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ファシズムを育てるアメリカ : かつてはドイツ、いまウクライナ!

米欧支援のネオナチによるオデッサ大虐殺


 私は拙訳文「ウクライナのファシズム革命(イズラエル・シャミール著)」の中で次のように書いた。

 今後はウクライナ西部の米欧ファシスト支配地域と東部・南部のロシア語地域に分かれて事実上の内乱状態となり、ウクライナ各地で、かつてのナチ協力者たちの末裔であるファシストどもによって、ロシア系住民・ロシア語圏住民に対する壮絶な弾圧と破壊・リンチが打ち続くことが予想される。そして南部に海軍基地を持つ以上、ロシアは様々な形で積極的な関与をせざるをえなくなるはずだ。プーチンが(そしてNATOが)すでにその準備を進めていることは明らかである。クリミアではすでに前哨戦が始まっている。こうやって世界は加速をつけて「きな臭い時代」に突入していくのだろう。

 この悪夢のような予想が次第に現実味を帯びてきているようだ。ウクライナ南部にあるオデッサ市で、反キエフ政府派のデモ隊がキエフに雇われたネオナチの暴力団と「サッカーファン」ゴロツキどもの襲撃を受け、逃げ込んで立てこもった労働組合会館が暴漢どもに焼き討ちされて、39人が無残に殺された。この日、オデッサ市内で殺害された反キエフ政府派市民は、街頭でファシストどもの銃弾を受けて死亡した者を含め、48人(あるいはもっと多く)にのぼる。

 私はこの事件をスペインのラジオニュースで知って新聞の速報とTVニュースを見たのだが、もちろんネオコン・アメリカにたっぷりと資金を投入されたネオナチとそれに扇動されるならず者どもが中心の「親キエフ政府派デモ隊」について語られることはない。そのうえで「ロシアvsウクライナ」という民族対立の図式で描こうとする意図が見え透いている。シリアで「宗派対立」の印象操作が行われているのと同様である。実際には、今年2月のファシズム(ネオナチ)革命にアメリカから大量の資金が投入され、4月半ばにCIA長官のジョン・ブレナンが直接にキエフに赴き、現在キエフ政府内で何十人ものCIAとFBIの要員が働いている 以上、この紛争が何なのか、火を見るよりも明らかだろう。「アメリカが背後にいる」のではない。アメリカが前面に出ているのだ!

 さすがにカタルーニャの新聞ラ・バンガルディアは、オデッサの悲劇の責任はキエフ政府にあるというプーチンの言葉をいち早く報道しているのだが、他の新聞、特にエル・パイスやエル・ムンドなどのマドリッド系大新聞は、この事件を極力矮小化しインターネット版では3日の夜になるとその記事はほとんど目立たない隅に追いやられている。それも、単に「親ロシア派とウクライナ政府支持派との衝突の中で起こった悲劇」という扱いで、その背景などの分析は行われず、結局はそのような騒動と悲劇の責任はプーチンにある、というように印象付けようとしているのだろう。

 さらに夜の国営TVEニュースでは、例のユリア・ティモシェンコがけが人を見舞いに病院に行った映像(どっち側のけが人かは明らかだが)、および副大統領でネオナチ政党スヴォボダ党首のヴィタリ・ヤレマを登場させ、この事件はロシアによる挑発だという彼らの声を伝えている。もちろんロシア側(「親ロシア」側)の声は流さない。こうやって客観的な報道のふりをして親ファシズムの論調を作っているのだ。これが西側主流メディアのお手本である。

 何語の情報を見ようが(日本のメディアは最初から見る気も無いが)どうせ西側報道機関はそんなものだろうから、こちらとしては、詳しい情報を得たければどうしてもロシア系のRTThe Voice of Russiaなどに頼らざるを得ない。5月3日付のRT記事からいくつかをご紹介する。もちろんこれらにしても「プロパガンダ」の一種には違いない。しかし、実況の映像を含めた情報は、皮相な言葉だけで取り繕って誤魔化す西側主流メディアの戦争プロパガンダよりも、圧倒的に信憑性を持ちうる。

まず「39 people die after radicals set Trade Unions House on fire in Ukraine's Odessa 」。これは全文を訳しておこう。ビデオや写真は新しいタブ(またはウインドウ)で原文を開いてご覧になった方が分かりやすいかもしれない。

