練」2012年12月10日、Antiwar.com, また、CNNリポート、2012年12月9日を見よ。)
 中心的な疑問はこうだ。この恐るべき隠密作戦の本質は何か?米=NATO主導作戦の目的は、自由シリア軍(FSA)に化学兵器の利用を「させない」のか、それとも「仕向ける」のか?

 上記の報道は、米国とNATOが化学兵器使用のためにテロリストを訓練していると確認している。このタイプの特殊訓練は、有毒化学物質の実際の操作を必要としているのか? 別の言葉でいえば、西側軍事同盟は指定された軍事請負業者を通して、化学兵器を訓練目的でテロリストたちに利用できるようにさせているのか?

 シリアの騒乱が、大部分がジハード主義者とアルカイダに所属する部隊によって起こされていると知っても、これはどうみても民間人に対する実際の化学兵器の使用を「させ ない」ことを意味しない。その上、十分に記録されていることだが、化学兵器の訓練を受けている「反体制」反乱軍の多くが、ホウラの大虐殺を含むシリア民間人に向けられた無数の残虐行為を犯してきたのである:
「テロリスト・グループが、[アレッポの]有毒塩素工場の管理権を握ったあと…シリアの人々に対して化学兵器の使用に訴えるかもしれない。」と外務省が日曜日に語った。」(2012年12月8日、Press TV)
 反体制勢力による化学兵器の使用は、反乱軍が現実に政府の備蓄を掌握し確保することを必要としているのではない、ということに注目すべきである。化学兵器は、特殊化学兵器訓練プログラムに関与している軍事請負業者のため ― 西側の備蓄から ― 簡単に利用できるようにされるだろう。

 言うまでもないが、ペンタゴンおよびNATOとの契約による民間傭兵会社の参加と化学兵器訓練は、リスクを増大させている。彼らは、反体制勢力による化学兵器の利用にとって好都合な、そしてそれによって潜在的には全国的な規模での人道的大惨事を誘発する条件をつくり出しているのだ。

 しかし、米=NATO連合は、ロンドンの「準秘密」会合(12月10日と伝えられている)で、「戦場に乗り込む」ことは意図していないことを明らかにした。特殊部隊が、政府勢力に対する反体制の騒乱で活動することになるだろう。

 米=NATOの全面的な軍事作戦のない中で、その焦点は非=通常戦争に当てられる。このコン テクストでは、数々の残忍な「机上のオプション」のひとつは、テロリストの「手に落ちる」化学兵器によって、もしかするとそれによって全国規模の人道的大惨事を誘発するかもしれない条件をつくり出すことだろう。

 このオプションでは、もしそれが実行されるなら、米=NATOの軍事介入を必要としないだろうが、その一方で
この人道的大惨事は、シリア政府の崩壊、つまり「体制転換」という長い間求めていた目的にとって、舞台を整えることになるかもしれない。

 リビアやイラクのモデルは、このオプションではない。西側軍事同盟の戦略的選択は、起こりうる人道的大惨事の段階に向かっているのか?


 戦争プロパガンダとメディアのにせ情報の論理では、化学兵器使用の結果としての民間人殺戮は、米=NATOの軍事同盟によるその後 の行動を押し付ける目的でバッシャール・アル・アサド大統領が責任を負うということになるだろう。

 われわれは、このオプションが必ず実行されるとは示唆してはいない。われわれが言っていることは、人道的大惨事を引き起こすかもしれない反乱軍の手中に化学兵器があるというこのオプションは、米=NATOの計画によるものである ということである。

 この恐るべき邪悪で残忍なオプションが挫折させられ、最終的に棚上げされることを、われわれはどのように確実に出来るのか?

 この問題は開かれた場に引き出されなければならない。米=NATO=イスラエルが主導する戦争に反対して公衆の意見(パブリック・オピニオン)が動員 されなければならない。

 見たことのある(デジャ・ヴュー)WMDの嘘を暴露しよう。

 主流のメディア・コンセンサスに挑戦しよう。

 シリアの化学兵器プログラムに関するでっちあげの作り話と嘘を 論破し暴き出そう。

 言葉を遠く広く押し広め、

 この問題を公開の議論の前面に押し出し、あの高い地位にいる戦争犯罪人どもに立ち向かおう。


(以上、翻訳終り)
inserted by FC2 system