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姿を変えるアメリカの帝国主義戦争


 今年(2013年)12月24日、バルセロナの自宅でカタルーニャ公営TV3のニュースを見ていて、思わず「何!?」と叫んでしまった。画面には日本の皇居で行われた天皇誕生日の祝賀の様子が映されていたのだが、それだけなら大したことではない。立憲王政国家のスペインで、天皇の誕生日を祝う風景がさほど違和感をもって見られるわけもない。私の驚きは、祝賀の画面の直後にその前日に行われた記者会見の一部が放映されていたことによる。(次のリンクはTV3ニュースのビデオ。カタルーニャ語なのでアナウンサーの説明が分かる人はいないだろうが。)
     Emperador del Japó celebra els 80 anys(日本の天皇が80歳の誕生日を迎える)
     http://www.324.cat/video/4829044/altres/Emperador-del-Japo-celebra-els-80-anys

 その中で、明仁天皇は「80年の道のりを振り返って、特に印象に残っている出来事という質問ですが、やはり最も印象に残っているのは先の戦争のことです。」と語り、画面にはカタルーニャ語の字幕があったのだが、「先の戦争」の部分はやはり「la Segona Guerra Mundi(第二次世界大戦)」と訳されている。その後画面はいきなり、今年11月に着任したキャロライン・ケネディ駐日大使が皇居を訪問して信任状を天皇に奉呈したときの画面に移る。アナウンスは「明仁天皇は先ごろ、暗殺されたジョン・F.ケネディの娘キャロライン・ケネディが駐日大使に就任した際に彼女を皇居に迎えた。(画面が福島原発の映像に変わる。)また彼はフクシマ核事故の結果に対する憂慮、(札を数える商店主の映像)経済不況からの回復と(オリンピック誘致を喜ぶ人々の映像)そのシンボルとなるオリンピック開催への期待を述べた。」

 このTV3のニュースはスペインの中でも特に世界情勢に敏感なのだが、天皇の語った内容の途中、「戦争」と言った直後にいきなりケネディ大使の姿をはさむという編集には、何か非常にデリケートな意味合いが含まれているように見受けられた。明仁天皇の記者会見での言葉は次のサイト(朝日新聞)にあるのだが、
     天皇陛下の会見全文
     http://www.asahi.com/articles/ASF0TKY201312220201.html
先ほどの言葉に続いて天皇は次のように語っている。「私が学齢に達した時には中国との戦争が始まっており、その翌年の12月8日から、中国のほかに新たに米国、英国、オランダとの戦争が始まりました。…」。

 TV3の編集部は、かつて米軍にキューバへの攻撃を思いとどまらせた故ケネディ大統領のイメージをその忘れ形見に重ね、米国政府が日本の軍事的野望にくぎを刺し中国との戦争を思いとどまらせようとしている光景でも思い描いているのだろうか。ニュースでは「中国との戦争」を語る明仁天皇は放映されていないが、この非常に微妙な時期に彼は「中国」という言葉を2度も使って「先の戦争」が何よりも中国との戦争であったことを語っている。原稿を書いた宮内省にどこかからの圧力があったとも考えられるが、しかし、これらの言葉は明仁天皇自身の強い意志で出されたように、私には映る。

 いま欧米各国の報道は、日本に急激に盛り上がる好戦主義と、「特定秘密保護法」などで軍国主義・ファシズム化を強め中国との武装対決の方向に歩み始めていることに、強い関心を示している。この天皇誕生日のわずか1週間前の12月17日に新たな防衛大綱が発表されたときには、
     
Japan to bolster military, boost Asia ties to counter China
     (ロイター:日本、中国に対抗し軍備を増強、アジアの連携を後押し)

     http://www.reuters.com/article/2013/12/17/us-japan-security-idUSBRE9BG02S20131217
     Japan increases defence budget amid tensions with China
     (英国ガーディアン:日本、中国との緊張関係の中、国防予算を増大)

     http://www.theguardian.com/world/2013/dec/17/japan-increases-defence-budget-tensions-china
 スペインの報道でも、例えばエルパイス紙が国際面のトップとして次のような記事を載せている。
     Japón se rearma para hacer frente a la creciente amenaza militar china
     (エルパイス:日本、軍事的脅威を増しつつある中国に立ち向かうため軍備を増強) ※このse rearma は「再軍備する」とも訳せるのだが…。

     http://internacional.elpais.com/internacional/2013/12/17/actualidad/1387267607_919648.html

 そしてその天皇誕生日の2日後に、あの「靖国参拝」という安部日本国首相の歴史に残る愚行があったのだ。それに対して中国や韓国がここぞとばかりに非難の声を挙げ「報復措置」すらほのめかしたのはもちろんだが、欧米の大手マス・メディアもまた総がかりとも言える異例の激しさで日本政府への疑問と不信を強調した。(もちろんスペインの各TVと新聞は国際ニュースの一番でこれを取り上げていた。)しかし何といっても注目すべきことは、米国政府(大使館と国務省)からほとんど非難にも等しい声明が出されたことだろう。これにはさすがの安部首相も外務省も頭を抱えうろたえている様子だ。それは、もし日本と中国との武力紛争が起こってもアメリカは日本に加勢しないぞ、というサインに他なるまい。