(RTのニュースビデオ:)
 39人の反政府活動家がオデッサの労働組合会館で死亡した。ウクライナ内務省の発表では、一部は焼死したが他に窒息死した者や窓から飛び降りた者たちもいる。 建物は親キエフ過激派の手によって炎上させられた。
 金曜日のオデッサでの暴力沙汰で合計48人が死亡し200人近くが負傷したと、オデッサ地域の検察官イゴール・ボルシュリアクが土曜日に語った。
 ウクライナの緊急事態当局によると、オデッサ労働組合会館の火災で39人が命を落とした。
 「31人の死者が建物の内部で発見され、他の8人は外で警察官によって発見された」と、当局の声明は述べる。
  金曜日の血に塗られた衝突の後で、警察は130人以上を逮捕し、計画的犯行と警察官に対する暴力行為を含む10件の犯罪捜査を開始した。
 内務省によると、オデッサで対立したのは、一方に「反マイダン」活動家たち、他方には「ユーロ・マイダン」活動家たちとともにオデッサとカルコフの「サッカー・ファン」がいた。この大規模な騒乱の罪を問う捜査が開始されている。
(写真画像:http://rt.com/files/news/26/30/80/00/odessa_dead_activists2.jpg
 労働組合会館は、親キエフの過激派たちが会館正面にあるオデッサのクリコヴォ・フィールド広場に作られた反政府活動家たちのテント村を取り囲んで破壊した後で、火を付けたものである。会館は、広場にいた一部の反マイダン活動家のデモ参加者たちがビルの中に立てこもった後に、襲撃行為の中で焼かれたのだ。
 犠牲者の大部分は労働組合会館の床の上で発見され、明らかに焼死あるいは煙によって窒息死していた。警察官によると、他の者たちはビルの窓から飛び降りた。
 オデッサでの衝突に関する前の報道は、双方が火炎瓶を、そしておそらくは銃を使用したと述べた。報道によると、親マイダン活動家の一部は過激な右派セクター・グループの印を身に着けていた。
(炎上する労働組合会館のビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=h1b05Xkgudg
(写真画像:https://pbs.twimg.com/media/BmpXVSAIYAAiQvi.jpg
 ビル内部からのUSTREAMの実況ビデオ映像には、濃い煙に包まれ床に血の染みが付いた部屋の周辺に横たわる死体と思われるものの不穏なシーンが映されていた。
 撮影された死体の大部分は衣服にセント・ジョージのリボンを付けており、その犠牲者たちが親ロシアまたは反マイダン活動家であることは明らかである。
 撮影した人物は、上層の階だけで25の死体を数えたと語った。
 この会館が炎に呑み込まれたときに、ツイッターに送られた写真は、人々が窓からぶら下がったり多くの階の窓の桟に座ったりして、おそらく飛び降りる準備をしていた様子を写している。報道によれば、飛び降りた者たちはサッカー・ウルトラたちと右派セクターの者たちによって取り囲まれ殴られた。
(写真画像:https://pbs.twimg.com/media/BmpbBbVCMAEId6H.jpg
(写真画像:https://pbs.twimg.com/media/BmpXpVfIUAAC6jh.jpg

