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(翻訳)シリア大統領バシャール・アル・アサドへのインタビュー

【訳者より】

 このシリアのバシャール・アル・アサド大統領に対するインタビュー記事は去る5月18日にアルゼンチンを代表する日刊紙クラリンによって世界に報道されたものである。この和訳(仮訳)では、原文として2013年5月18日付のインティファーダ紙の英語記事を用いた。
【原文Url】
http://www.intifada-palestine.com/2013/05/bashar-al-assad-i-dont-give-up-people-say-who-stays-and-who-should-go-not-u-s/?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+intifada-palestine%2FyTiY+%28Intifada+Palestine%29Bashar
Bashar al-Assad: “I don’t give up. People say who stays and who should go, not U.S.”

 この5〜6月の間に、シリアを巡る情勢が大きく変化した。まず、シリア全土で政府軍によるテロリスト掃討作戦が効果を表して、特に6月8日のクサイルでの反乱側鎮圧は政府軍の有利を決定的なものにしたと言える。ところが反政府勢力側が関係各国とシリア政府を交えた話し合いを拒否し、その後、米国が再び「化学兵器」の話を持ち出して反政府勢力側に対する大幅な援助の政策を発表した。こういった状況変化を知ったうえで、このインタビューの一つ一つを確認してみることは、非常に興味深く意味の大きな作業になるだろう。

 シリアを巡っては米国とロシアの激しい対立が続くが、米英仏はいまのところ直接の軍事介入には慎重だ。リビアのときのように「航空管制区域」を作ってそこでのテロリストの活動を支援することはありうる。またエジプトもシリアとの国交を断絶して、「アラブの春」で政権を握ったイスラム「穏健(?)派」が、トルコの同類たちといっしょに「春」の輸出に精を出しているが、8月の政変後に何かの変化があるのだろうか。もちろんだが、リビアでそうであったのと同様に、シリア内外でテロ活動の急先鋒を担うのがアルカイダ系のイスラム原理主義者たちである。

 一方で、このインタビューでアサドが否定しているのだが、政府軍のクサイルへの攻撃にレバノンのヘズボラーが加わっていたことが明らかにされている。さらに英国インディペンデント紙(6月16日)によれば、イランが4千名の革命防衛隊をシリアに派遣するという軍事決定をしたそうだ。もしこれが本当なら、へたをすると中東を二分する大戦争にまで発展しかねないだろう。

 しかしそれにしても、このインタビューをお読みになればお分かりだろうが、英国で医学を学んだアサド大統領の語っていることは、まさしく民主主義に基づく国民国家のあり方に即した、至極当たり前の常識的な判断である。そしてそれを、「人道」を言いがかりのネタにして、全力で否定しにかかっているのが欧米西側諸国の方なのだ。つまり欧米西側諸国こそ、民主主義に基づく国民国家とはおおよそかけ離れた、自分たちの危険な正体をあからさまにしているのである。そんな西側諸国の一端に住む我々にとって、自分たちの住む世界と時代を鏡のように映し出すこのインタビュー記事が持つ価値には、計り知れない大きさがあるのではないだろうか。

2013年8月 童子丸開

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バシャール・アル・アサド:「私はあきらめない。誰が残り誰が出て行くのかを決めるのは国民であり、米国ではないのだ。」

アル・アサド大統領:シリアの危機へのいかなる政治的解決であってもその基盤はシリア国民が何を望んでいるのかということなのだ。

2013年5月18日−ダマスカス 【訳(仮訳):童子丸開】

 アル・アサド大統領は、シリアの危機のいかなる政治的解決であっても、その基盤はシリア国民が何を望んでいるのかということだと断言した。それが投票によって決められるものであること、シリアはロシアと米国の関係修復を歓迎することを語り、そしてシリアが、暴力をやめさせ政治的解決に導くためのどのような提案をも支持し、イスラエルと秘密裏にも公然とでも取引をせずにテロリズムを拒否するようなすべてのシリアの勢力と対話を行う用意があることを述べた。

 アルゼンチンのクラリン紙およびテラム通信社とのインタビューの中で、アル・アサド大統領は、イスラエルがテロリストを支援し指導して彼らにその行動の全般的なプランを授けていること、それはイスラエルの利益に沿い、そこにシリアでの政治的解決を望まずテロリズムを支援するカタールとトルコを含めた多くの外国勢力の利益が交錯している、ということを語った。

 以下に、このインタビュー の全文を掲載する:


【質問1:シリア危機をこれほどに複雑にし長引かせてきたものは何でしょうか。】
 まず、内外にある数多くの要素がシリアの危機に影響を与えていますが、その中で最も明らかなものは外国の干渉です。次に、シリアに介入した敵対的な国々の見通しが誤っていたことがいま明らかになっています。これらの国々はその計画が数週間か数ヶ月のうちに成功するだろうという認識を持っていたのですが、実際にはそうなりませんでした。現れてきた事実は、シリア国民が抵抗しており、あらゆる形の外国からの干渉に抵抗し拒否し続けているということです。我々にとってそれはシリアを防衛するという問題なのです。

【質問2:今までにこの危機の中でどれほどの数の犠牲者が出たのでしょうか。7万人を超えると報告する情報源もあるのですが。】
 数のいかんにかかわらず、いかなるシリア人の死も悲惨なものです。しかしそれらの情報源の信頼性を調べなければなりません。我々は、その死んだ者の多くがシリア人を殺すためにシリアにやってきた外国人であることを無視するわけにはいきません。同時にまた正式な認定をなされずに死者として数えられている行方不明者も大勢います。これが死亡者数として引用される数値の厳密性に影響を与えています。シリア人は何人でしょうか。外国人はどれほどでしょうか。どれくらいが行方不明になっているのでしょうか。現在のところ、引用できるほどの正確で総括的な数値はありません。数は常に変化しています。テロリストたちが人々を殺し、そしてしばしば彼ら自身が大量に死にます。我々は、シリア軍がこれらの地域に入って後に、それらの死亡者を発見し数えることができるだけです。