 それにしても多くの疑問が残る。どうして安部首相はこの時期にいきなり靖国参拝を行ったのか。誰が事前にそれを知っていたのか、また誰も止める者はいなかったのか。一方で日本での軍国主義・ファシズムの台頭が、米国オバマ政権とその帝国主義政策の中で、どんな位置を占めどんな意味を持っているのか。はたしてこの米国政府と欧米メディアの態度はいったい何を示しているのだろうか。

 そういった疑問を掘り下げてみるための参考となるだろうが、今回ご覧いただきたいのはジェイムズ・ペトラス(社会学者、ニューヨーク州立大学ビンガムトン名誉教授)の論文の和訳(仮訳)である。この論文自体は12月20日に発表されたものだが、前記のような文脈に置いて考えてみるならば、この訳文の公開は絶妙のタイミングなのかもしれない。
     The Changing Contours of US Imperial Intervention in World Conflicts
     世界の紛争におけるアメリカの帝国主義的介入の形態変化
     http://petras.lahaine.org/?p=1965
 なお、イスラエル‐シオニスト勢力とアメリカの帝国主義的軍事介入の関係については、次のペトラスの文章に詳しく説明されている。長い論文だが、ぜひとも少し我慢していただいてお読みいただきたいものである。
     復刻版:和訳 シオン権力と戦争(ジェイムズ・ペトラス著)
     http://bcndoujimaru.web.fc2.com/fact-fiction/re-zion_power_and_war.html
 この中でペトラスは、イスラエルの利益の為に米国政府の外交政策を支配的に引きずりまわす米国内のユダヤ人勢力をシオニスト権力構造(the Zionist Power Configuration:おそらくペトラスの造語)と呼んでいるのだが、同じ表現が今回の論文の中でも使用される。自身がユダヤ系米国人であるペトラスは米国にあるシオニスト組織のただならぬ正体について最も詳しく知る者の一人だ。

 今回の論文はアメリカの軍事介入の歴史から始まって次第に変化していくその形態について述べているものだが、もちろん現在の日本-中国-韓国とアメリカの帝国主義的世界戦略の関係にも触れている。この文章を書きまとめている時点でのペトラスは、どちらかというとオバマ米国政府が東アジアの方に軍事的野望の展開場所を求めているように考えていたのかもしれない。しかし、たぶんそれを最も望んでいない勢力は、あくまでアメリカを「イスラエル(だけ)のための戦争」に引きずり込みたい者たちではないのだろうか。下記のペトラス論文をお読みになってからご検討いただきたい点だが、その思惑がいま、米国経済を一気の崩壊に導かない為に中国との良好な関係を何とか維持しておきたい米国内の一方の勢力と期せずして一致しているのかもしれない。シオニスト勢力の巨大な影響力の下にある欧米大手マスコミのこの間の反応は、安部に代表される日本の好戦勢力へのバッシングだけではなく、アジアで暴走して余計な事をするなという警告のようにも思える。(あのSWCサイモン・ヴィゼンタール・センターすらが 安部の靖国参拝をおおやけに非難し始めたようだ。これはハンパなことではあるまい。)そして結局アメリカの軍事主義の矛先は再び中東に向けられることになるのだろうか。


 しかしいずれにしても、この論文でペトラスが述べるように、アメリカという現代帝国は、国外よりも自分の内側に最も重大な危機的要因を抱えたまま、恐ろしいまでに慎重な一歩一歩を踏み続けているようだ。それがこの帝国のあらゆる対外政策に決定的な影響を与えているわけだが、一つ間違えると多数の国を巻き込みながら巨大な自爆を起こしてしまうのかもしれない。バラク・オバマもまたとんでもない役柄を引き受けたものだ。ノーテンキなアジアの某国首相(および国民)にはとうてい想像もつかない現実なのだろうが。

【2013年12月28日 バルセロナにて 童子丸開】  ※以下、ジェイムズ・ペトラス論文の和訳
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世界の紛争におけるアメリカの帝国主義的介入の形態変化

2013年12月20日


序:
ベトナム戦争ののちに、アメリカの帝国主義的介入はさまざまな段階を経た。ベトナム戦争終了の直後に、アメリカ政府は、ベトナム解放勢力の手による屈辱的な軍事的敗北に直面し、戦争に疲れ戦争を嫌悪するアメリカ国民の圧力にさらされた。帝国主義的な軍事介入、国内の反対者に対するスパイ活動とクーデター(政権置き換え)の扇動といういつもながらのやり口は下火になった。
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 大統領ジェラルド・フォード、そして特に大統領「ジミー・」カーターの下で、帝国主義の復活が少しずつ、アンゴラやモザンビークやギニアビサウといったアフリカ南部、およびラテンアメリカのネオリベラル軍事独裁の中で、武装した代理人たちに対する隠密の援助という形をとって現れてきた。最初の大規模な帝国主義的介入がカーター政権後半の間に行われた。それには、アフガニスタンの世俗主義政府に対抗するイスラム主義者の反乱への莫大な支援と、サウジアラビアやパキスタンとアメリカに支援される雇われ聖戦主義者の介入(1979年)が含まれる。続いて、レーガン大統領の下でグレナダ(1983年)、ブッシュ父大統領の下でパナマ(1989年)とイラク(1991年)、そしてクリントン大統領の下でユーゴスラビア(1995年と1999年)への、アメリカの直接的な侵略が行われた。

