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「イスラエルの戦闘機は、シリアの兵器備蓄について政府高官から警告が出されていた数日後、シリア・レバノン国境に近い目標を攻撃した。」次のようにも述べた。
「イスラエルは、シリア政権の化学兵器がシリア内部で戦う「グローバル・ジハード(国際ジハード主義者)」やレバノンのヒズブラの手に渡るのを防ぐため軍事行動を起こすと公に警告していた。イスラエル軍情報部は、輸送部隊の兵器搬送の可能性に備えて最新鋭GPS衛星でこの地域を監視していると言われている。」実際には、これらの「国際ジハード主義者たち」は、少なくとも2007年の初期から、事実上、米国、サウジアラビア、およびイスラエルから資金提供をうけ武装している。彼らはまた、事実上、イスラエルの最近の攻撃の直接の受益者でもある。この攻撃目的は、レバノンのヒズボラへの「化学兵器」移送を防ぐためではなく、より広域の紛争を誘発することにあった。それはイスラエルの防衛など目的ではなく、シリア国家を転覆し破壊することを目論んでいる西側の代理テロリスト武装集団の手詰まりを救い出すことが目的であった。したがって当然のことながら、この「兵器移送」にかんするイスラエルの「疑い」は確認されないままである。
ブッシュ政権は、シーア派が支配的なイラン弱体化(転覆策謀)を中東における最優先事項として再構築することを事実上決定した。レバノンでは、米政権はイランに後押しされるシーア派組織ヒズブラの弱体化を意図する秘密作戦でスンニー派のサウジアラビア政府と協力した。また米国は、イランおよびその同盟国シリアを標的にした秘密作戦にも参加した。これらの行動の副産物は、アメリカに敵対的でアルカイダに共感を示すイスラムの好戦的なヴィジョンを採用するスンニーの過激派グループを梃子入れすることであった。イスラエルに関しては、明確にこのように述べている。
「この政策転換は、主にイランを実際的な脅威と見なしているという理由でサウジアラビアとイスラエル両国を新しい戦略的同盟の中に組み入れることにあった。両国は直接対話に参加しており、イスラエル・パレスチナ関係のより大きな安定化がこの地域におけるイランの影響力を減退させると考える(ワッハーブ派の訳注)サウジアラビア人が、アラブ・イスラエル交渉にさらに深くかかわることになるだろう。」付け加えれば、サウジアラビア政府高官は、この地域一帯での米国・イスラエルの野望を支える役回りを隠蔽するためにこの国が演じなければならない慎重な二足のわらじについて語った。
「そのサウジアラビア人は、自国についての見解の中で、同国がイランを挑発することで米国に同調するという政治的リスクを冒しているのだ、と語った。すでにアラブ世界では、Bandar(9・11当時在任の元駐米サウジアラビア大使バンダル王子(1949年生)と思われる。訳注)はブッシュ政権にあまりに近いと見なされている。「われわれは二つの悪夢を見ている」とその元外交官は私に語った。「イランが核兵器を持つこと、およびアメリカがイランを攻撃することの二つだ。むしろ私はイスラエルがイランを爆撃してほしい、彼らを非難できるのだから。もしアメリカがやったら、われわれが非難されるだろう。」アフリカ、マリの広大な地域を侵略し占領しているフランスが、この地域のアルカイダと提携するテロリスト・グループに資金提供し武装させているカタールを非難している一方で、フランス、米国、およびイスラエルが、シリアでまさにこれらと同じグループに資金提供と武装のためにカタールと共に連携して動いていることを知ることは、読者の興味をそそるかもしれない。
「5月も終わるじめじめした午後に、シリアの最大亡命反政府グループ国民救国戦線の約100名の支援者が、シリア大統領バッシャール・アサドの支配に抗議してここダマスカス大使館前(米国大使館前と思われる訳注)に集まってきた。参加者たちは、「ただちに政権交代を」と書いた横断幕を掲げ反アサドのスローガンを叫んだ。」
「大統領アサドの専制支配体制を転換させる闘いでは、NSF(国民救国戦線)が自由民主主義者、クルド人、マルクス主義者、および元シリア政 府高官たちを結び付けている。しかしそれに不満なワシントンは、思いもよらない役者同士をも結びつけた。米国政府とムスリム同胞団である。」記事はさらに続ける。