【質問3:よく言われることですが、この紛争全般で政府によって過剰な武力が使われてきましたか。】
 ここで、この「過剰な武力」という言葉の意味を定 義することが、それが使われてきたのかどうかを見極めるために、絶対に必要なことです。この概念のはっきりした基準を抜きにしてその認識を議論することなど不可能な話です。
シリア国家の対応は全てにわたって、わが国に対して犯されるテロ攻撃のレベルに相応するものです。テロ攻撃がより高度なものになれば、その脅威に対する我々の対応も厳しいものになります。
 紛争の当初、テロ行為は地方の集団がその地にある武器を使って行いました。時とともにこれらの武装集団は、より高度で破壊的な武器と戦闘員を手に入れることができるようになりました。それによって彼らははるかに大規模にテロ行為を行えるようになったのです。このことがシリア軍と警察部隊による同様な対応を当然のものにしました。それぞれの場面での対応は、テロリストたちによって採用されるテロの形態と方法によって、また一方で一般市民の命を守りながらある地域を反乱テロリストたちの手から引き離す方法によって、様々なものになります。
 したがって、我々の武力のレベルを決定する要素は、国民の命と国土を全面的に防衛するという最終目標とともに、我々が対処している武器のタイプとテロの技術とに関係したものです。

【質問4:この危機が始まったときには一部に外国人の戦士たちがいました。現在、危機 に入って2年が経っているのですが、あなたは対話によって、この危機に対して現在のような外国の介入と参加を防ぐことができたかもしれないとお考えですか。】
 当初は、表面的には、国の改革を要求しているように見えました。この危機があたかも政治改革に関するものであるかのような姿だったことが利用されたのです。実際に我々は、憲法の改正から数多くの規定や法律まで、広範囲の改革政策を追求しました。それには、緊急事態法を解除することや反対派政治グループとの国民的な対話に着手することが含まれていました。しかし我々が改革のプロセスを進めるごとにテロが激しさを増したのは衝撃的でした。
 このことは根本的な疑問を惹き起こします。改革を要求することとテロを実行することの間にある関係は何か? テロリズムは決して改革を達成する手段にはなりえません。国際的にリストアップされているチェチェンやアフガニスタンからのテロリストが、シリアでの国内政治の改革プロセスにどのような利害関係を持っているのでしょうか? 合法的な改革への要求が過激な外国人戦士たちによって実行されるテロ行為とどのように結びつくのでしょうか? イラクやレバノンなどの国々から来るあの外国人戦士たちにも同じことが言えます。最近の信頼できる報告は、およそ29の異なる国籍を持つ外国人戦士たちがシリア国境内でテロ活動に携わっていることを示しています。
 我々は政治改革にしっかりと取り組んでいましたし それを遂行してきました。そして我々は、国民的な対話を基本にした幅広い政治的主導権を提示してきました。どんな政治的解決であってもその根本は、投票で決められるシリア国民の願望です。国家はテロリストたちと交渉しません。しかし、政治的反対派との対話は我々の根本的な政策です。それは我々が真摯に行い続けているものです。
 テロリズムは米国から欧州までの国々で起こりました。これらの国々がテロリストたちと交渉したことがありますか。対話は合法的な政治諸党派と伝統的な反対派を相手に行われるもので、殺人、断首と毒ガスつまり化学兵器の使用を含む暴力の行使をその行動基準とするテロリストを相手にするものではありません。

【質問5:大統領。それらの改革は、報道や表現の自由を含めて、シリア国民の真の民主的な代表をもたらすものとなるのでしょうか。】
 あなたは、新しいメディア法が最近採用された改革の中ですでに確立されていることにお気付きになると思います。我々は最終的にもっと十分なプロセスを目指していました。つまりあらゆる政治勢力のための国民的な対話を思い描いたのです。それはその後に、政治やメディアの自由を含めた幅広い範囲の自由を保障する統一された国民憲章と新しい憲法制定のために前提条件としての役目を果たすべきものでした。この新憲法草案は続いて国民投票に掛けられる予定でした。
 報道の自由と政治的な自由は切り離せなく結び合った二つのコンセプトです。それはお互いに強化しあい支えあっています。片方抜きでもう一方を追究するのは無理であり、それらは両方で協力し合って機能するものです。

【質問6:閣下は常にこの危機の解決の鍵は対話であると強調されます。それは全く賛同できることです。米国とロシアの間での最初の合意として今月末に開催が提唱された会議について、あなたはどのようにご覧になります か。特にフランスと英国が関わるそのプロセスを、あなたはどのように評価なさいますか。】
 我々は、シリア内での暴力の終了をもたらし政治解決を導くようなあらゆる手段に対して我々の支持を繰り返します。しかし、暴力の終了こそが政治的安定に達する最重要なものです。
 私はロシアと米国の関係修復を歓迎し、それがシリア危機の解決促進のための舞台となることができるように協力します。シリア問題の実際的な政治解決の追求に対する一部の西側諸国政府の意図が純粋なものであるかどうか、我々は常に懐疑的なのです。この警戒心はそれら国々がシリア内にいるテロリスト集団を支持し続けていることに基づきます。我々は政治的解決の追求に携わっていますが、しかしそのような解決の失敗を押し付けつつある勢力があるのです。これは二つの方向に向かうプロセスであり、あらゆる側面からの関わり方が必要です。