 最初のうちは、この帝国主義の復活はごく少数の戦死者を伴い短期間続く低コストの戦争で成り立っていた。結果として反対の声はほとんどあがらず、それは1970年代初期の巨大な反戦・反帝国主義に比べてはるかに小規模なものにすぎなかった。このアメリカの直接的な帝国主義的軍事介入の復活は、議会と国民の反対に妨げられることなく、1973年から1990年の間の時期に少しずつ段階的になされた。それは1990年代になって加速を開始し、そうして2001年9月11日後に本格的な発進が開始された。

 直接的介入のための帝国主義の軍事的・イデオロギー的な仕掛けは2000年までにしっかりと定位置に据えられていた。それは、長期にわたる大規模な財源の確保と軍事用の人材確保を伴った、様々な地理的設定での持続的な一連の戦争を導いたもので、少なくとも最初のうちは、議会と大規模な国民の反対によっては全く妨げられることがなかった。これらの引き続く戦争の「目的」は主要なシオニスト・軍事主義の企画者によって定められた。それは:(1)イスラエルによるパレスチナの併合に反対してきた政権と国家を(その軍事、警察、文民官僚機構とともに)破壊すること、(2)自立した民族主義的な政策を推し進める、湾岸の王党派傀儡政権に反対するか脅威をもたらす、そして世界中の反帝国主義的な世俗的・イスラム的運動を支援する政権を放伐することである。思いあがり(またはむき出しの人種主義)で盲目状態となったアメリカ政府内部のシオニストたちと文民の軍事主義者たちは、ともに、標的にされた国々での帝国主義諸国に立ち向かう持続的な国民の反抗と武装抵抗の再構築、そして(テロを含む)過激な攻撃の拡散を、全く予期することがなかった。アフガニスタンとイラクで政治権力と同時に国家機構を完全に破壊し、あらゆる軍事と警察の中枢、同時に経済を破滅させたにもかかわらず、帝国は、武装した国民の民族主義的・宗教的そして種族的な抵抗運動(自爆を含む)に直面することとなった。それは何の「出口戦略」も無くアメリカ軍の戦死者を増大させ国内経済への負担を引き上げていった。帝国主義勢力は、軍事介入と占領初期の間にそれらの(警察や官僚や民生などの)構造を計画的に解体した後、独占的な権力と暴力を備え統一された国家の仕組みに支えられる安定した忠実な傀儡政権を作り上げることができなかった。この「政治的空白」が生まれたことは、アメリカ政府内部に組み込まれたシオニストたちにとって何の問題にもならなかった。彼らの究極的な目標がイスラエルの敵を滅ぼすことだったからである。アメリカの侵略の結果として、イスラエルの地域におけるパワーが、イスラエル兵士の誰一人、1シェケル(イスラエルの通貨単位:訳注) たりとも失うことなく、著しく増強された。ブッシュ政権内部のシオニストたちは、占領に伴って起こる問題、特に拡大する武装抵抗の責任を、彼らの「軍事主義の」同僚たちとペンタゴンの「上級の将軍たち」に押し付けた。「任務完了」である。ブッシュ政権のシオニストたちは政権を去り、民間金融部門での華麗な経歴に身を移したのだった。

 オバマ大統領の下で、政権に組み込まれたシオニストの新たな「配役たち」が、イランを標的にして、イスラエルの利益のためにアメリカに新たな戦争の準備をさせるべく登場してきている。ところが、21世紀最初の10年期の終盤、バラク・オバマが大統領に選ばれたときだが、政治的・経済的・軍事的な状況はすでに変わっていた。ブッシュ(息子)の初期の状況と現政権のそれとの対比は衝撃的である。

 「永続する戦争」アジェンダを立ち上げる前の20年間(1980年〜2000年)は、グレナダやパナマやユーゴスラビアでの拡張せず短期間の戦死者の少ない戦争と、アフガニスタンでの代理人による戦争に特徴づけられていた。レバノンや占領地ヨルダン川西岸そしてシリアに対するイスラエルの侵略と攻撃があった。一つのアメリカの大規模な戦争はイラクに対する短期間で限られた戦死者を伴ったものだった(第1次湾岸戦争)。第1次湾岸戦争の後に、サダム・フセイン政府は弱体化させられ、「飛行禁止区域」によって国土は寸断され、そして北部のクルド人傀儡「自治国」が打ち立てられ、一方で「警察による監視」がイラク国家の瓦礫に残された。この国を占領すること以外のすべてがなされたのだ。

 その一方で、アメリカ経済は相対的に安定しており、貿易の赤字もやりくり可能だった。実際の経済危機はまだ先のことだった。軍事費の支出は制御可能に思えた。当初第1次湾岸戦争を嫌悪した米国世論はその期間の短さとアメリカ軍の引き揚げによって「安堵させられた」。イラクは、政府が北部の支配を取り戻そうとするたびに何度も繰り返されるアメリカの爆撃とミサイル攻撃による領空監視の下に置かれた。この期間中イスラエルは自国の兵士を失いながら自分自身の戦争を行い、代償の大きな南部レバノンの占領を維持しなければならなかった。