 ビルのそばに立っていた武装警官の列がその暴力を止めるような何もしなかったことを、複数の写真が明らかに示している。警察官たちは自分たちが「武装していない」ので何もできなかったと語ったことが伝えられている。
 立てこもっていた労働組合会館の屋上にとどめられていた活動家たちは救出されて警察署に連れて行かれたと、自称オデッサ共和党党首がRossyia 24に語った。
 屋上にいた活動家の一人が先刻の電話でRTに、女性を含む50人にのぼる人々が一緒にいたと述べた。
(写真画像:https://pbs.twimg.com/media/BmpZlwKIMAALwWf.jpg
 人々が燃えるビルの中で死につつあるときに、親キエフ活動家の一部がツイッターで、「ジャガイモの害虫ども(colorado beetles)がオデッサで火あぶりになっている」と嘲笑った。これはセント・ジョージのリボンを付けた親ロシア活動家に対する蔑称である。何千何万もの人々が実況のUSTREAMで展開していく事件を見ていたのだが、メディア機関のなかでその移り変わる状況を追うものはほとんど無かったのだ。
 ところが、最初の公式の死者数が公表されるや否や、一部の西側メディアと指導者たちは、大急ぎで、親キエフ活動家たちがその事件で果たした役割を明らかに小さく扱い、逆に彼らと対する反キエフ派を非難し始めたのだ。
(ビデオ映像:https://www.youtube.com/watch?v=VdSexaH-ggw
 ロイターはこう書いた。「40人を超える人々が金曜日にオデッサで死亡した。その多くは、親ロシア活動家とウクライナ統一支持者たちが市の南側の港一帯で衝突を続けた後に火を放たれたビルの中で見つかった。
 スウェーデンの外相カール・ビルトはツイッターにこう書いた。「オデッサでの少なくとも38人の死に恐れを抱く。それは親ロシア派がビルを占拠しようとしたときに始まったと思える。」その以前にビルトはCarl Bildt オデッサの街頭での暴力事件で「親ロシア派暴徒」を非難していたのだ。
(画像:ビルトのツイッター:https://pbs.twimg.com/media/BmqCLxfCUAECi6-.jpg

 この記事の中で、武装警官が「おれたちは武装していない」として暴徒の跳梁をほったらかしにしたことが書かれているが、ということは、武装警官隊以上にファシストの部隊が武装していたということになるだろう。

 次はThe Voice of Russiaの記事。これは概略を述べて、一部だけを和訳する。
Ukraine: Odessa declares three day mourning for 46 people burned alive by Right Sector fighters
「ウクライナ:オデッサは3日間、右派セクター戦闘員に生きながら焼かれた46人のために喪に服することを宣言」
 この見出しで「生きながら焼かれた46人」というのは誇張、というか不正確だ。「生きながら焼かれた者を含む」とすべきだろう。記事の中では事件についての記述の前に、オデッサ市当局が「3日間の喪」を発表したこと、ロシア政府が正式にこのオデッサでの事件でキエフを非難したこと、元オデッサ市長が緊急の閣僚会議を要求したことが書かれている。
 事件についての記述の一部を和訳しておこう。

 地域委員会のメンバーでありオデッサ市長候補のアレクセイ・アルブもまた襲われた。
 「我々がビルから外に出たとき、民族主義者たちの群が我々を襲った。約100人の人々が傷つけられたと私は言うことができる。人々は窓から飛び降りたのだ。煙だらけだった。地面に横たわった人々は足で蹴られた。私と、そして活動家の一人ヴァルドもまた、頭にひどい怪我を負った。我々は病院に向かった。その日の朝、我々の活動家イワンが銃弾を受けて負傷した。労働組合会館を襲った右派セクターの連中は十分に装備を持ち武装しあらかじめ準備ができていた。」アルブはこのように語った。彼は病院に運ばれて応急手当てを受けた。

 ここには、燃えるビルから命からがら逃げ出した者に対するリンチ(少なくとも8名が惨殺された)、そしてファシストどもが銃による武装をしていることが証言されている。またこちらの最新記事では、明らかに右翼セクター側の者が燃えるビル内の反政府派に向かってピストルを発射する映像を見ることができる。
Radicals shooting at people in Odessa’s burning building caught on tape
「過激派がオデッサの燃えるビル内の人々を撃っている姿をとらえたテープ」

 そして次の記事にはより詳しい多くの事実を伝える映像と画像が載せられている。訳さないので訪問してビデオと写真をご覧いただきたい。
Odessa slaughter: How vicious mob burnt Ukraine anti-govt activists alive (GRAPHIC IMAGES)
「オデッサの惨殺:極悪の暴徒どもはどのようにウクライナの反政府活動家たちを焼き殺したのか(映像イメージ)」

 ところで、オデッサというと、かつては「ユダヤ人の都市」と言われるほど大勢のユダヤ人が住んでいた。ナチス・ドイツがソ連に侵攻した際に、現在のウクライナ「右翼セクター」の前身であるウクライナのファシスト集団がそれに積極的に協力し、ロシア人と共にユダヤ人に対する大虐殺を繰り広げた(拙訳「ウクライナのファシズム革命」を参照のこと)。特に1941年のオデッサ大虐殺は有名だ。しかし後にイスラエルに移住する者が増えたため、現在ではおよそ100万人の人口の中で3%を占めるにすぎないと言われる。