「米国政府高官の話によると、この数か月のあいだ、米国の外交官および政治家たちは中東における民主的改革について彼らの見解を聞くため、ヨルダン、エ ジプト、およびイラクのムスリム同胞団と関係している諸政党の専門家たちとも会った。先月、とりわけエジプトおよびシリアにおける同胞団との積極的な関与について、そのメリットを審査するため国務省情報局は中東専門家会議を招集した。」同胞団とアルカイダとのイデオロギー上および作戦上の連携を次のように述べている。
「イスラム原理主義者との戦闘状態にとっては、今日とりわけアルカイダとムスリム同胞団との関係は、多くの議論の種をつくっている。オサマ・ ビン・ラディンと他のアルカイダ指導者たちは、同胞団の先の理論的指導者サイード・クトゥブの著作を西側とアラブの独裁者に対抗する彼らの聖戦の発想の源として引用している。エジプトおよびシリアの同胞団兵士たちはまた、ビン・ラディン氏の運動において古参の役割を引き受けてもきた。」こうしたすべてにもかかわらず、依然として米国、サウジアラビア、およびカタールは、イスラエルとトルコとともに公然と彼らと共謀しているし、さらに何年ものあいだ、リビアからエジプトのアラブ世界のいたるところでこれらの非常に宗派主義的で過激主義のテロリスト・グループに武装させ資金提 供しており、それはいまやシリアの内部と周辺にまで及んでいる。
「付け加えれば、イスラエルの情報機関は、シリアにかんする確かな知識を持つと同時に、アサド解任に圧力をかけ政権の権力基盤を転覆するために利用できる人材をシリア政権内部に持っている。イスラエルは、ゴラン高原とその付近に軍を向けるポーズをとることができ、そうすることで、政権側の軍事 力を反政府派に対する鎮圧から逸らすことができるかもしれない。とりわけトルコがその国境で同じ企てを意欲的に実行するなら、またシリアの反体制派が武器と訓練を安定して供給されるなら、このポーズは多方面の戦線を強いられるアサド政権内部に恐怖を引き起こすかもしれない。こうした動員のかけ方が、おそらくシリア軍指導部に自分たちを守るためにもアサド追放の確信を与えるにちがいない。もしその他の勢力がきちんと連携するなら、このさらなる圧力はシリア内部の情勢を決定的に反アサド側に傾かせることができる、と提唱者は主張している。」(ブルッキングス研究所「体制転換オプションの評価」6ページ)当然のことながら、シリア内部への空爆は「ポーズ」を越えており、まさにイラン攻撃にかんして計画されていたとおり、またブルッキングスの 記事「ペルシャへの道はどこ?」でも記されていたように、おそらく漸進的な介入のための第一の悪役としてイスラエルを選んだと思われる西側諸国の自暴自棄ぶりを示すものである。
「イスラエルはこうした攻撃のためにすでに広範囲にわたる計画と実行をしたかのようにみえ、おそらくすでに軍用航空機は可能な限りイラン近くの基地に配備されている。このように、気候および諜報の条件次第であるが、必要ならばイスラエルはここ何週間あるいは数日の間でさえ攻撃を浴びせることができるかもしれない。もっと言えば、まして作戦に対する地域の支持を得る必要性(ましてや利益)がほとんどない以上、おそらくエルサレムは攻撃をしかける前にイランの挑発を待ちたいなどとは考えないだろう。手短に言えば、もしイスラエル、アメリカ双方の指導者がこれを欲するなら、このオプションを実行するために非常に迅速に動くことが考えられる。この声明において、われわれは、その短い歴史を一貫しているイスラエルのもう一つの顔である不合理で好戦的な姿勢と、同様にシリアに対するごく最近のいわれのない侵略行為の、双方の背後について洞察を得ることができる。イスラエルの役割は、「悪役」を演ずることである。西側の企業投資家たちの利害のための地域的な橋頭保として、西側が望んだ数多くの紛争のどれにもその「足掛かり」を提供している。シリア爆撃によって、イスラエルはさらに広範な紛争を引き起こすことを望んでいる。―その紛争とは、2011年にイスラエルがシリアの暴力的な争いを開始させて以来、西側が熱望し計画してきた軍事介入である。
ところで前章でも述べたように、まさに空爆それ自体は、じっさいこの方針の出発点にすぎない。もう一度言うが、疑いなくイランは核施設を再建するだろう。彼らはおそらくイスラエルに対して報復するだろう。そして、米国にも報復するかもしれない(アメリカの空爆さらに侵略という口実をつくって)。」(ブルッキングス研究所「ペルシャへの道はどこ?」91ページ)