 21世紀の第2の10年期までにすべてが変化していた。アメリカは、カブールに安定した傀儡政権を据える望みもほとんどなく、アフガニスタンでの13年間も続く戦争と占領の泥沼にはまっていた。大がかりな占領と武装した国民の反乱、そして民族・宗教紛争の復活を伴った対イラクの7年間の戦争(第2次湾岸戦争)は、結果として多くの戦死者とアメリカの軍事支出の破滅的な増大をもたらした。国家財政と貿易の赤字は指数関数的に膨れ上がり、一方で世界の市場におけるアメリカの株は下落した。アメリカに代わって中国が、ラテンアメリカやアジアやアフリカの第一の貿易相手国となった。「低密度」の戦争の新たなシリーズがソマリアやイエメンやパキスタンで開始されたが、それで軍とアメリカ財務省の垂れ流しが終わるという予想は全く示されていない。

 アメリカ国民の圧倒的多数が生活水準の低下を経験しており、いまや、海外での戦争の費用が自分たちの貧困化と治安の低下をもたらす明らかな要因であると信じている。2008年から2009年にかけての経済破たんの期間中に行われたウォールストリートの銀行に対する何兆ドルもの公金注入が、金融エリートといっしょに軍事主義・シオニスト・エリートへの国民の支持を突き崩してしまった。しかし彼らは相も変わらずさらなる帝国主義戦争を推し進めている。

 イスラエルの利益のために新たな戦争を立ち上げるアメリカ帝国エリートの能力は、2008〜09年の経済破たん以来大幅に低下してきている。支配する者と支配される者とのギャップは広がってきた。外的なテロリストの脅威ではなく、国内的な経済事情が心配の中心事になってきた。国民は中東を際限なくカネを食う戦争の場であり国内経済に何の利益ももたらさないとみなしている。アジアが、貿易、成長、投資、そしてアメリカ人の職の主要な源となってきた。ワシントンがその国民の視点を無視し続ける一方で、積もり積もる不満が衝撃力を持ち始めている。

 ピュー・リサーチセンターによる2013年終盤での報告が、エリートの意識と世論との間の広いギャップを明らかにする。このピュー財団は支配階級の調査機関であり、重要な政治問題を避けるようなやり方で質問を提示する。にもかかわらず、その報告に示された反応は明白なのだ:圧倒的な差(52%対38%)で、国民はアメリカが「国内の自分自身のことを気にかけるべきであり、他国にはその国自身にできる最良のことをやってもらうべきだ」ということに賛同する。このことは、アメリカの帝国主義的武装介入に対する公衆の反対が顕著に増大していることを表わしており、この2013年の52%は2002年の調査による30%と激しい対比をなしている。同時に行われたエリートの政策アドバイザーたち、つまり外交問題評議会(CFR)メンバーへの調査は、アメリカの公衆と支配階級とのギャップを浮き彫りにさせている。 エリートたちはピューの報告で「断固とした国際主義者(帝国主義者―介入主義者)の外見」を持っているように描かれる。アメリカ国民は明らかに「貿易」と「グローバリゼーション(帝国主義)」を区別している:公衆の81%が職の源として「貿易」を好んでおり、一方で73%が「グローバリゼーション」に反対している。人々はそれをアメリカ企業が海外の低賃金の地域に職の場を移し替えることとみなすのだ。アメリカ国民は、国内の経済、中産・労働者階級の収入と職業防衛に対してなされた害のために、帝国経済の拡張と戦争を拒否している。それとは対照的に外交問題評議会のメンバーは、圧倒的に「グローバリゼーション」(そして帝国主義的介入)の側に立っている。81%の公衆がアメリカの外交政策の第一目標がアメリカ人の職の防衛であるべきだと信じている一方で、CFRのわずか29%しかアメリカ人の職を優先事項とはみなしていない。

 エリート階級は、公衆と帝国との間の利害、価値観と優先事項でのギャップが広がりつつあることに気付いている:彼らは、際限のなく費用のかかる戦争が新たな戦争に対する巨大な拒否と国内での就業プログラム要求の増大を導いていることを知っている。

 この、帝国主義政策を押し進めるエリートと国民多数派とのギャップは、今日のアメリカの外交政策に与える影響の最重要な要素の一つになっている。議会全体に広がる不信(わずか9%の支持)と相まって、オバマ大統領の軍事主義的外交政策に対する国民の拒絶は、様々な場所で大規模な地上戦を開始する帝国の能力を深刻に弱体化させている。

 その間に、イスラエル(ワシントンの海外パトロン)、湾岸傀儡諸国、およびヨーロッパと日本の同盟者は、「自分たちの敵」に介入し対決するようにアメリカを後押ししてきた。挙句の果てに、イスラエルとアメリカ政府内のシオニスト権力構造はアメリカとイランとの間の和平合意を葬りつつある。サウジアラビアと他の湾岸王制はトルコと並んでアメリカをシリア攻撃にけしかけつつある。フランス人は以前にアメリカをリビアのカダフィ政権に対する戦争に追いやることに成功し、いまシリアのかつての植民地をその視野に入れている。アメリカはフランスのマリと中央アフリカ共和国での軍事介入にごく限られた支援だけを送っている。