【質問7:それらの疑惑は反対派に関連するものでしょうか、それともシリアの政治的解決を妨害するある特定の国々や国際的な勢力に関連するのでしょうか。】
 あなたがおっしゃる外国に基盤を置く一部の反対派勢力は、根本的に、自主独立の意思決定機関とはかけ離れています。それらの政策はそれらに力を与える国々によって作り上げられたものです。これらの反対諸派はパトロンとなる国々の援助で生き延びているもので、根本的に資金の流れを提供する国々によって操られています。それらはその国々の諜報機関による保護とコントロールを受けており、そうしてそれらに課せられた事がらに従います。したがって、その者たちの決定は自らの意思によるものではありません。非常に明らかなことですが、それらはシリアでの国民的な基盤を持っていません。もしこの者たちが国民の支持を得ているなどと信じるのなら、彼らは遠い外国からではなくシリア国境内部で政治的に機能していたことでしょう。近年になって我が国には実際に、国内内部の国民の支持を様々なレベルで享受する、国内の政治的反対党派があります。シリア政府はそれらの国内的な政治勢力を脅迫したり憎んだりしたことは決してありません。
 必然的にですが、それに関して疑問が起こります。外部の機関に率いられていると考えないなら、いった何が外国にいる反対勢力の存在を正当化するのでしょうか。つまり、我々はこういった反対派勢力とそれらを支持する国々のどちらにも懐疑的なのです。それらは非常に密接につながりあっています。重大な点ですが、これらのことは単なる疑いではありません。広く伝えられている事実ですが、それらは先週まではっきりと繰り返して政治的な対話を拒否しているのです。

【質問8:反対派が細分化されているときに、どのようにその対話を行うことができるのでしょうか。対話についての話が為されるとき、誰をその対話の相手とするのでしょうか。】
 我々は常にそして熱意をこめて、十全な国民的対話を擁護し求め続けています。純粋に参加を求めている全ての人に、誰も除外されず、加わってもらうためです。我々は、その人々が国家の主権と自立権の範囲内でより良いシリアのために力を尽くすということを、前提条件として考えています。これには、彼らが進んででも秘密裏にでもイスラエルに関与してこなかったという事実が条件になります。
 もちろんですがこのプロセスにテロリストは加わりません。テロリストと交渉するような国家はありえません。しかし我々は、武器を捨てて建設的な対話に携わる人々を歓迎します。実際に今まで、武器を手にして戦ってその後に武器を収め、そして政治に参加して現在シリア国家に協力している人々の、数多くの例があるのです。その人たちは実際に合法的な要求と提案を行っています。シリア国家が開かれた場で彼らに話しかけているためです。
 我々は、テロリズムが支援を受けているときに平和的な政治解決など決してできないという確信を持っています。政治的な話し合いが成功するように支援を要求する一方で、同時にテロリズムを支援することには、根本的な矛盾が存在します。ある特定の国々が、資金を与え武器を流し込んでシリアでのテロを援助しています。これらの国々の主要な目的がシリア国家を突き崩して弱体化させることにあるため、決してそのやり方をやめることがないだろうと、我々は考えています。シリア問題の政治的解決はこの国を発展させ豊かにさせることに役立ちますが、それは、こういった特定の国々が成し遂げようと試みているものとは逆のことなのです。
 シリア国民は議会に向かうすべての政治勢力とともに未来へのビジョンを形作るでしょうし、憲法から始まって新しい法や規定に至るまでの事柄に関して、明瞭で包括的な合意に達する可能性を持っています。同様に、議会のあり方でも大統領のあり方でも、最も適切なシステムについての論争を起こしながら、シリアで将来的に望まれる政治的な仕組みの形について議論するといったことも懸案になっています。このようなプロセスが、シリアの未来を正しく形作っていくでしょう。
 テロリズムはそれとは無縁のものです。我々がシリア主導の政治的合意に成功したとしても、カタールやトルコその他の特定の国々は、シリアでの暴力とテロリズムを煽る作業を続けるでしょう。ですから、国際会議を開くより先にやるべきことは、シリアに恒常的に流れ込んでくる資金と武器を即刻停止させることです。特に重要な点は、主にトルコを通してシリアに溢れ込んでいるテロリストと戦闘員を、カタールやまたサウジアラビアのような他の湾岸諸国が主要に行う財政的な援助とともに、食い止めることなのです。
 現在すでに世界の主要な勢力がこの財政支援とテロリストの訓練や流入を止めさせるように働きかけており、シリアでの戦闘はずいぶんと簡単になっていて、そして実際的な政治解決が真の成果をもたらすかもしれません。シリア国民が防御不可能なテロリズムの犠牲になっている間は、新しい憲法と法律は何の現実的な解決をももたらさないでしょう。

【質問9:では、あなたは外国に拠点のある勢力に話しかけるのですか。】
 我々は、国内外を問わず、あらゆる政治勢力とも全く無条件に対話を持とうとするでしょう。それは、武器を収めテロリズムを止める武装集団をも含みます。銃器と対話は明らかに両立不可能です。
 実際のところ、いくつかの集団と勢力が法的な告訴の対象となっています。ただ現時点まで我々は、それらに対して、求められた対話を容易にするための正式な法手続きを開始する力を持っていません。これは、シリア国民がしだいにその筋道を判断するようになれば高まっていくものでしょう。我々はまだ、国家が為すべき解決のための行政手段を実行できませんが、その完遂はシリア国民の意思にゆだねられるものとなっているのです。

【質問10:シリア危機でイスラエルが演じている役割は何でしょうか。特にイスラエルによるシリア内の施設の爆撃以後について。】
 イスラエルは二つの方法でテロ活動を直接に支援しています。まず、傷ついたテロリストたちをゴラン高原にある医療施設でおおっぴらに治療するようなことで明らかな戦術的な手段を通してです。次に、イスラエルはテロリストたちに、どうやって攻撃を重ねてどの場所を標的にするのかという点について、指示と誘導を行っているのです。たとえば、彼らはレーダー基地を攻撃したのですが、そこは外国空軍の行動を探り捕捉するための防空システムと厳密に結びついているものです。イスラエルはテロリストたちをそういった防空システムの攻撃に動員しています。それらがシリアとイスラエルのあらゆる軍事衝突で重要な抑止力になっているからです。
 したがって、テロリストたちに対するイスラエルの援助は二重のものです。戦術的な補助とテロ活動や地上作戦に向かわせる誘導という支援です。

