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RT紙の注目記事全訳

プーチン:誰も「新たな冷戦」を望んでいない


 前回私はイズラエル・シャミールの文章の和訳と私からの説明「動乱のウクライナ:戦争はいつでも起こりうる」を公表した。そしてその後、いくつかの新たな事態が登場してきた。

 まず、ウクライナ東部の
ドネツクとルガンスクの両自治体がキエフ政府からの独立とノヴォロシア共同体(Novorossiya union)の創設を宣言した。これは5月25日に行われたウクライナ大統領選挙に対する拒絶であり、いかに「合法」「正当」を装っても、あのネオナチ(およびアメリカ人やイスラエル人の私兵)の武力を使って正当に選ばれた大統領を追放した非合法で不当なクーデターの延長にあるファシスト政府とは、自分たちの存続をかけて戦うという、両州住民の固い決意を表わしたものだ。

 次に、ウクライナ大統領選挙で、表向きはチョコレート屋のオヤジ、実際には国の資産を盗み取り、武器や麻薬の密輸、売春を通して巨額の私財を為す大悪党、そして先日
自分の息子をウクライナ最大の天然ガス生産企業の重役にしつらえたジョー・バイデンやこのファシスト・クーデターの事実上の頭目ヴィクトリア・"Fuck EU"・ヌーランドの大のお気に入りである、ペトロ・ポロシェンコが選出された。(この人物についてはこちらの「マスコミに載らない海外記事」様の翻訳をご覧いただきたい。)

 今後、ウクライナで本格的な内戦が開始され、そこにNATOとロシアが武力介入し、それが世界の大動乱の開始を告げることになるのかどうかは分からない。前回のシャミールの記事にもあったように、いつでもそうなりうるし、アメリカの戦争亡者どもは是が非でもそうしたいと願っていることだろう。しかしそれでもなお、ロシアや中国、そしてヨーロッパの一部勢力の努力と工夫によって、最悪の事態だけは回避される可能性はあるのだろう。前回の注釈でにも書いたとおり、5月21日にロシアと中国が、
4000億ドル分に当たりしかも30年間という歴史的な規模な天然ガス取引の契約を、しかも決済にドルを使用しない形で結んだ。このようなことが、どんな文字面の協定や条約よりも強力に世界の現実を動かす力を具体的に作ることになる。(日本人の運命もこれらのようなことで左右されるのだが、ノーテンキな日本人がどこまでその点を意識しているのか、私は極めて疑問に思っている。)

 今回の和訳(仮訳)は以下のRT記事のものである。
http://rt.com/news/161296-putin-new-cold-war/
Putin: I don’t think new Cold War will start, no one wants it ( Published time: May 24, 2014 13:47)

 前回のシャミールの記事には、ロシア大統領ウラジミール・プーチンの姿勢と考え方が推定されていた。作者のシャミールはプーチンとは語り合ったことがないだろうが、その側近の実力者とは接触を持っているようである。そこで作者が述べている大統領の考え方が、このRT記事に書かれてある大統領自身の発言を見るならば、非常に正確に言い当てられていたことが確認されるだろう。さらにプーチンは、シャミールがその記事を書いて以降に中国とのガス取引契約を結んだ。彼は相当の確信を持って全面戦争の回避を語っているものと思われる。

 しかし未だ我々が最大級の危機の入口に立っていることに間違いはない。今後も鍵になるような動きやその解説が出るたびにお知らせすることにしたい。

2014年5月25日 バルセロナにて 童子丸開

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プーチン:私は新たな冷戦が始まるとは思わない、誰もそれを望んでいない

RT 2014年5月24日

【写真:サンクトペテルブルグのコンスタンチノフスキー宮殿で行われている国際経済フォーラムの席上で、横に並ぶ主要報道機関の責任者と語り合うウラジミール/プーチン大統領(右) (RIA Novosti / Michael Klimentyev) 】
http://cdn.rt.com/files/news/27/61/00/00/putin-5.si.jpg