 最近の戦争で、それらワシントンの「軍事主義」のパトロンたち、傀儡たちや同盟者たちの誰一人としてアメリカのように血と資産という面で高い代価を払っていないことを、アメリカ国民は知っている。サウジアラビア、イスラエルとフランスの「国民たち」は、アメリカ国民に立ちはだかっているような社会的・経済的な矛盾を経験していないのだ。これらの「同盟者の」政府にとって、自分たち自身の地域的な紛争を解決し自身の野望を推し進めるための最も安上がりな方法は、アメリカに「全地球的な指導力を発揮」してくれるように説き伏せ強制し圧力をかけることである。

 ワシントンの政策立案者たちは、その背景と歴史とイデオロギーと過去の経験により、こういった要求には、特にイスラエルのものには、敏感である。しかし彼らもまた、アメリカ国民の間にある「軍事介入疲れ」の増大、アメリカ人多数派の中で盛り上がりつつある反帝国主義感情に対するCFRの持って回した言いざまをよく分かっている。それはさらなる帝国主義的軍事介入に対して「ノー」と言っているのだ。

 世界的な利権を持つ野放しの帝国主義権力としてふるまうという選択肢に対面させられ、同時に国内の不満に直面して、ワシントンはその外交政策と戦略の見直しを迫られている。より微妙なニュアンスを持つ対し方、外からの圧力と操作に対してより隙を与えないような方法を採用しつつある。


●内的な制約と外的な圧力の時代における帝国の外交政策

 アメリカ帝国を形作る者たちは、軍事オプションが徐々に限られてきたことと国内の支持が傾きつつあることのために、次のようなことをやり始めた。(1)作戦行動をする場所について自分自身の選択を優先すること、(2) その外交的、政治的そして経済的な威圧の仕方を多様化させること、(3)アメリカの戦略的な利益が存在する地域に対する大規模で長期の軍事介入を制限することである。アメリカはいかなる意味においてもその軍国主義政策を棄ててはいないのだが、国内経済にさらなる打撃を与え国内の政治的反対を激しくするような費用のかかる長期の戦争を避ける方法を探っている。

 この新たなコンテキストにおけるアメリカの帝国主義政策を解き明かすために、(1)紛争の起こる地域をつきとめる、(2)それらの国と紛争が持つアメリカ帝国にとっての意味合いを推定する、(3)特定の介入とそれらがアメリカ帝国の構造に対して及ぼす影響を分析することから始めるのが有益だろう。我々の目的は、国内と国外の相反する圧力同士の相互関係が帝国主義政策にどのように影響するのかを示すことである。


●アメリカ帝国を形作る者たちを巻きこむ諸紛争

 現在、多かれ少なかれアメリカ帝国を形作る者たちを巻きこんでいる大小の紛争が11存在する。我々の追求の主要な前提は、アメリカ帝国を形作る者たちが、攻撃をより選択的にし、経済面での結果にもっと意識的になり、その取り組みの無謀さを少なくし、そして国内政治に与える衝撃により大きな関心を持っているという点だ。現在ワシントンにとって関心の対象となる紛争には、ウクライナ、ホンジュラス、中国-日本-韓国、イラン-湾岸諸国/イスラエル、シリア、ベネズエラ、パレスチナ-イスラエル、リビアそしてエジプトで起こっているものが含まれている。

 これらの紛争は、アメリカの利害が大きく関わるかどうか、そして同盟者や敵対者が多いか少ないかによって分類できる。アメリカが戦略的な利益を持ち有力な関係国を巻きこむ紛争の中で、日本と韓国と中国の間にある領土と領海に関する争いを取り上げなければならないだろう。表面的には、その争いは日本語で尖閣諸島、中国語で釣魚島群島と主張される経済的には取るに足らない岩の塊をめぐるものであるように映る。本質的に言えばその紛争には、それらの島々をめぐって、日本と韓国の同盟者を中国に立ち向かわせるようにそそのかすことによって中国を軍事的に包囲するという、アメリカの計画がひそんでいる。ワシントンと日本との条約は、この地域における最重要な同盟者の「援助」へと向かうために利用されるだろう。日本の拡張主義的な主張に対するアメリカの支持は、中東での戦闘行為からアジアでの軍事的・経済的な協定へという、アメリカの政策の戦略的転換の一部である。それは中国を除外し挑発するものである。

 オバマ政権は最大の経済的競争相手に対処する試みとして「アジアへの転換」を発表している。世界第2の経済大国である中国は、ラテンアメリカとアジアで第一の貿易相手としてアメリカと置き換わっている。中国は急速にアフリカの天然資源開発の主要な投資者としてのし上がっている。それに即応してアメリカは、(1)日本の主張をおおやけに支持した、(2)中国の航空識別領域の中にB52爆撃機を飛ばすことで中国の戦略的利益を侵害した、(3)韓国をそそのかしてその「防空」領域を中国のそれに重なるように拡大させた。歴史は我々に、勃興しつつあるダイナミックな経済に対して、すでに確立されている帝国主義的な権力をもって支配するという柔軟性に欠ける主張が、必ず紛争に、そして破滅的な戦争にすらつながることを教えている。

