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ウクライナ・ネオナチ司令部の下で動く

イスラエルの特殊部隊


 現在、スペインでは、欧米の帝国主義者たちの尻馬に乗っかってウクライナの「新政権」支持を明確にするラホイ政権が、カタルーニャの分離・独立運動を阻止するためにウクライナを引き合いに出して「国家の主権と統一」を叫んでいる。つまり、カタルーニャのスペインからの分離と、クリミアのウクライナからの分離を同一視して、どちらも敵視するということだ。カタルーニャ問題はともかく、彼らの目には、ウクライナの正当で合法的な選挙によって選出された大統領を暴力的に追い出して国家を簒奪することが、一も二も無く「民主的」に映る らしい。その観点からでは、強盗が一家の主人を(少々悪賢い主人であるにせよ)脅迫して追い出すことが合法的であり、その強盗の被害から身と財産を守ることが非合法、ということになる。このすさまじいまでの倒錯ぶりは、現代という時代の最も大きな特徴なのだが、大部分の人にその倒錯が意識されないくらいに、現代世界はすべてがあべこべの「超常世界」なのだ。

 まあ、マドリッド政府は紛れもなく、大多数の国民からなけなしの資産をむしり取ってトロイカ大親分に「上がり」を差し出すコソ泥集団の利益代表部(こちらを参照のこと)に過ぎないから、そんな対応ぶりも特に奇異なことではあるまい。しかし、それにしても、ウクライナの簒奪・強盗政権を美化・正当化しロシアの悪魔化に余念の無い新聞やテレビの報道ぶりは、昨年の対シリア集団ヒステリー、10年以上前の911事件‐アフガン侵略時やイラク戦争前夜のマスコミ総発狂の再現にほかなるまい。よほどこの世界を戦争に引きずり込みたいのだろう。要は、この世界を資本主義の野獣の餌場に作り変えようとする強盗集団の、金力・暴力・情報力の総力を挙げた戦いなのだ。(先日、シリアでアルカイダ系テロ組織ISILに誘拐されていたスペイン人新聞記者が、釈放されて無事に戻ってきたが、シリアのいわゆる「反政府勢力」の主力がテロ組織による国外からの介入であることがチョンバレになってしまい、いまのところはあの集団ヒステリーは収まっているのだが。)

 今回お知らせするのは、このウクライナ強奪に強盗集団の親分格であるイスラエルが関与する可能性を示唆した“Ukraine: Israeli Special Forces Unit under Neo-Nazi Command Involved in Maidan Riots” (By Prof Michel Chossudovsky Global Research, March 03, 2014)の和訳(仮訳)である。
http://www.globalresearch.ca/ukraine-israeli-special-forces-unit-under-neo-nazi-command-involved-in-maidan-riots/5371725

 イスラエルが近年の様々な軍事的な動乱に積極的に手を出していることは、シリア情勢でも指摘されている(こちらを参照のこと)のだが、いまのところ、ここで紹介されるウクライナ在住のユダヤ人で元イスラエル国防軍兵士が、直接にイスラエルから指示を受けてウクライナでのクーデター劇に参加した証拠は無い。しかし、常にロシアとイランを敵視して周辺諸国の政権転覆活動にからみ戦争政策を追求するこの国が、今回のウクライナをのんべんだらりと眺めていたとも考えにくい。何せイスラエルは、今回のウクライナ・クーデターを実質的に支援・指揮した米国ネオコンと表裏一体の存在なのだ。

 その真相が世界の大手メディアで明らかにされることはあるまいが、このグローバルリサーチ誌記事で紹介される事実は、先ごろ一部のマスコミで伝えられた「マイダン広場で多くの人々を射殺した狙撃手は反政府側に雇われていた可能性が高い」という情報にも対応するかもしれない。それが高度な軍事訓練を受けた者たちであるからだ。ここで、日本の新聞記事(インターネット版)の一部をご紹介しよう。 (これらの記事は一定期間後にネット上から消されるだろう。)