【質問11:あなたはシリア内での外国人戦闘員の存在を非難しておられますが、ヘズボラーやイランの戦闘員がシリア軍といっしょに戦っていると指摘する人もいます。これについてあなたはどうおっしゃいますか。】
 その話は、我々がシリアで戦っている外国の聖戦主義戦士たちの存在を伝えたときに、西側諸国で作り上げられたものです。彼らは釣り合いをとるようにヘズボラーとイランもまたシリア内で同様に戦っているという考えを発明したのです。
 シリアは2300万人の人々に頼ることができます。どの国からの人材援助も要求しません。我々は国を守るための我々自身の軍と治安部隊とシリア国民を持っています。したがって、イランからであろうとヘズボラーであろうとにかかわらず、我々の代わりに戦うようないかなる集団も必要とはしていません。我が国とイランやヘズボラーとの関係はよく知られており何十年間も続いているものです。我々が多くの面で専門的意見を取り交わしていることは周知のことです。
 シリアでこれらの勢力から来た戦士たちがいるという主張を考えてみた場合、それは実質的に隠すことの不可能な事柄ですね。何よりもまず、シリア国民はその人々から区別できたことでしょう。いったい彼らがどこにいることができたでしょうか。もしその必要性や要求があるのなら、我々はそれを公式に明らかにして告げるでしょう。我々はシリア内で、いかなるアラブ諸国やその他の国から来た戦士も、間違いなく使っていません。イランやヘズボラーから来た人々はこの危機の以前から何年間もシリア内にいます。合意の下に公式にシリアに行き来しているのです。

【質問12:もし対話に関しての進展がない場合、あなたは、武装反政府勢力が武器を収め合意に至るだろうと予想されますか。あなたの政府は危機解決の政治的な段階を踏むのでしょうか。閣下は権力を手放すわけでしょうか。】
 私が執務室に留まるか否かはシリア国民が決めるでしょう。大統領として申しますが、私が留まるかどうかを決めるのは私ではなく、選挙民の決定によるものです。国民によって望まれないならば誰でも指導者にはなれません。それは根本的な常識であり、さして議論の余地も無いものです。2014年の憲法改正と大統領選挙を通して、国民が決定を行います。
 あなたが引き合いに出した武装グループについてですが、それらは単独の自立したグループではありません。我々は何百という細分化された武装勢力と戦っています。コフィ・アナンが辞任した基本的な理由の一つが、反対派側にいる誰と交渉すべきなのか分からなかったことなのです。
 我々の見方からすれば、一つの国家には一人の大統領と一人の首相がいて、明確な統一性を持つ一つの政治構造があります。テロリスト勢力について言えば、有罪判決を受けた犯罪者や麻薬密輸業者、原理主義運動家を含む寄り集まりのグループと戦闘集団に属しています。それぞれのアナーキーな運動は地区のリーダーをもちます。したがって、我々は何千にも細分化された者たちについて話しているわけです。必然的な疑問はこれです。誰がこれらを結び付けているのか? 政治アジェンダを持たないこれらの野心的なグループと共に戦略を考え打ち立てることなど、誰にとってもとうてい不可能なことです。前にも申しましたが、これらの集団の全部が過激派というわけではありません。一部は強盗集団であり、一部は危機を利用して建築資材でもうける金持ちであり、他は危機を長引かせることで直接に利益を得る無法者か機会主義者たちです。これらのグループと共に実体のある政治プロセスを打ち立てることは骨の折れる作業です。もしその者たちが通常の組織を持っているというのなら、その方法を思い描くことはもっと可能性があったのかもしれませんが。
 この現実が意味することは、個々のケースでその状況によって個別に対応しなければならないということです。武装した個人や集団がいったんその武器を収めさえすれば、我々は自動的にそれらと接触を図り対話に向けて前進します。それが決定的で完全な対話にならないことは分かっていますが、しかし、我々は「オール・オア・ナッシング」の政策を信用しません。我々は徐々にこの戦略を築きつつあり、そのことが実際に、シリアにある多くの地域での危機を緩めることに 役立っているのです。

【質問13:すると大統領、あなたは地位を下りることを拒否され続けるのですか。】
 先にも申しましたとおり、私が地位に留まるかそこを去るかは、私の個人的な選択肢ではありません。私はシリア国民に大統領として選ばれたのですから、シリア国民だけがこのことを決定する権限を有しています。しかし、米国が望んでいるからとか、テロリストやある特定の国々がそう望んでいるからシリア大統領が辞めなければならないなどと見なすことは、全面的に容認できません。それはただ、投票箱を通しての有権者の決定にのみ、関連することなのです。

【質問14:アメリカ合衆国は、オバマ大統領とケリー国務長官の声明の中で、シリアへの介入を望まないことを示唆しました。しかしながらケリーは、いかなる対話もあなたの退陣の可能性を含むべきだと述べました。このことは危機の解決に達するためにあなたが使うカードになりうるでしょうか。】
 ケリー氏や彼と同類の人々が、誰が地位に残り誰が去るのかということに、シリア国民に成り代わって口を出せるような委任状を受け取っているのかどうか、私は知りません。我々はこの危機の最初から、国内の改革に関するあらゆる決定やその他のすべての政治活動はシリアの国内的な決定であり、米国や他のいかなる国もそれに関して口を出せるようなものではないと、明らかに宣言してきました。ですからその可能性はシリア国民による決定のみにあります。これが、一人の大統領が権力の座を去るメカニズムであり、あらかじめ定められた、国民が選んだのではない前提条件の下に、会議を行うことではないのです。
 この国はいま危機に直面しています。船が嵐の真ん中にあるときに、船長は海に飛び込みません。反対に、船長の義務は嵐と立ち向かい船を安全な水域に導くことです。いま私の義務を放棄するいかなる行動も責任から逃れようとすることであり、私は自分の責任から逃げ出すようなタイプの人間ではありません。