 帝国の補佐官たちは、 アメリカ海軍と空軍の優越性と中国の対外貿易への依存が、いかなる軍事対決においてもアメリカに戦略的優位を与えるものだと信じている。オバマの「アジアへの転換」は明らかに、中国を包囲して、世界の市場でアメリカを打ち負かしとって代わる中国の能力を弱体化させるために計画されている。しかしながら、ワシントンの軍事主義者たちは中国の戦略レベル、特に中国が保持する3兆ドルを上回る米国債(借金)を、勘定に入れそこなっている。それは、もし市場に投棄されたならば、米国通貨の価値を大幅に下落させ、ウォールストリートにパニックを引き起こし、深刻な経済不況をもたらすだろう。中国はこのアメリカの軍事的脅迫に対抗して、(1)中国国内に置かれる500の米国大手多国籍企業の施設の接収で起こるだろう株式市場の崩壊、(2)主要な供給チェーンを断ち切りアメリカと世界の経済を一層破滅させることで返答できるのだろう。

 帝国主義的な野望と市場や立場や超越性の喪失に対する怒りの声が、ワシントンを中国との対決という博打に押しやろうとしている。ワシントンの経済的現実主義者たちは軍事主義者に反対して、アメリカがあまりにも丸裸でありクレジットと海外での稼ぎと財政支出にあまりにも頼りすぎているため、特に中東での戦争の破滅的な結果の後では、アジアで新たな軍事介入に取り掛かることなどできないと信じる。現在のアメリカの政策は、軍事主義的帝国主義者たちと帝国の経済的利益の擁護者たちとの間で繰り広げられる闘争を反映する。市場に基づく政策を掲げる補佐官たちにとって、増大する貿易と経済の相互依存関係から得られるお互いの利益が他のいかなる国外の地域から得られるものよりもはるかに勝っているようなときに、中国と対決するなどナンセンスである。こういった見解のぶつかり合いは、バイデン副大統領が12月に日本と中国と韓国を訪問した際に語った、好戦的にそして懐柔的にと交互に変化するレトリックによく現われている。

 有力な関係国との利害関係を持つ第2の地域はペルシャ湾沿岸である。特にイスラエル-イラン-サウジアラビアそしてアメリカだ。イラクとアフガニスタンでの消耗で破滅的な戦争を経験し、そしてアメリカの諜報機関がイラン核兵器開発計画の証拠を全く見つけていないことに十分に気付いて、オバマ政権はイランとの合意にたどり着くことを熱望している。しかしながら、アメリカの戦略家たちは、(1)イランの防衛能力を弱め、(2)湾岸王制諸国にいるシーア派住民の民衆反乱へのイランによる支援を妨害し、(3)シリアのバシャール・アサド大統領を孤立させ、(4)アフガニスタン全域でのアルカイダ討伐作戦によって長期間にわたるアメリカへの存在を容易にするような合意を追及しているのである。加えてアメリカ-イラン合意は厳しい経済制裁を解き、そして(1)アメリカの石油企業にイランの豊富な油田の開発を許し、(2)より安価なエネルギーと(3)アメリカの貿易赤字を減らすものとなるだろう。

 アメリカ-イラン合意のすべてにとっての大きなつまずきの石が、政策立案者たちの中で十分に確保されているシオニストの戦略家と補佐官たちからやってくる。特に行政部門の中でであり、その中には、財務相の幹部で(テロ・)金融犯罪担当のデイヴィッド・コーヘン、財務長官のジャック・ルー、米国貿易代表部のマイケル・フロウマン、「対ペルシャ湾特別補佐官」のデニス・ロスなどといった人材がいる。合意に対するより大きな障害はシオニストにコントロールされるアメリカ議会からやってくる。それはアメリカの利益よりもむしろイスラエルの地域的な野望のために動くのだ。誇大妄想に取りつかれたイスラエルの支配者たちは、(シナイ半島からペルシャ湾岸までの)中東一帯での軍事的・政治的そして経済的な優越性を追い求めており、そして今までのところアメリカ軍を使って、イスラエルの兵士や経済を全く消耗させることなく、その敵たちを破壊し弱体化させることに成功してきた。

 イスラエルは合意の文言を整えるのに直接的な手段を使う。アメリカはそれらをイランに要求することになるだろう。ファイナンシャルタイムズ(13年12月8日)によれば、「国家安全保障補佐官であるヨッシ・コーヘンに率いられるイスラエル高官のチームがワシントンに向かっている…(イランとの:訳注) 交渉アジェンダ作成に影響力を行使すべくオバマ政権との細部にわたる議論を開始するためである。」

 ジョン・ケリー国務長官はすでにイスラエルの圧力に屈して次のように述べた。「我々は財務相を通して(現行の制裁の)実行レベルを上げることになるだろう」(ファイナンシャルタイムズ 13年12月18日)。イスラエルとオバマ政権内にいるシオニスト・エージェントのトップであるデニス・ロスは、イスラエル‐アメリカの「作業グループ」が、イランに対する制裁を厳しくし「暫定合意」の期間中にイランと取引を行おうとするあらゆる政府や企業に罰則を科することについて協議するという、デイヴィッド・コーヘンとジャック・ルー財務長官が求めた姿勢(ファイナンシャルタイムズ 13年12月13日)を推し進めつつある。アラーク核施設の原子炉を重水型から軽水型に変えその濃縮装置を1万9千から1千にまで95%減らすようにというアメリカのイランに対する要求の背後にはイスラエルがいるのだ。