「スナイパーの背後にいるのは新政権だ」 EU高官の電話会談、ネットに流出
 「スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチではなく新政権の誰かだ」−。先月中旬にウクライナの首都キエフでデモ隊と警官隊の衝突で90人以上が死亡した騒乱をめぐり、欧州連合(EU)のアシュトン外交安全保障上級代表とエストニアのパエト外相が電話会談した際の2人の会話内容とみられる録音ファイルが5日、動画サイト「ユーチューブ」に流出、双方ともに対応に追われる事態になっている。《中略》
 録音内容によると、パエト氏がキエフを訪れた際に、負傷者を治療した女性活動家から話を聞き、アシュトン氏に「スナイパーの背後にいるのは新政権の誰かという見解が強まっている」と説明。アシュトン氏は驚き、「調査しなければならない」と返した。 《後略》 (産経ニュース:http://sankei.jp.msn.com/world/news/140306/erp14030609030002-n1.htm

ウクライナ:「新政権側が狙撃か」エストニア外相が指摘
 《前略》パエト外相はキエフを訪問した翌日の2月26日にアシュトン外相と電話協議。20〜21日に発生した狙撃事件で、反政府デモ参加者と治安要員の双方が、「同じ複数の狙撃手に殺害された」と地元の医師に聞いたと発言。事件の背後にいるのは「ヤヌコビッチではなく、新連立政権の中の誰かだという見方がますます強まっている」と述べた。また新政権が真相解明に消極的だとも明らかにした。アシュトン氏は「調査が必要だと考えている」と応じた。 《後略》 (毎日新聞: http://mainichi.jp/select/news/20140306k0000e030261000c.html
 このニュースは英国インディペンデント紙デイリーメール紙などを除く大部分の西側商業メディアによって無視されたのだが、日本で、それも常日頃なら西側にとって不都合な情報に頬かむりする産経ニュースが報道したことは興味深い。そしてスペインでは、これまた驚いたことに、マドリッド中央政府の広報機関と化している国営RTVEのTVニュースで紹介されていた。これらは、今回の怪しげなウクライナ・クーデター騒動に西側勢力の中でもかなりの動揺と困惑があることを示しているのかもしれない。うがった見方をすれば、米国ネオコンの強引さにあんぐりしているEU側が意図的にリークさせたことも考えられる。

 12年前のベネズエラでのクーデター未遂の際に起きたデモ隊射殺事件でも、西側報道がそれを全てチャベス側の責任にしたのだが、後にそれが反チャベス側からの発砲であることが明らかになった。これにはCIAが深く関与していただろう 。そして近いうちにベネズエラで全く同様の事態が発生し、西側メディアはマドゥーロ政権を大喜びで全力を挙げて非難することになると思われる。現在、そのための「地ならし」が大商業メディアと無数のソーシャルメディアを使って行われている最中だ。今回のウクライナの場合もほぼ間違いなく反乱側のものだろうが、しかし、もしその狙撃手がイスラエル関係者なら、アシュトン女史が必要な調査をすることは極めて困難だろう。マスコミがそれを許すまい。

 前置きが長くなって申し訳ないが、もうひとつだけ。著者のチョスドフスキーは自らがユダヤ系だけあって、やはりユダヤ人社会を心配し、ナチス協力者の衣鉢を継ぐ勢力と手を組む一部ユダヤ人の「裏切り行為」に憤懣やるかたない様子だ。しかし私のような非ユダヤ人は事態をもう少し冷静に眺めてみたい気がする。日本人が日本人を食い物にして殺し、スペイン人がスペイン人を食い物にして殺し、米国人が米国人を食い物にして殺し、ユダヤ人がユダヤ人を食い物にして殺し、…、そしてより広い地域を食い物にするために異なる国民・民族どうしを対立させ憎しみ合わせ殺し合いをさせる…、そんなことが人類の歴史の中では(特に近代・現代史では)むしろ普通だったのではないか。

 ポール・クレイグ・ロバーツによれば、ギリシャやスペイン同様にウクライナでも(「マスコミに載らない海外記事」様の和訳はこちら)、EUとIMFが待ってましたとばかりに強要する緊縮財政策によって、高齢者の年金受給額が半減させられ公務員の大量首切りが始まり、教育や福祉がずたずたに切り捨てられようとしている。時を同じくして米国では(「マスコミに載らない海外記事」様の和訳はこちら)、「雇用も経済も平和も生活も見込みなし」の状態がいっそう強化され恒久化されつつある。スペインでは昨年1年間で労働賃金が6%も減少し、政府の必死の統計誤魔化しも空しく失業者が460万人を下回ることはない。…。日本ではどうだろうか?