 ロシアの大統領は、新たな冷戦は起こりそうにもないと信じている。誰もそれに興味を持っていないからだ。ウラジミール・プーチンはクリミアの件を、西側が使おうとしていた「力の言語」に対する「合理的な対応」だったと言及したが、それは二度と繰り返すべきではないと語った。

 彼はサンクトペテルブルグでの国際経済フォーラムで世界のメディアの責任者たちと語り合った際に、「私は実際に、これが新たな冷戦の開始であるとは考えたくない」と言った。「私はそんなことは起こらないと考える。」

 この「新たな冷戦」というレトリックは、ウクライナ危機を巡る情勢が次第に厳しくなり始めるにつれ、西側諸国で流行してきた。

 ウクライナで武力によるクーデターを扇動した者たちはそれに続く結果について完全に理解しておくべきだったと彼は強調した。

 彼は「キエフで武力によるクーデターを扇動してきた者たちは、もしその者たちが本物のプロフェッショナルであるとしたら、その不法な野望の結果について考えておくべきだったのだ」と言い、「ウクライナで起こったことがそれ自体の否定的な結果を伴う前例となるだろうが、」それでもなお「武力の行使という方法」よりは、「国際法規に対する誠実な態度と相互利益に基づいた合意点の実行を蘇らせるかもしれない」という希望を語る。


「ロシアは、単にベンチに座って他人の言うことを聞くだけにはならないだろう」

 クリミアに対するロシアの行動に触れてプーチンは、それがそのロシアの一部分にとって合理的な対応だったと語った。

 「我々は、(西側が)我々に対して力の言語で語ろうとし、そして我々は、同じ論理を使って、合理的な解答を与えた。しかし私はこんなことが決して、いかなる状況においても、どこででも再び起こらないことを希望する。」このようにプーチンは述べた。

 協力関係、特にアメリカとの協力については、ロシアは「単にベンチに座って他人の言うことを聞くだけにはならないだろう」。

 「それはロシアが同意するような役割ではない。」プーチンは関係諸国の利害を計算に入れることの重要性を強調しながら言った。しかし相互の関係の中には「超えてはならない一線」があると述べた。


【写真画像:
http://rt.com/files/news/27/61/00/00/p-1.jpg

 特にロシアとアメリカの関係で、クリミアは「まさにその一線だった」とプーチンは指摘した。

 「手段は使われてこそ価値を発揮する。」と彼は言う。「もし我々が相互の作業のために場を持つとすれば、それはみんなで茶やコーヒーを飲むための場ではない。解決と約束を見出す場なのだ。」

 この点についてプーチンはまた、カナダからやって来たウクライナでの危機に対する反応を指摘した。

 「カナダの位置はどうかといえば、それはアメリカの伝統的な親しい同盟国であり、ここで我々が驚くようなことではない。」彼はいった。「しかしカナダがどこにあり、ウクライナとロシアがどこにあるのか?」このように、プーチンはカナダもアメリカも(ウクライナについて)ロシアが持つような「国益に対する重大さ」を持っていないことを強調しながら付け加えた。

 ロシアの指導者は、ヨーロッパに住む多くの人々がウクライナ危機に対してロシアと立場を共有している という確信を表明している。

 彼は語る。「ウクライナに対するロシアの立場は正当なものであり、ヨーロッパの人々はそれを分かっている。」そして、「ヨーロッパで世論調査をするがよい。私は各国民の多数派がこの件に関する自分たちの政治指導者の姿勢を支持するなどとは全く信じない。私は我々の立場が実に多数の支持者を得ると推定するあらゆる根拠を持っている。」
【訳注:これに関連して、5月13日のRIA-NOVOSTI記事は、ドイツのテレビ局N−TVが行った電話世論調査でドイツ国民の89%がプーチン大統領のウクライナに対する政策を支持しているという驚くべき結果が出たことを報じている。】