 言い換えると、イスラエルはアメリカの交渉担当者たちに、可能性あるいかなる合意をも効果的に妨害しアメリカにイスラエルのための新たな戦争への道を押し付けることになる文言を命令しているのだ。驚くべきことに、イスラエルの強硬派とアメリカ政府内にいるそのエージェントたちは、重要だが見かけによらない同盟者を持っているのだ。イラン外相のジャヴィッド・ザリフ、ジュネーブでの交渉団団長である。彼はイランの軍事能力を軽視してアメリカの軍事能力を誇張し、イランの平和的核開発計画を取り崩すことに極めて熱心であるように見える。ザリフ外相は「アメリカはこの国(イラン)の防衛システムを一発の爆弾で破壊できるだろう」(ファイナンシャルタイムズ 13年12月10日)と公言した。実際にザリフは、前もってのイランの軍事力に対する客観的な配慮もアメリカの戦略的な弱みに対する認識も全く無いままで、イランの核産業を売り飛ばす準備をしているのだ。

 サウジアラビアの支配者たちは、2013年に200億ドル超にも上る兵器を購入するアメリカの軍産複合体との契約を通して、アメリカの政策に影響を与えている。加えて、サウジ王制はその領土にアメリカの軍事基地建設を許可し、ウォールストリートの投資家たちとの密接な連携を保っている。アメリカ‐イランのあらゆる親善回復に対するサウジの反対は、抑圧される少数派シーア派へのイランの影響と絶対王政へのテヘランの批判に対する恐れから出てくるものである。

 自由化されるイラン政権との交渉で得られる肯定的なアメリカの戦略的な軍事的・経済的利益は、サウジとイスラエル‐シオニストの利益から来る否定的な圧力によって相殺されている。結果としてワシントンの政策は、イランに対する平和的で外交的な交渉の開始とイスラエルやサウジアラビアを安心させる軍事的脅迫との間で揺れ動いている。ワシントンは、ペルシャ湾岸でのイスラエルのヘゲモニーを確保する新たな「イスラエルのための戦争」に引きずり込まれることを避け、国内の大規模な政治的・経済的危機を避けようと必死になっている。しかしながらオバマ政権は、政府高官と議会の中に深く根付いているシオニスト権力構造を ― それがイスラエルの利益をアメリカの利益よりも上に置いているのだが ― 抑えつけ中和するための高度な政治的手腕を発揮しなければならない。


●地域的な紛争:ささいな利益と重要な関係諸国

 ウクライナ‐欧州連合(EU)‐ロシアの紛争はアメリカ経済にとってささいな利益しかもたらさないが、潜在的には重大な軍事的利益をもたらすものである。アメリカはウクライナを経済と貿易のシステムに組み込むというEUの政策を支持している。EUは、ウクライナの市場を支配し莫大な投資の収益を刈り取ることで、ウクライナ経済略奪の重要な受益者となるだろう。アメリカはというと、ウクライナ国民の反乱を扇動する主要な役割を果たすEUの姿に満足する。ウクライナがEUに加盟するときがくるなら、それは、ちょうどスペインやギリシャやポルトガルやイタリアと同じように、銀行家たちとブリュッセルの官僚たちの命令に服従する新たな傀儡政権となることだろう。アメリカは主要に、ロシア包囲という政策の一部としてウクライナをNATOに組み入れることに興味を抱いている。

 シリアは、そして同様にリビア、マリ、中央アフリカ共和国、エジプトは、アメリカにとって二義的な興味でしかない。ワシントンは欧州連合、特にフランス、イギリスとその同盟諸国に、直接かあるいは代理者を通しての軍事作戦を導き指揮することを任せている。オバマ政権はすでに、爆撃によるトリポリ壊滅に参加したときに激しい「介入疲れ」 ― 幅広い国民の戦争に対する反対 ― に直面した。しかしアメリカは地上軍投入を拒否し、リビアを、存続可能な経済や安定した社会つまり国家の機能を持たない破壊された国としてほったらかしたのだ! 「人道的介入」などその程度のものなのだ! シリアへの介入は国内で議会とアメリカ国民からの相当に大きな反対に直面した ― イスラエルとサウジのロビーの賛成を除いては。オバマは明らかに、「アルカイダの空軍」として行動してダマスカスを爆撃し聖戦主義者の政権奪取を容易にするようなことを嫌がった。アメリカは外交的な解決を選択し、シリアの化学兵器を破壊するというロシアの提案を受け入れた。そしてジュネーブ会談で合意された解決を支持しているものと思われる。今回のシリアについては、アメリカ帝国主義にとって獲得すべき利益は無かったが、新たな戦争を起こしてアメリカ国内の不満と経済の更なる崩壊に火をつけることはしなかった。実際に、アメリカ軍がダマスカスに対して勝利するならば、イラクと地中海沿岸地域でのアルカイダ掃討作戦の地域が広がるだけになるだろう。アメリカの世論は、巨大な親イスラエル・メディアの弾幕とアメリカ主要ユダヤ人52組織代表団からの圧力に打ち勝つものだった。それらがオバマ政権を「シリアの泥沼」の方に激しく押しやっていたのだ!