 99%のウクライナ人の不幸、99%の米国人の不幸、99%のスペイン人の不幸、99%のベネズエラ人の不幸、99%の日本人の不幸、99%のユダヤ人の不幸、…等々はすべて連動しているのだ。「○○人vs非○○人」という対立構造ではなく、あらゆる人種や民族や国民を上下方向に分けて、政治・経済・情報の3方面にわたる支配・被支配の構造を、世界規模で劇的に強化しようとする動きの危険性の方が、もっと本質的なのではないかという感想を持つ。

2014年3月10日 バルセロナにて 童子丸開

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ウクライナ:ネオナチ司令部の下で動くイスラエルの特殊部隊がマイダン反乱に参加
ミシェル・チョスドフスキー教授 著
2014年3月3日、グローバルリサーチ誌

画像 ‐ ネオナチ武装部隊

 「キエフで、あるイスラエル軍退役軍人が街頭での戦闘部隊を率いる」という見出しを掲げて、ユダヤ通信社のJTAは、イスラエル国防軍(IDF)の兵士たちが、ネオナチであるスヴォボダ党の直接の指揮の下でユーロ・マイダン抵抗運動に加わっていたことを確証している。スヴォボダ党は第2次大戦中のナチ協力者ステパン・バンデーラの足跡に従っているのだ。

「マイダンの青ヘルメット団」の指導者はDelta、これは「ウクライナ革命に参加したユダヤ人主導の軍事部隊の戦闘司令官の名前」である。Deltaは悪名高いGivanti歩兵旅団の退役軍人だが、この部隊は、ガザに向けて行われた数々の軍事作戦に参加したが、その中には2008〜09年のCast Led作戦も含まれる。

 Givanti旅団はガザ近隣のテル・エル‐ハワでの虐殺の首謀者だった。Deltaは、ユーロ・マイダンIDF部隊のリーダーだが、Givanti旅団のShu’alei Shimshon偵察部隊の中で市街戦の技能を磨いたことを認めている。


Deltaは、ウクライナでの市街戦部隊のユダヤ人司令官としての戦士名だが、今月初期にキエフで写真に撮られている(「Delta」の厚意による)

 JTAの記事によると、Deltaは多くのイスラエル国防軍(IDF)の退役軍人を含む40人の男女からなる軍団の指令にあたった。ユーロ・マイダンでDeltaは、イスラエルでパレスチナ人に対して用いていた市街戦の能力を日常的に発揮していた。

 Deltaが指揮するマイダンの「市街戦ユニット」は政府の治安部隊との対決に加わった。ユーロ・マイダンの戦闘ユニットがイスラエルにあるIDFの部隊司令部と連絡を取り合っていたのかどうかは、この記事からでは明らかでない。
 この青ヘルメット団は非ユダヤ人の35人の男女を含むが、彼らは5人の元IDF兵士に率いられていると、30代後半の純然たるユダヤ人【訳注】のDeltaは語る【訳注:原文ではan Orthodox Jewだが、本来の宗教的な正統派ユダヤ教徒(Orthodox Jew)は兵役を拒否している。したがってここでは「純然たるユダヤ人」と訳した。】

 Deltaは、1990年代にイスラエルに移住したのだが、何年も前にウクライナに戻っていた。…彼は、政府の治安部隊による学生抵抗運動に対する暴力を目撃した後、11月30日に抵抗運動に自主的に参加したと語る。