【質問15:特にフランスと英国によって主張されたあなたの退陣という初期の前提条件に加えて、彼らはシリア政府が化学兵器を使用したと非難しています。ケリー氏は昨日、2013年3月にシリア軍がアレッポでサリンガスを使った「有力な証拠」があると述べました。これに対してあなたはどうおっしゃいますか。この西側諸国が強調する点がシリアへの軍事介入の前触れであるとお考えですか。あなたはそういったシナリオの現れを心配しておられますか。】
 シリアに関して西側諸国の発する声明は、それが化学兵器に関するものでも、また大統領の辞任に関するものでも、ほとんど日替わりで変化します。ある日に彼らが化学兵器使用の証拠があるという推測を言うと、次の日にはそんな証拠は無いと結論付けます。さらに次の日になるとまた証拠があると言い出します。我々は、それらが一つの話に落ち着くのかどうかを知るまで待つべきです。
 しかし我々には空虚なレトリックで浪費するような時間はありません。もっと重要なことは真実です。化学兵器は大量破壊兵器であり、我々が人口密集地でそれを使用したという非難があります。もしも、たとえばの話ですが、核兵器がある都市や人口密集地隊に使用されたならば、たった10人や12人しか死なないなどということが信用できるでしょうか。人口密集地で化学兵器を使用すれば、数分の間に何千人や何万人の死者がでることでしょう。これを隠しておくことなど実際にできるとお思いですか。我々はもっと詳しく調べてみる必要があります。特にそのタイミングをです。これらの憶測が現れる前に、テロリスト集団がアレッポで化学物質による攻撃を重ねました。我々は具体的な証拠でそのことを証明しています。我々が手に入れている証拠は、使用されたミサイルとその化学物質です。我々は国連安全保障委員会に公式な書簡を送り、この件についての公式な調査を要求しました。これが疑いもなく米国やフランスや英国といった特定の国々を窮地に陥れたのです。すぐその後で彼らは、シリアがテロリストに対して化学兵器を使用したという憶測を流し始めました。調査を逃れるために、彼らは対案として、実際にその事件が起こった場所から遠く離れた様々なシリアの地域に、無条件で束縛を受けない調査員を派遣するように求めました。実際には、国連の調査班のメンバーであるカルラ・デル・ポンテは先週に、シリアでテロリストが神経ガスを使用した証拠があることを発表しました。
 シリアへの軍事介入の明らかな口実としてこういった憶測を用いることは可能性あるシナリオです。ちょうどイラクについて実際に起こったようにです。このときにはコリン・パウエルが安全保障委員会の席上、現在「イラクの大量破壊兵器」の偽証拠として知られているものを提示しました。いったいどこに大量破壊兵器があったのでしょうか? 西側の政府が戦争の口実として嘘をつき続け話を捏造することは、一般常識なのです。
 シリアに対するどんな戦争も決してピクニックではありません。ここの状況は非常に異なっています。彼らが対シリア戦争のアイデアを練り上げるようなことは十分にありうることですが、我々はそれが理屈以上のものである証拠を知りません。しかし我々は常にこのことを念頭においているのです。

【質問16:現在のところ、あなたはシリアに対する軍事行動を確信しておられますか。イラクへの侵入のような形ではないにせよ、直接の軍事攻撃を。】
 先週イスラエルが行ったことがまさにそれなのです。それは常に現実的な可能性であり、しばしば起こることです。とくに我々が我が国全土でテロ集団に対して攻勢をかけ続け、地上での力のバランスが傾くようなときです。
 その国々は、テロ集団の士気を高めるために、以前からその役を委託されているイスラエルに吹き込んで攻撃をさせているのです。これらの国々は、明らかにシリア国家を弱体化させる目的で、暴力と流血を長引かせる作業を行っています。したがって、我々に対する軍事行動はありえないシナリオではありません。それは、たとえ限定的な規模でも、常に発生する可能性があります。

【質問17:あなたはいま、シリアの情勢がコントロールされているとおっしゃいます。 しかし我々は多くの銃声と迫撃砲の音を聞きます。最近、特に武装勢力がダマスカスを包囲して以降、危機が軍事的にどのように展開してきたのですか。】
 コントロールという言葉はしばしば、自分の国で外国の軍を相手に戦争を行っているときに使われます。そこでは我々は、この地域を占領しているとか別の地域をコントロールしているというように語ることができます。シリアの状態は完全にそれとは異なります。つまり我々は、ある特定の場所に侵入してきたテロリストと戦っているのです。彼らはある地区の特定の建物を占領しているかもしれませんが、それは彼らがある地域全体を十分にコントロールしていることを意味しません。それらが典型的な形態の軍隊ではないために、彼らは姿をくらませて比較的速く一つの場所から他の場所に逃げる能力を持っています。彼らがある特定の地域に入ってそこをコントロールすることを企んだ実例は何もありませんし、そうすることもできていません。我々がコントロールという用語を使うのはそのような場所なのです。
 テロリストたちがより簡単に作戦を展開できる場所はあります。一国の隅々にいたるまで立つことができる軍隊など世界のどこにも無いのがごく当然だからです。我々の軍事行動の目的はテロリズムを打ち砕くことであり、土地を解放することではありません。最近の数週間で我々は明らかな成果を達成しているため、大部分のテロリストがシリアを去り、他の者たちも国家に降伏しています。我々は特定の地域などをコントロールすることを求めてはいません。我々はテロリズムとの戦争を行っているのであり、長い戦いで十分な前進を遂げています。