 フランス大統領フランソワーズ・オランデは、リビアでの激しい爆撃とマリや中央アフリカ共和国への侵略と占領を行った、帝国主義的軍事主義とアフリカでの軍事介入主義の新顔である。アメリカはフランスに対して「支援の役割」を果たすことで満足している。アメリカはソマリアでの代理戦争を除いてはアフリカにかかわり合う戦略は持っていない。

 いかなる大規模で直接の軍事介入にも強く反対する世論があるために、ワシントンは、「戦略上は有意義」だがさしたる重要性のない諸国と地域での紛争に対して、代理戦争の方に向きを変えている。帝国にとっての明らかな利益が存在するかもしれないような場所でさえも、ワシントンはしだいに、イエメン、タイ、ホンジュラス、ベネズエラ、パキスタン、アフガニスタンそしてエジプトといった多様な国々の紛争で、アメリカになり代わる地元の支配者たちに頼るようになっている。アメリカ政府はイエメンとソマリアとパキスタンへの介入で、無人機を飛ばし隠密作戦に特殊部隊チームを派遣するという選択をしてきた。アフガニスタンでは無人機と並んで特殊部隊がアメリカ軍とNATO軍および地元の傀儡軍と連携している。

 ホンジュラスではアメリカが支援する軍事クーデターが起こり、その後2年の間に殺人部隊を繰り出して200人を超える反体制活動家を殺したわけだが、クーデター直後に不正に満ちた選挙でアメリカの傀儡政権が「権力」を手にした。ベネズエラでアメリカは、街の暴徒を援助し電力のような公共サービスへの妨害活動に携わる反対党派に資金援助を続け、その一方で基本生活物資を隠匿し値段を吊り上げることは地元のビジネス・エリートに頼っている。今のところ、ベネズエラ政府を破壊するためのこういった努力は失敗しているのだが。

●結論として

 アメリカ帝国を形作る者たちは、ジョージ・W.ブッシュ大統領の下にいた先輩たちよりも、より幅広く多様性のある介入の仕方に頼っている。彼らは大規模な地上戦を立ち上げる傾向が少なく、より地元の傀儡支配者たちに向きがちである。そして直接的軍事介入の標的を選びぬくことを優先させるセンスをより大きく示してきた。

 ワシントンは、帝国主義ヨーロッパの同盟国、特にアフリカでの主導権を取るフランスに、より大きく頼っている。エジプトでのアメリカ‐イスラエルの厳しいコントロールを維持するという重大な利益を放棄することなしにである。優先順位は極東のほうに転換されている。特に中国と隣接した日本や韓国のような国々にだが、それは中国の経済拡張主義を包囲し制限を与える長期的なアメリカの戦略の一部である。オバマ政権のアメリカの「アジアへの転換」は、軍事的包囲の増強に伴う経済的な取引の変化によってその特徴が明らかにされる。

 ペルシャ湾を支配しイランを破滅させることはアメリカ帝国を形作る者たちにとって高度の優先事項であり続けている。しかしジョージ・W.ブッシュの下で行われた犠牲の大きい破滅的なイラク侵略と占領およびその国内への災厄的な跳ね返りは、できる限りテヘランとの軍事対決によらず、経済制裁と軍事的包囲に、そして現在ではロウハニ新政権からの協力を確保するための外交交渉により多く頼るように、ワシントンを導いてきた。

 アメリカ帝国を形作る政策の最大の戦略的な弱点は国内的な支持の欠如にある。低下しつつあるアメリカ人の生活レベルを上げるためのより支払の良い仕事と公共サービスや生計のより大きな保護を求める要求が増大しているのだ。戦略的な弱点の第2は、アジアやラテンアメリカでの同盟を勝ち取るような、存続可能な「共栄圏」を創出する能力がアメリカに欠如していることに見出される。いわゆる「アジアへの転換」は過度にそして明白に軍事力(主に海軍力)に頼っている。それは中国との「領土上の争い」が起こる際には機能するのだが、地域の企業エリートたちとの安定した構造的な結びつきを生み出すものではない。彼らは貿易を中国に頼っているのだ。

 結局、アメリカの対外政策を今日の現実に効果的に適用する際の最も深刻な障害物は、議会と政府とマス・メディアの中に埋め込まれたイスラエルにつながるシオニスト権力構造の強い影響力である。シオニストたちはアメリカをもっと多くのイスラエルの為の戦争へと押しやることに心底専念しているのだ。にもかかわらず、対イラン交渉への転換、シリア爆撃の拒否、そしてウクライナ情勢に巻きこまれることへの抵抗といったことのすべては、ワシントンが、より大規模な軍事介入を立ち上げる傾向を少なくしており、そして帝国権力の行使を抑えようとする国民世論に対してより受容的になっている証拠なのである。

【翻訳ここまで】
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