 「私は、非武装で何の軍事的な背景も持たない市民たちが十分に装備された軍事装置によって地に打ち倒されるのを見た。それが私の血をたぎらせたのだ」。DeltaはJTAに対して、ヘブライ語で軍事専門用語をちりばめながら語った。「そこで私はこれに参加し、私が身に付けたやり方、市街戦の戦術を通して学んだ方法を思い出して戦いを始めたのだ。人々は従ってくれ、そしていつか私は若者たちの小隊を率いるようになった。本当にごく若い者たちだ。」

 他の元IDFの歩兵たちは、退役軍人に率いられていることを聞きつけた後で青ヘルメット団に参加したと、Deltaは言った。
 激しく皮肉なことに、イスラエル国防軍の軍事ユニットの司令官だったDeltaは、ネオナチ党のスヴォボダから直接の指令を受けていたのだ。

 小隊長としてDeltaは、スヴォボダと連結する活動者たちから指令を受けている。それは、たびたび反ユダヤ主義で非難されるウルトラ・ナショナリスト[ネオナチ]党であり、そのメンバーは反対派の抵抗者たちを組織する中心的な位置にいると言われている。

 「私は[スヴォボダには]所属していないが、彼らのチームから命令を受けている。彼らは私がイスラエル人でユダヤ人であり、元IDF兵士であることを知っている。彼らは私のことを『兄弟』と呼んでいる」と彼は言う。「スヴォボダについて言われていることは誇張だ。私は事実としてそれを知っている。私は彼らが無定見であるのが好きではないが、それは[いかなる]反ユダヤ主義によるものでもない。」
 テルアビブ政府もイスラエルのメディアも、この、ユーロ・マイダンの抵抗がネオナチによって率いられていた事実について、何の関心も表わしていない。

 ネオナチによって構成される新たな政府の形成とともに、キエフのユダヤ人共同体は脅威にさらされている。この共同体は「何十ものユダヤ人組織と施設を持つ世界で最も活発なユダヤ人共同体の一つ」として描かれている。この共同体で重要なことはホロコースト生存者の家族メンバーによって構成されている点だ。「ウクライナ占領の最中にナチスによって300万人のウクライナ人たちが殺害されたが、そのうち90万人がユダヤ人だった。 (indybay.org , January 29, 2014)」

 「それはでたらめだ。私は抵抗運動の間中、どんな反ユダヤ主義的な表現も見なかった。」

 激しい捻じ曲がりなのだが、ユーロ・マイダン青ヘルメット団IDF(イスラエル国防軍)ユニットは、イスラエルのメディアによる称賛の対象となっている。ワシントンに本部を置くヘリテッジ基金のアリエル・コーヘンによると、「スヴォボダがこの革命で指導的な地位にいることは秘密ではない」。ネオナチ・スヴォボダの指揮下にイスラエル兵士たちが加わったことは関心の対象とは映らないのだ。

 水曜日にロシア議会の議長セルゲイ・ナリシュキンは、ウクライナの過激派グループによる反ユダヤ的な発言について心配していると語った。しかしDeltaは、ウクライナ革命を貶めるためにクレムリンが反ユダヤ主義カードを偽って使っていると言う。そのことがロシアの勢力圏からウクライナを遠ざけているのだ。

「それはでたらめだ。私は抵抗運動の間中、どんな反ユダヤ主義的な表現も見なかったし、それと逆の主張があったことが、私がこの運動に参加した理由の一部なのだ。我々はユダヤ人たちが心配していることを示そうと心掛けている」と彼は言った。
 ステパン・バンデーラを称えるスヴォボダと右翼セクターの戦闘員を見よ(下の写真)。

 バンデーラは、第三帝国のEinsatzgruppen(工作集団、雇われ集団)に属するナチ協力者だった。これらの「工作部隊」はウクライナ中に配置された準軍事的な殺し屋部隊だったのだ。


ステパン・バンデーラを称えるネオナチ

 JTAの記事はこちらで見ることができる。
www.jta.org/2014/02/28/news-opinion/world/in-kiev-an-israeli-militia-commander-fights-in-the-streets-and-saves-lives#ixzz2uvYcMBEl

【訳出、ここまで】

 
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