 ウクライナのナチス協力者たちの蛮行についてはイズラエル・シャミールが次のように述べる。

  そのある参加者の恐るべき告白はヴォリンでの活動を次のように告げる。「ある夜、我々は84人を絞め殺した。我々は大人たちを絞め殺し、そして幼い子供たちはその脚をつかんで振り回し門柱にその頭をぶつけて潰した。・・・二人のかわいい子供、ステパとオリヤはそれぞれ12歳と14歳だったのだが・・・我々はその幼い方の体を二つに引き裂いて、そしてその母親のジュリアを絞め殺す必要はなかった。彼女はショックで心臓が止まって死んだのだ」、など、など。彼らは何十万ものポーランド人やユダヤ人を殺し、恐ろしいバビ・ヤールの大虐殺すらドイツ人の黙認のもとで彼らの手で行われたのだ。それはある意味で、イスラエルの黙認のもとで為されたファランヘのレバノン人ファシストによるサブラーとシャティーラのパレスチナ人大虐殺に似ている。

 そして、当然だが、ウクライナのネオナチ勢力は、一方でアメリカのネオコン・ユダヤ人や地元のユダヤ人富豪の膨大な支援を受けつつ、他方では、ロシア人やアラブ人と共に一般のユダヤ人に対する攻撃と排斥を強めつつある。このファシズム革命が準備段階を迎えた2013年11月にはすでに、y-net誌が「オデッサのイスラエル人は語る:我々はネオナチに攻撃されている」と報道する。もちろんこのイスラエルの情報誌はそのネオナチが誰によって支えられているのかは明らかにしない。さらにユダヤ人コミュニティーの情報誌jns.orgは今年の1月21日に「抵抗運動のさ中、反ユダヤ主義の暴力がウクライナのユダヤ人たちを脅かす」と報道している。また同様に2月25日にはALJAZEERA-AMERICA誌も「ウルトラ・ナショナリストのネオナチ諸党がウクライナで行軍する」と伝え、ユダヤ人とアラブ人がその攻撃の標的になっていると警告した。他のユダヤ系情報誌でも多くの人種排斥の動きが伝えられている。

 ところが、2月にクーデター政権が成立した後になると、y-netは「ウクライナのユダヤ人はロシアの言う『ネオナチ』という主張を退ける」という記事で、あたかもキエフ政府がネオナチ勢力に何の影響も受けていないかのように報道している。まあこれは、アメリカ・ネオコンと共通の下半身を持つ国の報道機関である以上は致し方の無いことかもしれないが。シャミールは次のように言う。

  本来のバンデーラの暴徒たちが邪魔になるあらゆるユダヤ人(およびポーランド人)を殺したのに対して、彼らの今日の後継者たちはユダヤ人からある有効な支援を得ている。ユダヤ起源の大富豪たち(コロモイスキ、ピンチュク、そしてポロシェンコ)は彼らに資金を与え、その一方で有力なユダヤ人リーダーでウクライナ・ユダヤ人組織と共同体協会(the Association of Jewish Organizations and Communities of the Ukraine)の議長であるジョセフ・ジッセルズは彼らを支持し正当化した。イスラエルには大勢のバンデーラ支持者がいる。彼らはいつもバンデーラが反ユダヤ主義者ではなかったと主張するのだ。彼の主治医が(ヒトラーと同様に)ユダヤ人だったからである。ユダヤ人たちは自分たちを標的にしないナチスなら気にもかけないのだ。ロシアのネオナチはタジクの出稼ぎ労働者たちを標的にし、そしてウクライナのネオナチはロシア語を話す人々を標的にしているのである。

 ただし、彼らが標的にしないユダヤ人とは大富豪で自分たちのスポンサーとなるユダヤ人であり、有力なラビたちもまた大富豪たちの手の内にあるのだ。一般の貧乏タレは立派に彼らの標的となる。私が拙訳『ウクライナ・ネオナチ司令部の下で働くイスラエルの特殊部隊(ミシェル・チョスドフスキー著)』の解説の中で書いたようにである。