【質問18:大統領、オバマの外交政策が以前の米国指導者のそれと比べてどの程度異なるとお思いですか。】
 米国は特定の団体と特別なロビーによって幅広く統治されています。どんな新しい指導者でも職務を果たしその評価を残すことができますが、しかし、彼らは自分自身の自立した政策をそれらの 団体とロビーから独立して描くことはできません。ですから米国政府の変化は外交政策にほんの僅かな違いを作ることしかないのです。その支配的な集団とロビーが変わらないからです。このことが個々の大統領や国務長官(注※)の影響を測ることを困難にしています。(※訳者注記:本文では
Foreign Minister
となっているがこれは勘違いと思われる)
 シリアにいる我々にとって最も大切なことは、米国の外交政策がいまだイスラエルに根本的に傾いており、アラブ人、特にパレスチナ人の合法的な権利に敵対していることです。最近20年間に、米国は和平のプロセスを進めるための真剣なつまり誠実な歩みを全く行っていません。彼らはアフガニスタンとイラクを侵略し、そしていまだに同じ政策を採用し続けています。人道的な見地から言いますと、彼らはいまだにグアンタナモ刑務所を管理し運営しています。ではいったい何が変わったのでしょうか? レトリックがでしょうか? それは真の値打ちを何も持ちません。大切なことは大地の上での行動なのです。だから私が申したように、この件についての歴代米国政府の方策は非常に似通っているのです。

【質問19:ジョージ・W・ブッシュは経済の好転を命じてアフガニスタンとイラクの戦争に突入しました。オバマはそれをリビアで繰り返しましたが、しかし彼はシリア侵略を本当に望んでいるように見えません。あなたはこのことが米国の政策の転換を反映しているとお思いですか。このことは世界秩序の変化によっているものとお思いでしょうか。私が7年前にあなたとお会いした際に、中国は現在のような実力を持っていませんでした。この点から見て、あなたは米国軍がシリアに侵入するとお考えでしょうか。】
 このご質問に対しては二つの観点からお話できると思います。米国内には、現在の政権が戦争に積極的ではないという見方があります。我々はこれがなぜなのか自問する必要があります。それが 経済的な状況によるものか、世界的な権力構造の変化によるものか、アフガニスタンやイラクや他の国々での失敗によるものか。あるいは、単にそれが政治の原則に関する事柄のせいなのか。この変化が原則に関するものかどうかは疑問です。米国が新たな軍事的冒険に携わることを妨げる状況的な変化があります。特にそれが非常に高くつくことが明らかにされ、また政治的に利益を得ることに失敗しているためです。しかし米国は外部から眺めるよりも十分に戦争政策を決定できる軍備を整えています。
 ところが、別の非常にはっきりしており我々に直接に影響する点から見るならば、米国は我が国の中で、いわゆる「非軍事的」支援によって、戦術的にそして政治的にテロリズムを支援する政策を維持し続けています。お尋ねしたいのですが、9/11事件は軍事的な支援によって行われましたか。違いますよね。全く逆です。テロリズムを武力で支援する必要は無いわけです。単に資金を与えるとか戦術論的・技術的に支援することによって、テロリストたちにより破滅的な殺害の能力を与えることができます。ですから、米国の政策が直接の軍事侵略からより非正規な形の戦闘行為に軸を移しているように思えるわけです。
 もう一つ、我々が深く考えるべきもっと重要な問題は、現在の米国の外交政策が国際情勢の安定を促進するものなのかどうかということです。明らかに違います。米国も西側各国政府も、国際情勢の安定のためには何一つ行っていません。北朝鮮、アフガニスタン、シリア、イラク、そして他の多くのアラブ諸国で起こっていることをご覧ください。安定など存在しません。我々はこの点に注目すべきなのです。戦争は単なる道具であり、我々は道具ではなく政治原則について語っています。たとえ米国が直接の軍事侵略から軸を移したとしても、それはその原則を変えたことを意味しないのです。彼らはその道具を取り替えたのです。そう、政治原則の変化は疑わしいものです。