 ロシア加入を決めた3月のクリミアの投票後、西側は、プーチン大統領がソヴィエト連邦のかつての国境線を復活させより多くのCISの国々を「付属」させようとしているという懸念を表明した。

 プーチンはそのような野望を否定し、こんな西側での世論は「情報戦争の1要素」に過ぎないと語った。

 「これは間違ったイメージで事実とは対応しないものであり、情報戦争の一つの手段だと私は考える。」そして「彼らは我々にこのレッテルを貼り付けようとしている。我々がソヴィエト連邦の再建を試みているというレッテルをだ。」と彼は言った。

 さらに彼はこう強調した。ロシアは「クリミアの併合を全く考えていなかった。我々の特殊部隊はそこでは活動していなかったのだ。」
【訳注:ロシアがクリミア併合をやむなくされた点については前回のイズラエル・シャミールの記事で分析されていたとおりだろう。】


「ロシアを孤立させることは不可能だ」 

 ロシアに対する西側の制裁措置についてプーチンは次のように語った。「彼らは全くもって非生産的だと思う。それは実際にある問題への公正な態度に基づくものではなく、ロシアの国際関係の発展に口を挟みたいという願望に導かれたもので、国際法にも相互の利益にも一致しないものだ。それらは間違いなくロシアの利益には合っていない。」

【写真画像:
http://rt.com/files/news/27/61/00/00/p-2.jpg

 ロシアを孤立させることは「不可能だ」とプーチンは強調した。そして、ロシアとアメリカおよびEUとの間には「相互の依存関係」が存在すると付け加えた。

 「おそらく、世界経済にあるより複雑な状況の中で、双方が被害を、しかも小さくない被害を被るかもしれない。誰がそれを必要としているのか?」プーチンは言う。「可能性ある結果は、誰にとってもネガティブなものであり、ヨーロッパの、ロシアの、そして世界の経済を誰もが望まない混乱したプロセスに導くかもしれない。」

 実際に「ウクライナで起こった出来事のいくつかはロシアの利益を脅かしている。何よりも国家安全保障上の問題だ。」と彼は強調した。

 プーチンは、特にNATOの行動の激化と、ウクライナのNATO加入承認の可能性について触れた。

 「これは承認にとどまらず、クリミアを含めたウクライナ領土での攻撃的なシステムの展開にまでつながっていたのかもしれない。」そして「もしこれが起こっていたならば、ロシアにとって深刻な政治地政学的結果をもたらしていただろう。そして我が国は黒海地域から追い出されていたかもしれないのだが、ロシアはそこに存在する正当な権利のために何世紀も戦ってきたのだ。」と述べた。


「これは王国のやるべきことではない」

 関係諸国の国益に焦点を当てることが関係を強化し効率的に作業するための鍵を握るとプーチンは指摘した。イギリスとの関係について触れながら彼は、このことが関係を結び双方が「他のどんな考え方にでもなく国益に」従うための方法であるとすれば、モスクワとロンドンは「過去に遡って」そうであったような協力関係を維持するだろうと語った。

 「我々はおそらく複数の新たな地平に達し、共に効率よく作業するためにこれから先に何を行うかについて考えるだろう。」このようにプーチンは言った。

 チャールズ皇太子がプーチンをヒトラーになぞらえたことについて問われたとき、彼は、それについて何も聞いていないと言った。しかしもしそのことが事実なら、それは「受け入れがたい」そして「間違っている」と述べた。

 「彼はいままで我が国に複数回訪れており、もし彼がそのような比較をしたのなら、それは受け入れがたいものであり、私は彼が礼儀正しい人物だと信じている。」プーチンは語った。「私は、他の王家のメンバーと同様に、彼とは個人的に会った。これは王国のやるべきことではない。」

【ビデオ:チャールズ皇太子によるヒトラーとの比較について言及するプーチン 
https://www.youtube.com/watch?v=5a9G6XMRA3k


【引用、翻訳、ここまで】

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