 99%のウクライナ人の不幸、99%の米国人の不幸、99%のスペイン人の不幸、99%のベネズエラ人の不幸、99%の日本人の不幸、99%のユダヤ人の不幸、…等々はすべて連動しているのだ。「○○人vs非○○人」という対立構造ではなく、あらゆる人種や民族や国民を上下方向に分けて、政治・経済・情報の3方面にわたる支配・被支配の構造を、世界規模で劇的に強化しようとする動きの危険性の方が、もっと本質的なのではないかという感想を持つ。

 一方ではオデッサのユダヤ人たちの中には積極的にこのネオナチ政権と戦おうとするグループもある。こちらの記事とそこにあるビデオをご覧いただきたい。これは2月23日の日付になっている。
Anti-Maidan 23.02. Odessa against takeover by Neo-Nazi in Kiev ? Video
 またこちらには、おそらくユダヤ系の人士によって書かれたと思われる記事がある。
What Makes Odessa Rise in Protest?
 この記事はこの4月29日、オデッサ虐殺の直前に書かれたものだが、《マスコミに載らない海外記事》様による以下の和訳をぜひお読みいただきたい。
オデッサは何故抗議行動に立ち上がっているのか?

 情報紹介の最後に、WSWS(World Socialist Web Site)誌の5月3日付の記事を部分訳してお目にかけたい。
Washington responsible for fascist massacre in Odessa
(ワシントンがオデッサでのファシストによる虐殺の責任を負う)

 オデッサでの非道な行為が起こったとき、合衆国大統領バラク・オバマはホワイトハウスでドイツ首相のアンゲラ・メルケルとの共同記者会見の席で、選挙で選ばれたのではないキエフ政権によるウクライナ東部の庁舎ビルを占拠する抵抗者たちに対する軍事攻撃を、はっきりと奨励した。
 西側メディアがオデッサで起こったことを ― 「事態の正確な推移はまだ明らかではない」と述べる多くの記事を使ってだが ― 覆い隠そうとしているにもかかわらず、この南部の港町で起こった殺害が右翼セクターの目印を持つ暴徒によって引き起こされたことに疑いの余地はない。それは同志であるスヴォボダ党とともにキエフ政権の立場を掲げるものである。
   【中略】
 部分的にアメリカの作戦は、反キエフ派によって5月11日の実施が計画されている自治権の住民投票を妨げる狙いを持つと思われる。それに加えて西側勢力は、5月25日に予定されている大統領選挙を、キエフのクーデター政権に合法性を与える手段と見なしている。最も幅広く推奨されている大統領候補は大富豪の寡頭支配者、ペトロ・ポロシェンコだが、彼はウクライナのNATO加入と、この国を欧州連合とIMFの支配下に置くことを提唱している。
 しかしキエフ政権が反対派の抑圧に失敗するにつれ、ワシントンは、衝突を挑発しておいて次に大統領選実施を妨げたとしてロシアを非難する意図をむき出しにしている。その一方でいま、軍事演習を口実に、アメリカ軍が、ラトビア、リトアニア、エストニアのバルト海諸国およびポーランドで、ロシア国境に向けてNATO勢力を動員しながら展開しているのだ。

 アメリカが19世紀末以来、世界各地で独裁とファシズム、マスコミによるプロパガンダを駆使してその支配権を広げ大規模な戦争策謀を行ってきたことは動かしようの無い歴史的な事実である。アメリカの支配者どもはかつてヒトラーとナチスを育て上げ、いままたウクライナでのネオナチ政権をでっちあげることで、ユーラシア大陸を戦乱の巷に陥れようとしている。

 ファシズムにとって最も欠かすことのできないものは、ヒトラーやゲッペルスに言われるまでもなく、
平然と嘘をつくこと、信念を持って嘘をつきとおすこと
である。
 歴史上最大の嘘は、おそらく世界中の学校の歴史教科書に書かれていることではないか。第2次世界大戦はファシズムと民主主義との戦いでありアメリカを中心とする民主主義勢力が勝利した、という、アレだ。そんな大嘘を「正当な歴史観」とし、それに対する疑いを(悪意を込めて)「歴史修正主義」と呼ぶのなら、私は喜んで「修正主義者」と言われよう。何よりも現在の事実が歴史観の修正を求めているからである。


2014年5月4日 バルセロナにて 童子丸開

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