【質問20:あなたが戦争は手段だとおっしゃるとき、それは西側諸国がシリアにワッハーブ(注※)つまりイスラム原理主義政権を押し付けるための方法だとご推測でしょうか。シリアの新しいガスと石油の資源を支配するためか、あるいはその両方なのでしょうか。あなたは、シリアで原理主義政権が権力を握るように、米国がカタールやサウジアラビアと組んで行動するのだとお考えでしょうか。
(訳者注記※:ワッハーブ派はイスラム教スンニ派に属する厳格なイスラム法学派であり、サウジアラ ビアを始めとする湾岸諸国政府はこの原理主義の政権である。)
 西側の主要な目的は、その支配に「忠実な」政府を作ることです。かつてラテンアメリカに存在した諸政府と同様ですが、これがそれらの国々が持つ天然資源の収奪と消費を容易にするのです。
 原理主義政権樹立という西側諸国の願望については、二つの異なった見方が存在します。第一は、西側の一部が原理主義政権を心底恐れており、そこで、いまだ彼らのアジェンダに「忠実な」非原理主義的な政権に対して立ち向かわせている、というものです。第二の見方は、西側の他のメンバーが原理主義政権との間に問題を抱えておらず、それを「いまのところは利用して後に討つ」ことが可能だ、というものです。この政策は究極的な意味で近視眼的です。米国によってこの種の考えと政策が遂行された結果が、アフガニスタンでの出来事とその後に続いたニューヨークでの事件です。彼らはタリバン政権を様々な時期に支援し、そして、9月11日に巨大な代価を支払いました。そしてまずテロリズムと戦っているという大義名分を使ってアフガニスタンに入ったのですが、今日、テロリズムと原理主義は10年前に比べるとはるかに勢力を強めています。要するに、彼らはアフガニスタンに侵入したのですが、そうすることによって必然的にテロリズムをより強力にしたのです。以前にはそれはアフガニスタンに限られていたのですが、現在それは成長し世界中の多くの場所に広がり始めています。西側は自分たちの政策を、いかなる形であろうと熱心に遂行するような忠義の傀儡政権を押し付けようと務めています。
 しかしもっと危険なことは、その地域のワッハーブ主義国家が、一つの政権というレベルでではなく、より幅広い民衆に過激なイデオロギーを広めようとしている点です。シリアでは、我々のイスラムについての考えは非常に穏健です。ワッハーブ起源の原理主義やワッハーブ主義思想の学校は全くありません。我々はそれらがシリア社会の中に吹き込もうとしているこういった原理主義イデオロギーを拒否し抵抗しています。我々は、政治的に戦うことによって、そして穏健なイスラムの正しい信仰を教えることを通して、これを行います。シリアは穏健派イスラム国としてよく知られています。
 天然ガスについてですが、この件が我々と議論されたことはありません。しかし、我々は中東地域のために、大規模な鉄道開発やその他、石油とガスの輸送を含め、東西南北に五つの海をつなぐ 計画をたてて発表していました。それらは、この地域の発展の歩みを強めその全ての国々の経済を豊かにさせるはずのものです。
 シリアのような国は、いかなる意味でも、西側諸国の衛星国家ではありえません。シリアは自国民の利益のために働く独立国であり、シリア国民を西側の利益のために働かせるものではありません。彼らが我々に対して、傀儡政権にならず国民の利益に尽くし自国の民と経済を利する企画を好むという役を演じることを望まないのは、ごく当たり前です。

【質問21:来る2014年の大統領選挙は国際的な監視下となるのでしょうか。国際社会のメディアは自由な取材活動ができるのでしょうか。】
 大統領であっても、国際的な監視は私自身によって決定できるものではありません。それは我々が準備している国内での対話プロセスに従うものです。現時点で我々は、国内での対話を開始させるために、シリア内のさまざまな政治勢力と相談している最中です。それがその次の段階で選挙のために道筋を作っていくでしょう。
 シリア社会のある部分は、外部の監視という考えを拒否し、我が国の主権の下で選挙が実施されると信じています。これらのグループはシリアに対する西側の意図に懐疑的であり、自国内部の事柄を「正しく」導く方法について国外勢力からのいかなる押し付けも拒否します。別の人々は、国際監視の話は実際にそれに加わる国々に大きく依存すると感じています。もし監視があるとして、彼らは、たとえばロシアや中国のような歴史的に友好的な国々によって率いられるのかどうかと問います。
 繰り返しますが、これは私自身が決定できることではありません。これはただ、シリアの全ての政治勢力を含める全面的な国内対話のプロセスを通して、シリア国民によってのみ決定が為される ものなのです。

【質問22:近々行われるイランの大統領選挙についてですが、イランの政策全体で何らかの変化があるとお思いですか。】
 もちろんイランはこの地域にある国です。それは重要で必須の政治的役割を持つ大国です。イランでのできごとは必然的に、近隣の国々にとって肯定的なあるいは否定的な意味合いを持つことになりますし、この地域の安定に影響を及ぼし得ます。この観点から、イランはシリアにとって極めて重大な意味を持ちます。他の観点から言えば、イランとシリアの永続性を持つ同盟関係は30年以上にもわたります。友好国として、我々はその国内情勢の変化を間近に見ています。それは何らかのあり方で、シリアのこの地域での役割に影響を与えるでしょう。
 他の中東地域にあるどの国とも同様に、イランには常に国内政治の活発な動きがあり、定期的に政治的改革を行っています。来るべき選挙はイラン社会の変化と、この地域での重要性と政治的影響の増大を反映するものとなるでしょう。
 今日のイランは10年前とは大きく変わっています。現在、それはこの地域での最も重要で強力な国家の一つとなっています。これが選挙の中で反映されるでしょう。最も明らかなことですが、新しいイランの大統領が、イランの共和制を米国の傀儡に変えたいという合衆国の願望に仕えることはないでしょう。米国政府はそんなものに賭け続けるべきではありません。選挙に反映するものはイランの国内的な変化であり、西側諸国が厚かましくもイランに求めるような変化ではありません。

【質問23:私が閣下にブエノスアイレスでインタビューさせていただいた際に、あなた はホロコーストを非難されあらゆる形の虐殺をも断罪されました。これはイランの認識
(※注)とは異なります。この違いは何を意味するものでしょうか。
(訳者注記※:これは2006年にアフマディネジャッド大統領が、「ホロコーストに関する調査」を求め、ホロコーストの結果をパレスチナ人に負わせた欧米の欺瞞を指摘したことを意味するが、西側では「ユダヤ人虐殺を否定した」 ように誤って伝えられている。)
 ここで最も根本的な疑問はこれです。パレスチナ人に対して長年行われてきた殺人や、米国人による150万人ものイラク人殺害、1950年代の戦争中に殺された100万の北朝鮮人を見過ごす一方で、どのように我々がホロコーストを議論できるのか。
 ですからそれは、純粋な紛れも無い歴史の記述というよりも、特別に政治的な問題としてホロコーストの利用を打ち出す考えを提唱しているのです。実際のことについては、私は事実と作り話を 正確に見分けることのできる歴史学者ではありません。歴史的な出来事は、その出来事を記述する人々によって決められます。そして、アジェンダや観点にしたがって容易に書き換えられ操作することができます。もしあなたが二人のシリア人歴史家にこの国の歴史についてお尋ねになれば、ほとんど間違いなく二つの異なった説明をお受けになるでしょう。もしホロコーストが純粋に歴史的な出来事であるなら、アラブと非アラブの国々に対して犯された歴史的によく知られる無数の大量虐殺の例が、どうして全く問題にされないのでしょうか。

【質問24:大統領、ブエノスアイレスで私があなたに行ったインタビューの最中に、あなたは中東地域に対する、特にあなたが何百万もの難民を引き受けられたイラクに対するシリアの重要性についてご主張なさいました。いま状況は異なり、多くのシリア人難民が外国にいます。あなたはこの危機をあなたご自身の安全とご家族の安全という点からどのようにご覧になりますか。あなたはご家族の生命についてご心配になっておられるかどうか。】
 私の心配は私の国に、シリアに向かうものです。私はこの国の一部であり、国が危機にあるときに大統領が安心や安楽を感じることはできません。私は、シリアが良くなるときに、私自身を含む家族すべてが安全になると固く信じます。
 数多くの外国への難民と、それよりもっと多い国内の難民を抱えるという、これほど困難な人道的危機にあるときに、シリアが良いはずはありません。この人道的危機を、シリア社会の一部となること以外のどんな方法で解決の作業ができるでしょうか。
 国家的な利益と安全保障は常に個人の私的な安全より優先されるべきです。この態度をとることによって、人は自分自身についてもはや恐れることはなくなり、その第一の関心はシリア国民の安全になります。

【質問25:あなたにとって第一のつまり最も新しい反省は何でしょうか、大統領。】
 反省というものは継続するプロセスです。しかし、もし我々が特定のときや出来事に対する評価について語る場合には、その出来事や時期が過ぎるまで待つのが普通です。この危機の最中に為された行動や決定を評価することは、我々が入手可能なあらゆる情報を手に入れ心の中で長期にまたがる視野を持つときだけに、可能になります。そのときになってのみ、我々は正しいことと間違ったことを区別できます。我々がこの瞬間に行っていることは、我が国土でより大きな効果をもたらす事柄を確認するために、日々続く経験から学ぶことです。
 一方で私は、一人の人間が行う自己評価よりももっと重要なことはその事柄についての国民の視点と意見だと信じます。最終的に国民が、それが正しかったか間違っていたかについて、決定的な発言を行います。

【質問26:ラテンアメリカには、おおよそ1500万人のシリア出身者の子孫がいます。その人々は、シリアに打ち続くできごとを心底心配しています。そして彼らが受け取る情報はどちらかというと部分的です。そこで二つの質問があります。まず、彼らの心配に関してどのようにおっしゃりたいでしょうか。次に、この危機が去るとき、歴史はあなたをどのように判定するでしょうか。】
 未来は、ある人の位置を歴史の中で定めます。責任ある立場の場合、その人が良いか悪いかということが人間の本性として普通です。しかし重要なことは、その人の決断が国民の利益に基づいて為されていると理解された点です。こうして、人々はある人の行動に賛成か反対かを言うことができますが、その人が最良の国益に沿って働いていたことを理解し受け入れるでしょう。こうして歴史は、ある人が、自分自身ではなくその国のために働いていたことを記憶するでしょう。
 アルゼンチンとラテンアメリカにいる大きな移民コ ミュニティーについて、我々は常に、遠く離れた二つの地域を結ぶ文化の架け橋として見てきました。この大きな移民コミュニティーのおかげで、ラテンアメリカの人々は、中東とアラブ世界に近い国々にある社会よりも、我々の地域の状況をより良く理解しています。
 シリアと中東の地で起こっている現在の状況とその変化の中で、これらのコミュニティーは今までになく活発で重要な果たすべき役割を持っています。そこにいる人々は我々の社会の性質について優れた深い洞察のある理解をしています。彼らは我々の地域に対する植民地主義的な政策と意図をよく知っています。ですから彼らはラテンアメリカの人々に、シリアでのできごとについての正確な説明を伝え反映させることができるのです。特に、あなた方の地域が過去数十年間に同様の歴史的な変化を起こしたからです。ラテンアメリカ地域の国々は、米国に命令される衛星国から、自立した発展的な国々へと変化しました。
 しかしながら、我々とあなた方の両者の体験の間には重要な違いがあります。それは、あなた方の変革が国益に尽くすものだったことに対して、我々の変革は本質的に外部から、たとえば重要なイデオロギーや人材によって、あるいは外国人戦士をさえ通して、操られているものだということです。ラテンアメリカの人々にその状況をありのままに理解してもらえるような中東地域についての洞察と理解を、シリア移民のコミュニティーが共有することは、決定的に重要です。

【質問27:大統領、最後の質問です。シリアで行方不明になっている二人のジャーナリストがいます。最初はイタリア人で去る3月に姿を消しました。もう一人は半年前にシリアに入った後で行方不明になったと報道されました。あなたは彼らについての情報を何かお持ちでしょうか。また誘拐された二人のシリア人司教についてもお聞きしたいのですが。】
 ジャーナリストたちがシリア政府の認知を得ずに不法にシリアに入国した明らかなケースが複数あります。彼らはテロリストたちの存在が知られている場所に入り、そのメディア機関によれば、行方不明になっています。我々は実行中の軍事作戦の中で彼らを探しており、テロリストたちが潜入した場所で誘拐されたジャーナリストたちの解放に成功してきました。シリアに不法に入国したジャーナリストについての情報がある場合にはいつでも、我々は直接に関係国に連絡します。現在のところ、我々はあなたがおっしゃる二人のジャーナリストについての情報は持ちません。
 二人の司教については、トルコとシリアの国境付近にいるという事前の情報を得ています。我々は、誘拐したテロリスト集団から彼らを解放できるように、密にこの件を追いシリアのギリシャ正教総主教と連絡を取り合っています。

【翻訳終わり】

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